34 / 45
第六章
レアアイテム
しおりを挟む
また、三人が飛びかかってきた。一人の攻撃を腕でブロックし、直後にグーパンチではじき飛ばす。だが、今度は二人の攻撃を腹と、頭部に喰らった。グラ、と視界が揺れる。ザン、と両足を踏ん張り、覇王はモヒカン二人をまとめてグーで突き飛ばした。二人が驚いた顔で、折り重なって飛んでいく。
「今だ! 全員でかかれ! 秘技『熱殺蜂球』(ねっさつほうきゅう)!」
号令を聞いたモヒカンが、一斉にとびかかった。覇王を三六〇度、さらに上からも取り囲んで、まるで球のように二重三重に人が折り重なっている。中心部にいる覇王が、必死に一人ずつ吹き飛ばすが、とても間に合わない。やがて攻撃音だけが聞こえ、モヒカンで形成された球体の中で、少しずつ覇王が体力を削られているのが見えた。
「ククク……! 『熱殺蜂球』、それは自然界で、ミツバチがスズメバチに対抗するための秘策だ! ミツバチは、個々の戦闘力では、スズメバチにかなわない。だが全員で、スズメバチに取り付き、一斉に筋肉や羽を震わせ体温をあげることで、スズメバチを蒸し殺すことがある……。」
モヒカンの指導者のような男が、分かりやすく、親切丁寧な解説を始めた。
「要するに……全員で飛びかかって、タコ殴りにする技だあっ! ここまでだ、覇王、殺ったり(とったり)!」
球の中心で、少しずつ覇王の反応が弱まっているのが分かった。トーギャンでは、体力を削られたプレイヤーは各種ステータスが低下する。さしもの覇王も、低下したステータスでは、この局面を打開することは難しいように思われた。
ところが次の瞬間、異変が起こった。
球の中心部から、強烈な光が放たれた。モヒカン達の隙間から、光がもれて四方八方に飛散する。
「な、なんだ……うわっ!」
光がドーム上に膨れ上がり、ついに全方向にはじけた。同時に、覇王に覆いかぶさっていたモヒカン達が、全員吹っ飛ばされた。光が収まり――中心部には、覇王が立っていた。体力が、全回復している。
「体力回復アイテムだ! 檄レアアイテムの、『帝王のブルゴーニュ』で全回復しやがった!」
「さすが廃課金!」
「そんなアイテムを、レアなボスキャラを倒すわけでもないのに使うとは! そんな、アホなあー!」
「今だ! 全員でかかれ! 秘技『熱殺蜂球』(ねっさつほうきゅう)!」
号令を聞いたモヒカンが、一斉にとびかかった。覇王を三六〇度、さらに上からも取り囲んで、まるで球のように二重三重に人が折り重なっている。中心部にいる覇王が、必死に一人ずつ吹き飛ばすが、とても間に合わない。やがて攻撃音だけが聞こえ、モヒカンで形成された球体の中で、少しずつ覇王が体力を削られているのが見えた。
「ククク……! 『熱殺蜂球』、それは自然界で、ミツバチがスズメバチに対抗するための秘策だ! ミツバチは、個々の戦闘力では、スズメバチにかなわない。だが全員で、スズメバチに取り付き、一斉に筋肉や羽を震わせ体温をあげることで、スズメバチを蒸し殺すことがある……。」
モヒカンの指導者のような男が、分かりやすく、親切丁寧な解説を始めた。
「要するに……全員で飛びかかって、タコ殴りにする技だあっ! ここまでだ、覇王、殺ったり(とったり)!」
球の中心で、少しずつ覇王の反応が弱まっているのが分かった。トーギャンでは、体力を削られたプレイヤーは各種ステータスが低下する。さしもの覇王も、低下したステータスでは、この局面を打開することは難しいように思われた。
ところが次の瞬間、異変が起こった。
球の中心部から、強烈な光が放たれた。モヒカン達の隙間から、光がもれて四方八方に飛散する。
「な、なんだ……うわっ!」
光がドーム上に膨れ上がり、ついに全方向にはじけた。同時に、覇王に覆いかぶさっていたモヒカン達が、全員吹っ飛ばされた。光が収まり――中心部には、覇王が立っていた。体力が、全回復している。
「体力回復アイテムだ! 檄レアアイテムの、『帝王のブルゴーニュ』で全回復しやがった!」
「さすが廃課金!」
「そんなアイテムを、レアなボスキャラを倒すわけでもないのに使うとは! そんな、アホなあー!」
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる