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〈悪役王子〉と〈ヒロイン〉王都編
【49】悪役王子とヒロインの結婚 −初夜− ★
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アリシアの秘処はひくひくと蠢き、彼の慈悲を待っていた。しかし、彼の手はなかなか先へと進んでくれない。たまらない。
いつかのように小刻みにとんとんと叩かれ、果てるには足りない快楽が、彼女の蜜壺や子宮へと響く。
思わず甘え、ねだる声が出た。
「フィリップさま……ぁ、やらぁ。やらっ。触って……触ってぇ」
「うん? どこを触ってほしいの?」
「……いじわる、フィリップ様のいじわる……っ、あぁ、やら、つらい……っの。ジクジク、する……熱いの、切ないの……ッ」
「――ここ?」
「あうっ」
ツンと勃った小さな芽を触られ、腰が跳ねる。違う、けれど気持ちいい……。とろとろになった蜜窟は、溶けそうなほど熱く濡れる。
「あっ、あぁ、あ……好き、フィリップさま、好きぃ……っ」
くっ、と何かに耐えるような音を喉から漏らし、フィリップはゆっくりと息を吐いた。
どうしたのかしらと見上げれば、熱っぽい瞳に射抜かれて、アリシアはどきりとする。キュンとなる。
「…………焦らして、もっと、言わせたかったんだけど……ごめん、僕のほうが、我慢できなさそう……」
「ふにゃ……? あっ、あぁっ!」
ぐりっと強く花芽を押し潰され、と同時に、中へと指が挿し込まれる。青楼で初めて彼を迎えた夜のように、フィリップはアリシアの蜜壺に触れ、掻き混ぜた。
「うぅ、にゃう……」
「っ、はぁ、優しく、やりたいのに……きみが、可愛くて、泣かせたくなる……っ」
「きゃっ、やああぁぁっ! あぁ……!」
淫芽を執拗に捏ねられ、蜜壺のざらついた浅瀬をぐちゅぐちゅと指で擦られて。アリシアの頭はぱちぱちした。
こんなに激しく気持ちよくさせられるのは、青楼での夜以来。まだ雄茎は受け容れていないのに、もう思いきり果ててしまいそうになる。深く達しそうになる。そろそろ潮も吹きそうで……。
「ふぃり、フィリップさまっ、あぁ、う」
「アリシア、好き、だよ……」
と。いきなり。彼は芽と中とを責める動きを止め、ただ切なげに愛を囁いた。
「ひゃう……? ぅん……?」
アリシアの快感は頂に至ることなく、奥の奥へと積もっていく。
「フィリップ、さま――」
「やっぱり可愛い」
なんて甘やかに紡ぎ、今度のフィリップは、アリシアの唇にキスをした。気遣いを感じる口づけを嬉しく思いつつ、アリシアは、中途半端にされた色欲を燻らせる。
「可愛くて、大好き……泣かせたい、けど、泣かせたくない……」
「泣いちゃうくらい、激しくしても……いい、ですよ?」
「ん、ありがとう……、ああ、好き。好きだよ」
それからフィリップは、何度もアリシアに寸止めをした。理性と欲とで戦っているようだった。
彼女が達する直前に責めを止めては、唇にキスをしたり、肌にキスマークをつけたり、耳元で甘く囁いたり。
アリシアの白い肌には赤い花痕がいくつも咲き誇り、愛されるたびに敏感になっている気さえする。
「綺麗だ――」
ぐずぐずゆるゆるのアリシアの髪を掬い、とても真っ直ぐな瞳で褒め。フィリップは彼女の髪にも口づけた。髪に感覚はないのにもかかわらず、じゅわぁっと愛液が漏れてくる。
左の乳房にまたキスの花が咲き、先端も唇と舌で責められた。乳輪を舌でちろちろと舐められ、勃起した乳嘴を吸われ、火照った下腹部がひくついてしまう。
「フィリップ、さま、もう、だめ……だめ……やぁんっ! やっ」
彼の長い指はアリシアの花心をぴちゃぴちゃと言わせ、まんべんなく、過ぎるほどにほぐしていた。アリシアの膣内は、もう子種を欲するように、彼の指をきゅうきゅうと締め付ける。
こんなに締められたら抜けないよとフィリップは甘い意地悪を言い、アリシアの内壁をずりゅりとより強く擦り上げた。弱いところを何度も刺激する動きに、アリシアの息は浅くなる。華やかな香の匂いにくらりとする。
「ふぃ、ふぃりゅ、ふぃりっぷ、さま、ひ」
「焦らされるの、つらいね……。可愛い。ごめんね。ぐじゅぐじゅになっちゃって、可愛いよ。もうイきたい?」
「ん……じゅ、りゃ、ずっと、イき……たい、の、続いてれぇ、あっ、イきたい……か、せて、イかせて」
「いいよ」
フィリップは片手でアリシアの蜜窟を責め続けながら、もう一方の手で彼女の涙を拭う。そのさりげない仕草が愛おしかった。
高まる感覚に啼き、はしたなく蜜を滴らせ、待っていると――彼の手が、またも、ぴたりと止まる。
「あん、あぁ、んっ、んにゃあぁ……にゃ?」
限界まで届きそうだった快感の波は越えることなく引き、切ない余韻がアリシアの身体を鞭打つ。続けてと願う腰はひとりでに動くけれど、やっぱり果てるところには行けない。
じわじわと涙ぐんでいたアリシアは、いよいよ本気で泣きそうだった。
「で、でん……殿下、フィリップ、さま? な、なんで、止め……」
「せっかくほぐしたのに、これ以上したら。きみは潮を吹いて、蜜を流してしまうだろう?」
「やぁ、やら! 吹かない……で、我慢、する、からぁ。ね? イかせて? お願い、つらい……っ」
「――だから、」
「あ……」
ちゅぷん、と指を抜かれてしまい、物寂しさをおぼえたのも一瞬のこと。
「ふぁ、フィリップ、さま……」
「今宵は、結婚初夜だ。もう一線を越えても、孕ませても、――奪われない」
雄々しく勃ち、苦しそうに張り詰めたフィリップのものが、アリシアのとろけた蜜口に擦り付けられる。亀頭はぬるりと愛液に濡れ、小さく口を開けた裂け目をなぞった。
「あぁ……」
さらにうるさく騒ぐ胸に手を当て、アリシアは彼の雄芯をじっと見つめる。もはや彼を見る行為への恥じらいは、ない。
蜜壺をはち切れさせてしまいそうなほど大きく立派なそれは、見ているだけでもう可愛い。胸と子宮がきゅんと疼く。
フィリップはアリシアの舌を食べるようなキスをして、彼女の左耳に口づけた。彼の吐息だけで快楽をおぼえる弱い耳へと、愛と覚悟を注ぎ込む。
「愛してるよ、アリシア。一生、手放さない。もう絶対に離さない」
「私も、フィリップ様を、愛しております。二度と……っ、もう、おそばを離れません」
「何も知らない頃には、戻れないけど。きみの居場所は、ここにある。えっちでも、なんでも、どんなきみでも、アリシアは僕の妃だ」
「……はい。おかげさまで、わかっております」
「今、から。ほんとうに、抱くよ……?」
「ええ、……どうぞ」
フィリップの空色の瞳が気遣わしげにアリシアの瞳へと向き、その碧色から具合を読み取るかのように視線を交わす。
アリシアは瞬き、ふわりと笑い、「きてください」と自ら脚を大きく開いた。拍子にくちゅりと音が鳴る。
フィリップの肉杭の先はちゅぷちゅぷと陰唇に何度もキスをして、入りそうで入らない触れ合いを繰り返した。
そして、
「アリシア。――愛してる」
「っあ」
つぷり、待ちわびたそれは、ついに一息に行われた。
破瓜したのであろう小さな違和感は快楽の波に呑まれ、ほとんど痛みを与えずに過ぎ去る。
と同時に胸をよぎるのは、やっと処女でなくなった喪失感というよりも、愛するひとと真なる夫婦になれた幸福感というよりも、もっと仄暗い納得感と喜ばしい諦観。さらに何かが壊れたという感覚。
それらが昇華した、闇夜に爆ぜる花のような、想い。
(娼妓になる前の私には、もう、戻れない……!)
アリシアは、今やっと、娼妓として生きた一週間の自分と同化した気がした。あの日々を、心の底から肯定できた。
すべて、何もかも、仕方がなかったのだ。【バグ】ったヒロインたる彼女の本能が、欲が、みんなの選択が、想いが、彼女をあの道へと導いた。
眠れる化け物を目覚めさせた。
「ふにゃぁぁああ――っ!」
「ぐっ、ぅあ、あぁ……――!」
繋がったふたりの秘部から、熱いものが一緒に噴き出す。迸る精液を膣内に注がれながら、彼女は勢いよく潮を吹いていた。花の蜜をもって下のお支度をした蜜月の花嫁らしく、今宵の彼女の汁はより甘く匂う。
フィリップとアリシアはどちらも相手にしがみつき、その肌に爪を立てた。彼女の爪が、彼の爪が、肌に赤い痕をつける。
精と蜜とが混じりきって、同じ温度に溶けた頃。ふたりは顔を見合わせた。
「……あ、の……」
「……えっ、と……」
どちらも、即、挿入するや否や浅瀬で果ててしまい、なんというか、どうしてか、ちょっと気まずい。
「…………もっと奥で――」
「きみが搾り取ろうとしたからだろう」
悔しそうに苦笑して、フィリップは腰を前後に軽く動かす。ずちゅ、ぬちゅ、といやらしい音が閨に響いた。
やっと果てられた満足感に浸っていた彼女の奥は、心が追いつくより先に、優しい責めで点火される。再燃する。
「あ、にゃあぁ!?」
「もっと奥でと言ったか? もちろん叶えるよ? うん?」
「まっ、なんで、おっきい……イっ、た、ばっかりなのに? あっ、太くて、いっぱい……」
「一度くらいじゃ萎えない、し、実はまだ半分も挿入っていない」
「ひゃあぁぁ……! みゃっ、にゃむ」
甘い叫び声を上げたアリシアの唇を塞ぎ、舐め、フィリップは「痛くない?」と今さらに訊く。「きもち、いい」とアリシアは返し、ぬかるむ蜜窟で彼の雄槍を締め付けた。
「っ、うぁ、……アリシア」
「んぅっ、あ、フィリップ、さま」
「力を抜いて、怖がらないで……、ね。最後まで、挿れる、から、――僕を、受け容れて」
「はい……っ、にゃ、あっ」
フィリップはアリシアのお腹をそっと撫で擦り、「大丈夫だよ」と汗だくの顔で微笑む。
ああ好きだ――と。
彼女は全身で彼への愛を感じた。
重く、逞しく、愛おしい熱と質量が、彼女の中を割り拓く。空隙を埋め、みっちりと満たしていく。
「ふぅ……ぐっ、あ――」
「――……あんっ」
とちゅん。っと。
子宮口に衝撃が触れ、さらにぐいっと押し上げられる。圧倒的な体格差で愛され、ぎゅっと抱きしめるように奥を潰される。
またふたりは一緒に、今度は、やっと触れあえた感覚を味わい尽くすよう静かに果てた。彼の精は彼女の子宮を歓喜させ、彼女の潮は彼を濡らす。
「あり、しあ――アリシア」
「はい、ふぃりっぷ……さま。――すき、です。好きです、フィリップ」
「……あいしてる」
そして幸せを互いに贈りあうような、キスをした。
いつかのように小刻みにとんとんと叩かれ、果てるには足りない快楽が、彼女の蜜壺や子宮へと響く。
思わず甘え、ねだる声が出た。
「フィリップさま……ぁ、やらぁ。やらっ。触って……触ってぇ」
「うん? どこを触ってほしいの?」
「……いじわる、フィリップ様のいじわる……っ、あぁ、やら、つらい……っの。ジクジク、する……熱いの、切ないの……ッ」
「――ここ?」
「あうっ」
ツンと勃った小さな芽を触られ、腰が跳ねる。違う、けれど気持ちいい……。とろとろになった蜜窟は、溶けそうなほど熱く濡れる。
「あっ、あぁ、あ……好き、フィリップさま、好きぃ……っ」
くっ、と何かに耐えるような音を喉から漏らし、フィリップはゆっくりと息を吐いた。
どうしたのかしらと見上げれば、熱っぽい瞳に射抜かれて、アリシアはどきりとする。キュンとなる。
「…………焦らして、もっと、言わせたかったんだけど……ごめん、僕のほうが、我慢できなさそう……」
「ふにゃ……? あっ、あぁっ!」
ぐりっと強く花芽を押し潰され、と同時に、中へと指が挿し込まれる。青楼で初めて彼を迎えた夜のように、フィリップはアリシアの蜜壺に触れ、掻き混ぜた。
「うぅ、にゃう……」
「っ、はぁ、優しく、やりたいのに……きみが、可愛くて、泣かせたくなる……っ」
「きゃっ、やああぁぁっ! あぁ……!」
淫芽を執拗に捏ねられ、蜜壺のざらついた浅瀬をぐちゅぐちゅと指で擦られて。アリシアの頭はぱちぱちした。
こんなに激しく気持ちよくさせられるのは、青楼での夜以来。まだ雄茎は受け容れていないのに、もう思いきり果ててしまいそうになる。深く達しそうになる。そろそろ潮も吹きそうで……。
「ふぃり、フィリップさまっ、あぁ、う」
「アリシア、好き、だよ……」
と。いきなり。彼は芽と中とを責める動きを止め、ただ切なげに愛を囁いた。
「ひゃう……? ぅん……?」
アリシアの快感は頂に至ることなく、奥の奥へと積もっていく。
「フィリップ、さま――」
「やっぱり可愛い」
なんて甘やかに紡ぎ、今度のフィリップは、アリシアの唇にキスをした。気遣いを感じる口づけを嬉しく思いつつ、アリシアは、中途半端にされた色欲を燻らせる。
「可愛くて、大好き……泣かせたい、けど、泣かせたくない……」
「泣いちゃうくらい、激しくしても……いい、ですよ?」
「ん、ありがとう……、ああ、好き。好きだよ」
それからフィリップは、何度もアリシアに寸止めをした。理性と欲とで戦っているようだった。
彼女が達する直前に責めを止めては、唇にキスをしたり、肌にキスマークをつけたり、耳元で甘く囁いたり。
アリシアの白い肌には赤い花痕がいくつも咲き誇り、愛されるたびに敏感になっている気さえする。
「綺麗だ――」
ぐずぐずゆるゆるのアリシアの髪を掬い、とても真っ直ぐな瞳で褒め。フィリップは彼女の髪にも口づけた。髪に感覚はないのにもかかわらず、じゅわぁっと愛液が漏れてくる。
左の乳房にまたキスの花が咲き、先端も唇と舌で責められた。乳輪を舌でちろちろと舐められ、勃起した乳嘴を吸われ、火照った下腹部がひくついてしまう。
「フィリップ、さま、もう、だめ……だめ……やぁんっ! やっ」
彼の長い指はアリシアの花心をぴちゃぴちゃと言わせ、まんべんなく、過ぎるほどにほぐしていた。アリシアの膣内は、もう子種を欲するように、彼の指をきゅうきゅうと締め付ける。
こんなに締められたら抜けないよとフィリップは甘い意地悪を言い、アリシアの内壁をずりゅりとより強く擦り上げた。弱いところを何度も刺激する動きに、アリシアの息は浅くなる。華やかな香の匂いにくらりとする。
「ふぃ、ふぃりゅ、ふぃりっぷ、さま、ひ」
「焦らされるの、つらいね……。可愛い。ごめんね。ぐじゅぐじゅになっちゃって、可愛いよ。もうイきたい?」
「ん……じゅ、りゃ、ずっと、イき……たい、の、続いてれぇ、あっ、イきたい……か、せて、イかせて」
「いいよ」
フィリップは片手でアリシアの蜜窟を責め続けながら、もう一方の手で彼女の涙を拭う。そのさりげない仕草が愛おしかった。
高まる感覚に啼き、はしたなく蜜を滴らせ、待っていると――彼の手が、またも、ぴたりと止まる。
「あん、あぁ、んっ、んにゃあぁ……にゃ?」
限界まで届きそうだった快感の波は越えることなく引き、切ない余韻がアリシアの身体を鞭打つ。続けてと願う腰はひとりでに動くけれど、やっぱり果てるところには行けない。
じわじわと涙ぐんでいたアリシアは、いよいよ本気で泣きそうだった。
「で、でん……殿下、フィリップ、さま? な、なんで、止め……」
「せっかくほぐしたのに、これ以上したら。きみは潮を吹いて、蜜を流してしまうだろう?」
「やぁ、やら! 吹かない……で、我慢、する、からぁ。ね? イかせて? お願い、つらい……っ」
「――だから、」
「あ……」
ちゅぷん、と指を抜かれてしまい、物寂しさをおぼえたのも一瞬のこと。
「ふぁ、フィリップ、さま……」
「今宵は、結婚初夜だ。もう一線を越えても、孕ませても、――奪われない」
雄々しく勃ち、苦しそうに張り詰めたフィリップのものが、アリシアのとろけた蜜口に擦り付けられる。亀頭はぬるりと愛液に濡れ、小さく口を開けた裂け目をなぞった。
「あぁ……」
さらにうるさく騒ぐ胸に手を当て、アリシアは彼の雄芯をじっと見つめる。もはや彼を見る行為への恥じらいは、ない。
蜜壺をはち切れさせてしまいそうなほど大きく立派なそれは、見ているだけでもう可愛い。胸と子宮がきゅんと疼く。
フィリップはアリシアの舌を食べるようなキスをして、彼女の左耳に口づけた。彼の吐息だけで快楽をおぼえる弱い耳へと、愛と覚悟を注ぎ込む。
「愛してるよ、アリシア。一生、手放さない。もう絶対に離さない」
「私も、フィリップ様を、愛しております。二度と……っ、もう、おそばを離れません」
「何も知らない頃には、戻れないけど。きみの居場所は、ここにある。えっちでも、なんでも、どんなきみでも、アリシアは僕の妃だ」
「……はい。おかげさまで、わかっております」
「今、から。ほんとうに、抱くよ……?」
「ええ、……どうぞ」
フィリップの空色の瞳が気遣わしげにアリシアの瞳へと向き、その碧色から具合を読み取るかのように視線を交わす。
アリシアは瞬き、ふわりと笑い、「きてください」と自ら脚を大きく開いた。拍子にくちゅりと音が鳴る。
フィリップの肉杭の先はちゅぷちゅぷと陰唇に何度もキスをして、入りそうで入らない触れ合いを繰り返した。
そして、
「アリシア。――愛してる」
「っあ」
つぷり、待ちわびたそれは、ついに一息に行われた。
破瓜したのであろう小さな違和感は快楽の波に呑まれ、ほとんど痛みを与えずに過ぎ去る。
と同時に胸をよぎるのは、やっと処女でなくなった喪失感というよりも、愛するひとと真なる夫婦になれた幸福感というよりも、もっと仄暗い納得感と喜ばしい諦観。さらに何かが壊れたという感覚。
それらが昇華した、闇夜に爆ぜる花のような、想い。
(娼妓になる前の私には、もう、戻れない……!)
アリシアは、今やっと、娼妓として生きた一週間の自分と同化した気がした。あの日々を、心の底から肯定できた。
すべて、何もかも、仕方がなかったのだ。【バグ】ったヒロインたる彼女の本能が、欲が、みんなの選択が、想いが、彼女をあの道へと導いた。
眠れる化け物を目覚めさせた。
「ふにゃぁぁああ――っ!」
「ぐっ、ぅあ、あぁ……――!」
繋がったふたりの秘部から、熱いものが一緒に噴き出す。迸る精液を膣内に注がれながら、彼女は勢いよく潮を吹いていた。花の蜜をもって下のお支度をした蜜月の花嫁らしく、今宵の彼女の汁はより甘く匂う。
フィリップとアリシアはどちらも相手にしがみつき、その肌に爪を立てた。彼女の爪が、彼の爪が、肌に赤い痕をつける。
精と蜜とが混じりきって、同じ温度に溶けた頃。ふたりは顔を見合わせた。
「……あ、の……」
「……えっ、と……」
どちらも、即、挿入するや否や浅瀬で果ててしまい、なんというか、どうしてか、ちょっと気まずい。
「…………もっと奥で――」
「きみが搾り取ろうとしたからだろう」
悔しそうに苦笑して、フィリップは腰を前後に軽く動かす。ずちゅ、ぬちゅ、といやらしい音が閨に響いた。
やっと果てられた満足感に浸っていた彼女の奥は、心が追いつくより先に、優しい責めで点火される。再燃する。
「あ、にゃあぁ!?」
「もっと奥でと言ったか? もちろん叶えるよ? うん?」
「まっ、なんで、おっきい……イっ、た、ばっかりなのに? あっ、太くて、いっぱい……」
「一度くらいじゃ萎えない、し、実はまだ半分も挿入っていない」
「ひゃあぁぁ……! みゃっ、にゃむ」
甘い叫び声を上げたアリシアの唇を塞ぎ、舐め、フィリップは「痛くない?」と今さらに訊く。「きもち、いい」とアリシアは返し、ぬかるむ蜜窟で彼の雄槍を締め付けた。
「っ、うぁ、……アリシア」
「んぅっ、あ、フィリップ、さま」
「力を抜いて、怖がらないで……、ね。最後まで、挿れる、から、――僕を、受け容れて」
「はい……っ、にゃ、あっ」
フィリップはアリシアのお腹をそっと撫で擦り、「大丈夫だよ」と汗だくの顔で微笑む。
ああ好きだ――と。
彼女は全身で彼への愛を感じた。
重く、逞しく、愛おしい熱と質量が、彼女の中を割り拓く。空隙を埋め、みっちりと満たしていく。
「ふぅ……ぐっ、あ――」
「――……あんっ」
とちゅん。っと。
子宮口に衝撃が触れ、さらにぐいっと押し上げられる。圧倒的な体格差で愛され、ぎゅっと抱きしめるように奥を潰される。
またふたりは一緒に、今度は、やっと触れあえた感覚を味わい尽くすよう静かに果てた。彼の精は彼女の子宮を歓喜させ、彼女の潮は彼を濡らす。
「あり、しあ――アリシア」
「はい、ふぃりっぷ……さま。――すき、です。好きです、フィリップ」
「……あいしてる」
そして幸せを互いに贈りあうような、キスをした。
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