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〈悪役王子〉と〈ヒロイン〉花街編
【24】五日目――富豪様と、宝石で −3− ★
しおりを挟む(フィリップ様は……いつも、かっこつけていらっしゃるけれど。それでいて、私のために、よく泣いてしまわれる方でしたね。私を守るためなら手段を選ばない、大胆な方で。でも、ひどくお優しくて)
「貴方様がご心配なさっているほど、女の身体は――私の身体は、やわではありません。新人とは言えども、今の私は娼妓です。シエラ様やユウ様、貴方様の策略に守られ、高級娼館の上級娼妓という、この恵まれた立場にいるのであっても。七薔薇姫たる姐ふたりに育てられ、見世に出ている、ひとりの椿の女です。ちょっと珍しいだけの行為くらい――無事に遂げられますわ」
言いながら、破綻した慰めの論理だ、とは思う。どんな人間も、壊れる時は壊れる。青楼ファリィサは客を選べるだけの大きな娼館ではあるけれど、客との行為によって心身を壊す女は、どの花街にでも存在する。
「今日も優しくしてくださるのでしょう? 泣いてしまうほど、私を壊したくないと、傷つけたくないとお思いなのでしょう? ならば、大丈夫です。乗り越えられます」
「アリシア……」
彼の手に性具を託し、身体を倒し、腰の下には枕を置いて。脚を開いたアリシアは、自らの陰唇を摘まみ、くぱぁと開く。娼妓らしく微笑む。未来の王妃らしい笑みよりも蠱惑的に、仄暗く。
ぱちりと瞬いた彼の瞳からは、もう涙は落ちなかった。
「――イリス」
「怖い時や痛い時に叫ぶように、気持ちいい時に喘ぐように。きっと、大きな声を出してしまいますが。また猫のように鳴いてしまいますが。どうか止めずに、一緒に触れて、進めて。ただ心をほぐすように、耳元で愛を囁いてください」
「……ああ。わかった」
そうして、ふたりは、それを進めていく。客は娼妓の小さな小さな穴に宝石を触れさせ、その薔薇の茎で弄って。娼妓は客を手伝うように彼の指に己の指を絡め、くにくにと玩具を動かす。
「あぁ……あぁ、にゃあ……」
「好きだよ、アリシア。愛してる」
「んにゃ……ぁ、ああぁ、あっ」
「ずっと大好きだ。心の底から、愛してる」
「あぁっん! あんっ! あ――」
「愛してるよ」
つぷんとハマるような感覚――ぬぷぷぷと細い道を押し拓く侵入感――鮮烈な未知の快感――流れ込む魔力――
「むにゃああああぁぁぁあああぁ――っ!!」
それらを一息のうちに感じたアリシアは絶叫し、潮を吹いて果てた。
「ふゃぅ、あぅ……にゃああぁ……」
淫芽にキスするように、食むようにくっついていた宝石の蕾は、その中央から朝露を激しくこぼす。舌で嬲る大人のキスのごとく、茎を通して流れてきたそれで、敏感な芽をぶじゅぶじゅと快楽の海に溺れさせる。
潮の穴にも宝石の花を咲かせて、アリシアの身体はふわふわと浮くように悦んでいた。
「あー……はあ……はあ……あー……」
「大丈夫か、アリシア」
「ふぃうぃ……ふぃ、フィリップ……しゃまぁ……ふぃりっぷ、っまぁ……」
「ああ、アリシア……。痛い? 苦しい?」
「きゅ、ぅあっ、きもちぃ……気持ちよくれ……癖に、なっれ……しまいしょう……うぅ……きもちいぃ……っ」
「――そっか」
フィリップはまた泣きそうな顔で頷いて、アリシアの唇に優しいキスをした。
「うん……。よく頑張ったね。偉い偉い……。いっぱい可愛いよ。綺麗だよ。じゃあ、ちょっとだけ、ぷるぷるしようね」
「ぷりゅ……? ――ふわぁっ! やあぁぁ!」
双丘を飾る赤い宝石。子宮の上を覆う青い宝石。潮の穴に挿さって花芽にも触れた緑の宝石。そのすべてが一斉に小刻みに震えはじめ、アリシアの弱いところを刺激する。
「にゃあ!? あぁ!! にゃあやぁあああ!」
「魔法石製の玩具なんだ。もう今日はとろとろだから、弱ーく、弱ーく、してあげる。今度する時は、もっとぶるぶるしてみよっか?」
「うにゃあぁん! ふにゃっ、ふにゃ、やああぁん!」
「これを入れたら、やっと、今日の場面は完成だ……。あとちょっとだけ頑張ろうね」
そう言って彼が、最後の最後に見せたのは。白い真珠がいくつも連なった杖のようなもので。娼妓の教本でも見た覚えがあるもので。
「やぁ……!?」
「大丈夫。できるよ」
昨晩、魔法の蔓にほぐされた後ろの穴に――彼は、それをずぷりと突き入れた。
「はあぁんっ!」
「あとちょっと、あとちょっと……頑張れ……っ」
「ふぅ、うぅ……っ、にゃあ、にゃっ、にゃ」
一粒ずつ、一粒ずつ、小さい粒から大きい粒へ、葡萄を食べさせるように中へと押し込まれて。飲み込むごとに増す異物感とじんわりとした快感に、アリシアは鳴く。
「にゃああっん――!」
ぬぷんっと最後の大きな粒が中に落ちると、外には、飾りの玉とそこから伸びる鎖とだけが残って。アリシアは銀の尻尾を生やしたような姿になった。尻尾の先には大粒の金剛石があしらわれており、その様は淫魔のよう。
「あぁっ、本当にできてしまった……! すごいね、アリシア。本当によく頑張ったよ。ああ、またイっちゃった……? 可愛い、可愛い……。うん。いっぱい気持ちよくなっていいよ。茎から伸びた魔力も奥に根づいたようだし、解呪するまではどんなに潮吹きしても抜けないから。薔薇からいっぱいぴゅーぴゅーしていいよ……。抱っこしてあげるから、僕の上でにゃんにゃんしてて」
「ひあぁん……っ!?」
とろけたアリシアの身体をさっと持ち上げ、彼は彼女を正面から抱きしめて、ベッドに倒れて。アリシアは彼の上でうつ伏せ寝をする体勢になった。彼女の自重をかけられた宝石たちは、先ほど座って抱きしめられた時の胸へのそれより深く肌に食い込み、強く振動する。
「にゃぁっ、やぁっ、ちゅよい……!」
「後ろ姿も可愛いね。鎖が汗でキラキラしてて。すべすべの肌が濡れたリボンに透けてて。……えっち」
「にゃっ、やあぁ……ぅんっ。あっ、やぁ、ちゅぶれちゃ、潰れちゃうぅ……! お、おむねと、おまたっ、ぎゅうううってなりゅ……っ」
「うん。ぎゅうって抱きしめてるの。気持ちいいの逃がせないねぇ。ふふ、可愛い声だ。お胸とお股、どっちもまた新しいの覚えちゃったね。僕にも振動が伝わってきて、すごく良いよ……」
「やああぁ――あぁぁっん! にゃあぁ――!」
「またイったの? ああ、自分で吹いた潮に刺激されて連続イキしてるのか。びくんびくんしてるの可愛い……。たくさん気持ちよくなれて偉い偉い……。毎晩、毎晩、より深い快楽を覚えて――きみは、夜ごとに美しくなっていくんだ」
(……美しく……美しく……?)
とめどない快楽で朦朧としたアリシアの頭に、その言葉だけが、鎖や指のように引っかかった。
――美しく。
それは、今の自身の状況から、何より遠い言葉に思えた。今宵ふたりで遊んだ玩具は、金銀宝石は美しい。けれど自分は?
アリシアは、だらしなく喘いで、際限なく潮を吹き散らかして、愛液と汗と唾液とでシーツをぐじゅぐじゅにする自分自身のことを、とても美しいとは表せない。
(私は、美しくない、清くもない……)
手放しそうな意識の中で、彼女は、久しぶりに、この国の民の顔を思い浮かべた。幼少の頃から側仕えをしてくれていた親友を、侍女を想った。王都で彼女を心配しているであろう、テリフィルアの家族を想った。彼女を育てた人々を想った。
(あり得ないことだけれど――こんな姿を、我が愛する民が見たら、どう思うでしょう。子づくりの時でもないのに、貞淑であるべき未来の王妃が、こんなにも感じて喘いで濡らして吹いている。私を淑女らしくしてくださった先生は、優しく支えてくれた女官たちは、私の親愛なる侍女は、家族は、こんな私を知ったら失望するのではないかしら?
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彼に抱きしめられたまま、何度も、何度も、宝石の先から潮を吹いて。淫芽に浴びせて。こぼれた雫で彼を濡らして。喘ぎ続けて閉じられない唇から唾液を垂らして。碧の双眸から涙を流して。
「ああぁっ、にゃあぁ、あぅ」
そうして――彼女は、富豪様との、夜を……。
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