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25話「火災」(3)
しおりを挟む「その手首に付けている銀色の星のチャームが付いたブレスレット……。間違いない、その子は私の妹です…でも……まさか……そんな………」
黒く焼けただれて人だと分かるのがやっとな程の重傷の子供。
なんとその子供はアンの妹だという。
「……辛うじてまだ息はあります。が、上級治癒魔法でないとこの子は……。私が力不足であるばかりに……本当に申し訳ない……」
「……うっ………そんな……………。リン……」
その場で泣き崩れるアン。
上級治癒魔法。
呪文なら知っている。
呪文だけなら治癒魔法を扱うものであれば誰でも知っている、と思う。
光魔法の適性がある者でさえも膨大な魔力を消費し、尚且つ詠唱出来たからといって成功するとは限らない。
適性があり貴族の中でも得意と言われているロレーヌ家でも年々魔力の高い者は少なくなっていき、父親や妹のロージュは初級治癒魔法しか扱うことが出来ない。
他の家から妻として迎えられた私のお母様が何十年かぶりの上級治癒魔法の使い手であったらしい。
──母の娘である私なら使えるかもしれない。
ふと頭に過ぎる考え。
しかし、私は幼い頃に高い適性があったとはいえ、初級治癒魔法しか扱ったことがない。魔法なんてあの事件以来は使っていないし今更簡単な魔法ですら発動できるか分からない。
ここで名乗り出て、上手く出来ずに変に期待させてしまっては逆に残酷な事をしてしまうかもしれない。
──しかし。
ここでアンの妹であるリンを救える可能性があるのにただ見過ごすことなんて、出来ない。
「……アン、少しリンから離れてください」
「け、ケイ様? 」
リンに縋り泣くアンに少し離れてもらうように伝える。
「……上手くいくかは分かりませんが、何もしないで見過ごすことは私にはできません。少し失礼しますね」
もし、魔法が発動しなかったら……。
そんな事を少しでも考えるだけで手が震え、呼吸が乱れそうになる。
しかし、今はそんな事を思っている時間はない。
私に出来るかもしれない事をしなければ。
リンと呼ばれたその小さな体に両手を翳して、詠唱する──。
『……ヒ、ヒーリングストッ──!!』
詠唱……した。
呪文を思い出しただけでも震えが止まらくなってしまうほどのトラウマであったが、言葉に出せた。
目を閉じてしまった為、成功……したかはまだ分からない。
恐る恐る瞼を開くと………──
「……あぁ……」
───小さな体は、黒焦げのままであった。
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