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終章
【終】バグった彼女は今日も彼に愛される。★
しおりを挟むミラフーユ王国、王都。
国王一家の離宮にて。
小さな男の子と女の子が、楽しそうに遊んでいる。
男の子はこの国の王子様で、女の子は小さな公爵令嬢だった。
父から王位や家督を継いだ若き王やその従兄の公爵は、子どもたちの近くについて世話を焼いている。
ふたりに倒される魔物役になったり、ふたりに乗られるお山やお馬さんになったりと……。
また、王子と令嬢が遊んでいるおもちゃは、とある富豪様や魔法士様からの贈り物だったりもする。
生まれたての王女に乳をふくませ、ぷくぷくのほっぺに触れたりしながら、妃アリシアは王子の成長にじんとした。
ゆったりと椅子に腰掛けた彼女の隣には、小さなお嬢様の母がいる。
「とっても元気ですね。うちの子も、貴女の子も」
「そうですね、妃殿下」
悪役王子フィリップ――今や国王となった彼の尽力により、シシリー・セルナサスの立場は再び上がった。
確かに罪となる悪事があった過去、罰の歴史は残りつつ、しかしオトメゲームのシナリオ期の頃もその後もアリシアとフィリップのために色々と尽くしたことを評価されて、貴族の一員として帰ってきた。
小さなアリシアを亡き者にしようとした父への復讐を、時を越えて成し遂げただけだよとフィリップは笑う。
父王のよろしくなかった動きも、やっぱり歴史に残してやるのだと。シシリーへの罰が重すぎたことは父王の失策で、アリシアの毒殺未遂は最大の汚点だあのクズ父上と。
さすがは悪役王子というか、次期魔王様というか……。その話を聞いた時、シシリーは思わず苦笑した。
子どもが生まれてからますますアリシアが愛おしくなったのか、フィリップの過保護と溺愛は加速している。セルナサス家にも似たような現象が起きている。
なにはともあれ、愛しい女たちに血なまぐさい場面を新たに見せることなく、彼とその側近は、大切なひとの命を脅かした者をひっそりと表舞台から退けたのだった。
シシリー妊娠中のユースタスとフィリップのあの旅行は、そういう動きの一環だったのだ。
フィリップの父母も、アリシアの父母も、シシリーとユースタスの父母も。
隠居したりまだまだ現役だったり、爵位を息子に譲ってからは花街の元妻に再求婚して平民暮らしをしていたりと状況は様々であるが、それぞれの形でみんな孫たちを可愛がってくれている。
かつての悪役王子も、ヒロインも、ヒーローも、悪役令嬢も、今は幸せでいっぱいだ。
***
――シシリー・セルナサスは、今日も、ユースタス・セルナサス公爵に愛されている。
ふたりは、法的に結ばれた夫婦ではない。実の兄妹でありながら、その間にひとりの娘をもうけている。
「シシリー、今夜も可愛いな」
「ん……そんな、そこばっかり……」
ベッドの上で。剣を振る男らしく硬い皮をした彼の指先が、彼女の弱くやわらかい箇所を愛でている。
「指でするのは嫌?」
「んーん……嫌じゃない、けど……あぅ……」
「ああ、可愛いよ」
ちゅこちゅこと花芽をしごかれて、またシシリーは体をぴくんと震わせた。
とりあえず体を温めて、ほぐす前戯を……、ではなく、これでも事後だ。二回戦後だ。三回戦の有無は未定。
もうシーツはシシリーの潮で濡れ濡れだし、ユースタスの白濁は中に吐き出された後である。
「ユウ兄……ユウ兄様……あぁ……」
「しこしこつらい? きもちいい?」
「んっ、気持ちいい……」
「じゃあ、続けよう」
こぽ、と音をたてた蜜口から精液がこぼれ、シーツに落ちる。
次の子はもうすこし期間を空けてからにしようということで、今は赤ちゃんをつくろうとはしていない。が、いつも膣内に出されている。娼妓の時もそう。
近い血が子づくりの視点では問題がない他、この世界には、前世にあったような性病の類もない。
年齢制限つき乙女ゲーム世界だからこそなのか、逆の因果なのか、とにかく性事情がちょいちょい違うのだ。
淫紋を刻むといつもより強く深い快楽をおぼえたが、淫紋なんて無くてもいっぱい気持ちいい。
ユースタスがさらにうまくなったのかもしれないし、この世界全体として経産婦はより気持ちよくなりやすいのかもしれない。
もう何年もユースタスにしてもらうばかりで自慰していないし、彼の腕が上がっては同じ刺激をもらって変化を比べることもできないので、確かめようはなくて。よくわからない。
でも、幸せで気持ちいいならなんでもいい。
「あっ、あぁ、ユウ兄様……したい……」
「ん?」
「もっかい……もっかいしたい、ちゅーもしたい……」
「ああ、いいよ」
見上げたシシリーの唇に、たちまちキスが降りてくる。きゅんとする。
「もういっかい、ね」
「はぅん!」
泥濘んだ蜜窟は雄槍をぬるりと滑らかに受け止め、刺激をたちまち快楽に昇華させた。
ゆるゆると好いところに触れられ、たまらない。
「はー……あー……きもちい……すき……」
「ん、俺も気持ちいいよ」
「にいしゃま、ユウ兄様、愛してる……」
「俺も、シシリーを愛してる」
「あっ――」
ぱちゅんっ、ぱちゅんっと音をたてて突かれ、腰が揺れる。震える。
好き好き大好きと睦言を交わして抱きあい、潮と精とを迸らせて、ちゅっちゅとキスを繰り返した後。また、もういっかいが始まった。
まだ二十代半ばの公爵と妹は、若く、元気いっぱいである。
――王妃アリシアは、今日も、次期魔王フィリップに愛されている。
ほんのり甘い乳をこぼすそこをちゅぱちゅぱと舐められ、彼の銀の髪を撫でながら、アリシアは蠱惑的に囁いた。
ちゅ……と彼の唇が離れ、彼女の碧色の瞳と視線を交わす。フィリップの空色の瞳は、まんまるだった。
「……してもいいの?」
「もう構わないと、宮廷医もシシリーさんも申しておりました。私も、……その、まんざらでもありません」
「いや、王女を産んでからは初めて、ということもそうなんだけど……いいの? その、その試みは……」
「私が、したいの。……だめ?」
「駄目じゃない! しよう!!」
フィリップの返事が想像以上に大きくて、ついアリシアは笑ってしまった。揺れる肩に、薄紅の髪の束がはらりと流れる。
とん、と。今、正面で元気に返事したフィリップとは違う、でも同じ体温が、彼女の背中に触れてきた。
次期魔王であるフィリップは、他の人間には使えない、実体あるもうひとりを出す魔法――分身の魔法を使える。
「では、いたしましょうか、フィリップ様――」
そうして、フィリップとフィリップとアリシアは、それを始めた。
「――これ、したかったの……っ、きもちいい、フィリップ、きもちいの……」
ベッドがギシギシと鳴いている。
アリシアも、とろけた顔で笑って泣いている。
『ああ、アリシア、可愛い……えっちでかわいい……』
「おなか苦しくない? 平気? ああ可愛い……」
「ん……きもちいい……フィリップっ、フィリップさま、きもちいい……」
ふたりのフィリップに、二輪の茎を挿されて。ひとつの蜜洞に彼をふたりぶん迎え入れて。アリシアは、また未知の快楽を知らされた。
今宵の挑戦は、いわゆる二輪挿し。ひとつの花瓶に二輪の花を挿すあれである。
「あぁ、はぁぁ……」
彼との間に宿った王子と王女を無事に生み、もう何年も結婚生活を過ごして。たくさん、たくさん、肌を重ねてきたのに。
フィリップは、また新しいことを教えてくれる。新鮮な快楽を彼女にもたらしてくれる。
彼女から特殊なことや難しいことを誘っても、なんとかやってみてくれる。ワガママを聞いてくれる。
それが気持ちよくて、とても幸せ。
「貴方、フィリップさま、好きっ、大好き……」
「僕も、好き……大好き、愛してる……っ」
先日、公務の一環で。
その時はまだ王太子夫妻だったふたりは、海辺の花街に足を運んだ。他国からの使者の歓待のため、宴を催したのである。
かつてアリシアを世話した姐のヴィオとダリアは元気そうで、無事にお妃様になったアリシアを祝い、そして子どもの誕生をたいそう喜んでくれた。
国中の花街で慕われていたシエラ様の努力の甲斐もあり、花街の皆さまは、その日も健やかに励み、生きていた。
今代のオトメゲームという物語のその後は、きっと、どこもかしこも大団円である。
身も心も満たされて、新たな種をたっぷりいただき、アリシアはその快楽と幸福に震えた。
「気持ちよくて、いっぱいびしゃびしゃにしてしまいました……」
『ふふ、素敵だったよ』
「あふれちゃって可愛いね」
「うぅ。まだ止まらない……恥ずかしい……」
みっちりといっぱいにされ、ひろげられ、圧迫されて。ぷしゅ、ぷしゃあっとアリシアは何度も潮を吹いてしまった。
もう一滴も出ないくらい出した気がするのに、今も、ぴゅっ、ぴゅと小刻みに吹くのが止まらない。
「フィリップ様……きもちよかったです……しゅごい……」
「ん。そうだね、僕も気持ちよかった。落ち着くまでくっついていようね」
「ん……」
だらしない穴から小さなお漏らしを繰り返しながら、大好きなフィリップとキスをする。下にいるもうひとりに胸を可愛がられて、また気持ちいい。
「っ、あ……」
『きゅーって締まったね。またイかせてくれるの?』
「無理しないでね、アリシア。でも可愛いな」
結局もういっかい、になって。久しぶりの交わりと初めての交わり方で。
フィリップとアリシアは、その夜も濃密に愛しあった。
そして、朝。ひとりに戻ったフィリップに抱きしめられて、王妃アリシアは目を覚ます。
「おはよう、アリシア」
「おはようございます、フィリップ」
好感度なんて見えないけれど、アリシアは、大好きな彼に愛されていると知っている。
「……フィリップ様……あのね」
「うん、なぁに」
もじもじと照れながら、アリシアはフィリップに告白した。
「私……三人目も欲しいのです……きっと四人目も欲しくなるのです……」
アリシアのお家のテリフィルア家は、兄ひとりと彼女、それに妹ふたりの四人きょうだいだった。
アリシア・テリフィルアは、温かく賑やかな家庭で育ち、五歳の頃にフィリップと出会った。
彼の婚約者になって、恋をして、たくさんの波乱を一緒に乗り越えてきた。
たとえ、アリシアを守るためにと彼がひとりで死に戻った日々のことを、自分は記憶していなくても。魔法石の記録で知っただけでも。
今、彼女の中にある記憶だけでも。
共に歩んだ道のりは、彼女の宝物。
「フィリップ様とね、楽しく、賑やかな、素敵な家庭をつくりたいの。もっと幸せになりたいの」
「きみが望むなら、僕はいくらでも頑張るよ」
フィリップは優しく微笑んで、溺れるように甘く深い、キスをした。
「――愛してる。アリシア」
いつか、魔王になって、この世を操るゲームの基盤を壊す時も。世界の呪いを解く時も。
彼は、こうしてアリシアと口づけを交わすのだろう。
これから頑張ろうという時も、頑張ったねという時も、キスをして。お互いを励まし讃えるのだろう。
アリシアは、幼馴染の婚約者と。
シシリーは、共に生まれ育った兄様と。
幼き頃より愛する君と、彼女たちは一緒になった。
オトメゲームという名の呪いに巻き込まれる国と時代に生まれ、【バグ】を抱えて青春時代の呪いを乗り越えた淑女は、今日も、自分の【攻略対象外】だった想い人に愛されている。お城で、お屋敷で、可愛い子どもたちと一緒に――
オトメゲームの【バグ】令嬢は【攻略対象外】貴公子に花街で溺愛される〈Fin〉
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