57 / 71
〈ヒーロー〉と〈悪役令嬢〉編
【57】シシリー・セルナサスと初夜 −4− ★
しおりを挟む「体の左側、下にして。右腿を浮かせて」
「えっと、こう?」
「そう、いい感じ……。太腿、触るよ」
「はい」
ユースタスの言葉に従い、シシリーは体勢を変えていく。ぱかりと脚を開かされ、潤んだ箇所がスースーした。しかし背には彼の存在が感じられ、温かい。
「くっつけるだけ、な。まだ挿れないが、触れるよ」
「はい、お、お願いします」
「おや、おまえも敬語じゃないか」
「私はわりと普段から敬語でしょ! 貴方は兄様で、私は妹で、だから」
「ん、そうだったな。ごめんごめん」
また兄妹らしく言いあいつつ、事は進む。もたもたと、でも、確かに進む。
たっぷりと濡れ、ほんのちょっとだけ乾いて粘性を増していた彼女のそこに、ユースタスの雄槍と太腿がぴったりと触れた。ぬちゃ、と淫らな音がして、シシリーの肩はびくっと震える。
「ぁ、あ……」
「濡れたまま放っておくのも、寒かったよな。気づかなくてごめん、意外と余裕がないみたいだ……。シシリーのおまんこ、俺のおちんちんと太腿で温めような」
「な、なかなか、恥ずかしいことを言うわね……?」
「どこかの悪役令嬢が言うには、とあるゲームのヒーロー騎士様は淫語や言葉責めがお好きらしくてだな。おっぱい触るよ」
「んっ」
シシリーの脇下を通って伸びた左腕と、彼女に被さっていた右腕とが動きだす。きゅっと両胸を挟むように包まれ、豊かな双丘はむにゅりと形を変えてくっついた。
「……本当に、大きくなったよな」
「兄様のおちんちんほどには、変わってないわ……」
「いや、おまえのおっぱいの方が」
「昔のユウ兄様は、こんな……っ、……ばきばきじゃなかったもん……」
「まあ、そうだな。ふたりとも大人になったわけだ」
「んぁっ」
彼の手にもにゅもにゅと遊ばれて、熱い吐息が漏れる。自分たちは幼少期から一緒に育ってきた兄妹なのだと感じさせる言葉に、たまらなくなる。
「あんなにちっちゃかったシシリーが、もう二十歳だもんな。いろいろあったが、よくぞ無事に育ってくれたよ。偉い偉い」
「兄様、その言い方、二十二歳にしては爺臭いわ」
「兄が妹の成長を喜んで何が悪いと? まあ、べつに爺と言われたっていいさ。シシリーがおばあちゃんになるまで見守ってやるからな」
「はいはい、娼館贔屓になりすぎて破産しないでね」
「ああ、今じゃ妹とお茶をするだけでも金を取られるのだったか、まったく世知辛い」
「いつも来ているのに、今さら何よ? 私が言えたことじゃないかもしれないけれど」
シシリーが罪人として花街に連れてこられ、ここでの労役を課せられるようになって数カ月。ユースタスは暇さえあれば彼女に会いにきて、時にはわざわざ暇をとってでも会いにきた。
娼妓シエラにとって、ユウ様は羽振りがいい一番の上客である。
「あのね、無理して来なくてもいいのよ。兄様」
言いながら、チクリと胸が痛みを訴えるも、それがどうしてなのかシシリーにはやっぱりわからなかった。
彼女の胸をもみもみするユースタスの手付きは優しいのに、奥の方がチクチクと痛い。
「私、これでも人気者なんだから……」
「ああ、知ってる。痛いほどにな」
「お財布がってこと?」
「……初夜はなんとか俺が買えたが、万が一、これから誰かに買われたらと思うと気が気じゃないんだよ……。ずっと一緒に居て、隣で生きてきて、可愛くて、ずっと可愛くて……ぐっ、本当に、好きで……」
と。彼の雄茎がさらに苦しそうに張りつめ、ぐぐぐと秘処を押し上げられた。
「ちょっ、と、大きくしすぎじゃない……?」
シシリーはドキドキして、彼の手を邪魔するように胸元を押さえる。こうでもしなければ、心臓が暴れまわってどうにかなってしまいそうだった。わけがわからない痛みも飛ばしたかった。
「兄様ったら、大丈夫? もう挿れる?」
「はっ、何を。優しくしてと言ったくせに、強がるな。……本当に、俺が、どれだけ心配したと、いつも、いつも。おまえも大人だから、おまえの意志も大事にしたいけど、でも……っ、俺に何も言わずに毒なんて飲むし、まだ閨入りはしないと言ったくせに売り出しやがるし!」
「んっ」
もにゅっ、と。ユースタスの指が、これまでよりきつめに胸に食い込む。つい、シシリーは自分で触れていた手を離してしまった。まだ優しい、でも強い。
くりくりと両胸の先っぽもいじられはじめて、シシリーの秘処はまるで連動するようにひくつく。
「あっ、あぁ」
「俺が、また主の身代わりにでもなって軟禁されていたらどうするつもりだった? この……っ、今まで、……たくさん貢いできた客、を、蔑ろにして……連絡も寄越さずに……」
兄の泣きそうな声に、シシリーはうまく言葉を返せない。後ろめたい心があるから、答えられない。
楼主や姐に、ユウ様には水揚げの儀の連絡をしないで、と頼んだのは娼妓シエラ自身だ。実の兄妹であることを言い訳にして、密かに、彼には初めての花を売る時のことを伝えないでほしいとワガママを言った。
公爵令嬢だった頃のシシリーが希望した花街関係の事業のせいで、ユースタスにこそ、花街の人々と交流があったのに。それには知らないふりをして、そんな酷いことをした。
その理由に、シシリーは向き合いたくない。見たくない。
「あ……っ、兄様、卒業パーティーの日のこと、まだ怒っているのね」
だから、あの日のことだけ言って、誤魔化した。
「何も知らずに、おまえが血を吐く姿を見せられて、もう、おかしくなりそうだった」
「必要なことだったのよ。あんっ、でも、ごめんなさい」
「シシリー、俺は、おまえが大切だ。誰かに乱暴にされるのが嫌で、俺が、って……実の兄妹でヤるって方が、おかしいのにな。でも、とてもじゃないが誰にも任せられないから、俺がしたい。優しく、大切にしてやりたい」
「うん……」
「ごめん、こんな劣情まみれの兄で、ごめん。でも、幸せにさせたいのは本当で、おまえが嫌なことは本当にさせたくないんだよ。いつだって、おまえは、何もかも拒んでいいんだ」
「…………先に、関係を壊したのは、私でしょ? あっ、わ、私のお姫さま――アリシアのためって、その……、変なこと、いっぱい兄様に、頼んで……っ、ごめんね……?」
「もう、なんで泣くんだよ」
ユースタスは胸を責める手を止め、代わりに彼女の頭をそっと撫でた。シシリーは涙ぐみ、身を震わせる。
この兄は、いつも彼女の心を変にする。
0
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる