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『エピローグ 愛を繋いで』
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しおりを挟む~幸いより~
私と駿ちゃんが結婚していたことは、レストラン全体に知られてしまった。
でも、だからと言ってクビになるなんて理不尽なことはなく、私は平気なふりを装いMレストランで働いており、意外と周りもそうなんだー程度で、店長と少し話したくらいだった。
言ったらしい双川さんからは謝罪され、変わらず駿ちゃんからは想いを伝えれることもあるが、私は、とても前向きに生活をすることができるようになっていた。
遠くにいても、篝さんとはお互い信じ合えていると、思っていた。
彼との出会いから想いを伝える前まで、短かったようで、かなり長く、自分の気持ちに気付かないもどかしい日々の連続だった。
でも、今はハッキリと言えるこの“好き”の幸せな気持ちを、私は噛み締めていた。
会えない分、連絡はマメにとっており、電話も数回。電話は緊張しても、嬉しい気持ちの方が大きくて。
九月末の転勤からもうすぐ三ヶ月、年末のお休みに入ってから、篝さんは三ヶ月ぶりにC街へと帰ってきた。
Mレストランは年中無休で営業しており、その日も空港へ迎えに行けなかった私は、仕事終わりに指定された場所へと急いで向かった。
場所は何度か行った安めの居酒屋であり、私が暖簾をくぐると、奥から英木さんが手を振ってきた。
そしてその隣には久しぶりに見る篝さんがおり、彼も笑顔で手を振っている。
──わ……篝さんがいる……。
今日は尚美と英木さんも一緒に、四人で忘年会をする予定になっており、私はこの日を楽しみにしていた。
緊張はしても、篝さんと想いが繋がってから前を向く機会が少しずつ増え、異性の英木さんとも、少しばかり前より砕けて話せるようになっていた。
「篝といよりさん、久しぶりじゃん。二人とも嬉しいだろ」
「嬉しいに決まってる。幸さん、三ヶ月ぶりですね」
「って、まだ敬語で話してるのかよ。お堅いなぁ」
篝さんに絡む英木さんの姿、久しぶりに見た。
「……久しぶりですね。……ずっと、会いたかったです」
「わっ、いよりそんな恥ずかしい言葉、私達の前でも言えるようになったんだ」
「えっいや……そう、だね。今のは、取り消したい……」
三ヶ月ぽっちじゃ見かけもそう変わらないが、篝さんの笑顔がやたらキラキラしていて、顔を見たいのに見れなくて、恥ずかしい。
「ダブルデート、いいな。篝はいつ地元に帰んの?」
「明日かな。大晦日と元日は実家にいて、またあっちに帰る前に、C街で幸さんと会えたらなって思ってるけど……幸さん、大丈夫?」
「私の方は、大丈夫です。……また、年明けたら初詣、行けたらいいですよね」
「えー、篝さん明日帰るなら、もしかして今日二人はお泊り?」
「「えっ」」
尚美のわざとげな言葉に、私は篝さんと同時に反応してしまった。
その予定はなく、私はバリバリこの後電車に乗って、家に帰るつもりだったのだ。
「や、そんな。俺、一人で予約してますし」
「なに~、篝、シングル?」
「年末で空いてなかったから、ダブルだったかな」
「じゃあ、予約変更して、いよりさんも一緒に泊まっちゃえばいいじゃんっ。てか、実は最初から、いよりさんも泊まらせるつもりだったじゃ……」
「はっ違うし! そこ勘違いしてほしくないんだけどっ」
まだビールを数口飲んだだけの篝さんが、物凄く顔を赤くして首を振っている。
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