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25話・君の正体は
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あるがままであれ——。
あるがままだった結果が今なのに……。
今のままでいいの?どうにかなるの?
アシュリーはベッドに寝転んでずっと考え込んでいた。
(どうしたら……)
ディーンと話した後、昼食にも夕食にも出ずベッドにもぐりこんだが、眠れもしないままもう夜明け前だ。
「おなか減った……」
前は、ディーンが食べ物を持ってきてくれたなぁ……などと思い出している。空腹を感じ始めると、悩んでいたことより何か食べたい気持ちでいっぱいになってくる。
(ずっと食べなかったらどうなるんだろう……死んじゃうのかな)
体がなくなってフェアリーに戻ったらいいのに、なんて考えていたら気が付いたら眠りに落ちていた。
コンコンコン!
ノックの音で目が覚める。
慌てて扉を開けるとエルナンだった。
「エルナン……!」
「まだ寝てたの?朝食行こう」
「……待って!着替えてくる!!」
大急ぎで顔を洗って準備すると、廊下に飛び出した。エルナンはちゃんと待ってくれていた。
「……行こ」
いつもよりぶっきらぼうだけど、それでも呼びに来てくれたのがうれしかった。
食堂につくと「おはようございます」とエイプリルも微笑みかけてくれる。
「……おはよう!!」
アシュリーはこれで全部オーケーと思っているわけではないが、少しほっとした。
その様子を見て子どもたちの母が苦笑している。
「もう、あなたたちケンカもほどほどにしなさいよ。エルナン、アシュリー、今日から先生にまた来ていただきますからね。お勉強しっかりしてね」
それはアシュリーにとってうれしい知らせだった。あの秘密の授業をまた受けたいのもあるのだが、今のこの混乱する気持ちを聞いて欲しい。アーネスト先生に相談したかった。
コンコン——
いつもの時間通りに扉がノックされた。
「はい!」
アシュリーは扉のすぐ内側でスタンバイしていて、アーネスト先生は少し驚いた顔をしていた。
「こんにちは、アシュリー」
「……こんにちは、せんせ……」
なぜか先生の顔を見た途端、涙があふれてくる。
アーネスト先生は扉を閉めると、アシュリーの背中に手を当て部屋の中へ誘導した。
「君たちはふたりともこの休日は有意義なものにならなかったようだな。今日は授業ではなく話をしよう」
どうやらエルナンも授業にならなかったらしく、アーネスト先生は少しは状況を知っているようだったが、アシュリーはこの四日間にあったことをすべて先生に話した。
先生が帰った後、我慢できずにディーンに口づけて拒絶されたこと、今度は庭師のジャンに同じことをして泣かせてしまったこと、エイプリルとウワサになっていること、エルナンのベッドに行って最後までしてしまったこと、ジャンとも結ばれたこと、お兄さんにはキスをできなかったこと、それは特別な好きなんだとエルナンに言われたこと、みんなが好きなんだといって混乱させたこと、エイプリルを傷つけていたこと——。
「ふむ。いい子で待てと言ったはずだったが……」
アーネスト先生はこめかみに手を当てて頭が痛そうにしている。
「すみません……あたし、我慢できなくて……」
思っていた以上に、この子にはモラルや貞操観念がなかったようだ。自分の理解が足りていなかった、と先生はひそかに反省していた。それなのに、火だけつけて置き去りにしてしまった自分にも大いに責任がある。
「君は……欲望のままに屋敷内で多数の人と触れ合い、時には同意なく襲い掛かり、忠告を受けたにもかかわらず、相手に実情をばらし、混乱されたり傷つかれたりしたことに今度は自分が傷ついている……ということで合っているか?」
「うっ……はい……」
身もふたもない言い方にアシュリーは少しひるんでしまう。そうやって客観的に言われるとやっぱり自分がひどいような気がする。
「そういうのがいけないっていうのがわからなくって……好きに特別があるっていうのもわかりません」
「そうだな……何から話そうか……」
先生は少し考えてから、こう切り出した。
「単刀直入に訊こう。アシュリー、君は本当にランディス家の親戚なのか? 君の正体と目的はなんだ?」
アシュリーは思いもよらなかった質問をぶつけられてびっくりして固まってしまった。
「……」
「君は……君は人間なのか?」
あるがままだった結果が今なのに……。
今のままでいいの?どうにかなるの?
アシュリーはベッドに寝転んでずっと考え込んでいた。
(どうしたら……)
ディーンと話した後、昼食にも夕食にも出ずベッドにもぐりこんだが、眠れもしないままもう夜明け前だ。
「おなか減った……」
前は、ディーンが食べ物を持ってきてくれたなぁ……などと思い出している。空腹を感じ始めると、悩んでいたことより何か食べたい気持ちでいっぱいになってくる。
(ずっと食べなかったらどうなるんだろう……死んじゃうのかな)
体がなくなってフェアリーに戻ったらいいのに、なんて考えていたら気が付いたら眠りに落ちていた。
コンコンコン!
ノックの音で目が覚める。
慌てて扉を開けるとエルナンだった。
「エルナン……!」
「まだ寝てたの?朝食行こう」
「……待って!着替えてくる!!」
大急ぎで顔を洗って準備すると、廊下に飛び出した。エルナンはちゃんと待ってくれていた。
「……行こ」
いつもよりぶっきらぼうだけど、それでも呼びに来てくれたのがうれしかった。
食堂につくと「おはようございます」とエイプリルも微笑みかけてくれる。
「……おはよう!!」
アシュリーはこれで全部オーケーと思っているわけではないが、少しほっとした。
その様子を見て子どもたちの母が苦笑している。
「もう、あなたたちケンカもほどほどにしなさいよ。エルナン、アシュリー、今日から先生にまた来ていただきますからね。お勉強しっかりしてね」
それはアシュリーにとってうれしい知らせだった。あの秘密の授業をまた受けたいのもあるのだが、今のこの混乱する気持ちを聞いて欲しい。アーネスト先生に相談したかった。
コンコン——
いつもの時間通りに扉がノックされた。
「はい!」
アシュリーは扉のすぐ内側でスタンバイしていて、アーネスト先生は少し驚いた顔をしていた。
「こんにちは、アシュリー」
「……こんにちは、せんせ……」
なぜか先生の顔を見た途端、涙があふれてくる。
アーネスト先生は扉を閉めると、アシュリーの背中に手を当て部屋の中へ誘導した。
「君たちはふたりともこの休日は有意義なものにならなかったようだな。今日は授業ではなく話をしよう」
どうやらエルナンも授業にならなかったらしく、アーネスト先生は少しは状況を知っているようだったが、アシュリーはこの四日間にあったことをすべて先生に話した。
先生が帰った後、我慢できずにディーンに口づけて拒絶されたこと、今度は庭師のジャンに同じことをして泣かせてしまったこと、エイプリルとウワサになっていること、エルナンのベッドに行って最後までしてしまったこと、ジャンとも結ばれたこと、お兄さんにはキスをできなかったこと、それは特別な好きなんだとエルナンに言われたこと、みんなが好きなんだといって混乱させたこと、エイプリルを傷つけていたこと——。
「ふむ。いい子で待てと言ったはずだったが……」
アーネスト先生はこめかみに手を当てて頭が痛そうにしている。
「すみません……あたし、我慢できなくて……」
思っていた以上に、この子にはモラルや貞操観念がなかったようだ。自分の理解が足りていなかった、と先生はひそかに反省していた。それなのに、火だけつけて置き去りにしてしまった自分にも大いに責任がある。
「君は……欲望のままに屋敷内で多数の人と触れ合い、時には同意なく襲い掛かり、忠告を受けたにもかかわらず、相手に実情をばらし、混乱されたり傷つかれたりしたことに今度は自分が傷ついている……ということで合っているか?」
「うっ……はい……」
身もふたもない言い方にアシュリーは少しひるんでしまう。そうやって客観的に言われるとやっぱり自分がひどいような気がする。
「そういうのがいけないっていうのがわからなくって……好きに特別があるっていうのもわかりません」
「そうだな……何から話そうか……」
先生は少し考えてから、こう切り出した。
「単刀直入に訊こう。アシュリー、君は本当にランディス家の親戚なのか? 君の正体と目的はなんだ?」
アシュリーは思いもよらなかった質問をぶつけられてびっくりして固まってしまった。
「……」
「君は……君は人間なのか?」
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