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ー悪ー 第一章 アタラヨ鬼神
第十二話 封印
しおりを挟む「封印......」
鬼神王がそう言うと、皆は眉をひそめた。
封印は実は二種類ある。鬼神王は少し前にシュヴェルツェに教えてもらったことを鬼神たちに話した。
まずは一つ目。規則を破り、鬼神として相応しくない行為をしたものにする封印。封印の刑を科され封印をされたものはいずれ消えてしまう。
そして二つ目の封印は何者かが規則を破っていない無罪の鬼神にする封印。これは封印されても消えることは無いのだが、解かれるまで目を覚ますことは無い。
恐らく今回の件は二番目の封印だろう。
残念ながら現在、封印を解く能力を持っている者はいない。また、封印をかける能力を持っている者もいないはずなのだが......
「......てことは、この子はこのまま目覚めることは無いの......?」
「わからない。試しにやってみる」
鬼神王は両手を広げ、力を込める。すると黒い光が現れ、倒れている鬼神の額へと送る。すると、額の紋は激しく光り、鬼神王の黒い光を跳ね返そうとする。鬼神王は跳ね返されないようにさらに力を入れ、光の威力を強める。まるで台風の時かのように強く風が吹き、皆は目を開けていられなかった。
数秒後。突然風が止んだ。皆はゆっくりと目を開ける。すると倒れている鬼神の額の紋は消えた。
「できた......のかな......」
鬼神王がそう言うと、倒れている鬼神は目を開けた。「鬼神王様......?」と弱々しい声でそういうと、皆は大きな拍手をあげた。成功したのだ!
「鬼神王様すごいっ!!凄すぎる!!」
「なんでも出来ますね!!」
「かっこいいーっ!」
メリーナも嬉しそうに飛び跳ねる。まさか鬼神王がここまでできるとは。出来ないものはない。勝てないことは無い。まさに敵無しだ。
倒れていた鬼神は体をゆっくりと起こす。
......が。皆の視界からふわりと、何者かが倒れる姿が見えた。
「鬼神王様!?」
倒れた鬼神王の体には電気が走っており、バチバチと大きな音を立てている。眉間に皺を寄せ、苦しそうな顔をしている。
恐らく封印は解けたが、解いた瞬間、封印の力が一部鬼神王の体に移ってしまったのだろう。
「鬼神王様!!」
メリーナは走って鬼神王のそばでしゃがみ、体に触れようとした。しかし先程、鬼神王が紋に触れた時のようにメリーナの手に電気が走った。
「鬼神王様が......」
「わ......私のせいだ......」
倒れていた鬼神は何が起きているのかよく分からなかったが、鬼神王が助けてくれたこと、そして鬼神王が自分を助けたことによってこのようなことになっているのだと理解した。
鬼神王様が倒れ、皆は顔を真っ白にした。ここにいるもの達ではどうすることも出来ない。
「今すぐヴェルさんを呼ばなければ......」
ある一神がそういった瞬間。目の前に黒い煙が現れた。その煙は人型へ変化していく。これは......
「ヴェルさん!」
シュヴェルツェだった。とても良いタイミングだ。シュヴェルツェは鬼神王を見て目を大きく見開く。
「騒がしいと思って来たらまさかこんなことになっているとは......何があった!?」
シュヴェルツェはメリーナを睨む。メリーナは体全身を震わせ、何があったか詳しく話した。
話終わるとシュヴェルツェは黙って鬼神王に力を送り込む。するとシュヴェルツェの力は反射し、皆の方へ飛び散った。メリーナが急いで結界を張ったため、皆は無傷で済んだ。しかし鬼神王には何も変化はなかった。
「......」
シュヴェルツェは険しい顔をした。シュヴェルツェが何も出来ないなら他の鬼神たちがいくら頑張ってもできることは無い。シュヴェルツェより鬼神の力が強いのは......鬼神王だけだ。
このまま何もしない訳にはいかない。シュヴェルツェは再び力を送り込もうと両手を広げた。メリーナも無言で結界を張り、皆を守る。
......と。
急に竜巻のような強風が襲ってきた。これはシュヴェルツェが出したものでは無い。皆は吹き飛ばされそうになり、必死に踏ん張った。
十秒後、強風は収まり、鬼神王を見ると、もう体には電気が走っていなかった。
シュヴェルツェがやったのか......いや。やっていない。シュヴェルツェや皆は何が起こったのか分からず立ち尽くした。しかしすぐにシュヴェルツェの顔色が悪くなった。まるで怒りが収まらないかのように、目を大きく見開き、恐ろしい顔をしている。
「ヴェルさん......?」
「......メリーナ、行くぞ」
「あ......はい...」
シュヴェルツェは鬼神王を背負い、メリーナに低い声でそう言うと城の方向へ歩いていった。メリーナはこの後罰を受けることになると覚悟し、ゆっくりと後ろからついて行く。
「鬼神王様......大丈夫かな......」
「心配だわ......」
封印の力の一部が完全に解けたとはいえ、まだ目を覚ましていないため皆は不安でいっぱいだ。特に鬼神王に助けてもらった鬼神は自分のせいだと顔を真っ青にしている。
「ねぇ、あれ何?」
ある一神が鬼神王が倒れていた場所を指さした。そこには小さな桃色の何かが落ちていた。
「...なんだろう」
「花びら......?」
見慣れない一枚の花びらが落ちていた。
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