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林檎を離すことなんて出来なくて。
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あの日から小原田さんとは会っていない。会社ですれ違っても目も合わなくなった。もう会わないと決めたのは自分なのに、毎日のようにLINEを見てしまう。
小原田さんはもう、好きな人に思いを告げたのだろうか。作り上げたあみぐるみを持って、誰かに告白する小原田さんの姿を思い浮かべ、引き裂かれるような痛みと悲しみに襲われる。
駄目だ、集中できない。コーヒーでも飲もう。本当は紅茶が好きだけど、会社にはコーヒーしかないのだ。給湯室へと向かうと、先客がいた。顔は知ってるが、名前は知らないという感じの人だった。もう少ししてから来よう。踵を返したが…
「ねー!知ってる!?小原田さん、配達先の女性に告白されたんですって!」
足が止まる。血の気が引くのがわかった。
「え、え、それで、どうしたの!?」
「丁重にお断りしたって言ってたわ!好きな人がいるからって!」
ほっとすると同時に、鋭い痛みが胸に走った。
「好きな人!?小原田さん、好きな人がいたの!?」
「そうなのよー!びっくりよね!信じられないでしょ?でも、この間見ちゃったのよ…」
思わず耳をすました。
「小原田さん、すっごく可愛い女性と腕を組んで歩いていたのー!その後、高そうなホテルに入っていったの!きっと、彼女よ!」
「ええええ!じゃ、本当だったんだー!」
音が遠くなる。ぐじゃぐじゃに引き潰された心が悲鳴をあげる。涙が溢れそうになり、止めようとするも、無理だった。
近くのトイレに走り込み、泣いた。
「嫌…小原田さんっ…」
気付いた。自分はもう、あの時から小原田さんが好きだったのだと。でも、何もかも遅い。彼はもう、他の女のものなのだ…。その事がたまらなく悲しくて辛い。
「この顔で仕事なんて到底無理。」
目元で隠れているとはいえ、気付かれるだろう。私は会社を早退した。
家に着いて、ソファに倒れ込んだ。給湯室での会話を思い出し、また涙が出そうになる。編み物でもしよう。そうして、今だけでも忘れてしまおう。
そう思って、道具を持ってこようとした、その時。小原田さんから貰ったコースターが目に入った。
「っ……!」
抱きしめた。小原田さんの姿が、声が、笑顔が消えてくれない。好きが溢れて止まらない。
「無理…諦められない…」
愛しくて甘くて幸せな時間を知ってしまった。前の日々には戻るなんて考えられなかった。
「ごめんなさい、小原田さん。あなたが好きなの。だから…」
あなたの好きな人の座を、盗りにいく。
小原田さんはもう、好きな人に思いを告げたのだろうか。作り上げたあみぐるみを持って、誰かに告白する小原田さんの姿を思い浮かべ、引き裂かれるような痛みと悲しみに襲われる。
駄目だ、集中できない。コーヒーでも飲もう。本当は紅茶が好きだけど、会社にはコーヒーしかないのだ。給湯室へと向かうと、先客がいた。顔は知ってるが、名前は知らないという感じの人だった。もう少ししてから来よう。踵を返したが…
「ねー!知ってる!?小原田さん、配達先の女性に告白されたんですって!」
足が止まる。血の気が引くのがわかった。
「え、え、それで、どうしたの!?」
「丁重にお断りしたって言ってたわ!好きな人がいるからって!」
ほっとすると同時に、鋭い痛みが胸に走った。
「好きな人!?小原田さん、好きな人がいたの!?」
「そうなのよー!びっくりよね!信じられないでしょ?でも、この間見ちゃったのよ…」
思わず耳をすました。
「小原田さん、すっごく可愛い女性と腕を組んで歩いていたのー!その後、高そうなホテルに入っていったの!きっと、彼女よ!」
「ええええ!じゃ、本当だったんだー!」
音が遠くなる。ぐじゃぐじゃに引き潰された心が悲鳴をあげる。涙が溢れそうになり、止めようとするも、無理だった。
近くのトイレに走り込み、泣いた。
「嫌…小原田さんっ…」
気付いた。自分はもう、あの時から小原田さんが好きだったのだと。でも、何もかも遅い。彼はもう、他の女のものなのだ…。その事がたまらなく悲しくて辛い。
「この顔で仕事なんて到底無理。」
目元で隠れているとはいえ、気付かれるだろう。私は会社を早退した。
家に着いて、ソファに倒れ込んだ。給湯室での会話を思い出し、また涙が出そうになる。編み物でもしよう。そうして、今だけでも忘れてしまおう。
そう思って、道具を持ってこようとした、その時。小原田さんから貰ったコースターが目に入った。
「っ……!」
抱きしめた。小原田さんの姿が、声が、笑顔が消えてくれない。好きが溢れて止まらない。
「無理…諦められない…」
愛しくて甘くて幸せな時間を知ってしまった。前の日々には戻るなんて考えられなかった。
「ごめんなさい、小原田さん。あなたが好きなの。だから…」
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