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閑話 ヴェラ•ノースハラン

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4大魔法使いの一人、ヴェラ•ノースハランは激怒していた。

「まったく!!!あのクソ生意気な野郎め!!!!」

「まあまあ…落ち着いてよ、ヴェラ。彼のおかげ貴重な魔石がいくつか手に入ったんだし…」

彼女の愛しの旦那様、ロシュエルが必死に宥めるも…あまり効果はない。

「それでもよ!!何よこれ!意味わかんないし!前に住んでた家の畑を丸ごと移動させたいから、手伝えですって!?」

手紙にある話はこうであった。

前に住んでいた家には、何でも生えてくる畑があった。そいつは気前のいいやつだった。引っ越すにあたり、泣く泣く手放したものの、彼女が寂しがるから持ってきたい……らしい。

「なんで私がそんな面倒な事しなきゃならないのよ!?結婚祝いならもうあげたじゃない!!それに、あそこはノイディの管轄だから触れたくないのに…!」

ノイディはヴェラと同じ、4大魔法使いの一人だ。だが、ノイディとヴェラは相性が悪い。お互い嫌いではないのだが、必要以上関わりたくない、というのが本音らしい。

「あああもーーー!!嫌な予感はしてたのよ、貴重な魔石を破格の値段で取引したときから!!!」

あのクソ生意気男、咲夜。彼とはちょくちょく取引する。彼自身のことは気に入らないが、持ってくるブツが中々に良い品で、拒めない。この私を唸らせるほどの魔石を、いったいどこから調達してくるのやら。

「それにしたって、なんでも生えてくる畑か…妙だね。あそこら辺は、周りが影響されるほど強いモノなんて無いはずなのに…」

確かにそうなのだ。まれにこの男が言う畑のような、妙ちきりんなものが生まれる時がある。だがそれは、周囲に伝説級のドラゴンや、聖なる泉、呪いの聖遺物等がある場合。ノイディ管轄のトウィニアにはないはずだ。

「一応、調査だけするべきか…」

流石に無断で調査はできないので、ノイディに手紙を書いた。すると、思いの外早く返信が来た。

まとめて言うと、

「知らん。勝手にしろ。連絡してくるな。」

である。握り潰してやろうかと思った。

クソムカつくが、一応許可が取れたので、早速調査へと向かう。

「これは…すっごい森の奥に住んでたようね。周囲に妙な気配はなし。こんな所に、そんな畑出るものかしら?」

しばらく歩くと、いきなり開けた場所に出た。そこには小さな家と、畑があった。

「これが例の畑か…うん。色々生えてるね。」

ロシュエルのいうとおり、そこには季節感を無視した沢山の野菜や果物がなっていた。

「うわ…!?ちょっと待ちなさいよ、これ貴重なミフリクトの実じゃない…!?」

売れば数十億はする、貴重な霊薬の元もある。

「こっちは南のオルテギア帝国にしかない、アモエナだ…凄いな。実物は初めて見る。」

嘘でしょ…何なのよ、この畑……こんなものが森の奥に存在していたなんて。

「うーん、一応持ち主のもとへ持っていくか…この畑の事を誰よりもわかっているのは、その持ち主だろうし。」

「そうよね…うん…とりあえず、持ち主に返しましょう…」


この世界には、知らないほうがいいもの、黙っておいたほうがいいものがある。これはきっとそういうものだ。

私達は面倒事が嫌いなので、見ざる言わざる聞かざるの三原則を行使し、持ち主へと届けて帰ったのであった…。

その後、お礼として畑のものを頂いたのだが…これまたぶっとんだ物たちで、私達は静かに目を閉じた。

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