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ー光ー 第六章 燦爛鳳条国

第九十話 別れ

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 荷物を持ち部屋を出ると、天麗華がいた。


「姉上...!すいません、待たせちゃいましたよね......」

「うんん、大丈夫よ。......そういえば庵くんに挨拶してないなって思って」

「なら良かったです。姉上と合流したあと、庵くんに挨拶しに行こうと思っていたところなので」


 天光琳がそう言うと、天麗華は微笑み、隣の京極庵の部屋の扉をノックした。


「はい」


 返事が聞こえ、天麗華はゆっくりと扉を開けた。


「あ、光琳たちか。どうした?」


 京極庵は目だけを二神に向け言った。
 二神は京極庵の目が疲れないように、目の前まで歩いていった。


「僕たち、今日、天国へ帰るんだ」

「そう...か」


 京極庵は少し寂しそうに言った。
 天光琳は毎日京極庵の部屋へ言って話をしていた。
 京極伽耶斗の代わりになれば......と思っていたのだ。

 いつもそばにいてくれた兄、京極伽耶斗はもうどこにもいない。
 天光琳たちが帰ってしまえば、京極庵は毎日一神、寂しく寝たきり生活を送るだろう。

 ちなみに京極の親は毎日来てくれる。
 しかし、小さい頃から嫌われていると思いこみ、冷たい態度をとっていたため、京極伽耶斗や天光琳のように気軽に話せない。


「またいつか、遊びに来るね...」

「あぁ。次は俊熙も一緒にな。あんまり話せなかったから」

「うん」


 二神は微笑んだ。
 すると、天麗華は京極庵のそばまで行き、動かなくなった右手を両手で持った。


「庵くん。光琳を守ってくれてありがとう。感謝しているわ」


 京極庵は視線を逸らした。耳が真っ赤に染っていた。
 照れているのだ。


「俺、礼を言われるの、慣れてないんだよな」

「そうなの?」


 天麗華と天光琳は照れている京極庵を見て微笑んだ。


「あ、そうだ。麗華さん。伽耶兄のこと、忘れないでくださいね。伽耶兄、麗華さん以外好きになったことないんですから」

「......!!......そうなのね。...ふふ。もちろんよ」


 天麗華は嬉しそうに笑った。

 初恋で最後の恋となってしまったが、京極伽耶斗は神心が消えるまで一生天麗華を愛し続けるだろう。



 ✿❀✿❀✿



 京極庵と別れ、二神は桜雲天国へ戻る結界の上に立った。
 鳳条眞秀と側近の清之介が見送りをしてくれている。


「「お世話になりました」」

「いえいえ。こちらこそ国を守ってくれてありがとうございました。おかげ様で平和ですよ。皆安心して、幸せそうにしています」


 色々なことがあったが、あの時燦爛鳳条国に行くことを拒否していたらどうなっていたのだろう。

 鬼神は倒せていなかったし、燦爛鳳条国は滅んでいたかもしれない。

 しかしもう少し強ければ......と天光琳は思った。
 助けられなかった仲間。もしもう少し強ければ助けられたかもしれない。
 悔しい気持ちだけが残っている。


「準備はいい?」

「...あ、はい...」


 天光琳がそう言うと、天麗華は桜雲天国の紋を描き、二神は光に包まれた。



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