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ー光ー 第四章 玲瓏美国

第五十六話 玲瓏美国へ

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 ついに玲瓏美国へ行く日がきた。


 昨日は朝食の後、準備をした。


『あとは......扇ね』

『扇なんているんですか?』


 一応ね...と天麗華は言った。
 時々、舞を見せる時があるそうだ。

 確かに他国へ行くならその国の特技を見せる可能性は高い。

 この前の花見会の時のように、美梓豪は舞を見たがるかもしれない。


『あと、お前は剣も持っていったら?』

『あー、忘れるところだった!』


 他国とはいえ、悪神のことは分からない。
 襲われても身を守れるように持っていった方が良いだろう。


 準備が終わった後、天麗華はまた人間の願いを叶えに行き、天光琳と天俊熙は修行と稽古をするため、天桜山に行った。

 怪我が治ったばかりのため、いつも通りガッツリ修行と稽古をするのではなく、小さい頃と同じような感じでやった。
 ...と言っても、結構キツイのだが...天光琳にとっては軽く感じるそうだ。

 そして草沐阳に明日から玲瓏美国に行くことを伝え、城に帰った後、夕食を食べていつもより早く寝た。



 そして今に至る。

 他国には城に繋がっている中央入口と真反対の方向にある塔に行き、その塔の最上階にある陣が描かれている部屋から行ける。

 最上階は八階なのだが、エレベーターのような動く床があるため、重い荷物を持っていても楽に行くことが出来る。

 そして陣の上に同じ行先の神々が立ち、その中の一神が神の力を使って行きたい国の紋を描く。

 そうすることで簡単に行くことができるのだ。

 ちなみに紋は、桜雲天国は桜が風になびいているような桜雲紋、玲瓏美国は月が輝いているような玲瓏紋だ。

 天家以外の神も他国へ行くことができるのだが、城に繋がっているこの塔からしか行くことができないため、やはり天宇軒の許可が必要なのだ。

 しかし許可は簡単に取れる。
 旅行がしたい......この国に行ってみたい......など、軽い理由でも大丈夫なのだ。


「父上によろしくね」

「はい!」「分かったわ」


 天万姫は二神の頭を撫で微笑んだ。
 天家の神は皆お見送りをしてくれている。


「俊熙、気をつけて」


 天語汐がそう言うと、天俊熙は頷いた。
 後ろでは羨ましそうに天李偉と天李静が見ている。

 天光琳はふと思った。

 何故天宇軒は天李偉も行かせなかったのだろうか。
 天李静は年齢が足りていないからなのだが、天李偉は行けるはずだ。

 それに美梓豪とよく話すため、嫌われていて行かせることができない...とかそう言う理由ではなさそうなのだが...。

 だが、今聞いたって何も変わらない。
 何か嫌な理由があるかもしれないし、今は聞かない方が良いだろう。


「何度も言うが、悪神のことは分からない。何かあったらすぐに報告するように。また、悪神が美国に現れたら、すぐに天国へ帰還すること」


 天宇軒は三神の前に立ちそう言うと三神は頷いた。

 何故天国に現れたらすぐに帰還しろ...と言ったかと言うと、悪神は天光琳が狙いだ。

 玲瓏美国に現れた...という事は、天光琳に着いてきた...天光琳が連れてきた...ということになってしまう。

 そして、玲瓏美国に何かあったら.....天光琳は何も悪くないのだが、天光琳が悪いことになってしまう。

 また、桜雲天国と玲瓏美国の仲が悪くなってしまうかもしれない......そういうことを考えると、すぐに帰還した方が良いだろう。

 天宇軒がそこまで説明しなくても、三神は何となく理解している。


「では...行きましょう」

「「はい!」」


 天麗華が紋を描いてくれるそうだ。

 三神は陣の上に立った。


「楽しんできてね」 

「......」


 天万姫は笑顔で手を振ってくれるが、天宇軒はいつも通り黙ったままだ。


「無事に帰ってきてね」

「行ってらっしゃい」

「気をつけるのよー!」

「お土産...待ってる...」


 天語汐、天浩然、天李偉、天李静の順でそういい、天俊熙も笑顔で手を振った。


「...たく、アイツ、俺たちの心配じゃなくてお土産を期待してるぞ」

「あはは、いいじゃん」


 天俊熙は小さくそういうと、天光琳は笑った。


「光琳、俊熙、準備は良い?」

「はーい!」「大丈夫です!」


 天麗華は二神に確認したあと、右手から光を出し、紋を描き始めた。


(楽しみ...初めての他国......)


 天光琳はついに他国に行けると楽しみで鼓動の音が大きくなった。

 天麗華は素早く玲瓏紋を描き終えると、地面の陣はピンク色に輝いた。

 そして神の力で作られた桜の形の光が舞、三神を包み込む。

 天光琳と天俊熙は凄い...と辺りを見渡した。


「行ってきます」


 天麗華がそう言うと、二神も皆の方に視線を戻し、姿勢を正した。


「「行ってきます!」」


 すると、突然辺りが眩しくなり、三神は目を閉じた。
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