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39話・フューシャ
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「グレン……ごめんなさい……」
そう言うとグレンの目に傷ついた色が浮かんだ。
「違うの……!!」
しっかりとグレンに抱きついてアシュリーは言う。
「グレンのこと大好き……結婚したい……ずっといたい。嘘じゃないよ」
「ん……わかった」
「ごめんなさい……グレン。ごめんなさい……シンシア……」
ヒックヒックと泣きじゃくって首にしがみつくアシュリーの背中をグレンはよしよしと撫でてくれる。
「シンシア……シンシア……」
「なぜ? なぜシンシアにあやまりたいの?」
「あたしっ……いつも、シンシアが、心配っしてくれたのに……いつ、いつも、聞かなくて……会えな、く、なって……ひっく……今も、おびえ、てるなんて……」
「そうか……」
その時、グレンの体が一瞬こわばった。
「アシュリー……」
「……?」
自分の首筋に顔を埋めているアシュリーの肩をトントンと叩いてくる。顔を上げ、グレンの目線を追って振り返ると、そこに悲しい顔をした女の人が立っていた。驚いてその顔をまじまじと見つめてみる。その人は確かに人間でありながら、よく知っている懐かしい顔をしていた。
「シ……シンシアなの……」
こわがりでまじめなシンシアが禁忌を破って人間になるなんて……考えられないが、もしかして自分のためだろうか。アシュリーが驚愕を受けて固まってしまった。それをグレンがそっと膝から降ろして立たせてくれる。
「アシュリー……アシュリー、私こそ、ごめんなさい……」
「ど、どして……」
「私なの……私がフューシャなの……」
「え……? そんな……どういう……」
気が付けばアシュリーは横から支えているグレンの腕にしがみついていた。
「昔、人になってダグラスと結婚したフェアリーは私……。でも、ジムを失って、ダグラスも半分正気じゃなくなってしまって……仲間のフェアリーたちもいなくなって……実体でいる力が一時的に足りなくなってしまったの。そのせいでダグラスのことも息子たちのことも不幸にしてしまった……」
「シンシア……」
「ごめんなさい、それから人が怖くなって……人に惹かれていくあなたの運命に自分を重ねて……人間の姿になるのが禁忌だなんて、嘘なの……ごめんなさい……」
シンシアがポロポロと涙を落した。
「そうだったの……」
「アシュリー、人間の体になったからと言って魔法が使えないわけじゃないのよ。ただ、その体を保つためにたくさんの力を使ってしまうの」
「そ、そんな……」
「だから、あなたが加護を与えた人たちにたくさん愛してもらって、力を途切れさせないで……。そうすれば、みんな幸せでいられるわ。あなたならきっと大丈夫……もう私の言葉に縛られる必要はないわ」
アシュリーがシンシアに手を伸ばしながら近づいていく。涙をこぼしているシンシアの頬を拭うと、彼女はその手を握り、ぎゅうっと抱きしめてくれる。
「シンシア……。何も知らなくて……ごめんね、ありがとう……」
「ううん、私こそ……ずっとありがとう……あなたが生まれてきてくれてずっと楽しかった……! これからもここで見守ってるわ。大好きよ、アシュリー」
「あたしも大好き! シンシア! フューシャ……!」
その時、頭の上をキラキラとした光が走った。見上げるとフェアリーの仲間たちがクスクスと笑いながら飛んでいる。
「みんな!! みんな見えるわ!!」
——おめでとー!アーシューリー!
——いつでも帰っておいで!
——だめだよ! 旦那様と幸せにならなくちゃ!
クスクス、クスクス……
「すごいな……まぶしいくらいだ」
後ろからグレンの驚嘆の声が聞こえる。アシュリーが振り向くと、ポンとその頭に手を置いて言った。
「積もる話をしてから戻っておいで。屋敷で待ってる」
◆◆◆
アシュリーが屋敷に戻ると、玄関の前でグレンが待っていた。
「……! グレン!!」
走ってくるアシュリーをしっかりと受け止めてくれる。
「おかえり」
「ただいま!!」
「アシュリー、ジャンと話したよ」
「えっ!!」
「もう俺たちは同志だ。協力してアシュリーを守り、愛し、力を与える。安心して」
「……ありがと……」
グレンの行動の速さに驚きながらも、アシュリーは抱きつく腕に力を込めた。
「どういたしまして」
「エルナンはまだ子どもだからな……理解できるかどうか。今度、三人で愛し合ってみるか?」
「三人で?……できるの?」
アシュリーはかぁっと赤くなる。グレンはその耳元で囁いた。
「きっともっと気持ちいいと思うよ」
なんだか恥ずかしくなってアシュリーはグレンの胸に顔をうずめたが、また奥からじゅわりと蜜があふれてくるのを感じた。
そう言うとグレンの目に傷ついた色が浮かんだ。
「違うの……!!」
しっかりとグレンに抱きついてアシュリーは言う。
「グレンのこと大好き……結婚したい……ずっといたい。嘘じゃないよ」
「ん……わかった」
「ごめんなさい……グレン。ごめんなさい……シンシア……」
ヒックヒックと泣きじゃくって首にしがみつくアシュリーの背中をグレンはよしよしと撫でてくれる。
「シンシア……シンシア……」
「なぜ? なぜシンシアにあやまりたいの?」
「あたしっ……いつも、シンシアが、心配っしてくれたのに……いつ、いつも、聞かなくて……会えな、く、なって……ひっく……今も、おびえ、てるなんて……」
「そうか……」
その時、グレンの体が一瞬こわばった。
「アシュリー……」
「……?」
自分の首筋に顔を埋めているアシュリーの肩をトントンと叩いてくる。顔を上げ、グレンの目線を追って振り返ると、そこに悲しい顔をした女の人が立っていた。驚いてその顔をまじまじと見つめてみる。その人は確かに人間でありながら、よく知っている懐かしい顔をしていた。
「シ……シンシアなの……」
こわがりでまじめなシンシアが禁忌を破って人間になるなんて……考えられないが、もしかして自分のためだろうか。アシュリーが驚愕を受けて固まってしまった。それをグレンがそっと膝から降ろして立たせてくれる。
「アシュリー……アシュリー、私こそ、ごめんなさい……」
「ど、どして……」
「私なの……私がフューシャなの……」
「え……? そんな……どういう……」
気が付けばアシュリーは横から支えているグレンの腕にしがみついていた。
「昔、人になってダグラスと結婚したフェアリーは私……。でも、ジムを失って、ダグラスも半分正気じゃなくなってしまって……仲間のフェアリーたちもいなくなって……実体でいる力が一時的に足りなくなってしまったの。そのせいでダグラスのことも息子たちのことも不幸にしてしまった……」
「シンシア……」
「ごめんなさい、それから人が怖くなって……人に惹かれていくあなたの運命に自分を重ねて……人間の姿になるのが禁忌だなんて、嘘なの……ごめんなさい……」
シンシアがポロポロと涙を落した。
「そうだったの……」
「アシュリー、人間の体になったからと言って魔法が使えないわけじゃないのよ。ただ、その体を保つためにたくさんの力を使ってしまうの」
「そ、そんな……」
「だから、あなたが加護を与えた人たちにたくさん愛してもらって、力を途切れさせないで……。そうすれば、みんな幸せでいられるわ。あなたならきっと大丈夫……もう私の言葉に縛られる必要はないわ」
アシュリーがシンシアに手を伸ばしながら近づいていく。涙をこぼしているシンシアの頬を拭うと、彼女はその手を握り、ぎゅうっと抱きしめてくれる。
「シンシア……。何も知らなくて……ごめんね、ありがとう……」
「ううん、私こそ……ずっとありがとう……あなたが生まれてきてくれてずっと楽しかった……! これからもここで見守ってるわ。大好きよ、アシュリー」
「あたしも大好き! シンシア! フューシャ……!」
その時、頭の上をキラキラとした光が走った。見上げるとフェアリーの仲間たちがクスクスと笑いながら飛んでいる。
「みんな!! みんな見えるわ!!」
——おめでとー!アーシューリー!
——いつでも帰っておいで!
——だめだよ! 旦那様と幸せにならなくちゃ!
クスクス、クスクス……
「すごいな……まぶしいくらいだ」
後ろからグレンの驚嘆の声が聞こえる。アシュリーが振り向くと、ポンとその頭に手を置いて言った。
「積もる話をしてから戻っておいで。屋敷で待ってる」
◆◆◆
アシュリーが屋敷に戻ると、玄関の前でグレンが待っていた。
「……! グレン!!」
走ってくるアシュリーをしっかりと受け止めてくれる。
「おかえり」
「ただいま!!」
「アシュリー、ジャンと話したよ」
「えっ!!」
「もう俺たちは同志だ。協力してアシュリーを守り、愛し、力を与える。安心して」
「……ありがと……」
グレンの行動の速さに驚きながらも、アシュリーは抱きつく腕に力を込めた。
「どういたしまして」
「エルナンはまだ子どもだからな……理解できるかどうか。今度、三人で愛し合ってみるか?」
「三人で?……できるの?」
アシュリーはかぁっと赤くなる。グレンはその耳元で囁いた。
「きっともっと気持ちいいと思うよ」
なんだか恥ずかしくなってアシュリーはグレンの胸に顔をうずめたが、また奥からじゅわりと蜜があふれてくるのを感じた。
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