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〈ヒーロー〉と〈悪役令嬢〉編
【57】シシリー・セルナサスと初夜 −4− ★
しおりを挟む「体の左側、下にして。右腿を浮かせて」
「えっと、こう?」
「そう、いい感じ……。太腿、触るよ」
「はい」
ユースタスの言葉に従い、シシリーは体勢を変えていく。ぱかりと脚を開かされ、潤んだ箇所がスースーした。しかし背には彼の存在が感じられ、温かい。
「くっつけるだけ、な。まだ挿れないが、触れるよ」
「はい、お、お願いします」
「おや、おまえも敬語じゃないか」
「私はわりと普段から敬語でしょ! 貴方は兄様で、私は妹で、だから」
「ん、そうだったな。ごめんごめん」
また兄妹らしく言いあいつつ、事は進む。もたもたと、でも、確かに進む。
たっぷりと濡れ、ほんのちょっとだけ乾いて粘性を増していた彼女のそこに、ユースタスの雄槍と太腿がぴったりと触れた。ぬちゃ、と淫らな音がして、シシリーの肩はびくっと震える。
「ぁ、あ……」
「濡れたまま放っておくのも、寒かったよな。気づかなくてごめん、意外と余裕がないみたいだ……。シシリーのおまんこ、俺のおちんちんと太腿で温めような」
「な、なかなか、恥ずかしいことを言うわね……?」
「どこかの悪役令嬢が言うには、とあるゲームのヒーロー騎士様は淫語や言葉責めがお好きらしくてだな。おっぱい触るよ」
「んっ」
シシリーの脇下を通って伸びた左腕と、彼女に被さっていた右腕とが動きだす。きゅっと両胸を挟むように包まれ、豊かな双丘はむにゅりと形を変えてくっついた。
「……本当に、大きくなったよな」
「兄様のおちんちんほどには、変わってないわ……」
「いや、おまえのおっぱいの方が」
「昔のユウ兄様は、こんな……っ、……ばきばきじゃなかったもん……」
「まあ、そうだな。ふたりとも大人になったわけだ」
「んぁっ」
彼の手にもにゅもにゅと遊ばれて、熱い吐息が漏れる。自分たちは幼少期から一緒に育ってきた兄妹なのだと感じさせる言葉に、たまらなくなる。
「あんなにちっちゃかったシシリーが、もう二十歳だもんな。いろいろあったが、よくぞ無事に育ってくれたよ。偉い偉い」
「兄様、その言い方、二十二歳にしては爺臭いわ」
「兄が妹の成長を喜んで何が悪いと? まあ、べつに爺と言われたっていいさ。シシリーがおばあちゃんになるまで見守ってやるからな」
「はいはい、娼館贔屓になりすぎて破産しないでね」
「ああ、今じゃ妹とお茶をするだけでも金を取られるのだったか、まったく世知辛い」
「いつも来ているのに、今さら何よ? 私が言えたことじゃないかもしれないけれど」
シシリーが罪人として花街に連れてこられ、ここでの労役を課せられるようになって数カ月。ユースタスは暇さえあれば彼女に会いにきて、時にはわざわざ暇をとってでも会いにきた。
娼妓シエラにとって、ユウ様は羽振りがいい一番の上客である。
「あのね、無理して来なくてもいいのよ。兄様」
言いながら、チクリと胸が痛みを訴えるも、それがどうしてなのかシシリーにはやっぱりわからなかった。
彼女の胸をもみもみするユースタスの手付きは優しいのに、奥の方がチクチクと痛い。
「私、これでも人気者なんだから……」
「ああ、知ってる。痛いほどにな」
「お財布がってこと?」
「……初夜はなんとか俺が買えたが、万が一、これから誰かに買われたらと思うと気が気じゃないんだよ……。ずっと一緒に居て、隣で生きてきて、可愛くて、ずっと可愛くて……ぐっ、本当に、好きで……」
と。彼の雄茎がさらに苦しそうに張りつめ、ぐぐぐと秘処を押し上げられた。
「ちょっ、と、大きくしすぎじゃない……?」
シシリーはドキドキして、彼の手を邪魔するように胸元を押さえる。こうでもしなければ、心臓が暴れまわってどうにかなってしまいそうだった。わけがわからない痛みも飛ばしたかった。
「兄様ったら、大丈夫? もう挿れる?」
「はっ、何を。優しくしてと言ったくせに、強がるな。……本当に、俺が、どれだけ心配したと、いつも、いつも。おまえも大人だから、おまえの意志も大事にしたいけど、でも……っ、俺に何も言わずに毒なんて飲むし、まだ閨入りはしないと言ったくせに売り出しやがるし!」
「んっ」
もにゅっ、と。ユースタスの指が、これまでよりきつめに胸に食い込む。つい、シシリーは自分で触れていた手を離してしまった。まだ優しい、でも強い。
くりくりと両胸の先っぽもいじられはじめて、シシリーの秘処はまるで連動するようにひくつく。
「あっ、あぁ」
「俺が、また主の身代わりにでもなって軟禁されていたらどうするつもりだった? この……っ、今まで、……たくさん貢いできた客、を、蔑ろにして……連絡も寄越さずに……」
兄の泣きそうな声に、シシリーはうまく言葉を返せない。後ろめたい心があるから、答えられない。
楼主や姐に、ユウ様には水揚げの儀の連絡をしないで、と頼んだのは娼妓シエラ自身だ。実の兄妹であることを言い訳にして、密かに、彼には初めての花を売る時のことを伝えないでほしいとワガママを言った。
公爵令嬢だった頃のシシリーが希望した花街関係の事業のせいで、ユースタスにこそ、花街の人々と交流があったのに。それには知らないふりをして、そんな酷いことをした。
その理由に、シシリーは向き合いたくない。見たくない。
「あ……っ、兄様、卒業パーティーの日のこと、まだ怒っているのね」
だから、あの日のことだけ言って、誤魔化した。
「何も知らずに、おまえが血を吐く姿を見せられて、もう、おかしくなりそうだった」
「必要なことだったのよ。あんっ、でも、ごめんなさい」
「シシリー、俺は、おまえが大切だ。誰かに乱暴にされるのが嫌で、俺が、って……実の兄妹でヤるって方が、おかしいのにな。でも、とてもじゃないが誰にも任せられないから、俺がしたい。優しく、大切にしてやりたい」
「うん……」
「ごめん、こんな劣情まみれの兄で、ごめん。でも、幸せにさせたいのは本当で、おまえが嫌なことは本当にさせたくないんだよ。いつだって、おまえは、何もかも拒んでいいんだ」
「…………先に、関係を壊したのは、私でしょ? あっ、わ、私のお姫さま――アリシアのためって、その……、変なこと、いっぱい兄様に、頼んで……っ、ごめんね……?」
「もう、なんで泣くんだよ」
ユースタスは胸を責める手を止め、代わりに彼女の頭をそっと撫でた。シシリーは涙ぐみ、身を震わせる。
この兄は、いつも彼女の心を変にする。
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