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ー光ー 第五章 帰国

第七十三話 誕生日の朝

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 桜雲天国に帰ってきてから二週間後、今日は天俊熙の誕生日だ。
 日にちは十一月三日。

 誕生日は誕生日パーティーをする訳ではなく、個人でお祝いを言ったり、プレゼントを渡したりする。また、夕食はケーキと、誕生日の神の好きな食べ物になるぐらいだ。


「おめでとう!!」

「うわっ!」


 朝、起きてベッドから降りると、天光琳が走ってきて、クラッカーを鳴らしながら大きな声で言ってきた。
 寝起きの天俊熙はいつも以上に驚いてしまった。
 クラッカーの紙吹雪がヒラヒラと部屋中にまい、天俊熙の髪の毛の上にも落ちた。


「あ......ありがとう......びっくりした......」

「ごめんごめん」


 天光琳は苦笑いしながら、クラッカーのゴミを手で拾い集めた。
 神の力を使えれば、こんなの一瞬で終わるのだが、神の力を使えない天光琳は全て手で拾うしかない。

 集め終わり、ゴミ箱に捨てると、天光琳はクルッと周りテーブル上に置いてあるラッピングをされた袋を両手で持った。


「はい!」


 ありがとう、と言って天俊熙はプレゼントを受け取った。


 (ん?)


 プレゼントは扇子のはずなのに、結構重い。
 開けていいよ、と言われ、開けてみると

 玲瓏美国で選んだ扇子と......綺麗なティーカップが入っていた。


「めっちゃ綺麗じゃん、これ。気に入った!」


 透明なのだが、持ち手のところは金色で龍の飾りが着いている。
 そしてそこの方には蓮の飾りが付いていてとても綺麗だ。


「......でも、いつの間に買ってたの?」

「一昨日、王指導会が終わったあと、姉上と買いに行ったんだぁ」

「あ、その時か!」


 天光琳は先週から五日間、王指導会という、王になるための指導を受けていた。
 それだけではなく、王の仕事ややらなければいけないこと、国の記録などの監理方法など、様々なことを天宇軒や各国の王から教わった。

 天宇軒も昔、参加している。
 王になるものは必ず王指導会に参加しなければいけない。

 王指導会は五年に一度開かれ、各国の王子数名が呼ばれる。
 一度参加すればもう参加しなくても良い。

 そして王指導会は毎回決められた国で行われる。

 今回は偶然にも桜雲天国で開かれ、天光琳は他国へ移動しなくても済んだ。
 他国へ行けるのは良いことなのが、旅行などではないため、王指導会が終わるといちいち自国へ帰らなければいけない。それがとても面倒なのだ。

 天光琳は王指導会があるため、天俊熙とは別行動だった。王指導会の時は他国の神や天宇軒がいるため、一神でいることはなかった。そして王指導会が終わると、天麗華が来てくれて、夜、自分の部屋に戻るまでは天麗華が一緒に行動してくれた。
  
 一昨日は早く終わり、天麗華と一緒に市場へ行った。
 その時に天俊熙のプレゼント用のティーカップを買ったのだ。
 天麗華もその時に天俊熙の誕生日プレゼントを買っていた。あとで渡しに来るだろう。


「王指導会、どうだった?」


 王指導会は昨日で終わりだった。
 天俊熙が聞くと、天光琳はげっそりした顔で言った。


「大変だったよ、覚えること多いし、みんな怖いし、長いし、疲れるし!!僕王になりたくない......なんで僕なんだよ......。浩然様で良いじゃん......」

「お...おぉ.........。お疲れ様......」

 将来王になる者がそんなこと言っていいのか分からないが、大変だったことはよく伝わってくる。
 天光琳の言う通り、天浩然でも良いのだが......神王星連杰が決めたことなので変えられない。王の次は王子。王子の次は王子の息子......と、何故か王の兄弟は王になれないのだ。


「実習の時、皆の視線が怖くてさ......。各国の王子や国王が来ていたんだけど、僕の番になると、みーんな目付きが変わるの。各国の王子さんはみんな凄いのに、僕なんて神の力使えないから、何も出来なかった。しかもみんな黙ってじっと冷たい目で見てきてさ......いつも見たいに笑われる方がずーーっと楽だよ」


 天光琳はソファの上で両ひざを抱えて座り、顔を埋めた。
 とても疲れている様子だ。
 天俊熙は玲瓏美国で買った簪をつけながら聞いた。


「宇軒様は助けてくれなかったの?」

「当たり前だよ。助けたらダサいし......王様になったら誰も助けてくれないんだから、助けるわけないじゃん......」


 天光琳はため息をついた。


「僕、メンタル弱いんだよね。こういうの、本当に嫌だ」

「うーん、でも、お前は結構強いと思うよ」


 天俊熙がそう言うと、天光琳は顔を上げ、そうかな...と言った。


「周りから笑われても、バカにされても、努力し続けるじゃん。俺だったら笑われるのが嫌だから、部屋から出てこなくなるよ」


 天俊熙がそう言うと、天光琳はクスッと笑った。


「俊熙は結構メンタル弱いもんね、すぐに引きこもっちゃいそう」


 天光琳はそう言うと、立ち上がって背伸びをした。


「ごめんね、誕生日の朝なのに愚痴から始まっちゃって」

「いーよ、別に。俺が聞いたんだし」


 天光琳は気分を切りかえて、いつもの笑顔に戻った。


「あ、簪つけてる!」

「うん。扇子と合うからさ」


 天俊熙が簪を付けていることに気づき、天光琳も玲瓏美国で買った簪を付けようと、簪をしまった引き出しを開けた。

 どれにしようか悩み、一番お気に入りの鬼灯の簪にした。


 もうすぐ朝食の時間だ。
 天俊熙は着替えて、二神は食事部屋に向かった。
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