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シェリーさんと犬猿の仲の2人

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さて、知らせが来てから、ワタワタと忙しく走り回り、お爺様をお迎えする準備を整えました。旦那様をちらりと見ると、いつもより、一段と表情が固く険しくなっていて、眼光も鋭いです。

「大丈夫ですよ、旦那様!のようにはなりませんから!」

「そうだろうか…僕には、のようになる未来しか、見えない…」

さて、どうなってしまうのか…不安で不安で、足が震えます。

「いらっしゃいました!!」

リッテの緊張した声に、私達は背筋をピンと伸ばしました。目に映ったのは、雪と柊の紋章を戴く馬車。それは、慣れ親しんだ北の公爵家のものです。そこから、ゆっくりと足を下ろし、こちらへ向かってきたのは…

がっちりムキムキが服の上からでもわかる、強靭な身体。白い髪に、大きな傷が目立つが、不思議と老いを感じさせぬ力強い美貌を秘めた老人。この方が私のお爺様です。

「いらっしゃいませ、お爺様。長旅お疲れ様でした。」

私の言葉に、お爺様は厳しい顔を蕩けさせて微笑み、頭を撫でてくれました。

「久しいな。元気そうでよかった。」

「お久しぶりです、御老公。」

次に、厳しく固い表情で旦那様が挨拶した瞬間…お爺様が白熊になりました。

「久しぶりだな、若造。一ヶ月もシェリーを放っておいて、よくのこのこ顔を出せたな?」

「あの頃は彼女の愛らしさに戸惑い、逃げ出してしまって…今は癒されています。」

どちらも穏やかで、にぃっこりと笑顔を浮かべて握手を交わしていますが、不思議な事に、妙な迫力とギシギシが伝わってきます。

「さ、中へどうぞ!私、お爺様が好きなアップルパイを焼きましたの!」

この空気を変えたくて、そう切り出しました。途端、お爺様は好々爺とし、旦那様は甘い笑顔を浮かべました。でも、それも一種。お互い目が合うと…

「なんだ、その緩んだ顔は。シェリーはわしの為にアップルパイを焼いたのだぞ。」

「ええ、そうですね。ゆっっくり味わって食べてくださいね?彼女の手料理は久しぶりでしょう?それにお年を召されていると、喉に詰まらせてしまいますから?」

「ああ、心配ありがとう。ゆっくりと味わうことにしよう。シェリーは昔から料理上手かったから、楽しみだよ。」

にこにこ、にこにこ。ですがその実、2人とも1ミリたりとも愉快に思っていないのでしょう。今にも殴り合いが始まりそうで、リッテと共にため息をつきました。この後、3人でお茶をするのですが、気が重いです。

張り合うようにして歩く2人の後を、重い足取りで追うのでした。

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