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ー光ー 第八章 佳宵星国
第百六話 ぬいぐるみ
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朝食を終えたあと、三神は佳宵星国の街を歩いた。
朝食に毒は含まれていなかったようで、二神は安心した。
......ということはおそらく星玉風は悪い神ではないのだろう。
そう思うと逆に、星玉風のことが心配になってきた。
星連杰の邪魔をしたことになる。......重い罰を受けるのではないか?
おそらく、朝食を終えたのに城に帰らないのはそれが理由なのかもしれない。
とはいえ、星玉風は昨日の夜、星連杰と星玉風が話していた内容が、天光琳に聞かれていたなんて知らない。
このことについては何も言わない方が良いだろう。
「光琳さんは好きな物、なにかありますか?」
星玉風は天光琳ばかりに話しかける。天麗華にはあまり目を合わせなかった。
「好きな物......特に......」
「そうですか......うーん......」
行くところがなく、ただ街を歩いているだけだった。
天麗華も気になる店は特に内容で二神の後ろでゆっくりと歩いている。
「あ、あそこのぬいぐるみ専門店、可愛いんですよ。光琳さんに一つプレゼントしたいのですが......」
星玉風が指を指したところを見ると、そのお店の窓からうさぎやくまなどの可愛いぬいぐるみが見えた。
「私の妹たちがこういうぬいぐるみが大好きでして、よく言ってたんです。ぬいぐるみだけではなく、ぬいぐるみの衣装やアクセサリー、小物まで売っているんですよ。よく買ってあげたのを思い出します......」
星玉風は懐かしそうに微笑みながら言った。
......しかし、その笑顔はすぐに消え、暗い顔をした。
「......でも妹は.........あ、すいません。この年齢でぬいぐるみなんていらないですよね」
今は亡き妹のことを思い出してしまい、星玉風は暗い顔をしたのだろう。
天光琳は何となく察した。
「行ってみたいです。僕もぬいぐるみ好きですよ」
天光琳が微笑みながら言うと、星玉風は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「なら良かったです」
三神はぬいぐるみ専門店にはいった。
店は小さな女神が好きそうなぬいぐるみがたくさん並んでいた。
「このぬいぐるみは......夢夢が好きそうね」
「ですね。これとかも......」
天光琳も実はこういう可愛いぬいぐるみが好きで、目を輝かせながらぬいぐるみを眺めた。
そして、天光琳はあるぬいぐるみに目が止まった。
桜が着いたリボンのシュシュを耳につけているクリーム色のクマのぬいぐるみだ。
天光琳はそのぬいぐるみを手に取り、抱き抱えた。
天光琳の顔のサイズぐらいの大きさで少し重いが、ふわふわしていて心地よい。
「可愛い~~っ」
十八歳男神というのに、小さな女神のように微笑んでいる。
......と天光琳は星玉風と目が合った。
星玉風は天光琳をずっと見ていたようだ。
(恥ずかし......)
天光琳はそう思い、ぬいぐるみを元の場所に置こうとしたら、星玉風が「待って」と言って止めた。
「莉莉(リリ)......音音(インイン)......」
「......?」
星玉風はボソッとつぶやき、下を向いた。
「......私の妹たちも......そのぬいぐるみを気に入り、色違いのものをプレゼントしました」
莉莉と音音...はおそらく妹たちのことだろう。
「そうなんですね。......玉風様......?」
星玉風の目は赤くなり涙が溢れていた。
「ごめんなさい突然......。実は...私の妹たちと光琳さん......似ているなって思っていまして......」
「......え?」
星連杰は目を擦りながら言った。
「笑った顔がそっくりなんです......。昨日初めて会った時、驚きました。それで......時々光琳さんを妹のように接しちゃいました」
星玉風の亡くなった家族は全員突然倒れて亡くなったと聞いた。
突然...ということは、亡くなったと聞いてしばらく受け入れられなかっただろう。
この様子からするととても仲が良かったはずだ。
「そのぬいぐるみ、プレゼントさせてください」
「......はい、ありがとうございます」
天光琳は微笑んだ。
妹思いの兄なのだろう。きっと良い兄だったはずだ。
星玉風は天光琳からぬいぐるみを受け取り、涙を浮かべながら微笑んだ。
「ありがとうございます」
✿❀✿❀✿
日が落ちてきて、街で夕食を済ませてきたあと、三神は城に戻ってきた。
天光琳は殺されるのではないか......という不安より、星玉風が大丈夫なのか...という不安の方が大きかった。
朝食も昼食も夕食も全て街で食べてきた。
天光琳は毒の入った料理を食べることは無かったが、計画を全て邪魔した星玉風はどうなってしまうのだろうか。
天光琳は部屋でくまのぬいぐるみを抱きしめた。
「玉風さんは......良い神なのね」
「ですね......疑っていた自分を殴りたいです」
天麗華も心配しているようだ。
湯浴みし、もう寝るだけなのだが、二神はなかなか寝付けなかった。
天光琳はくまのぬいぐるみの服を着替えさせた。
服やアクセサリーも何個かプレゼントしてくれたのだ。
星玉風は「女神扱いして申し訳ない」と何度も謝っていたのだが、天光琳はとても嬉しかった。
「明日......やっと帰れるけれど...玉風様のことが心配で......」
「そうね。......このことも父上に報告しなければ」
昨日の話のことは、既に伝えたそうだ。
先程も天麗華は今日あったことを神の力を使って天宇軒に伝えていた。
何とかならないだろうか。
そしてなぜこんなに佳宵星国の神々は暗いのだろうか。
そこにも何かあるはずだ。
一位の国とはいえ、やはりよい国では無い。
二神はずっと考えていて眠れなかった。
朝食に毒は含まれていなかったようで、二神は安心した。
......ということはおそらく星玉風は悪い神ではないのだろう。
そう思うと逆に、星玉風のことが心配になってきた。
星連杰の邪魔をしたことになる。......重い罰を受けるのではないか?
おそらく、朝食を終えたのに城に帰らないのはそれが理由なのかもしれない。
とはいえ、星玉風は昨日の夜、星連杰と星玉風が話していた内容が、天光琳に聞かれていたなんて知らない。
このことについては何も言わない方が良いだろう。
「光琳さんは好きな物、なにかありますか?」
星玉風は天光琳ばかりに話しかける。天麗華にはあまり目を合わせなかった。
「好きな物......特に......」
「そうですか......うーん......」
行くところがなく、ただ街を歩いているだけだった。
天麗華も気になる店は特に内容で二神の後ろでゆっくりと歩いている。
「あ、あそこのぬいぐるみ専門店、可愛いんですよ。光琳さんに一つプレゼントしたいのですが......」
星玉風が指を指したところを見ると、そのお店の窓からうさぎやくまなどの可愛いぬいぐるみが見えた。
「私の妹たちがこういうぬいぐるみが大好きでして、よく言ってたんです。ぬいぐるみだけではなく、ぬいぐるみの衣装やアクセサリー、小物まで売っているんですよ。よく買ってあげたのを思い出します......」
星玉風は懐かしそうに微笑みながら言った。
......しかし、その笑顔はすぐに消え、暗い顔をした。
「......でも妹は.........あ、すいません。この年齢でぬいぐるみなんていらないですよね」
今は亡き妹のことを思い出してしまい、星玉風は暗い顔をしたのだろう。
天光琳は何となく察した。
「行ってみたいです。僕もぬいぐるみ好きですよ」
天光琳が微笑みながら言うと、星玉風は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「なら良かったです」
三神はぬいぐるみ専門店にはいった。
店は小さな女神が好きそうなぬいぐるみがたくさん並んでいた。
「このぬいぐるみは......夢夢が好きそうね」
「ですね。これとかも......」
天光琳も実はこういう可愛いぬいぐるみが好きで、目を輝かせながらぬいぐるみを眺めた。
そして、天光琳はあるぬいぐるみに目が止まった。
桜が着いたリボンのシュシュを耳につけているクリーム色のクマのぬいぐるみだ。
天光琳はそのぬいぐるみを手に取り、抱き抱えた。
天光琳の顔のサイズぐらいの大きさで少し重いが、ふわふわしていて心地よい。
「可愛い~~っ」
十八歳男神というのに、小さな女神のように微笑んでいる。
......と天光琳は星玉風と目が合った。
星玉風は天光琳をずっと見ていたようだ。
(恥ずかし......)
天光琳はそう思い、ぬいぐるみを元の場所に置こうとしたら、星玉風が「待って」と言って止めた。
「莉莉(リリ)......音音(インイン)......」
「......?」
星玉風はボソッとつぶやき、下を向いた。
「......私の妹たちも......そのぬいぐるみを気に入り、色違いのものをプレゼントしました」
莉莉と音音...はおそらく妹たちのことだろう。
「そうなんですね。......玉風様......?」
星玉風の目は赤くなり涙が溢れていた。
「ごめんなさい突然......。実は...私の妹たちと光琳さん......似ているなって思っていまして......」
「......え?」
星連杰は目を擦りながら言った。
「笑った顔がそっくりなんです......。昨日初めて会った時、驚きました。それで......時々光琳さんを妹のように接しちゃいました」
星玉風の亡くなった家族は全員突然倒れて亡くなったと聞いた。
突然...ということは、亡くなったと聞いてしばらく受け入れられなかっただろう。
この様子からするととても仲が良かったはずだ。
「そのぬいぐるみ、プレゼントさせてください」
「......はい、ありがとうございます」
天光琳は微笑んだ。
妹思いの兄なのだろう。きっと良い兄だったはずだ。
星玉風は天光琳からぬいぐるみを受け取り、涙を浮かべながら微笑んだ。
「ありがとうございます」
✿❀✿❀✿
日が落ちてきて、街で夕食を済ませてきたあと、三神は城に戻ってきた。
天光琳は殺されるのではないか......という不安より、星玉風が大丈夫なのか...という不安の方が大きかった。
朝食も昼食も夕食も全て街で食べてきた。
天光琳は毒の入った料理を食べることは無かったが、計画を全て邪魔した星玉風はどうなってしまうのだろうか。
天光琳は部屋でくまのぬいぐるみを抱きしめた。
「玉風さんは......良い神なのね」
「ですね......疑っていた自分を殴りたいです」
天麗華も心配しているようだ。
湯浴みし、もう寝るだけなのだが、二神はなかなか寝付けなかった。
天光琳はくまのぬいぐるみの服を着替えさせた。
服やアクセサリーも何個かプレゼントしてくれたのだ。
星玉風は「女神扱いして申し訳ない」と何度も謝っていたのだが、天光琳はとても嬉しかった。
「明日......やっと帰れるけれど...玉風様のことが心配で......」
「そうね。......このことも父上に報告しなければ」
昨日の話のことは、既に伝えたそうだ。
先程も天麗華は今日あったことを神の力を使って天宇軒に伝えていた。
何とかならないだろうか。
そしてなぜこんなに佳宵星国の神々は暗いのだろうか。
そこにも何かあるはずだ。
一位の国とはいえ、やはりよい国では無い。
二神はずっと考えていて眠れなかった。
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