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〈ヒーロー〉と〈悪役令嬢〉編
【56】シシリー・セルナサスと初夜 −3− ★
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胸元から臍上までを丸出しにされ、王太子妃アリシアのそれより随分と豊かな自身の双丘を見下ろして。
(悪役令嬢って、大きいわよね……。そういえば、これも〝ママ〟の趣味なのかしら? ヒロインは可愛らしい感じで、悪役令嬢はこんなんで)
前世でプレイしたゲームのことと、このゲームを生んだ〝母〟のことをシシリーはふと思う。
(こうして転生するなら、小ネタまで聞いておけばよかったわね。今さらだけど)
左腕でシシリーを支えるユースタスは、彼女の胸に右手で触れていた。壊れ物を扱うように、か弱き仔猫や子兎を撫でるように。
彼の手に反応して、シシリーの身体はぴくりと小さく跳ねる。
(あ、この手付き、この感じ……また何かを確かめるみたいな……)
とても丁寧に致されて、シシリーの胸はむずむずした。
「そ、その触り方、なんか恥ずかしい」
「優しくされるのは、嫌?」
「やじゃない、けど、くすぐったい……んっ」
「無理じゃなければ、こういうのに慣れてくれ」
「んっ、ぅ」
「大丈夫、怖くないよ。シシリー」
「ん……」
また妹相手らしい声の掛け方をされて、シシリーの紫の瞳はほんのりと潤む。なぜかはよくわからない。ただ瞬きと一緒に睫毛が濡れていく。
「痛い触り方はしない。雑に扱いもしない。……唇、ぎゅって噛みしめないで、開けて」
「ふ、ぁ」
言われたとおりに口を開けると、また中に舌を挿れられた。深いキスをされながら、さらさらと優しすぎる手付きで胸やお腹を触られ、より先まで脱がされる。
(兄様って、セックスの時、いっぱいキスするのね)
他の女と経験があるのは知っているが、致している光景までは見たことがないので、そこまでは知らなかった。
自然な動きで腰を持ち上げられて、しゅるん、とドレスを脱がされる。胸も太腿も足首も晒して、下着一枚きりになったシシリーはぷるぷると震えた。
「これも、脱がすよ」
「……ん」
腰元の紐の右を解かれ、左を解かれ、
「ぅん……?」
なぜか前の布がぺらりと剥がれないことにシシリーは首を傾げるも、すぐにその理由に気づいて頬を真っ赤に染めた。
昔の〝兄〟に嘲笑われたような、変なことを自覚した。
(ぁ、あ、濡れてる、から……くっついちゃって……)
いつの間にかたっぷりとあふれていた蜜のせいで、下着の生地が肌に張り付いているのだ。
左右の腰紐を解かれても、まだ脱げないくらいに。ぺったりとくっついている。たくさん濡れている。
(どうしよう、どうしよう)
きゅんきゅんっと蜜壺が疼いてまた濡れて、焦った小穴も逆に一瞬ゆるんで、汗も出て。じゅわりと色々な液が滲んでしまった。
「っ、あぅ、ごめんなさい、ごめんなさい……っ、お、お兄、」
「シシリー、大丈夫だ」
「……っ」
恥ずかしくて足をじたばたと動かしても、まだまだ彼女の下着は離れてくれなかった。
ユースタスは片手だけで器用に腰紐を結び直し、シシリーを正面からぎゅっと抱きしめる。背を撫でる。
「あぅ、あぅ」
「ごめん、恥ずかしくなったか? まだパンツは脱ぎたくなかった?」
「ちが、ちがう……。しょ、処女なのに、いっぱい濡れちゃって…………っい、淫乱に、感じて……」
「ああ、そっちか。大丈夫だよ。うんうん、ちゃんと言えて偉いな。シシリー」
「う、動いちゃ、ぅのっ、も、ごめんなさい……っ」
「ん、いいよ。それも大丈夫」
シシリーの心を知ってか知らずか、彼女の腰はかくかくとひとりでに動いていた。
(あぅ、きもちいい……)
ユースタスに擦り付けるのが止められない。ぐじゅぐじゅに濡れたところを彼のものにくっつけて、自慰のようで、もう自分が情けなくて仕方ない。
「あぁぁ、はぁぁっ」
「大丈夫。可愛い。俺は好き。……でも、そうだな、とろとろにして、わからなくしてしまおうか」
「あぁ、あ、それっ、て、どういう――ひゃっ!」
どんっと、わけもわからずに押し倒される。彼の動きは俊敏でありながら、乱暴ではなかった。
ぽすん、と彼女の頭はちょうどクッションの中央におさまり、かと思えば脚を大きく開かれる。
「舐めるぞ」
「えっ、やあぁ……!」
濡れた割れ目を下着越しに舐められ、シシリーはつい叫んでしまった。
「あ、あっ、だめ、だめぇ、汚い、恥ずかしいっ」
「ほら」
「はぅっ、ひゃに……?」
ぐちゃぐちゃと舐められながら、両手を引っぱられ、彼の頭の上に載せられる。まるで彼に無理やり舐めさせているような姿勢になってしまい、シシリーはいやいやと頭を振った。
「本当に無理なら、頑張って毟れ」
しかしユースタスには見えていない。彼女のいやいやは伝わっていない。
「やぁあ、やらぁ……!」
シシリーの手はユースタスの頭をゆるく掴むも、髪が抜けるほどに引っぱったりはできなかった。
「あぁ、あぁー! ああー! あーー!」
もはや自分の股に彼の顔を押し付けているように感じつつ、羞恥に悶えつつ、シシリーは快感に呑まれていく。ちょっとでもその感覚を逃したくて叫んでしまう。
それでも快楽は彼女の中に降り積もり、否応なしに高まっていった。
「兄様ぁ、にいさまぁ! もうらめぇ、イっちゃう……! 出ちゃうの……!」
「ん、飲むよ」
「やぁぁあ! うぁ、そこ、ぢゅって吸わないれぇっ! あぁぁ! 出ちゃう出ちゃう出ちゃう――~~っ!」
「ぅん、む……」
「やああぁぁぁあああ!!」
ぴゅっ、ぴゅっと噴き出したものを口で受け止められて、ちょろちょろとあふれたものをも飲まれてしまった。
「はあー……あー……」
彼女の潮は彼の口元に吸い込まれ、彼の喉をごくごくと流れていく。
シシリーはぐったりと脱力して、今が果てている最中なのかどうかもよくわからなかった。ずっと気持ちいいのが続いていた。
「――大丈夫か?」
「だめぇ……」
すべてを飲み干したユースタスは身を起こし、彼女の頬に手を触れて具合を窺う。
ふっくらした頬は林檎色に染まり、彼女の瞳はうるうると愛らしく潤んでいた。いやいやと頭を振ると、淡い金髪がさらに乱れる。
「おかしくなっちゃったぁ……おまんこ変っ、変なの……っ」
「大丈夫、おまえは何も変じゃない。いや、おまんこは、快感や余韻でじんじんしてるかもしれないけど……。強くしすぎたなら、ごめんな。落ち着くまで、そこはいじらない」
「うん……うん……」
「俺が舐めたせいで、もうとろとろぐちゅぐちゅだから、パンツは脱がすよ」
「ん……」
頬に触れていたぬくもりが離れ、両腰の紐をサッと解かれる、脱がされる。
「ほら、できた」
今度はすぐに前布を取っ払ってもらえて、シシリーもついに全裸になった。
このミラフーユ王国の女として見れば大きめの、でも兄よりは小さくて細くてやわらかい、彼と同じ親から生まれた身体が闇夜に晒される。
またユースタスは彼女の頬を包み、いよいよ結びが近くなってきたことに緊張でもしたのか、なぜか敬語で訊いてきた。
「ちなみに、シシリーは、舐めた後のキスは気にするタイプですか。水やお酒で濯いだ方がいいですか」
「……キス、しましょ、今すぐ」
「ん」
シシリーは目を瞑り、兄からのキスを受け入れた。裸の肌が、胸が、お腹が触れあって、彼との行為は心地いい。
ちゅっ、ちゅと軽く触れるキスから、こちょこちょと舌先で遊ぶキス、そしていやらしい音がたつ深いキスまで、何度もしてから。
ふたりの紫の瞳は、正面から交わった。
「なあ、シシリー。処女だろうと何だろうと、気持ちよくなっていいんだ。それは悪いことでも変なことでもなくて、恥ずかしいかもしれないけど、べつにいいんだよ」
「ユウ兄様、こんな女でも嫌じゃない……? 淫乱だって、変態だって、笑わない……?」
シシリーは兄の手の上に手を重ね、あざとさを自覚しながら首を傾げた。演技なのか本心なのか、自分ではわからない。でも甘えている。
「ああ、どんなシシリーになっても俺は好きだよ。もしもおまえが自分を変だと感じて悲しむようになっても、俺はおまえに味方する。変態という言葉を使うことはあるが、笑いはしない。馬鹿にはしない。大丈夫、今日も可愛いよ。俺にとって、おまえは今も昔も可愛い女の子。ずっと大切で、唯一無二の――俺の妹だ」
「兄様は、私でいいの? 中身は、ユウ兄様より年上、では、もうないけど。違う世界で生きた〝私〟も居て、ちゃんとした〝妹〟じゃなかったけど。でも、妹だけど、いいの? 兄様は、騎士様なのに、こんな妹と寝る男になってしまっていいの? 血の繋がった罪人を抱いても、いいの?」
「いいよ。どんな記憶があっても、変わらず愛しい。おまえの前世もまるごとひっくるめて、愛している。――シシリーは、俺でいい? 〝兄様〟とするの、嫌じゃない?」
「嫌、じゃない……。気持ちいいから、かしら。わからないのだけど、嫌じゃないわ」
ん、とユースタスは頷き、切ない顔で微笑んだ。
「初めては俺だけど、おまえの初夜は俺がもらうけど。おまえの人生すべてをくれとまでは、今は言わないから。ただ、いつかは幸せになってくれ、シシリー」
「ぅん……」
「じゃ、後ろから抱きしめても、いいですか」
「好きにしなさいよ、馬鹿兄様」
悪役令嬢らしく返事して、シシリー・セルナサスはくすりと笑う。
「ところで、なんで私相手に敬語なの?」
「照れ隠し、みたいな?」
「ふふ、何それ」
何が面白いわけでもないのに、唇は笑えた。何もつらくはなかった。
(悪役令嬢って、大きいわよね……。そういえば、これも〝ママ〟の趣味なのかしら? ヒロインは可愛らしい感じで、悪役令嬢はこんなんで)
前世でプレイしたゲームのことと、このゲームを生んだ〝母〟のことをシシリーはふと思う。
(こうして転生するなら、小ネタまで聞いておけばよかったわね。今さらだけど)
左腕でシシリーを支えるユースタスは、彼女の胸に右手で触れていた。壊れ物を扱うように、か弱き仔猫や子兎を撫でるように。
彼の手に反応して、シシリーの身体はぴくりと小さく跳ねる。
(あ、この手付き、この感じ……また何かを確かめるみたいな……)
とても丁寧に致されて、シシリーの胸はむずむずした。
「そ、その触り方、なんか恥ずかしい」
「優しくされるのは、嫌?」
「やじゃない、けど、くすぐったい……んっ」
「無理じゃなければ、こういうのに慣れてくれ」
「んっ、ぅ」
「大丈夫、怖くないよ。シシリー」
「ん……」
また妹相手らしい声の掛け方をされて、シシリーの紫の瞳はほんのりと潤む。なぜかはよくわからない。ただ瞬きと一緒に睫毛が濡れていく。
「痛い触り方はしない。雑に扱いもしない。……唇、ぎゅって噛みしめないで、開けて」
「ふ、ぁ」
言われたとおりに口を開けると、また中に舌を挿れられた。深いキスをされながら、さらさらと優しすぎる手付きで胸やお腹を触られ、より先まで脱がされる。
(兄様って、セックスの時、いっぱいキスするのね)
他の女と経験があるのは知っているが、致している光景までは見たことがないので、そこまでは知らなかった。
自然な動きで腰を持ち上げられて、しゅるん、とドレスを脱がされる。胸も太腿も足首も晒して、下着一枚きりになったシシリーはぷるぷると震えた。
「これも、脱がすよ」
「……ん」
腰元の紐の右を解かれ、左を解かれ、
「ぅん……?」
なぜか前の布がぺらりと剥がれないことにシシリーは首を傾げるも、すぐにその理由に気づいて頬を真っ赤に染めた。
昔の〝兄〟に嘲笑われたような、変なことを自覚した。
(ぁ、あ、濡れてる、から……くっついちゃって……)
いつの間にかたっぷりとあふれていた蜜のせいで、下着の生地が肌に張り付いているのだ。
左右の腰紐を解かれても、まだ脱げないくらいに。ぺったりとくっついている。たくさん濡れている。
(どうしよう、どうしよう)
きゅんきゅんっと蜜壺が疼いてまた濡れて、焦った小穴も逆に一瞬ゆるんで、汗も出て。じゅわりと色々な液が滲んでしまった。
「っ、あぅ、ごめんなさい、ごめんなさい……っ、お、お兄、」
「シシリー、大丈夫だ」
「……っ」
恥ずかしくて足をじたばたと動かしても、まだまだ彼女の下着は離れてくれなかった。
ユースタスは片手だけで器用に腰紐を結び直し、シシリーを正面からぎゅっと抱きしめる。背を撫でる。
「あぅ、あぅ」
「ごめん、恥ずかしくなったか? まだパンツは脱ぎたくなかった?」
「ちが、ちがう……。しょ、処女なのに、いっぱい濡れちゃって…………っい、淫乱に、感じて……」
「ああ、そっちか。大丈夫だよ。うんうん、ちゃんと言えて偉いな。シシリー」
「う、動いちゃ、ぅのっ、も、ごめんなさい……っ」
「ん、いいよ。それも大丈夫」
シシリーの心を知ってか知らずか、彼女の腰はかくかくとひとりでに動いていた。
(あぅ、きもちいい……)
ユースタスに擦り付けるのが止められない。ぐじゅぐじゅに濡れたところを彼のものにくっつけて、自慰のようで、もう自分が情けなくて仕方ない。
「あぁぁ、はぁぁっ」
「大丈夫。可愛い。俺は好き。……でも、そうだな、とろとろにして、わからなくしてしまおうか」
「あぁ、あ、それっ、て、どういう――ひゃっ!」
どんっと、わけもわからずに押し倒される。彼の動きは俊敏でありながら、乱暴ではなかった。
ぽすん、と彼女の頭はちょうどクッションの中央におさまり、かと思えば脚を大きく開かれる。
「舐めるぞ」
「えっ、やあぁ……!」
濡れた割れ目を下着越しに舐められ、シシリーはつい叫んでしまった。
「あ、あっ、だめ、だめぇ、汚い、恥ずかしいっ」
「ほら」
「はぅっ、ひゃに……?」
ぐちゃぐちゃと舐められながら、両手を引っぱられ、彼の頭の上に載せられる。まるで彼に無理やり舐めさせているような姿勢になってしまい、シシリーはいやいやと頭を振った。
「本当に無理なら、頑張って毟れ」
しかしユースタスには見えていない。彼女のいやいやは伝わっていない。
「やぁあ、やらぁ……!」
シシリーの手はユースタスの頭をゆるく掴むも、髪が抜けるほどに引っぱったりはできなかった。
「あぁ、あぁー! ああー! あーー!」
もはや自分の股に彼の顔を押し付けているように感じつつ、羞恥に悶えつつ、シシリーは快感に呑まれていく。ちょっとでもその感覚を逃したくて叫んでしまう。
それでも快楽は彼女の中に降り積もり、否応なしに高まっていった。
「兄様ぁ、にいさまぁ! もうらめぇ、イっちゃう……! 出ちゃうの……!」
「ん、飲むよ」
「やぁぁあ! うぁ、そこ、ぢゅって吸わないれぇっ! あぁぁ! 出ちゃう出ちゃう出ちゃう――~~っ!」
「ぅん、む……」
「やああぁぁぁあああ!!」
ぴゅっ、ぴゅっと噴き出したものを口で受け止められて、ちょろちょろとあふれたものをも飲まれてしまった。
「はあー……あー……」
彼女の潮は彼の口元に吸い込まれ、彼の喉をごくごくと流れていく。
シシリーはぐったりと脱力して、今が果てている最中なのかどうかもよくわからなかった。ずっと気持ちいいのが続いていた。
「――大丈夫か?」
「だめぇ……」
すべてを飲み干したユースタスは身を起こし、彼女の頬に手を触れて具合を窺う。
ふっくらした頬は林檎色に染まり、彼女の瞳はうるうると愛らしく潤んでいた。いやいやと頭を振ると、淡い金髪がさらに乱れる。
「おかしくなっちゃったぁ……おまんこ変っ、変なの……っ」
「大丈夫、おまえは何も変じゃない。いや、おまんこは、快感や余韻でじんじんしてるかもしれないけど……。強くしすぎたなら、ごめんな。落ち着くまで、そこはいじらない」
「うん……うん……」
「俺が舐めたせいで、もうとろとろぐちゅぐちゅだから、パンツは脱がすよ」
「ん……」
頬に触れていたぬくもりが離れ、両腰の紐をサッと解かれる、脱がされる。
「ほら、できた」
今度はすぐに前布を取っ払ってもらえて、シシリーもついに全裸になった。
このミラフーユ王国の女として見れば大きめの、でも兄よりは小さくて細くてやわらかい、彼と同じ親から生まれた身体が闇夜に晒される。
またユースタスは彼女の頬を包み、いよいよ結びが近くなってきたことに緊張でもしたのか、なぜか敬語で訊いてきた。
「ちなみに、シシリーは、舐めた後のキスは気にするタイプですか。水やお酒で濯いだ方がいいですか」
「……キス、しましょ、今すぐ」
「ん」
シシリーは目を瞑り、兄からのキスを受け入れた。裸の肌が、胸が、お腹が触れあって、彼との行為は心地いい。
ちゅっ、ちゅと軽く触れるキスから、こちょこちょと舌先で遊ぶキス、そしていやらしい音がたつ深いキスまで、何度もしてから。
ふたりの紫の瞳は、正面から交わった。
「なあ、シシリー。処女だろうと何だろうと、気持ちよくなっていいんだ。それは悪いことでも変なことでもなくて、恥ずかしいかもしれないけど、べつにいいんだよ」
「ユウ兄様、こんな女でも嫌じゃない……? 淫乱だって、変態だって、笑わない……?」
シシリーは兄の手の上に手を重ね、あざとさを自覚しながら首を傾げた。演技なのか本心なのか、自分ではわからない。でも甘えている。
「ああ、どんなシシリーになっても俺は好きだよ。もしもおまえが自分を変だと感じて悲しむようになっても、俺はおまえに味方する。変態という言葉を使うことはあるが、笑いはしない。馬鹿にはしない。大丈夫、今日も可愛いよ。俺にとって、おまえは今も昔も可愛い女の子。ずっと大切で、唯一無二の――俺の妹だ」
「兄様は、私でいいの? 中身は、ユウ兄様より年上、では、もうないけど。違う世界で生きた〝私〟も居て、ちゃんとした〝妹〟じゃなかったけど。でも、妹だけど、いいの? 兄様は、騎士様なのに、こんな妹と寝る男になってしまっていいの? 血の繋がった罪人を抱いても、いいの?」
「いいよ。どんな記憶があっても、変わらず愛しい。おまえの前世もまるごとひっくるめて、愛している。――シシリーは、俺でいい? 〝兄様〟とするの、嫌じゃない?」
「嫌、じゃない……。気持ちいいから、かしら。わからないのだけど、嫌じゃないわ」
ん、とユースタスは頷き、切ない顔で微笑んだ。
「初めては俺だけど、おまえの初夜は俺がもらうけど。おまえの人生すべてをくれとまでは、今は言わないから。ただ、いつかは幸せになってくれ、シシリー」
「ぅん……」
「じゃ、後ろから抱きしめても、いいですか」
「好きにしなさいよ、馬鹿兄様」
悪役令嬢らしく返事して、シシリー・セルナサスはくすりと笑う。
「ところで、なんで私相手に敬語なの?」
「照れ隠し、みたいな?」
「ふふ、何それ」
何が面白いわけでもないのに、唇は笑えた。何もつらくはなかった。
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