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ー光ー 第九章 鬼神と無能神様
第百二十話 分からない
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数日後。
光琳は本ばかり飽きてきてそろそろ外出したかった。
一週間に三回人間の願いを叶えるというルールは無くなったため、強制的に外出しなければいけない......ということは無くなった。
外出は控えろと言われているため、天光琳と天俊熙は城の最上階にあるバルコニーに行って外の様子を眺めている。
「千秋くん元気かな......」
「さぁ......」
もう冬なのでとても寒い。
もう三十分くらい経っただろうか。
二神はそろそろ部屋に戻ることにした。
「でもアイツ、最近見ないよ?」
「...え?」
階段を降りながら天俊熙は言った。
最近千秋の姿が見えないようだ。
それに仲直りしたなら城に来てくれても良いはずだ。昔はよく遊びに来ていたのだから。
しかし鬼神が現れた日以来、千秋とはあっていない。
「まさか睿くんたちにバレていじめられてるとかないよね......」
天光琳は嫌なことを想像した。
その可能性はゼロではない。
「だといいけどなぁ。......それに千秋の父さんも見ないんだよ」
「そうだよね。もうあいたくないな......って思ってたけど、そもそも見かけないというか......」
次会ったら何されるかわからない。
もっと酷い目に合わされるかもしれない。
そう思っていたのだが、そもそも城で見かけなくなったのだ。
「宇軒様がクビにしたとか......?」
「そうかなぁ......」
天光琳はわざわざ自分のためにそんなことするか......と思った。
それに千秋は何も言っていなかった。
たまたま見かけないだけかもしれない。
「あ、光琳兄様!」
天李静と廊下ですれ違い、天李静は嬉しそうに微笑んだ。
しかし天俊熙の方は見なかった。
「言っとくけど、俺がお前の兄だからな!?」
「あはは......」
✿❀✿❀✿
「光琳。話がある」
「......あ、はい......」
夕食後、湯浴みを済ませ、天光琳と天俊熙は部屋に戻ろうとしていたら天宇軒とすれ違った。
話とはなんだろうか。
天宇軒の部屋で話すようだ。
「じゃ、俺先に部屋に戻ってるよ」
「うん」
天俊熙は待っていても仕方がないため、先に部屋に戻ることにした。
天宇軒の部屋に着くと天宇軒はいつもの椅子に座らず、そのまま天光琳の前に立った。
「光琳、最近はどうだ?」
天宇軒と天光琳の身長は離れているため、なんだか天宇軒に見下ろされている感じがし、恐ろしさが増す。
それにしても「最近どうだ」と聞かれても......。天宇軒のことだ。心配してくれている訳ではないと思うのだが。
「大人しくしています」
それしか言うことがなかった。......というか何もしていない。修行も舞も出来ていないのだから。
......もしかしたら一生無能神様でいるしかないのだろうか。
「お前はこれからどうしたいんだ?」
当然そんなこと聞かれても......難しい質問だ。
天光琳は言葉に詰まった。
(どうしたいんだろう)
自分でもよく分かっていない。
鬼神がいなくなるまで自由に動けない。しかし鬼神は天光琳がいる限り消えたりはしない。ということは一生何も出来ないのではないか。
何がしたいなんて......そんなの考えたって無駄だ。とっくに考えるのをやめている。
「特にありません」
「一生この生活は無理だろう」
「......」
天宇軒は言うまで帰らせない......と言っているかのようだ。
確かに一生何も出来ない、一生この生活は嫌だ。
自分だけではない。皆にも迷惑がかかるだろう。......そうか。皆に迷惑がかかる。
天光琳は誰かのそばにいなくてはいけない。
とても迷惑だ。これが一生続くとなると......。
天宇軒はもしかしてその事を伝えたかったのだろうか。
今も不機嫌そうな顔をしている。
......まるで天光琳がいなくなれば全て片付くのに......と思っているかのように。
「僕なんて必要ないですよね」
「何を言っている?」
思わず口に出てしまった。
天宇軒は目を細め天光琳を見た。しかし天光琳は目を逸らした。
「光琳!」
嫌われているならもう失うものは無い。
本来なら失礼なのだが、天光琳は一向に目を合わせようとしなかった。
すると天宇軒はため息を着いた。
「お前は......」
「もう何も聞きたくない」
「......光琳...?」
天光琳はそのまま振り返り部屋を出ていった。
こんな態度は初めてだ。
天宇軒はいつものように怒鳴ることなく、ただ黙って立ち尽くした。
(......俺は......)
天宇軒はだるそうに壁にもたれかかった。
そして目を閉じた。
(どうすれば......)
✿❀✿❀✿
その日の夜。
目が覚めてベッドから起き上がった。
(うーん......寝れない......)
天宇軒に反抗したからだろうか。ずっと心がモヤモヤして眠れない。
天光琳はいっその事起きて本でも読んでやろうと思った。
ベッドから降り、本棚の近くまで行った。
すると、廊下から物音が聞こえたような気がした。
(誰か起きているのかな......)
天光琳は本を取るのをやめ、扉付近まで行った。
すると、外から話し声が聞こえてきた。
「えっ......姉上と俊熙......?」
てっきり天俊熙は寝ているかと思った。
天光琳は物音を立てないようにゆっくりと天俊熙のベッドの近くまで行き、ベッドのカーテンを開けた。
すると天俊熙の姿はなかった。
やはり廊下で話しているのは天俊熙と天麗華だろう。
天光琳は戻り、扉の付近にしゃがみ込んだ。
こんな夜中になんの話をしているのだろう。そして最近よく一緒にいる。何か理由があるのかもしれない。
......が、小さな声で話しているためよく聞こえない。
天光琳はドアに耳を当てた。
......でも盗み聞きは良くない。
最近は鬼神が現れたため、あまり二神だけで話していることはないのだが、今まで天光琳がいない時に話していた。
(......まぁいいや。明日聞いてみよ......)
そう思って立ち上がった瞬間、
「光琳は......」
天麗華が自分の名前を言ったことがはっきり聞こえた。
(え......?僕の話......?)
天光琳はまたしゃがみ、再びそっと扉に耳を当てた。
「そうね......神の力が使えないのは.........だから......」
「はやくしな.....と.......なる」
大切なところがよく聞き取れない。
しかし二神は自分のことについて話していることはよく分かった。
「......通りで変わらないわけだよ......」
天俊熙は低い声でそう言った。
何が変わらないのか。
......もしかして、天光琳がいつまで経っても神の力が使えないから呆れているのか。
そんなことあるか?天俊熙はそんなこと言うのか......?
「......はやく殺さなければ......アイツさえいなければ良いんだけど......」
「えぇ......」
(え......?)
天俊熙は今なんといった。
聞き間違えだと思いたい。
「...どんどん近づいてきている。明日はもう少しそばに居るようにするわ」
「俺もそうします」
二神が最近よく一緒にいる理由がまさかの自分のことについて話していたと思うと、胸がズキっと痛む。
知らないところで話されていた。
二神はそんなことするはずない...とずっと思っていたのだが、裏切られたような感じがした。
天光琳はもう続きは聞きたくないとゆっくり立ち上がり、布団に潜った。
そしてしばらくすると扉が開く音が聞こえた。天俊熙が戻ってきたようだ。
天光琳の心臓はバクバクと大きな音でなっていた。
なぜが天俊熙と天麗華のことが"怖い"と思ってしまった。
二神まで悪口を言うのか。
信じていたのに......。
信じて......いたのに。
光琳は本ばかり飽きてきてそろそろ外出したかった。
一週間に三回人間の願いを叶えるというルールは無くなったため、強制的に外出しなければいけない......ということは無くなった。
外出は控えろと言われているため、天光琳と天俊熙は城の最上階にあるバルコニーに行って外の様子を眺めている。
「千秋くん元気かな......」
「さぁ......」
もう冬なのでとても寒い。
もう三十分くらい経っただろうか。
二神はそろそろ部屋に戻ることにした。
「でもアイツ、最近見ないよ?」
「...え?」
階段を降りながら天俊熙は言った。
最近千秋の姿が見えないようだ。
それに仲直りしたなら城に来てくれても良いはずだ。昔はよく遊びに来ていたのだから。
しかし鬼神が現れた日以来、千秋とはあっていない。
「まさか睿くんたちにバレていじめられてるとかないよね......」
天光琳は嫌なことを想像した。
その可能性はゼロではない。
「だといいけどなぁ。......それに千秋の父さんも見ないんだよ」
「そうだよね。もうあいたくないな......って思ってたけど、そもそも見かけないというか......」
次会ったら何されるかわからない。
もっと酷い目に合わされるかもしれない。
そう思っていたのだが、そもそも城で見かけなくなったのだ。
「宇軒様がクビにしたとか......?」
「そうかなぁ......」
天光琳はわざわざ自分のためにそんなことするか......と思った。
それに千秋は何も言っていなかった。
たまたま見かけないだけかもしれない。
「あ、光琳兄様!」
天李静と廊下ですれ違い、天李静は嬉しそうに微笑んだ。
しかし天俊熙の方は見なかった。
「言っとくけど、俺がお前の兄だからな!?」
「あはは......」
✿❀✿❀✿
「光琳。話がある」
「......あ、はい......」
夕食後、湯浴みを済ませ、天光琳と天俊熙は部屋に戻ろうとしていたら天宇軒とすれ違った。
話とはなんだろうか。
天宇軒の部屋で話すようだ。
「じゃ、俺先に部屋に戻ってるよ」
「うん」
天俊熙は待っていても仕方がないため、先に部屋に戻ることにした。
天宇軒の部屋に着くと天宇軒はいつもの椅子に座らず、そのまま天光琳の前に立った。
「光琳、最近はどうだ?」
天宇軒と天光琳の身長は離れているため、なんだか天宇軒に見下ろされている感じがし、恐ろしさが増す。
それにしても「最近どうだ」と聞かれても......。天宇軒のことだ。心配してくれている訳ではないと思うのだが。
「大人しくしています」
それしか言うことがなかった。......というか何もしていない。修行も舞も出来ていないのだから。
......もしかしたら一生無能神様でいるしかないのだろうか。
「お前はこれからどうしたいんだ?」
当然そんなこと聞かれても......難しい質問だ。
天光琳は言葉に詰まった。
(どうしたいんだろう)
自分でもよく分かっていない。
鬼神がいなくなるまで自由に動けない。しかし鬼神は天光琳がいる限り消えたりはしない。ということは一生何も出来ないのではないか。
何がしたいなんて......そんなの考えたって無駄だ。とっくに考えるのをやめている。
「特にありません」
「一生この生活は無理だろう」
「......」
天宇軒は言うまで帰らせない......と言っているかのようだ。
確かに一生何も出来ない、一生この生活は嫌だ。
自分だけではない。皆にも迷惑がかかるだろう。......そうか。皆に迷惑がかかる。
天光琳は誰かのそばにいなくてはいけない。
とても迷惑だ。これが一生続くとなると......。
天宇軒はもしかしてその事を伝えたかったのだろうか。
今も不機嫌そうな顔をしている。
......まるで天光琳がいなくなれば全て片付くのに......と思っているかのように。
「僕なんて必要ないですよね」
「何を言っている?」
思わず口に出てしまった。
天宇軒は目を細め天光琳を見た。しかし天光琳は目を逸らした。
「光琳!」
嫌われているならもう失うものは無い。
本来なら失礼なのだが、天光琳は一向に目を合わせようとしなかった。
すると天宇軒はため息を着いた。
「お前は......」
「もう何も聞きたくない」
「......光琳...?」
天光琳はそのまま振り返り部屋を出ていった。
こんな態度は初めてだ。
天宇軒はいつものように怒鳴ることなく、ただ黙って立ち尽くした。
(......俺は......)
天宇軒はだるそうに壁にもたれかかった。
そして目を閉じた。
(どうすれば......)
✿❀✿❀✿
その日の夜。
目が覚めてベッドから起き上がった。
(うーん......寝れない......)
天宇軒に反抗したからだろうか。ずっと心がモヤモヤして眠れない。
天光琳はいっその事起きて本でも読んでやろうと思った。
ベッドから降り、本棚の近くまで行った。
すると、廊下から物音が聞こえたような気がした。
(誰か起きているのかな......)
天光琳は本を取るのをやめ、扉付近まで行った。
すると、外から話し声が聞こえてきた。
「えっ......姉上と俊熙......?」
てっきり天俊熙は寝ているかと思った。
天光琳は物音を立てないようにゆっくりと天俊熙のベッドの近くまで行き、ベッドのカーテンを開けた。
すると天俊熙の姿はなかった。
やはり廊下で話しているのは天俊熙と天麗華だろう。
天光琳は戻り、扉の付近にしゃがみ込んだ。
こんな夜中になんの話をしているのだろう。そして最近よく一緒にいる。何か理由があるのかもしれない。
......が、小さな声で話しているためよく聞こえない。
天光琳はドアに耳を当てた。
......でも盗み聞きは良くない。
最近は鬼神が現れたため、あまり二神だけで話していることはないのだが、今まで天光琳がいない時に話していた。
(......まぁいいや。明日聞いてみよ......)
そう思って立ち上がった瞬間、
「光琳は......」
天麗華が自分の名前を言ったことがはっきり聞こえた。
(え......?僕の話......?)
天光琳はまたしゃがみ、再びそっと扉に耳を当てた。
「そうね......神の力が使えないのは.........だから......」
「はやくしな.....と.......なる」
大切なところがよく聞き取れない。
しかし二神は自分のことについて話していることはよく分かった。
「......通りで変わらないわけだよ......」
天俊熙は低い声でそう言った。
何が変わらないのか。
......もしかして、天光琳がいつまで経っても神の力が使えないから呆れているのか。
そんなことあるか?天俊熙はそんなこと言うのか......?
「......はやく殺さなければ......アイツさえいなければ良いんだけど......」
「えぇ......」
(え......?)
天俊熙は今なんといった。
聞き間違えだと思いたい。
「...どんどん近づいてきている。明日はもう少しそばに居るようにするわ」
「俺もそうします」
二神が最近よく一緒にいる理由がまさかの自分のことについて話していたと思うと、胸がズキっと痛む。
知らないところで話されていた。
二神はそんなことするはずない...とずっと思っていたのだが、裏切られたような感じがした。
天光琳はもう続きは聞きたくないとゆっくり立ち上がり、布団に潜った。
そしてしばらくすると扉が開く音が聞こえた。天俊熙が戻ってきたようだ。
天光琳の心臓はバクバクと大きな音でなっていた。
なぜが天俊熙と天麗華のことが"怖い"と思ってしまった。
二神まで悪口を言うのか。
信じていたのに......。
信じて......いたのに。
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