鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第四章 玲瓏美国

第六十九話 王

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 天光琳は物音がして目が覚めた。
 ベットから体を起こすと、カーテン越しから、天麗華らしき影が見える。


『一度天国へ戻ってほしい』


(ん??)


 天浩然の声が聞こえた。
 天光琳は聞き間違えではないかと疑った。


「分かりました。今すぐお祖父様に事情を伝えてきますね」

『美王様には既に万姫様が伝えている。それに、緊急事態ではないから、急いで戻ってこなくても大丈夫だ』

「姉上...?」


 天光琳はベッドから降り、カーテンをペラっとめくって、天麗華の方を見た。
 天麗華は既に着替えていて、ソファに座っていた。

 そして手から神の力で光を出している。
 その光には、天浩然の姿が映し出されていた。


『光琳、おはよう』

「おはよう」

「あ、おはようございます」


 天光琳は天麗華の近くまで行き、ぺこりと小さくお辞儀をしながら言った。


「どうしたのですか......?」


 天光琳は恐る恐る聞いてみた。


「父上が昨日の夜突然倒れてしまったみたいなの。まだ目を覚ましていなくて......だから今日、天国へ帰ることになったの」


「えっ?!」

「宇軒様が!?」


 天光琳が驚いた瞬間、後ろから天俊熙の声が聞こえた。


『そうなんだ。俊熙、おはよう』

「おはようございます...」


 天俊熙は長い髪の毛を一つに縛りながら言った。

 王が倒れたとは大問題だ。


「原因はなんですか?」

『それがまだ分かっていないんだ......』


 昨日の夕食の後、急に倒れたそうだ。
 高熱が出ている訳でもない。食事に毒を盛られたのだろうか。


「今、国峰先生が診てくれている。目覚めるとよいのだが......」


 もし、このまま目を覚まさなかったら、天光琳が王になる。
 天光琳は心の中で、目覚めて欲しいと強く祈った。



 天俊熙と天光琳も着替えた。
 現在午前五時三十分。まだ美梓豪たちは寝ているだろう。
 そのため、三神は部屋で帰る支度をすることになった。

 まだまだ玲瓏美国にいたかったのだが仕方がない。玲瓏美国には何時でも来れる。


「父上大丈夫かな......」

「心配だな」

「まだ目覚めていない......無事だと良いのだけれど」 


 三神は心配でたまらなかった。


「そういえば、最近、父上...いつも疲れてそうな顔をしていました」

「そう......だっけ?」


 二神は気づいてないようで、天光琳は気のせいかな...と思った。
 目元にはクマがあり、寝不足だったのだろうか。
 また、ため息の回数も増え、食事もいつもより量が少なかったような気がした。

 天光琳はもしかしたら疲労で倒れてしまったのだろうか......と考えたが、二神が気づいていないと言うなら違うかもしれない...と考え直した。



 七時半になり、三神は部屋を出た。

 朝食の時間なので、昨日夕食を食べた食事部屋へ向かう。

 そして食事部屋の扉を開けると、既に皆揃っていて、美梓豪が立ち上がった。


「おはよう。万姫から聞いたが、宇軒が倒れてしまったそうだな......とても心配だ」

「目覚めると良いけれど...」


 美ルーナは心配そうにそういった。
 美梓豪だけではなく、美家全員に伝わっているようだ。皆心配した様子だ。
 天麗華は皆知っていると思うが、天浩然から聞いたことを丁寧に話した。
 そして、今日桜雲天国に帰ることも伝えてくれた。


「お姉様たち帰っちゃうの?」

「えぇ。麗華様たちのお父さんが倒れてしまったのよ......これは大変なことなの」


 美夢華はムッと口を尖らせた。
 まだまだ遊びたかったのだろう。
 幼い美夢華にとって王が倒れると言うことの重大さが、分からないのだろう。
 特に桜雲天国の場合、次王になるのは天光琳なのだ。

 現在、神の力を使えない神が王になる...というのは神界史上初だ。
 そもそも、神の力が使えない神が王になったら国が終わるのではないか...と言われている。
 これは桜雲天国の危機だ。


「そうなんだね。またいつでも遊びに来てね」

「次来た時は、天国の舞教えて欲しいです」

「次はいじらないでくださいね!」


 美朝阳に続き、美雪蘭と美雪蘭も言った。

 三神は朝食を食べたあと、残りの準備をした。
 そして、荷物を持ち、美国の皆に挨拶をし、桜雲天国へ戻るガラス張りの部屋へ言った。
 大人数入れる訳では無いため、美梓豪だけがお見送りしてくれている。


「宇軒が目覚めたら教えて欲しい。無事を祈るよ」

「「「はい」」」


 天光琳も今心配でたまらなかった。

 天麗華が来た時のように、神の力を使い、今度は桜雲天国の紋を描いた。

 描き終わると、今度は金色にひかり、綺麗な光が三神を包み込んだ。

 三神は美梓豪の姿が見えなくなるまで手を振り、辺りは眩しくなった。




 ✿❀✿❀✿


 目を開けると、玲瓏美国へ行ったときの部屋にいた。
 三神揃っていることを確認したあと、三神は走って塔をでた。
 天浩然は天宇軒は自分の部屋で眠っていると言っていた。
 そのため、天宇軒の部屋に向かえば良いだろう。


「あっ、お待ちください!」


 廊下の角を曲がったら、何者かに呼ばれたため、天麗華たちは振り返った。

 そこに立っていたのは天宇軒の側近の波浪だった。


「おかえりなさいませ。安心してください。先程、宇軒様はお目覚めになりました」

「本当ですか!?」


 三神は安心した。
 天光琳の心はスっと軽くなった。

 先程、天宇軒が目覚め、波浪は天麗華に神の力を使って連絡する予定だった。
 しかし、天麗華には繋がらず移動中なのではないかと思い、塔へ向かっている途中だったのだ。


「宇軒様は今、宇軒様の部屋にいらっしゃいます。来てください」


 三神は波浪と一緒に天宇軒の部屋へ向かった。



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