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第二章
24.お礼周りとパーンケーキ(2)
しおりを挟む─────コンコンッ。
翌日の早朝にアパートの玄関のドアがノックされた。
こんな早朝に誰だろう……?
ソフィアさんが何か持ってきてくれたのかな……?
ソフィアさんはよく私に洋服やら化粧品やらを持ってきてくれる。「お古だから使ってね!!」と言われて渡される物はどう見ても新品だし、ソフィアさんの華美な顔に合う服やコスメというよりは日本人顔の私でも使いこなせそうな物ばかりだ。今度お店を教えてもらった時にでもお礼をしなきゃだな。
「はーい!今出ますねー!!」
勢いよく玄関のドアを開ける。
「──だれかをかくにんせずに、あけてしまうなんて。すみれはすごいブヨウジンなの」
扉を開けた先にはソフィアさんはおらず、目の前には大きな麦わら帽子を深深と被りサングラスを掛けた少女が立っていた。
「お、……おう……じょ、さま???」
麦わら帽子とサングラスに隠されているようで隠せていない、フランス人形の様な顔つきにふわふわとくせのあるライトブルーの髪。何度も王宮で見た、美しい天使のような少女を間違える訳がない。
「おはようなの。すみれがおしろこないから、あそびにきたの」
「……えっ、おひとりで……ですか??」
まてまてどういうことだ。
この美しい少女は王女様で間違いない。
しかし、王女様がまさか1人で街へ来るなんて危なすぎないか? ここは王宮内じゃないし、誰かに見られるかもしれない。
「おっ王女様、状況が分かりませんがとりあえず中に──」
急いで王女様をアパートの中へ入れようとすると、何者かにドアを掴まれ止められた。
「──……んなわけねーだろ??俺様も一緒だ」
──色気溢れる声色。
香水なのだろうか、強すぎない上品で甘い香りがする。
目の前には開いたシャツからチラリと見える見事な胸板。
ふと顔を上げると、
「……る、ルー様!?」
「よう、少しばかり久しいな。スミレ」
そこには髪をかきあげるようにサングラスを掛けた、見慣れても見慣れない美しい白銀の男がいた。
……なんと王女様と、ルー様が我が家を尋ねてきたのだった。
「まさか、王女様とルー様が尋ねてくるだなんて思いもしませんでした」
「す、スミレ様!!私も居ますよ!!!」
「……あ、すみません。王女様とルー様のインパクトが強すぎて気が付きませんでした……」
まさに『ガーン』という効果音が適切であろう表情をするダヴィッドさん。
因みに彼も今回一緒に訪れた訪問者だ。
「──それで、今日はどんな御用でいらっしゃったのですか?」
訪問してきた3人をリビングの椅子やソファーに座らせる。
「おれい、しにきたの」
「商業ギルドの者や職人たちに直接的なお礼回りがまだ出来ていなくてですね、王女様の体調が万全になったのと、本日はスミレ様はお休みだという情報をマーシュ殿から伺ったもので突然ではありますが訪問させていただきました」
……なんというタイミングだろう。
丁度その事をダヴィッドさんに話したかったんだ。
「実は私も今日王宮に行こうと思っていまして、その事をダヴィッドさんに相談しようかなと思っていたんですよ」
「なんと奇遇ですね。タイミングがよかった」
「褒美とやらの報酬は国から出ているらしいが、しっかりと直接礼を言いたいよな!!アンジェ!!」
「そう。ちゃんとおれい、いいたいの。それと、終わったらまちにあるパーンケーキとやらをたべたいの。ふわふわで美味しいらしいの」
「アポイントはしっかりとしておりますのでスミレ様の準備が出来次第いきましょう!もちろん、パーンケーキのお店も予約してます!!」
パンケーキをパーンケーキと呼ぶのは何故なんだろう……。シャルム王国ではそう呼ぶのかもしれないと思い、あえて突っ込まずに見守っていると2人の後方でニンマリとした表情で1人激しく尻尾を左右に揺らしている男がいた。
……たぶんだけど、王女様とダヴィッドさんの絶妙な言い間違いはその男の仕業だと思う。
「皆さん、私の準備はもう終わってるので何時でも出れます」
突然の訪問ではあったが、幸い朝から王宮へ行くつもりだったので身支度等の準備は終わっていた。
「そうしたら、早速行きましょうか!!」
「よし、アンジェ。肩車してやる!サングラスはしっかり付けろよ?」
「……えいえい、おー。なの」
こうして、なんとも奇妙な組み合わせの4人で街へ繰り出すこととなった。
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