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第七章
幻の結婚式
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覇王は、これが隠すことのない、本音だと思いながら、言葉に想いを乗せた。
「僕は、もっとあなたとお話がしたいです。手術が終わったら……あなたのことをもっと知りたい。そんなチャンスを、僕にくれませんか?」
静久は、十字架と、ふりそそぐ光を背景にしながら、ニッコリと微笑んだ。
「ええ……! もちろんです……!」
青海ひかるは、先ほどから胸がいっぱいだった。自分の手がけたプレミアム会員が、その恋を大きく前進させる、その手助けができた充実感で溢れていた。思わず、雁野に向かって声をかけた。
「雁野さん……覇王! 静久さんの、その頭にかぶっている布を、そっと上に持ち上げて、とってもらえませんか?」
静久はその声で、頭にかぶっているレースの布のことを思い出したようだった。
「あっ……すいません、私、こんなのかぶったままで……。さっき隠れようと思って、そのまま忘れてました……。」
「いいんです、いいんです。覇王! お願い、それを、そうっととって!」
それからの光景は、青海ひかるの瞳の中で、ゆっくりと流れていった。脳内では、アヴェ・マリアの荘厳な音楽が鳴り響いている。雁野が静久に近づき……そしてそっと、ヴェールを両手であげた。それは、ちょうど結婚式のときに新郎が新婦に行う、ヴェールアップの儀式のように見えた。
――これは、ヴァーチャル世界の結婚式だ、と青海ひかるは思っていた。
――天空のチャペルで、幻の中でとり行われた結婚式。
「南里さん……!」
青海ひかるは感極まって、南里主任の方を眺めた。南里は横を向いて、腕で顔を隠してプルプルと震えていた。ひかるは、それを見て思わず笑ってしまった。
静久と雁野は、何も言わずに、ただ幸せそうに見つめ合っていた。
「僕は、もっとあなたとお話がしたいです。手術が終わったら……あなたのことをもっと知りたい。そんなチャンスを、僕にくれませんか?」
静久は、十字架と、ふりそそぐ光を背景にしながら、ニッコリと微笑んだ。
「ええ……! もちろんです……!」
青海ひかるは、先ほどから胸がいっぱいだった。自分の手がけたプレミアム会員が、その恋を大きく前進させる、その手助けができた充実感で溢れていた。思わず、雁野に向かって声をかけた。
「雁野さん……覇王! 静久さんの、その頭にかぶっている布を、そっと上に持ち上げて、とってもらえませんか?」
静久はその声で、頭にかぶっているレースの布のことを思い出したようだった。
「あっ……すいません、私、こんなのかぶったままで……。さっき隠れようと思って、そのまま忘れてました……。」
「いいんです、いいんです。覇王! お願い、それを、そうっととって!」
それからの光景は、青海ひかるの瞳の中で、ゆっくりと流れていった。脳内では、アヴェ・マリアの荘厳な音楽が鳴り響いている。雁野が静久に近づき……そしてそっと、ヴェールを両手であげた。それは、ちょうど結婚式のときに新郎が新婦に行う、ヴェールアップの儀式のように見えた。
――これは、ヴァーチャル世界の結婚式だ、と青海ひかるは思っていた。
――天空のチャペルで、幻の中でとり行われた結婚式。
「南里さん……!」
青海ひかるは感極まって、南里主任の方を眺めた。南里は横を向いて、腕で顔を隠してプルプルと震えていた。ひかるは、それを見て思わず笑ってしまった。
静久と雁野は、何も言わずに、ただ幸せそうに見つめ合っていた。
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