鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
上 下
124 / 184
ー光ー 第九章 鬼神と無能神様

第百二十三話 見つからない

しおりを挟む
「光琳はまだ見つからないのかっ!?」

「はい......」


 城中は大騒ぎになっていた。
 天麗華が天宇軒に報告し、天宇軒は護衛神に探せと命令した。
 天宇軒も波浪とともに城中探し回った。
 しかし二時間たっても見つからない。
 すると外で探していた護衛神が一神慌てた様子で走ってきた。


「宇軒様っ!!」

「何事だ!?」


 天宇軒は何となく嫌な予感がした。
 護衛神の顔色は悪かった。恐ろしいものを見てきたようだ。


「先程、街で神々が何者かによって殺されたようです!!」

「どれぐらいだ」

「ざっくり三十名ほどかと......」


 天宇軒は眉間に皺を寄せた。
 何者か......それはもう誰なのか分かるようなものだ。


「鬼神か......?」

「恐らく......!」


 周りにいた護衛神は息を飲んだ。
 三十神も一度に殺されたなんて神界では初めてとなるだろう。


「......そこに光琳の姿は?」

「ありませんでした」


 天宇軒は安心したのかそれとも焦っているのかよく分からない表情をした。
 天光琳は一体どこへ行ったのだろうか。
 天光琳がいなくなった直後にこの事件が起きた。
 ......ということは天光琳に関係する可能性が高い。


「光琳が殺したんじゃ......」


 近くにいた護衛神がそう呟いた。すると天宇軒はその護衛神を睨んだ。


「何を言っている!?」

「ひいっ!?」


 その護衛神は驚き、一礼してから走って逃げて行った。
 天宇軒はため息をついた。


「......ですが...亡くなった神には無数の切り傷がありました......。光琳様は絶対に殺していない......とは言いきれません......」


 先程外から戻ってきた護衛神が天宇軒の様子を疑いながらゆっくりと喋った。
 天光琳は剣を使っている。
 神の力を使えないため、剣を使うだろう。

 ......しかし神の力が使えない天光琳が一度にあんなに神を殺すことはできるのだろうか。


「いいえ、光琳ではないわ」


 天麗華と天俊熙が戻ってきた。
 天麗華の手には剣があった。......天光琳のものだ。


「あの子は剣も扇も......何も持たずに行ってしまったの......。亡くなった神々の体に切り傷があったと言っても、光琳の剣はここにあるのだから、光琳ではないはずよ」


 天俊熙も隣で頷いた。
 そこで天宇軒はあることに気づいた。


「剣も扇も持っていないのか?!」


 鬼神が再び現れているというのに剣も扇も持っていないとはあまりにも危険すぎる。
 身を守れるものがないのだから。
 すると天俊熙はしゃがみ込んだ。


「俺のせいだ......俺があの時......」

「俊熙のせいじゃないわ。自分を責めないで......」


 そう言っているが天麗華も自分を責めている。
 あの時、部屋に行き天俊熙と話さなければよかった。
 そうすれば天光琳は聞くこともなく、今頃いつも通りに過ごしていただろう。


「光琳兄様がいなくなったって本当!?」


 天李静が走ってきた。
 先程その情報を聞き、走って来たのだろう。
 天麗華は悲しそうに小さく頷いた。


「光琳兄様!!」


 天李静は振り返り、天光琳を探しに行こうとした......が、しゃがんでいる天俊熙が天李静の腕を掴んだ。


「待て、既にもう三十神ほど殺されている。そんな状況の中一神で歩き回るのは危険すぎるぞ!」

「でも光琳兄様が危ないんでしょ?!次は李静が助けなきゃ!」


 天李静は天俊熙の言うことを聞こうとしなかった。
 恩神おんじんの天光琳が危険にさらされていると知り、じっとしていられないのだろう。
 天李静は天俊熙の手を払い、走っていった。


「おいっ!」


 天俊熙は天光琳がいなくなってからずっと走り続けていたため、もう体力が残っていない。しかし天李静が危ないため、フラフラになりながらも立ち上がった。


「俊熙、大丈夫。私が行く!」


 天李偉だ。
 天李偉はそう言って天俊熙のすぐ横を通り過ぎて行った。


「ありがとう、姉様」

「えぇ、俊熙は無理しないで!」


 とても優しい姉だ。天光琳を嫌っていたなんて嘘のように思える。
 しかし天光琳と天李静が言っていたのだから嘘ではないだろう。
 だが今はそんなことなんてどうでも良い。

 天俊熙は窓から外の景色を眺めた。


「どこにいるんだよ......」


 天俊熙が心配そうに外を眺めていると天麗華も後ろに立ち外を眺めた。


「......はやく見つけなければ光琳が......」

「............」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【サクッと読める】2ch名作スレまとめ

_
ファンタジー
2chで投稿された名作スレをまとめています。 物語に影響しない程度で一部変更する場合がございます。 ご了承ください。 ※不定期更新

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

【電子書籍発売に伴い作品引き上げ】私が妻でなくてもいいのでは?

キムラましゅろう
恋愛
夫には妻が二人いると言われている。 戸籍上の妻と仕事上の妻。 私は彼の姓を名乗り共に暮らす戸籍上の妻だけど、夫の側には常に仕事上の妻と呼ばれる女性副官がいた。 見合い結婚の私とは違い、副官である彼女は付き合いも長く多忙な夫と多くの時間を共有している。その胸に特別な恋情を抱いて。 一方私は新婚であるにも関わらず多忙な夫を支えながら節々で感じる女性副官のマウントと戦っていた。 だけどある時ふと思ってしまったのだ。 妻と揶揄される有能な女性が側にいるのなら、私が妻でなくてもいいのではないかと。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 誤字脱字が罠のように点在します(断言)が、決して嫌がらせではございません(泣) モヤモヤ案件ものですが、作者は元サヤ(大きな概念で)ハピエン作家です。 アンチ元サヤの方はそっ閉じをオススメいたします。 あとは自己責任でどうぞ♡ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...