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ー光ー 第三章 旅の後

第五十五話 ついに

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「あ...父上...」

「宇軒様」


 城の裏口から入り、扉を閉めて振り返ると、目の前で天宇軒と側近の波浪が歩いていた。

 天宇軒は歩くのをやめ、二神の方に顔を向けた。
 波浪も一歩下がって天宇軒の後ろに立った。


「ごめんなさい...今日も失敗してしまいました......」


 天光琳がそう言うと、天宇軒は小さくため息をついた。
 天光琳が言わなくても、結果は知っていただろう。

 天光琳は下を向いたまま、天宇軒と顔を合わせることが出来なかった。


「光琳。今日も外出禁止だ。良いな?」

「あ......はい...」


 またか...と思った。
 天俊熙は天光琳を助けようと何か言おうと思ったが、余計なことをいって、天宇軒を怒らせてしまったら大変だ。
 そのため、黙って聞くことしか出来なかった。


「では」

 天宇軒はそう言って、早歩きでその場を立ち去った。
 波浪も二神に礼をしてから、天宇軒について行った。


「......」


 天俊熙は下を向いたままの天光琳の肩に手を置いた。


「大丈夫だ。今日だけだよ」

「修行しに行きたかったんだけど......」

「今日は休めよ。宇軒様もそういう意味で言ったんじゃないか?」

「...そうかな......」


 絶対違う...と思ってしまう。
 あの表情は呆れているように感じた。


(褒められたことなんて...一度もない)


 自分は無能神様だ...と思った。
 早く...神の力を使えるようにならなければ......。


 ✿❀✿❀✿


 その日の夜。
 夕食後、天光琳、天麗華、天俊熙は天宇軒に呼び止められた。


「光琳の怪我は良くなったようだし、明後日、玲瓏美国に行ってもらう」

「...!」


 天光琳は嬉しくて飛び跳ねそうになったが、父の前だ。飛び跳ねそうなぐらい嬉しい気持ちを抑えて、そのまま話を聞いた。


「明後日から五日間。詳しいことは美王に聞くと良い」

 美王とは美梓豪の事だ。
 天光琳と天俊熙は顔を合わせてニコッと微笑んだ。その様子を見て、天麗華も嬉しそうに微笑む。


「持ち物は麗華が知っているはずだ」

「えぇ」


 天麗華は何度も他国へ行ったことがあるため、持ち物はわかっている。
 頼りになる姉だ。


「以上だ」


 そう言うと、天宇軒は食事部屋から出た。
 相変わらず余計なことは話さない父親だ。


「やっと行ける~!」

「なっ!!楽しみだ!」

「良かったわね」


 天光琳は抑えていた気持ちを解放し、飛び跳ねながら言った。

 今日は外出出来なかったため、苦痛な一日となったが、そんなことは忘れて喜んだ。


「いいなー、私も行きたかったわー」

「兄上ずるい...」


 食事部屋に残っていた天李偉、天李静は羨ましそうに言った。


「お土産買ってくるからな」
  

 天俊熙は天李静の頭を撫でながら言うと、天李偉は嫌そうに手を払い除けた。


「子供じゃない...」


 天麗華は天光琳みたい...と微笑んだ。


 ✿❀✿❀✿


 湯浴みが終わり、部屋に戻ってきた天光琳と天俊熙は早速、準備をすることにした。


「持ち物は姉上に詳しく聞いていないから......とりあえず服とか、分かるものだけ準備しようかな」

「そうだな」


 服を準備する...と言ってもいつも同じような服を着ているため、悩むことは無い。

 大きな牛革トランクに五日分の着替えと、正装を詰めた。

 あとは分からないため、明日準備することにした。


「今日はもう寝るか」

「うん、ねよねよー」


 天光琳はそう言って髪の毛を解き、自分のベッドに寝転がった。
 天俊熙も部屋の電気を消し、仕切りのカーテンを閉め、寝転がった。


「ごめんね、僕が外出禁止なんか言われちゃったから暇だったよね...」

「うんん、大丈夫。あの時俺も疲れてたから、ゆっくり休めた」


 忍びごっこで体力を使い切った天俊熙はあの時ヘトヘトだった。
 部屋に戻ったあと、ずっとソファで寝転がっていた。

 その様子を見た天光琳はてっきり暇なのかと思っていた。


「そうなの...?なら良かった...」


 天光琳は安心した。

 そして目を閉じ、眠りについた。
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