鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第一章 無能神様

第十六話 暇な時間

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 花見会最終日となった。

 今日は八カ国の神々が訪れる。

 花見会一日目は、美梓豪からの無茶ぶりを答え、初めて神々の前で舞を披露した。

 そのあとは、異国の王一族と一緒に話をしたり、異国のお菓子を食べたりなどをして、一日を終えた。

 花見会二日目は、一日目と同じように話したり食べたりした。

 しかし、二日目は美梓豪のように天光琳と関わりのある神がいなかったため、ものすごく退屈だった。

 話もついていけず、天光琳はただ頷くだけで何を言っているのかさっぱり分からなかった。

 三日目の今日も異国の王一族の中に、天光琳と関わりがある神はいなかった。

 ちなみに天光琳は右手の包帯を取った。他国の知らない神に何回か『どうしたの?』と聞かれ、答えるのがめんどくさかったのだ。もう聞かれることはないだろう。

 今日は、何故か女神と男神で別々の席にすることになった。そしてやっと天俊熙の隣に座れた。

 同い年のため、話の内容は合うし、小さい頃から仲が良いので気軽に話をすることができる。


「そういえば俊熙って、どんな神の力の能力を持っているの?」

「え?なんで急に?」

「うーん...なんか聞いてなかったなーって思って」


 そういえば聞いていなかった。天俊熙も自分の能力について話したことはなかった。

 理由は、天光琳は神の力を使えないため、自分から話すと自慢話のようになり気分を悪くしてしまうかもしれないからだ。


「...言っても大丈夫なのか?」

「ん?...全然平気だよ?言って言って!」


 天光琳はテーブルに肘をつき、両手に顔を乗せ、上目遣いで聞きたそうに言った。
 ただ単に気になったため、聞いて拗ねたりなどしない。


「えーっと、火や光を出す能力、風をおこす能力、防御結界をはる能力、物を浮かせて運べる能力、壊れた物を直す能力、物をこ...粉々にする能力...かな」

「へー!思ったより多かった...凄い!」


 天光琳は拍手をしながら言った。
 普通の神なら、能力は一つか二つしかない。

 しかし王一族である神は最低でも四つ以上あるのだ。......天光琳を除き...。

 神の力の能力は、神の力さえあれば、必ず人間の願いを叶える能力を持っている。

 それから沢山人間の願いを叶え、神の力を高くしていけば、能力はどんどん増えていくのだ。

 しかし、能力は選べない。そのため、外れ能力も存在する。...物を粉々にする能力とか...。使うかもしれないが、能力がそれしかないです...と言う神は少し可哀想だ。


「えっと......一、二、三...四...五...六、六つも能力を持ってるんだ!」


 天光琳は指で数えながら言った。すると天俊熙は首を振った。


「あともう一つ、最近手に入った能力があるんだけど...あー...やっぱりそれは秘密で」

「えー、なんで!?」

「...言っちゃうとちょっと......うーん......まぁ、いつか教えるよ」


 天俊熙は少し暗い顔をしながら言った。何故秘密にするのか天光琳には分からなかったが、今は言いたくないのだろう。


「分かった......いつか、ちゃーんと教えてね!」


 天光琳はその"いつか"がいつになるのか分からないが楽しみにしておこう...と思った。


 二神は暇になり、辺りを静かに見渡した。


「花見会ってさ......一日だけでよくないか...?」


 天俊熙は小さな声で天光琳に言った。
 小声なら、ほかの神に聞かれることはない。

 なぜなら、天光琳と天俊熙の周りには誰も座っていないからだ。二神はあえて周りに神がいない席を選んだのだ。


「わかる~」


 天光琳はくすくすと笑いながら言った。

 その通りである。暇で仕方がないのだ。

 天万姫や天麗華などは何度か仕事で他国に行っているため、多くの国の王一族と楽しんで話をすることが出来る。

 しかし、今はまだ他国に行ったことがない天光琳と天俊熙は、他国の神となかなか話せず、気まずいだけだ。

 これが二神が周りに誰もいない席を選んだ理由である......いや、花見会の愚痴をほかの神に聞かれないようにするためでもあるのだが......。


「俺たち王一族って結構大変だよなー...こんな所でずーっと座ってるより、屋台やいつもと違う街並みとかを見て歩きたいよ」

「うんうん!!」


 天光琳は大きく頷いた。同じことを思っていたからだ。


「こっそり抜け出して行ってみちゃう?」

「お、それいいな!」


 二神は悪そうな顔をしながら言った。...実に十八歳男子らしい発言である。

 二神は周りをキョロキョロと当たりを見渡し、誰も見ていないことを確認して、天光琳はソッと立ち上がろうとした......その時だった。


「光琳!!しゃがめ!!!」

「えっ?」


 突然、謎の物体が天光琳の顔の真横を通り過ぎて行った。
 天俊熙がいきなり大声で叫んだため、天光琳はパニックになり話を聞いていなかった。

 そのためしゃなめなかったのだが、何とか当たらずにすんだ。


「大丈夫か!?当たってないか!?」

「大丈夫だけど...何...?!」

  
 天光琳は何が何だかさっぱり分からなかった。

 天俊熙は天光琳の顔に傷がないことを確認してから、謎の物体が飛んできた方向を見た。天俊熙が険しい顔をしたため、天光琳も同じ方向を見た。

 すると、息を荒くし、目を真っ赤にした恐らく二十代ぐらいの背丈が高い他国の男神が立っていた。


「お前!?何してんだ!?」


 天俊熙は大声で男神に向かって言った。
 その男神の手には拳サイズの石があった。恐らく、先程飛んできた謎の物体の正体は石だろう。

 天光琳はこの状況をやっと理解した。この男神が自分に向かって石を投げたのだと。

 もしこの石が当たっていたら......と思うと、天光琳はゾッとした。


「何してんだしゃねぇ!俺はコイツを殺してやるんだ!!」

「「...!?」」


 二神は驚いた。
 ...神というものは『殺す』という言葉を使ってはならない。そして、神は神を殺してはいけない。それなのにこの男神は......なにか理由があるのだろう。
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