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ー光ー 第三章 旅の後
第四十六話 他国
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部屋の前に着き、天麗華はノックをした。
「父上、呼んできましたよ」
「入れ」
扉を開けると、書類に書き込みをしている天宇軒の姿が見えた。
デスクの上には書類が山ずみになっており、天光琳には何がどの書類なのか全く分からなかった。
忙しそうだ。王というものは大変だ。
天光琳は心の中で『王になりたくない...王になりたくない......』と思っていた。
三神はデスクの前に立ち右から天麗華、天光琳、天俊熙と横に並んだ。
「部屋の移動、終わったか?」
「は...はい」「はい」
書類から目を離し、羽ペンをペン立てに置き、三神の方を見た。
天光琳、天俊熙は小さくお辞儀をした。
「二神はもう十八歳だよな?」
「「はい」」
二神は声を揃えて返事をした。
(もしかして......!)
天光琳は今、天宇軒が何を言おうとしているのか何となく分かった。
最初は悪神のことだと思っていたが、十八歳だと聞かれたということは......
「そろそろ他国へ行ってもらう」
予感は当たっていた。天宇軒がそう言うと、天光琳はやっぱり!と目を輝かせた。天俊熙も同じ反応だ。
隣にいる天麗華は二神を見てふふっと微笑んだ。
「他国へ言って、他国の文化や歴史、そしてその国特有の人間の願いを叶える方法をしっかりと見て勉強をしてくるのだ」
決して遊べる訳では無いのだが、やっと他国へ行けると二神は心から喜んだ。
「悪神はまだ桜雲天国にしか現れていない。しかし、他国に現れる可能性はゼロではない。必ず三神は離れないように」
...という事は、三神とも同じ国へ行くことになるだろう。そっちの方が有難い。
一神で他国なんて僕には難しい...と天光琳は思った。
...ちなみに天麗華はたまに天李偉と一緒に行くこともあったが、ほぼ一神で行っていた。それは天麗華は話すことが好きだから一神でもやっていけたのだ。
しかし人見知りの天光琳には難しいだろう。
「行先はどこでしょうか?」
「玲瓏美国だ」
(お祖父様の国か!)
天麗華が聞き、天宇軒がそう言うと、天光琳は嬉しくなった。やっとお祖父様の国へ行ける...と。
やはり初めて他国へ行くなら、天光琳たちの知り合いがいる国へ行った方が良いだろう。
そして現在、天光琳が悪神に狙われているいう情報が全国に広がっているらしく、天光琳を呼ぶような国は少ない。悪神を連れてくる可能性があるからだ。
そんな状態でも我が孫には是非来て欲しいと思っている玲瓏美国の王美梓豪はとても良い神だ。
天俊熙は天浩然の子のため、孫では無いのだが、天俊熙も孫のように可愛がっている。
そのため、玲瓏美国に行けると聞いた途端、天俊熙も喜んだだろう。
「しかし行くのは光琳の怪我が治ってからだ」
それを聞いた途端、分かってはいたが、天光琳はしょんぼりした。
早く行きたくてたまらないのだが......怪我が治るまでいけないとは...。
「分かったか?」
「はい...」
天光琳は小さな声で言った。
「以上だ。戻って良い」
そう言うと、天宇軒はまだ書類に目を向けた。
失礼しました...と三神は声を揃えていい、部屋を出た。
「ふぅ......」
扉を閉め、天宇軒の姿が見えなくなると、天光琳はため息をついた。
「光琳、父上なんだからそんなに緊張しなくても良いじゃない...?もう少し肩の力を抜いても良いのよ?」
そう言いながらぽんぽんと天光琳の肩を軽く叩いた。
「怖いんですもの...」
顔を両手で隠しながら言う。父親だが、今まで笑ったところを見たことがなく、いつも同じような表情だ。何を考えてるのか分からず怖いのだ。
「さ、お茶が冷めちゃうし、部屋戻りましょうか」
天俊熙がそう言い、部屋に戻ることにした。
「そういえば、姉上は何回他国へ行ったことがあるのですか?」
歩きながら、天光琳は天麗華に聞いた。
「えっとー...覚えていないわ......。でももう二十回以上は行っていると思う」
「わぁ...」
今思えば、天麗華がいない日は多かった。
特に奇跡の神は他国の王から呼ばれやすいのだ。
なぜ呼ばれやすいかと言うと...それは少し汚い理由でもある。
奇跡の神が入れば、国の評価は上がりやすい。言い方が悪くなってしまうが、皆天麗華を欲しがっている。......という事はつまり、目的は天麗華を自分の国の神にする......
言わゆる自分の国の男神と天麗華を結婚させたいのだ。
他国の王は天麗華を呼び、王の息子だの親戚だの様々な男神に合わせる。そして天麗華がその国の男神のことが好きになれば......そして結婚まで行けば作戦は成功だ。
女神は必ず結婚した男神の国の神となる...と決まっている。
そのため、どの国の王も必死に天麗華を自国に呼び、自分の国のものにしようとしている。
「姉上は...嫌じゃないんですか?」
「?」
「呼ばれる理由...知っているんですよね...」
「その事ね」
天麗華は、そんな理由でよく呼ばれるという事をよく分かっている。
「嫌じゃないわ。他国へ行くの、とても楽しいんですもの。色々な料理を頂いたり、その国の神と沢山お話できたり。国によって違うから面白いのよ。みんな親切だし」
色々な国へ行き、沢山の文化や歴史を学び、沢山の神々と交流することは悪いことでは無い。そのため、天麗華は呼ばれたら喜んで行くのだ。
...通りで花見会の時、色々な国の神と楽しく話していた訳だ。
「...今まで他国の男神を好きになったことはないけれど、ふふ」
「手強いですね」
天俊熙は苦笑いした。
天光琳は天麗華が手強くて良かったと思った。
(だって...姉上がいなければ......)
年齢的にそろそろなのだが......天麗華が他国の神になってしまうと、桜雲天国の評価はガクンと下がるだろう。
天光琳が神の力を使えるようになるまで、下がり続けてしまう。
天光琳はそれが心配でたまらなかった。
「父上、呼んできましたよ」
「入れ」
扉を開けると、書類に書き込みをしている天宇軒の姿が見えた。
デスクの上には書類が山ずみになっており、天光琳には何がどの書類なのか全く分からなかった。
忙しそうだ。王というものは大変だ。
天光琳は心の中で『王になりたくない...王になりたくない......』と思っていた。
三神はデスクの前に立ち右から天麗華、天光琳、天俊熙と横に並んだ。
「部屋の移動、終わったか?」
「は...はい」「はい」
書類から目を離し、羽ペンをペン立てに置き、三神の方を見た。
天光琳、天俊熙は小さくお辞儀をした。
「二神はもう十八歳だよな?」
「「はい」」
二神は声を揃えて返事をした。
(もしかして......!)
天光琳は今、天宇軒が何を言おうとしているのか何となく分かった。
最初は悪神のことだと思っていたが、十八歳だと聞かれたということは......
「そろそろ他国へ行ってもらう」
予感は当たっていた。天宇軒がそう言うと、天光琳はやっぱり!と目を輝かせた。天俊熙も同じ反応だ。
隣にいる天麗華は二神を見てふふっと微笑んだ。
「他国へ言って、他国の文化や歴史、そしてその国特有の人間の願いを叶える方法をしっかりと見て勉強をしてくるのだ」
決して遊べる訳では無いのだが、やっと他国へ行けると二神は心から喜んだ。
「悪神はまだ桜雲天国にしか現れていない。しかし、他国に現れる可能性はゼロではない。必ず三神は離れないように」
...という事は、三神とも同じ国へ行くことになるだろう。そっちの方が有難い。
一神で他国なんて僕には難しい...と天光琳は思った。
...ちなみに天麗華はたまに天李偉と一緒に行くこともあったが、ほぼ一神で行っていた。それは天麗華は話すことが好きだから一神でもやっていけたのだ。
しかし人見知りの天光琳には難しいだろう。
「行先はどこでしょうか?」
「玲瓏美国だ」
(お祖父様の国か!)
天麗華が聞き、天宇軒がそう言うと、天光琳は嬉しくなった。やっとお祖父様の国へ行ける...と。
やはり初めて他国へ行くなら、天光琳たちの知り合いがいる国へ行った方が良いだろう。
そして現在、天光琳が悪神に狙われているいう情報が全国に広がっているらしく、天光琳を呼ぶような国は少ない。悪神を連れてくる可能性があるからだ。
そんな状態でも我が孫には是非来て欲しいと思っている玲瓏美国の王美梓豪はとても良い神だ。
天俊熙は天浩然の子のため、孫では無いのだが、天俊熙も孫のように可愛がっている。
そのため、玲瓏美国に行けると聞いた途端、天俊熙も喜んだだろう。
「しかし行くのは光琳の怪我が治ってからだ」
それを聞いた途端、分かってはいたが、天光琳はしょんぼりした。
早く行きたくてたまらないのだが......怪我が治るまでいけないとは...。
「分かったか?」
「はい...」
天光琳は小さな声で言った。
「以上だ。戻って良い」
そう言うと、天宇軒はまだ書類に目を向けた。
失礼しました...と三神は声を揃えていい、部屋を出た。
「ふぅ......」
扉を閉め、天宇軒の姿が見えなくなると、天光琳はため息をついた。
「光琳、父上なんだからそんなに緊張しなくても良いじゃない...?もう少し肩の力を抜いても良いのよ?」
そう言いながらぽんぽんと天光琳の肩を軽く叩いた。
「怖いんですもの...」
顔を両手で隠しながら言う。父親だが、今まで笑ったところを見たことがなく、いつも同じような表情だ。何を考えてるのか分からず怖いのだ。
「さ、お茶が冷めちゃうし、部屋戻りましょうか」
天俊熙がそう言い、部屋に戻ることにした。
「そういえば、姉上は何回他国へ行ったことがあるのですか?」
歩きながら、天光琳は天麗華に聞いた。
「えっとー...覚えていないわ......。でももう二十回以上は行っていると思う」
「わぁ...」
今思えば、天麗華がいない日は多かった。
特に奇跡の神は他国の王から呼ばれやすいのだ。
なぜ呼ばれやすいかと言うと...それは少し汚い理由でもある。
奇跡の神が入れば、国の評価は上がりやすい。言い方が悪くなってしまうが、皆天麗華を欲しがっている。......という事はつまり、目的は天麗華を自分の国の神にする......
言わゆる自分の国の男神と天麗華を結婚させたいのだ。
他国の王は天麗華を呼び、王の息子だの親戚だの様々な男神に合わせる。そして天麗華がその国の男神のことが好きになれば......そして結婚まで行けば作戦は成功だ。
女神は必ず結婚した男神の国の神となる...と決まっている。
そのため、どの国の王も必死に天麗華を自国に呼び、自分の国のものにしようとしている。
「姉上は...嫌じゃないんですか?」
「?」
「呼ばれる理由...知っているんですよね...」
「その事ね」
天麗華は、そんな理由でよく呼ばれるという事をよく分かっている。
「嫌じゃないわ。他国へ行くの、とても楽しいんですもの。色々な料理を頂いたり、その国の神と沢山お話できたり。国によって違うから面白いのよ。みんな親切だし」
色々な国へ行き、沢山の文化や歴史を学び、沢山の神々と交流することは悪いことでは無い。そのため、天麗華は呼ばれたら喜んで行くのだ。
...通りで花見会の時、色々な国の神と楽しく話していた訳だ。
「...今まで他国の男神を好きになったことはないけれど、ふふ」
「手強いですね」
天俊熙は苦笑いした。
天光琳は天麗華が手強くて良かったと思った。
(だって...姉上がいなければ......)
年齢的にそろそろなのだが......天麗華が他国の神になってしまうと、桜雲天国の評価はガクンと下がるだろう。
天光琳が神の力を使えるようになるまで、下がり続けてしまう。
天光琳はそれが心配でたまらなかった。
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