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ー光ー 第一章 無能神様
第二話 無能神様
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ある男神が、扇を持って舞う。
動く度、長い白色の髪がふわりとなびく。
そして薄群青色の瞳は長いまつ毛に隠れ、少し悲しげな表情を浮かべている。
とても美しい舞なのだが、何かが物足りない。
何故舞をしているか。それは神々が人間の願いを叶えるために舞っているのだ。
神々が暮らす神界には様々な国がある。
三百八十二ヵ国、人間界よりも遥かに多い。
どの国の神も人間の願いを叶える役目があり、方法は国によって様々だ。
人間には姿を見せず、神界で人間の祈りを聞き、演奏をしたり、踊ったりして、神の力を使い人間の願いを叶える。
そうすることによって人間の願いは叶うのだ。
『神様...今年は野菜がいっぱい取れますようにお祈りします』
ちょうどある村の三十代ぐらいの夫婦がお祈りをしている。
男神は願いを聞き、叶えるために舞った。
人間界にいる人間は神に祈れば願いを叶えてもらえるだろう。そう信じて。
しかし、そうはいかなかった。
数日後、村には大雨がおそい、村の畑は全て水に浸かってしまった。
二日後、雨はやみ、風がおさまった。
二人の夫婦は畑を見てその場で崩れ落ちた。
『大雨で...野菜が全部ダメになった!どうすれば......』
『神様にお祈りしたのに......神は何もしてくれなかった......。私たちが神に祈ったのは意味がなかったことなの......?』
「......」
神界で人間の様子を見た男神は眉間に皺を寄せた。
人間の願いを叶えられなかった......男神は失敗したのだ。
失敗は許されない。神にとって失敗したらまた別の機会に頑張れば良い......と思えるかもしれないが、人間は一度きりの人生を神々にかけている。
それなのに失敗したのだ。
しかし落ち込んでいる暇はない。
また新しい願いが、神界に届いた。
『おとうちゃんの体調がよくなりますよーに!』
ある村の六歳ぐらいの少年がお祈りをしている。
男神は気を取り直して舞い始めた。
もとは明るい性格の少年のようだが、父が重い病気にかかってしまい、笑うことが少なくなってしまったようだ。
母親は少年が生まれてすぐに病気で亡くなっている。
父親もいなくなれば少年は生きていけないだろう。
この願いは特に失敗できない。
命に関わる大切なことだ。
しかし、父親の体調は良くなることはなく、そのまま息を引き取ってしまった。
『おとうちゃん...とうちゃん......神様は...神様は存在しないの......?』
少年は父親のそばを離れようとせず、何日も何も食べずに泣いた。
しかし誰も助けに来てはくれない。
ついに少年は弱っていき、座っていられなくなってしまい、そのまま目を閉じたままの父親の隣で寝転がった。...いや、倒れてしまった。
そして少年も深い眠りについてしまった。
「どうして......」
今日は三回人間の願いを聞いたのだが、一度も成功することは無かった......。
男神は悔しそうな...そして悲しそうな表情を浮かべ、その場を去っていった。
✿❀✿❀✿
神界のある国では願いを叶えることが出来ない神がいるという......。
それが先程舞をしていた桜雲天国の天光琳という少年だ。
生まれつき神の力がない。神の力がない...という事は神として有り得ない。
そして、天光琳は桜雲天国の王の一族であり、神の力が普通の神と比べて高いはずなのだ。
そのため、天光琳は神の力がない...のではなく、力が少ないのではないか、力を発揮することが出来ていないだけなのではないか?...と、桜雲天国の神々も天光琳自身もそう思っている。
しかし、いくら修行をしても天光琳は人間の願いを叶えることができなかった。
今日もまた、桜雲天国の城で人間の願いを叶えられなかった天光琳は桜雲天国の王であり父である天宇軒に怒られていた。
「またお前は人間の願いを一つも叶えられなかったのかっ!?」
「申し訳ございません...」
部屋中に天宇軒の声が響いた。
天宇軒は厳しい性格で、笑ったり泣いたりするところを見せない。そして口数が少なく、近寄り難い雰囲気をだしている。
天光琳は手を強く握りしめた。今日こそは上手くいく...そう願っていたのだろう。
しかし上手くいかなかった。人間の願いを一つも叶えられなかった。天光琳は悔しくてたまらなかった...。
「お前はどうして......」
天宇軒は途中で言うのをやめ、ため息をついた。
すると突然、城の入口付近が騒がしくなった。二神は入口の方に目を向けた。
そこには、沢山の人間の願いを叶え、城に戻ってきた天光琳の姉である天麗華が、沢山の女神立ちに囲まれていた。
「天麗華様!今日もたくさんの人間たちの願いを叶えたのですね!!」
「すごいです!!さすが"奇跡の神"ですね!」
「憧れます!」
この国の誰もが天麗華を尊敬している。
神の力は一日に沢山使える訳では無い。しかし天麗華はこの世で一神しか存在しないと言われている"奇跡の神"であり、この世で一番神の力が多く強い。
この国の王一族である天家は普通の神より強いのだが、奇跡の神である天麗華の力はその倍以上はある。
「ふふ。ありがとう」
天麗華は嬉しそうに微笑んだ。
花のように美しい彼女だが、微笑むと可愛らしくなりより親しみやすさがでる。
そして力を自慢する性格ではなく、面倒見がよく誰に対しても優しいため、この国の人気者だ。
そんな天麗華に弟である天光琳は憧れていた。
(やっぱり姉上はすごいな...)
天光琳がそう思っていると天宇軒は眉間に皺を寄せて、呆れたように言った。
「......はぁ...。なぜ姉弟でこんなに力が違うんだ...」
「......」
天宇軒の一言に天光琳は大きなダメージを受けた。
胸がズキンと痛む。天麗華に向けていた視線を今度は自分の足元へ向けた。
姉に憧れているが、比べられるのが苦手な天光琳は今からでもこの場を離れたいと思った。
(...なぜって...そんなの僕も知りたいよ!!)
天光琳は心の中でそう叫んだ。
別にわざと失敗している訳では無い。なぜこんなに姉と差が出てしまったのだろうか。
「やめなさい」
「!」
ある女性の声が聞こえ、天光琳は顔を上げた。母、天万姫だ。
天万姫は優しく、心配性な性格のため、父、天宇軒とは大違いだ。
天万姫は天宇軒と天光琳の間までゆっくりと歩き、立ち止まった。そして天宇軒の方に顔を向けた。
「...光琳は沢山努力しているのよ。貴方も知っているでしょう?」
「......」
天宇軒は視線を横にずらし、黙り込んだ。
まるで反抗期のように。
天万姫は天光琳が毎日、努力して頑張っていることを知っている。
朝から日が暮れるまでずっと神の力を高めるための修行などをし、疲れて帰ってくる。
天光琳の手にはマメが沢山できていて、頑張っている証拠にもなる。
「光琳、気にしないで。私は貴方が頑張っていることを知っているわ」
天光琳の側まできて、天光琳の手を優しく握りながら言っう。
「今日もダメだったみたいだけれど、貴方の頑張りは無駄にはならないわ。...いつかきっと...結果に繋がる時がくるわ」
天光琳の暗い気持ちを少しでも和らげるため、微笑みながら言った。
「...いつか......」
「えぇ、いつか。だから安心しなさい」
(僕もはやく皆みたいに神の力が使えるように...やらなきゃ)
天光琳はそう思いながら天万姫の方を真剣な眼差しで見た。
すると、天万姫はニコッと微笑み、天光琳の手を強く両手で包み込んだ。
「この調子で頑張りなさい。応援してるわ」
「...!」
天万姫の優しい言葉に天光琳は嬉しくて涙が出そうになった。
天宇軒のようにキツく言われるより、天万姫のように優しく応援された方が、頑張ろう、とやる気が出てくる。
「ありがとうございます...!」
天光琳は笑顔でお礼を言った。
そして天宇軒の一言でモヤモヤしていた心は天万姫の言葉によって気持ちが楽になった。
久しぶりに母からの応援の言葉を貰ったため、天光琳は嬉しくてたまらなかった。
この後、天万姫の言葉によって気が楽になったため修行しに行こうと、天光琳は天万姫と天宇軒に会釈をし、小走りでその場から離れた。そしてそのまま城の外へ出ていった。
動く度、長い白色の髪がふわりとなびく。
そして薄群青色の瞳は長いまつ毛に隠れ、少し悲しげな表情を浮かべている。
とても美しい舞なのだが、何かが物足りない。
何故舞をしているか。それは神々が人間の願いを叶えるために舞っているのだ。
神々が暮らす神界には様々な国がある。
三百八十二ヵ国、人間界よりも遥かに多い。
どの国の神も人間の願いを叶える役目があり、方法は国によって様々だ。
人間には姿を見せず、神界で人間の祈りを聞き、演奏をしたり、踊ったりして、神の力を使い人間の願いを叶える。
そうすることによって人間の願いは叶うのだ。
『神様...今年は野菜がいっぱい取れますようにお祈りします』
ちょうどある村の三十代ぐらいの夫婦がお祈りをしている。
男神は願いを聞き、叶えるために舞った。
人間界にいる人間は神に祈れば願いを叶えてもらえるだろう。そう信じて。
しかし、そうはいかなかった。
数日後、村には大雨がおそい、村の畑は全て水に浸かってしまった。
二日後、雨はやみ、風がおさまった。
二人の夫婦は畑を見てその場で崩れ落ちた。
『大雨で...野菜が全部ダメになった!どうすれば......』
『神様にお祈りしたのに......神は何もしてくれなかった......。私たちが神に祈ったのは意味がなかったことなの......?』
「......」
神界で人間の様子を見た男神は眉間に皺を寄せた。
人間の願いを叶えられなかった......男神は失敗したのだ。
失敗は許されない。神にとって失敗したらまた別の機会に頑張れば良い......と思えるかもしれないが、人間は一度きりの人生を神々にかけている。
それなのに失敗したのだ。
しかし落ち込んでいる暇はない。
また新しい願いが、神界に届いた。
『おとうちゃんの体調がよくなりますよーに!』
ある村の六歳ぐらいの少年がお祈りをしている。
男神は気を取り直して舞い始めた。
もとは明るい性格の少年のようだが、父が重い病気にかかってしまい、笑うことが少なくなってしまったようだ。
母親は少年が生まれてすぐに病気で亡くなっている。
父親もいなくなれば少年は生きていけないだろう。
この願いは特に失敗できない。
命に関わる大切なことだ。
しかし、父親の体調は良くなることはなく、そのまま息を引き取ってしまった。
『おとうちゃん...とうちゃん......神様は...神様は存在しないの......?』
少年は父親のそばを離れようとせず、何日も何も食べずに泣いた。
しかし誰も助けに来てはくれない。
ついに少年は弱っていき、座っていられなくなってしまい、そのまま目を閉じたままの父親の隣で寝転がった。...いや、倒れてしまった。
そして少年も深い眠りについてしまった。
「どうして......」
今日は三回人間の願いを聞いたのだが、一度も成功することは無かった......。
男神は悔しそうな...そして悲しそうな表情を浮かべ、その場を去っていった。
✿❀✿❀✿
神界のある国では願いを叶えることが出来ない神がいるという......。
それが先程舞をしていた桜雲天国の天光琳という少年だ。
生まれつき神の力がない。神の力がない...という事は神として有り得ない。
そして、天光琳は桜雲天国の王の一族であり、神の力が普通の神と比べて高いはずなのだ。
そのため、天光琳は神の力がない...のではなく、力が少ないのではないか、力を発揮することが出来ていないだけなのではないか?...と、桜雲天国の神々も天光琳自身もそう思っている。
しかし、いくら修行をしても天光琳は人間の願いを叶えることができなかった。
今日もまた、桜雲天国の城で人間の願いを叶えられなかった天光琳は桜雲天国の王であり父である天宇軒に怒られていた。
「またお前は人間の願いを一つも叶えられなかったのかっ!?」
「申し訳ございません...」
部屋中に天宇軒の声が響いた。
天宇軒は厳しい性格で、笑ったり泣いたりするところを見せない。そして口数が少なく、近寄り難い雰囲気をだしている。
天光琳は手を強く握りしめた。今日こそは上手くいく...そう願っていたのだろう。
しかし上手くいかなかった。人間の願いを一つも叶えられなかった。天光琳は悔しくてたまらなかった...。
「お前はどうして......」
天宇軒は途中で言うのをやめ、ため息をついた。
すると突然、城の入口付近が騒がしくなった。二神は入口の方に目を向けた。
そこには、沢山の人間の願いを叶え、城に戻ってきた天光琳の姉である天麗華が、沢山の女神立ちに囲まれていた。
「天麗華様!今日もたくさんの人間たちの願いを叶えたのですね!!」
「すごいです!!さすが"奇跡の神"ですね!」
「憧れます!」
この国の誰もが天麗華を尊敬している。
神の力は一日に沢山使える訳では無い。しかし天麗華はこの世で一神しか存在しないと言われている"奇跡の神"であり、この世で一番神の力が多く強い。
この国の王一族である天家は普通の神より強いのだが、奇跡の神である天麗華の力はその倍以上はある。
「ふふ。ありがとう」
天麗華は嬉しそうに微笑んだ。
花のように美しい彼女だが、微笑むと可愛らしくなりより親しみやすさがでる。
そして力を自慢する性格ではなく、面倒見がよく誰に対しても優しいため、この国の人気者だ。
そんな天麗華に弟である天光琳は憧れていた。
(やっぱり姉上はすごいな...)
天光琳がそう思っていると天宇軒は眉間に皺を寄せて、呆れたように言った。
「......はぁ...。なぜ姉弟でこんなに力が違うんだ...」
「......」
天宇軒の一言に天光琳は大きなダメージを受けた。
胸がズキンと痛む。天麗華に向けていた視線を今度は自分の足元へ向けた。
姉に憧れているが、比べられるのが苦手な天光琳は今からでもこの場を離れたいと思った。
(...なぜって...そんなの僕も知りたいよ!!)
天光琳は心の中でそう叫んだ。
別にわざと失敗している訳では無い。なぜこんなに姉と差が出てしまったのだろうか。
「やめなさい」
「!」
ある女性の声が聞こえ、天光琳は顔を上げた。母、天万姫だ。
天万姫は優しく、心配性な性格のため、父、天宇軒とは大違いだ。
天万姫は天宇軒と天光琳の間までゆっくりと歩き、立ち止まった。そして天宇軒の方に顔を向けた。
「...光琳は沢山努力しているのよ。貴方も知っているでしょう?」
「......」
天宇軒は視線を横にずらし、黙り込んだ。
まるで反抗期のように。
天万姫は天光琳が毎日、努力して頑張っていることを知っている。
朝から日が暮れるまでずっと神の力を高めるための修行などをし、疲れて帰ってくる。
天光琳の手にはマメが沢山できていて、頑張っている証拠にもなる。
「光琳、気にしないで。私は貴方が頑張っていることを知っているわ」
天光琳の側まできて、天光琳の手を優しく握りながら言っう。
「今日もダメだったみたいだけれど、貴方の頑張りは無駄にはならないわ。...いつかきっと...結果に繋がる時がくるわ」
天光琳の暗い気持ちを少しでも和らげるため、微笑みながら言った。
「...いつか......」
「えぇ、いつか。だから安心しなさい」
(僕もはやく皆みたいに神の力が使えるように...やらなきゃ)
天光琳はそう思いながら天万姫の方を真剣な眼差しで見た。
すると、天万姫はニコッと微笑み、天光琳の手を強く両手で包み込んだ。
「この調子で頑張りなさい。応援してるわ」
「...!」
天万姫の優しい言葉に天光琳は嬉しくて涙が出そうになった。
天宇軒のようにキツく言われるより、天万姫のように優しく応援された方が、頑張ろう、とやる気が出てくる。
「ありがとうございます...!」
天光琳は笑顔でお礼を言った。
そして天宇軒の一言でモヤモヤしていた心は天万姫の言葉によって気持ちが楽になった。
久しぶりに母からの応援の言葉を貰ったため、天光琳は嬉しくてたまらなかった。
この後、天万姫の言葉によって気が楽になったため修行しに行こうと、天光琳は天万姫と天宇軒に会釈をし、小走りでその場から離れた。そしてそのまま城の外へ出ていった。
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