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36話・アシュリーの相手
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二日ぶりにアーネスト先生の授業が受けられることになった。
「こんにちは、アシュリー」
「こんにちは、先生」
先生は椅子に座ると、気遣わしげにアシュリーを見つめた。
「体調はどうだ?」
「もう大丈夫です!」
「そうか、初めての風邪はどうだった?」
「……もう懲りました」
アシュリーがそう言うと、先生はふっと笑った。
「でもまたやりそうだな。君は」
結構その台詞は鋭い、とアシュリーは思う。風邪は辛かったが、雨の中でジャンと抱き合うのは癖になりそうなほど興奮した。
「雨の中で何をしていたんだ?」
先生は鋭い目で見てくる。
アシュリーがかぁっと赤くなると、先生はやれやれといった顔をする。
「あの、話を聞いてきました」
「ん?」
「いなくなった庭師のこと……」
「そうか……」
先生の目に少しだけ怯えるような色が浮かんだ気がした。それでも「聞かせてくれ」と促され、コビーから聞いた話をすべて伝える。
「なるほど嫉妬、か……その、ジムさんと家族には申し訳ないことをしてしまったな」
「そんな……」
アーネスト先生は生まれる前のことだし、アーネスト家の人々も没落して苦労したはずだ。
「それを言うならあたしたちフェアリーだって……」
加護を与えて、そのあと結局奪ってしまうなら、それはいいことと言えるのか……。
「あ!でもジムさんは不幸じゃなかったはずだって言ってました!恨み言も聞いたことがないって」
「そうか、そうならいいが……」
先生は納得はしていないようだが、それについてアシュリーと議論する気はなさそうだ。
「フューシャは……」
「ん?」
「フューシャはどうして、人間になったんでしょう……」
アシュリーは心に引っかかっていた疑問を口にした。
「そうだな……彼女もうっかり何か食べた可能性もなきにしもあらずだが」
「ええ……?」
たしかにないとは言い切れない。アシュリーはフェアリーたちの中でも特に破天荒だとか、変わり者だとは言われていたが、元来フェアリーたちはみんな好奇心旺盛で気ままな存在だから……。
「まあ、冗談はさておき」
「えっ」
「私もその理由について考えていた。庭師がいなくなり、荒れ果てたときにフェアリーたちがいなくなったことを思えば……フューシャやアシュリーは、フェアリーの花園を守るように行動しているのではないかと」
「花園を、守る……?」
花園の持ち主には繁栄を、手入れをする庭師には緑を守る力を、加護として与えることで、共存しているのではないか、というのが先生の推論だった。
「あたし、そんなこと何も……」
「君がそう考えて行動していると言っているわけではないが、そう動くように何かに仕向けられている、運命づけられているのでは?」
「そういえば……」
アドラスの街の古い妖精が言った『嵐の子よ、あるがままであれ、なるべきようになる』という言葉……あれはそういう意味だったのか……。
その話をすると「あるがままであれ……」と先生はつぶやいて考えこんでいた。
「まあ、なるべきようになる、というならそうなんだろう」
「えっ」
先生の少し投げやりな言い方にアシュリーはびっくりする。
「君の相手はやはり私ではないかもしれないな」
そう言って立ち上がった先生が、なぜだか少し寂しそうに見えて、アシュリーは思わずその手を取った。
「先生……あたし、運命とかよくわからない……だけど、あたしは多分ずっとこの屋敷にいると思います」
「そうか……」
「でもあたしは先生も好き……」
そう言ってアシュリーは立ち上がり、アーネスト先生の背中に手を回した。
「ありがとう、アシュリー」
先生はしばらくそのままで、アシュリーの背中を撫でていたが「時間だ」と言って帰って行ってしまった。
「こんにちは、アシュリー」
「こんにちは、先生」
先生は椅子に座ると、気遣わしげにアシュリーを見つめた。
「体調はどうだ?」
「もう大丈夫です!」
「そうか、初めての風邪はどうだった?」
「……もう懲りました」
アシュリーがそう言うと、先生はふっと笑った。
「でもまたやりそうだな。君は」
結構その台詞は鋭い、とアシュリーは思う。風邪は辛かったが、雨の中でジャンと抱き合うのは癖になりそうなほど興奮した。
「雨の中で何をしていたんだ?」
先生は鋭い目で見てくる。
アシュリーがかぁっと赤くなると、先生はやれやれといった顔をする。
「あの、話を聞いてきました」
「ん?」
「いなくなった庭師のこと……」
「そうか……」
先生の目に少しだけ怯えるような色が浮かんだ気がした。それでも「聞かせてくれ」と促され、コビーから聞いた話をすべて伝える。
「なるほど嫉妬、か……その、ジムさんと家族には申し訳ないことをしてしまったな」
「そんな……」
アーネスト先生は生まれる前のことだし、アーネスト家の人々も没落して苦労したはずだ。
「それを言うならあたしたちフェアリーだって……」
加護を与えて、そのあと結局奪ってしまうなら、それはいいことと言えるのか……。
「あ!でもジムさんは不幸じゃなかったはずだって言ってました!恨み言も聞いたことがないって」
「そうか、そうならいいが……」
先生は納得はしていないようだが、それについてアシュリーと議論する気はなさそうだ。
「フューシャは……」
「ん?」
「フューシャはどうして、人間になったんでしょう……」
アシュリーは心に引っかかっていた疑問を口にした。
「そうだな……彼女もうっかり何か食べた可能性もなきにしもあらずだが」
「ええ……?」
たしかにないとは言い切れない。アシュリーはフェアリーたちの中でも特に破天荒だとか、変わり者だとは言われていたが、元来フェアリーたちはみんな好奇心旺盛で気ままな存在だから……。
「まあ、冗談はさておき」
「えっ」
「私もその理由について考えていた。庭師がいなくなり、荒れ果てたときにフェアリーたちがいなくなったことを思えば……フューシャやアシュリーは、フェアリーの花園を守るように行動しているのではないかと」
「花園を、守る……?」
花園の持ち主には繁栄を、手入れをする庭師には緑を守る力を、加護として与えることで、共存しているのではないか、というのが先生の推論だった。
「あたし、そんなこと何も……」
「君がそう考えて行動していると言っているわけではないが、そう動くように何かに仕向けられている、運命づけられているのでは?」
「そういえば……」
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その話をすると「あるがままであれ……」と先生はつぶやいて考えこんでいた。
「まあ、なるべきようになる、というならそうなんだろう」
「えっ」
先生の少し投げやりな言い方にアシュリーはびっくりする。
「君の相手はやはり私ではないかもしれないな」
そう言って立ち上がった先生が、なぜだか少し寂しそうに見えて、アシュリーは思わずその手を取った。
「先生……あたし、運命とかよくわからない……だけど、あたしは多分ずっとこの屋敷にいると思います」
「そうか……」
「でもあたしは先生も好き……」
そう言ってアシュリーは立ち上がり、アーネスト先生の背中に手を回した。
「ありがとう、アシュリー」
先生はしばらくそのままで、アシュリーの背中を撫でていたが「時間だ」と言って帰って行ってしまった。
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