4 / 65
4話 「クラレンス家」
しおりを挟む
──後で聞いた話だが、ルタ様はクラレンス家の長男で魔法騎士として非常に有能で有名なお方だそうだ。
ルタ様は侯爵家の中では高い位というだけではなく、高い魔力を保有し優秀な人物であることやその美しい外見から幾度となく求婚をされたそうだが断り続けていたらしい。
そして彼の騎士としての仕事ぶりは血も涙もないとの事で、付けられた異名は“冷血の騎士“。
噂では彼は人の血が通っておらず、妻を娶るつもりもないのだろうと言われていたそうだ。
「とても豪華な御屋敷ですね……!」
ルタ様から婚約の申し出から2日後。
実家になんの未練もない私は早速クラレンス家で暮らすこととなった。
「お気に召していただけましたか? 挨拶が遅れましたが、本日からケイ様のお世話係をさせて頂きますアンと申します。宜しく御願いします」
「宜しく御願いします。しかし、お世話係など付けて頂かなくても私は実家では1人で出来ることは全てしていたので社交界でのドレス着用の際だけ手伝ってくれれば大丈夫ですよ……?」
「ケイ様は今までその様にしていたとルタ様から伺っておりますので、ルタ様は敢えて世話係を付けられたかと」
今まで一人で出来ることは一人でしてきたし、ドレスの着脱を手伝ってもらう以外で世話係なんて要らないのにルタ様はどういうつもりなのだろうか。
「さてケイ様。早速ですが旦那様と奥様に挨拶をして頂くとのことで、お着替えをしましょう。ドレスは既にお持ちの者を数着預からせていただいて同じサイズのものをご用意させて頂いております」
そういってアンに案内された部屋にはズラリとドレスが並んでいた。
……数日で用意したとは思えないぐらい種類があり、20着はありそうだ。そして、どれを着ていいか分からない。
思えば私はドレスは数着しかもっていなかったな。それに対してロージュは数え切れないほどのドレスを持っていたと思う。ラインハルト様の言う通り、私は身だしなみにも気を使えず地味な女だったのかもしれない。
「アン。私、どれを着たらいいかわからないの。……選んでくれる?」
「ええ勿論ですよ。ケイ様にピッタリなドレスを選び抜いて見せます!」
アンは物凄い手際の良さでドレス、それに合わせた靴とアクセサリーを選び抜いた。
「ケイ様はとてもサラサラで艶のある茶髪で瞳の色も若草のようなライトグリーンで美しいです。ドレスは瞳の色に合わせて淡いライトグリーンの物にしましょう。このドレスはスラっとしたAラインが美しいですね。それに、ドレスの裾の部分にはシルバーのラメが編み込んであって光沢感があり動いて揺れるととても美しいと思います。パンプスは裾にシルバーがあるのでシルバーにしてみましょうか。アクセサリーも同系統で揃えますね」
アンはテキパキとドレスを着付け、ヘアメイクを施してくれた。
「──さあケイ様。鏡をご覧下さい」
鏡を見ると、そこには地味な自分は居なかった。
淡いライトグリーンのドレスは控えめかと思ったが、その控えめな印象が上品さを感じさせ、アンの言うように少し動くと揺れて煌めく光沢感のあるドレスの裾がとても美しかった。派手すぎないかと少し不安になっていたシルバーのパンプスもドレスとの色合いが絶妙で足元を美しく魅せてくれていた。
ヘアメイクも見事なもので、地味と言われた私の顔から上品さを醸し出している。
「……これが私ですか?」
「何を仰っていますか。ケイ様はケイ様ですよ」
「今まで地味だ地味だと言われ続けていたので、自分が自分じゃないみたいです」
「ケイ様は地味なんかじゃないですよ。目鼻立ちも優しげですがハッキリしていますし、髪の毛もサラサラツヤツヤです。美人じゃないですか」
「そんなに褒めてもらったの初めてです」
「……今までどんなところにいらっしゃったのですか!まあいいです。旦那様奥様がお待ちですので急いでダイニングへ向かいましょう」
ルタ様は侯爵家の中では高い位というだけではなく、高い魔力を保有し優秀な人物であることやその美しい外見から幾度となく求婚をされたそうだが断り続けていたらしい。
そして彼の騎士としての仕事ぶりは血も涙もないとの事で、付けられた異名は“冷血の騎士“。
噂では彼は人の血が通っておらず、妻を娶るつもりもないのだろうと言われていたそうだ。
「とても豪華な御屋敷ですね……!」
ルタ様から婚約の申し出から2日後。
実家になんの未練もない私は早速クラレンス家で暮らすこととなった。
「お気に召していただけましたか? 挨拶が遅れましたが、本日からケイ様のお世話係をさせて頂きますアンと申します。宜しく御願いします」
「宜しく御願いします。しかし、お世話係など付けて頂かなくても私は実家では1人で出来ることは全てしていたので社交界でのドレス着用の際だけ手伝ってくれれば大丈夫ですよ……?」
「ケイ様は今までその様にしていたとルタ様から伺っておりますので、ルタ様は敢えて世話係を付けられたかと」
今まで一人で出来ることは一人でしてきたし、ドレスの着脱を手伝ってもらう以外で世話係なんて要らないのにルタ様はどういうつもりなのだろうか。
「さてケイ様。早速ですが旦那様と奥様に挨拶をして頂くとのことで、お着替えをしましょう。ドレスは既にお持ちの者を数着預からせていただいて同じサイズのものをご用意させて頂いております」
そういってアンに案内された部屋にはズラリとドレスが並んでいた。
……数日で用意したとは思えないぐらい種類があり、20着はありそうだ。そして、どれを着ていいか分からない。
思えば私はドレスは数着しかもっていなかったな。それに対してロージュは数え切れないほどのドレスを持っていたと思う。ラインハルト様の言う通り、私は身だしなみにも気を使えず地味な女だったのかもしれない。
「アン。私、どれを着たらいいかわからないの。……選んでくれる?」
「ええ勿論ですよ。ケイ様にピッタリなドレスを選び抜いて見せます!」
アンは物凄い手際の良さでドレス、それに合わせた靴とアクセサリーを選び抜いた。
「ケイ様はとてもサラサラで艶のある茶髪で瞳の色も若草のようなライトグリーンで美しいです。ドレスは瞳の色に合わせて淡いライトグリーンの物にしましょう。このドレスはスラっとしたAラインが美しいですね。それに、ドレスの裾の部分にはシルバーのラメが編み込んであって光沢感があり動いて揺れるととても美しいと思います。パンプスは裾にシルバーがあるのでシルバーにしてみましょうか。アクセサリーも同系統で揃えますね」
アンはテキパキとドレスを着付け、ヘアメイクを施してくれた。
「──さあケイ様。鏡をご覧下さい」
鏡を見ると、そこには地味な自分は居なかった。
淡いライトグリーンのドレスは控えめかと思ったが、その控えめな印象が上品さを感じさせ、アンの言うように少し動くと揺れて煌めく光沢感のあるドレスの裾がとても美しかった。派手すぎないかと少し不安になっていたシルバーのパンプスもドレスとの色合いが絶妙で足元を美しく魅せてくれていた。
ヘアメイクも見事なもので、地味と言われた私の顔から上品さを醸し出している。
「……これが私ですか?」
「何を仰っていますか。ケイ様はケイ様ですよ」
「今まで地味だ地味だと言われ続けていたので、自分が自分じゃないみたいです」
「ケイ様は地味なんかじゃないですよ。目鼻立ちも優しげですがハッキリしていますし、髪の毛もサラサラツヤツヤです。美人じゃないですか」
「そんなに褒めてもらったの初めてです」
「……今までどんなところにいらっしゃったのですか!まあいいです。旦那様奥様がお待ちですので急いでダイニングへ向かいましょう」
53
お気に入りに追加
3,793
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる