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ライゼン通りのお針子さん7 ~幸せのシンフォニア~
十章 初めての……
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夏になり蒸し暑い毎日が続くある日。
「いよいよ今日がティナさん達に誘われたショーの初日ね」
「そ、そうだね」
中央街にある建物の前に来た時アイリスはキースに話しかける。それに彼が何故か緊張した面持ちで頷いた。
「キース如何したの?」
「何でもないよ。アイリス楽しみ?」
「勿論よ。あんな凄いショーをまじかで見られるのよ。楽しみで楽しみで昨日の夜中々眠れなかったんだから」
誤魔化す彼の言葉に彼女は特に考える事もなく返事をする。
「そんなに楽しみにしていたんだ」
「さ、早くいきましょう」
「うん」
促すアイリスに返事をすると二人は会場へと向かった。
「本当にこんな特別席に座っていいのかな?」
「ティナさん達が用意してくれた席なんだから有り難く使わせてもらおうよ」
舞台の目の前の席を用意してくれていたようで戸惑う彼女へとキースがそう言って笑う。
「そうね。それじゃあ」
アイリスも頷き席へと座ると時間が来るまで待つ。
「ご来場の皆様。お待たせいたしました。猛獣使いティナによる動物達のショーをお届けいたします」
「始まるわよ」
「う、うん」
司会者の言葉に従い舞台の袖からティナと動物達がやって来る。その様子に拍手しながらはしゃぐアイリスとやはりどこか緊張した様子のキース。
「皆さんこんにちは。早速動物達による華麗なるショーをお楽しみください」
ティナが言うと指笛を鳴らす。すると背後に控えていたうさぎ達が前へと進み出て来た。
「まずは可愛いうさぎさん達による縄跳びです。皆上手に飛べるかな? さあ、応援よろしくお願い致します」
彼女が言うと会場内から「頑張れ」の声が響く。その言葉を聞いたティナが合図を送ると二匹が直立して縄を口にして回し始める。
再び指笛を鳴らすと残りのうさぎ達が順番に縄跳びを始めた。
「凄い。うさぎさん達頑張れ」
アイリスも声援を送る。最後のうさぎが縄へと飛び込むと会場内から割れんばかりの拍手が巻き起こった。そうして次々と動物達によるショーが開催されていく。
「さあ、最後の演技は会場にいらっしゃるお客様にも協力してもらいやりたいと思います」
ティナが言うとアイリス達の方へと視線を向ける。
「え?」
「そちらにいらっしゃるお二人さん。お願いできますか?」
驚くアイリスを他所に彼女が微笑み手を差し伸べた。
「え、えぇっと……」
「はい!」
注目を浴びる中戸惑う彼女の返事も待たずにキースが声をあげて立ち上がる。
「アイリス、行こう」
「う、うん」
手を引かれ舞台の上へと立った二人はティナの指示を待つ。
「まずは動物さん達に指示を出します。それが終わって私が手でこうやって合図をしたらお二人には舞台の中央へ移動して頂きます。そこで社交ダンスを踊ってもらいます。ダンスの経験はおありですか?」
「私はないです」
「僕は少しなら……」
ティナの説明を聞いて自信がなさそうに答えるアイリスとキース。
「ではまずは練習をしましょう。ワン、ツー、スリーのリズムに合わせて二人は向き合い手を繋いで踊ってもらいます」
「こ、こうですか?」
「そう、そんな感じで手を繋いでキースさんは右足からアイリスさんは左足からはい。ワン、ツー、スリー。ワン、ツー、スリー。そうです。そのリズムを覚えておいてくださいね」
ティナの言葉に従い練習をすると彼女が今度は会場にいるお客の方へと体を向けた。
「さあ、お待たせいたしました。それでは最後の演技は動物さん達と一緒にこのお二人に踊ってもらいます」
拍手があちこちから聞こえそれが静まるのを待ちティナが指笛を鳴らす。
すると背後に控えていた動物達がアイリス達を囲うように円になり踊り始めた。
小鳥達はアイリス達の背後でハートの形になり空中でとどまり、うさぎやライオン達は飛んだり跳ねたりその場で回ったりと踊り続ける。
「では、お二人さんお願いします」
ティナが手で合図を出すとアシスタントの男性が厳かなゆったりとした音色へと音楽を変えた。
「アイリスやるよ」
「うん」
緊張しながら二人は向き合い社交ダンスを踊り始める。
ぎこちなく踊る二人はお互いの足を踏まないように必死に踊りいつしか集中していった。
そして曲も終わろうかというその時一匹のライオンが動く。
「きゃ」
「っ!?」
押されてよろけたアイリスはそのままキースへと倒れそれをしっかりと抱き留め支える。
「おやおや。意地悪なライオンさんにいたずらされてしまったみたいですね。ふふ。お二人ともご協力ありがとうございました」
ニヤニヤと笑いながらティナが言うと会場中から拍手と口笛。冷やかすような笑い声が聞こえて来た。
「「~~っぅ」」
恥ずかしいやら嬉しいやらで赤面する二人は慌てて舞台から降り椅子へと戻る。
その後はティナ達の声も聞こえない程上の空になり気が付いたら彼女達は舞台からいなくなっていた。
「続きまして我が王国一の踊り子。ミュゥリアムさんによるダンスを披露いたします」
「「!」」
司会者の言葉で現実に戻った二人は舞台へと視線を戻す。
「皆さんこんにちは。私の踊り観て楽しんでいって下さい」
「よ、ミュゥちゃん待ってました!」
「ミュゥちゃん今日も素敵だね」
ミュゥリアムの言葉に会場内から声援があがる。
そうしてひとしきり会場が騒がしくなったが静まり返ったタイミングで彼女が踊り出す。
「アイリスが作った衣装。この舞台でも映えるね」
「ミュゥさんの魅力を引き出せるように色々考えて作ったからかしら」
ミュゥリアムの纏う衣装はベリーダンスのような短い丈の服に腰から踝までの巻きスカート。光に照らされ輝くベルトにつけられた宝石達。両の手首に巻き付く薄く透き通ったリボン。仕立てた服を褒められアイリスは喜ぶ。
踊りも終りを告げようとした時ミュゥリアムがにこりと微笑みアイリスを見た。
「え?」
「今日は私のこの衣装を仕立ててくれたお友達が会場に来ております。皆さん彼女に大きな拍手を。そして素敵な服が欲しい人は是非アイリスさんに頼むと良いです」
目を丸める彼女へとミュゥリアムが言って指し示す。その言葉で会場中から拍手喝采が巻き起こった。
「ミ、ミュゥさんたら」
「まぁ、いつもの事なんだけどね」
キースの言葉に苦笑を零しアイリスは答える。
こうして公演は終わりアイリスとキースは注目を浴びたまま会場を後にした。
「いよいよ今日がティナさん達に誘われたショーの初日ね」
「そ、そうだね」
中央街にある建物の前に来た時アイリスはキースに話しかける。それに彼が何故か緊張した面持ちで頷いた。
「キース如何したの?」
「何でもないよ。アイリス楽しみ?」
「勿論よ。あんな凄いショーをまじかで見られるのよ。楽しみで楽しみで昨日の夜中々眠れなかったんだから」
誤魔化す彼の言葉に彼女は特に考える事もなく返事をする。
「そんなに楽しみにしていたんだ」
「さ、早くいきましょう」
「うん」
促すアイリスに返事をすると二人は会場へと向かった。
「本当にこんな特別席に座っていいのかな?」
「ティナさん達が用意してくれた席なんだから有り難く使わせてもらおうよ」
舞台の目の前の席を用意してくれていたようで戸惑う彼女へとキースがそう言って笑う。
「そうね。それじゃあ」
アイリスも頷き席へと座ると時間が来るまで待つ。
「ご来場の皆様。お待たせいたしました。猛獣使いティナによる動物達のショーをお届けいたします」
「始まるわよ」
「う、うん」
司会者の言葉に従い舞台の袖からティナと動物達がやって来る。その様子に拍手しながらはしゃぐアイリスとやはりどこか緊張した様子のキース。
「皆さんこんにちは。早速動物達による華麗なるショーをお楽しみください」
ティナが言うと指笛を鳴らす。すると背後に控えていたうさぎ達が前へと進み出て来た。
「まずは可愛いうさぎさん達による縄跳びです。皆上手に飛べるかな? さあ、応援よろしくお願い致します」
彼女が言うと会場内から「頑張れ」の声が響く。その言葉を聞いたティナが合図を送ると二匹が直立して縄を口にして回し始める。
再び指笛を鳴らすと残りのうさぎ達が順番に縄跳びを始めた。
「凄い。うさぎさん達頑張れ」
アイリスも声援を送る。最後のうさぎが縄へと飛び込むと会場内から割れんばかりの拍手が巻き起こった。そうして次々と動物達によるショーが開催されていく。
「さあ、最後の演技は会場にいらっしゃるお客様にも協力してもらいやりたいと思います」
ティナが言うとアイリス達の方へと視線を向ける。
「え?」
「そちらにいらっしゃるお二人さん。お願いできますか?」
驚くアイリスを他所に彼女が微笑み手を差し伸べた。
「え、えぇっと……」
「はい!」
注目を浴びる中戸惑う彼女の返事も待たずにキースが声をあげて立ち上がる。
「アイリス、行こう」
「う、うん」
手を引かれ舞台の上へと立った二人はティナの指示を待つ。
「まずは動物さん達に指示を出します。それが終わって私が手でこうやって合図をしたらお二人には舞台の中央へ移動して頂きます。そこで社交ダンスを踊ってもらいます。ダンスの経験はおありですか?」
「私はないです」
「僕は少しなら……」
ティナの説明を聞いて自信がなさそうに答えるアイリスとキース。
「ではまずは練習をしましょう。ワン、ツー、スリーのリズムに合わせて二人は向き合い手を繋いで踊ってもらいます」
「こ、こうですか?」
「そう、そんな感じで手を繋いでキースさんは右足からアイリスさんは左足からはい。ワン、ツー、スリー。ワン、ツー、スリー。そうです。そのリズムを覚えておいてくださいね」
ティナの言葉に従い練習をすると彼女が今度は会場にいるお客の方へと体を向けた。
「さあ、お待たせいたしました。それでは最後の演技は動物さん達と一緒にこのお二人に踊ってもらいます」
拍手があちこちから聞こえそれが静まるのを待ちティナが指笛を鳴らす。
すると背後に控えていた動物達がアイリス達を囲うように円になり踊り始めた。
小鳥達はアイリス達の背後でハートの形になり空中でとどまり、うさぎやライオン達は飛んだり跳ねたりその場で回ったりと踊り続ける。
「では、お二人さんお願いします」
ティナが手で合図を出すとアシスタントの男性が厳かなゆったりとした音色へと音楽を変えた。
「アイリスやるよ」
「うん」
緊張しながら二人は向き合い社交ダンスを踊り始める。
ぎこちなく踊る二人はお互いの足を踏まないように必死に踊りいつしか集中していった。
そして曲も終わろうかというその時一匹のライオンが動く。
「きゃ」
「っ!?」
押されてよろけたアイリスはそのままキースへと倒れそれをしっかりと抱き留め支える。
「おやおや。意地悪なライオンさんにいたずらされてしまったみたいですね。ふふ。お二人ともご協力ありがとうございました」
ニヤニヤと笑いながらティナが言うと会場中から拍手と口笛。冷やかすような笑い声が聞こえて来た。
「「~~っぅ」」
恥ずかしいやら嬉しいやらで赤面する二人は慌てて舞台から降り椅子へと戻る。
その後はティナ達の声も聞こえない程上の空になり気が付いたら彼女達は舞台からいなくなっていた。
「続きまして我が王国一の踊り子。ミュゥリアムさんによるダンスを披露いたします」
「「!」」
司会者の言葉で現実に戻った二人は舞台へと視線を戻す。
「皆さんこんにちは。私の踊り観て楽しんでいって下さい」
「よ、ミュゥちゃん待ってました!」
「ミュゥちゃん今日も素敵だね」
ミュゥリアムの言葉に会場内から声援があがる。
そうしてひとしきり会場が騒がしくなったが静まり返ったタイミングで彼女が踊り出す。
「アイリスが作った衣装。この舞台でも映えるね」
「ミュゥさんの魅力を引き出せるように色々考えて作ったからかしら」
ミュゥリアムの纏う衣装はベリーダンスのような短い丈の服に腰から踝までの巻きスカート。光に照らされ輝くベルトにつけられた宝石達。両の手首に巻き付く薄く透き通ったリボン。仕立てた服を褒められアイリスは喜ぶ。
踊りも終りを告げようとした時ミュゥリアムがにこりと微笑みアイリスを見た。
「え?」
「今日は私のこの衣装を仕立ててくれたお友達が会場に来ております。皆さん彼女に大きな拍手を。そして素敵な服が欲しい人は是非アイリスさんに頼むと良いです」
目を丸める彼女へとミュゥリアムが言って指し示す。その言葉で会場中から拍手喝采が巻き起こった。
「ミ、ミュゥさんたら」
「まぁ、いつもの事なんだけどね」
キースの言葉に苦笑を零しアイリスは答える。
こうして公演は終わりアイリスとキースは注目を浴びたまま会場を後にした。
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