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42話「討伐任務(2)」
しおりを挟む「──よぉ、久しぶりだな。ケイ、こんな所に何しに来た」
集合地へ到着するとそこには私の元婚約者、ラインハルト=フォルクングが立っていた。
冷めた目付きに、彫刻の様な美しい顔立ち。腰携えた剣と長銃やすらっとした高身長が身につける鎧は戦いの為の物ではなく彼を彩る為の装飾品に見える程に彼は美しい。
『ケイ。君との婚約を破棄させてもらいたい。ロージュには俺の子供が宿っている。責任を取らなくてはいけない』
『お前は本当に地味だな。妹のロージュを見習ってみろ。美しい桃色の髪はいつも綺麗に手入れされていて、ドレスだって煌びやかで美しい。それに比べてお前は地味な茶髪に地味なドレス。本当に姉妹か』
『……にしてもルタ様。貴方にはこの地味令嬢では勿体ないんじゃないか? 他にも女がいるんじゃねぇの?』
彼の美しい姿を見るだけで蘇る、ラインハルト様から受けていたモラハラや愛の無い言葉。
……思い出すだけで心が苦しくなり惨めだった。
「……お久しぶりです。フォルクング様。本日は宜しくお願い致します」
……が、想像していたよりも嫌悪感は無く、その記憶はこの森と同様に少し懐かしく感じる程度だった。
愛こそは無かったが、私は一度、生涯を添い遂げると誓った相手。
彼からの愛を密かに求めていたが、一方的に否定され愛されず、妹を選んだ元婚約者。
そんな彼に対して動揺することなく挨拶を返すことが出来たのは、ルタ様や彼の両親、アン、マーシュ、クラリスの街の人々。彼らの優しさが私の心の傷を癒し、成長させ強くしてくれたお陰かもしれない。
……そんな事よりも、当然かのように彼の隣に立つ人物を見て私は動揺した。
この場に居てはならない人物が何故か居る。
「──お姉様、お久しぶりですわね」
「……ロージュ」
──姉の婚約者を寝取りその身に子を宿した腹違いの妹、ロージュ=ロレーヌはそこに居た。
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