鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
上 下
58 / 184
ー光ー 第四章 玲瓏美国

第五十七話 到着

しおりを挟む
 しばらくして光がおさまり、三神は目を開けた。
 初めて見る景色......ガラス張りの建物のため、外がよく見える。 
 ここは玲瓏美国だ。


「......わぁ!!」


 天光琳はガラスにへばりつき、目を輝かせながら外の景色を見た。
 天俊熙も走って隣に来た。


「おぉー!凄い!」


 天俊熙も驚いた。
 キラキラと輝く美しい髪飾りをつけ、美しい衣装を着た神々に、美しい街。

 ...だが、何か違和感がある。


「あ......俊熙、木が緑色だよ!」

「本当だ!桜じゃない!」


 年中桜が咲いている桜雲天国では、緑色の木が見られない。
 そのため違和感を感じたのだ。

 人間の願いを叶えるときに、人間界を映す鏡で、葉が緑色の木を見たことはあるが、この目で直接見たのは初めてだった。


「ふふふ、二神とも、もうすぐお祖父様が来るわよ」


 外を眺めて楽しそうにはしゃいでいる二神は姿勢を正した。
 足音が聞こえてくる。

 そして扉が開いた。


「やぁ、花見会ぶりだな!琳くん、麗ちゃん、俊くん!よく来たな!」


 相変わらず元気な美梓豪が両手を広げて三神を抱きしめた。


「お...お祖父様...」

「あはは、梓豪様、痛いです」

「...く...苦しい......」

「あぁすまない!」


 真ん中にいる天光琳は潰れて息が出来なかった。

 美梓豪は三神を離し、天光琳が無事なのを確認すると、また笑顔になった。


「一昨日、宇軒くんから連絡が来てから、ずっと待っていたんだぞ!...さぁ
 、こっちへ」


 美梓豪がそう言うと、護衛神らしき三神が、天光琳たちの荷物と天光琳の剣を変わりに持ってくれた。
 そしてガラス張りの陣の部屋から出た。

 どうやらここも城につながってきる塔のようだ。
 しかし桜雲天国の城とは違い、八階建てで、八階には渡り廊下があるため、いちいち一階まで降りる必要は無い。

 渡り廊下を通り終わると、荷物を持ってくれている護衛神は天光琳たちとは別の方向に曲がった。
 どうやら部屋に置いてきてくれるそうだ。

 天光琳と天俊熙は辺りをキョロキョロと見ながら美梓豪について行った。

 玲瓏美国の城はガラスの面積が多い。
 城の中から美しい街が見えるようにするための工夫だろうか。

 街は賑わっていて、楽しそうだ。
 神々の髪飾りや建物の飾りがキラキラしているのが、城にいても分かる。

 また建物はオシャレなものばかりだ。
 少し不思議なデザインだが、おかしくない。
 そして普通の神の家も大きく、一件一件が豪邸のようだ。


「さすが二位の国だよな」

「ねー、凄すぎる!」


 天俊熙と天光琳は小さい声で話した。

 玲瓏美国は国の評価が高く、二位の国なのだ。

 ちなみに桜雲天国は五位。
 そこまで差はないのだが、やはり二位の玲瓏美国とは全然違うように感じる。


「うわぁー!俊熙、上見て見て、大きなシャンデリアだ!!」


 天光琳は上にあるシャンデリアを指さして言った。


「でか...すごいなぁー!」


 桜雲天国の城にもシャンデリアはあるのだが、こんなに大きくて美しいシャンデリアは見たことがない。


「おぉー!こっちには大きな水槽がある!なんだろうこのお魚さん...」

「なんだろう...見たことないな...」


「ふふ」


 楽しそうにはしゃいでいる二神を見て天麗華が微笑むと、美梓豪も続けて笑った。

 歩くこと役二分。
 四神は大きな扉の前で立ち止まった。
 すると扉の両隣に立っていた護衛神らしきものが扉を開けた。

 すると......。


「わぁあ~!!」「おぉ~!」


 二神は目を大きく見開いた。
 扉が開いた途端、良い香りが鼻の中に広がった。
 それは料理の匂いだった。

 そしてテーブルの両端に美家の神々が座っていた。
 三神は軽く挨拶をした。


「お腹がすいただろう?そろそろ昼食の時間だし、まずは自己紹介も兼ねて、ご飯を食べながら話そう!」


 豚の丸焼きにフライドポテト、ハンバーガーにピザ、これはチーズフォンデュだろうか。ジャンクな食べ物が多いと思ったらデザートはマカロンにケーキ、カップケーキなど可愛らしいものばかりだ。

 大きなテーブルに沢山の料理が並べてある。
 桜雲天国は自分の量の料理を、小皿で何枚も自分の前に置かれる感じだが、玲瓏美国では大皿でみんなで取り分けて食べることになっているようだ。


「これは...ついつい食べすぎちゃうな」

「どれも美味しそう...太っちゃうね」

「二神とも気をつけてね、どれも美味しいわよ」


 天麗華がそう言ったことにより、天光琳は今すぐに食べたい...と思った。


「さぁさぁ、席に座って!」


 待ちきれない!という顔をしていたのに気づき、美梓豪がそう言うと、護衛神らしき数名の神が三神を席へ案内してくれた。

 美梓豪の右隣には王妃らしき女神が座り、二神の前に天麗華、天光琳、天俊熙の順でが座った。

 王妃の隣には三十代の男神が座り、その隣には同じく三十代の女神が座っている。そしてその隣にはフリルの着いた可愛らしい衣装を着た四歳ぐらいの女神が座っている。

 戻るが、天俊熙の隣には十十歳ぐらいの男神と、大人しそうな女神が座っている。

 誰だか全く分からない天光琳と天俊熙は座る前になんとなく会釈をしてから座った。


「さて、頂くとしよう!」


 そう言うと、いただきまーす、と言って天光琳はハンバーガーを一つとって、両手で持ちながら食べた。

 すると中に入っているハンバーグから肉汁がジュワッと零れ、とても美味しかった。


「美味しい!!」

「じゃあ俺も!」


 天光琳が美味しそうに食べていたため、天俊熙も一口かじった。


「うま~!なぁ、このチキンも美味しいぞ!」

「ほんと?......ん~っ、美味しい!でも少し辛い!」


 天俊熙がおすすめしてくれたチキンは美味しいがピリ辛だった。

 天光琳は辛いのが苦手なのだが美味しく食べられるレベルだった。


「はっはっは、良かった良かった!」


 美梓豪は幸せそうに笑った。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

【サクッと読める】2ch名作スレまとめ

_
ファンタジー
2chで投稿された名作スレをまとめています。 物語に影響しない程度で一部変更する場合がございます。 ご了承ください。 ※不定期更新

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...