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ライゼン通りのお針子さん6 ~春色の青春物語~
十七章 変わっていく関係
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雪まつりも終り日常へと戻ったライゼン通り。そんなある日の事お客を知らせる鈴の音が鳴り響きアイリスは作業部屋からお店へと戻った。
「いらっしゃいませ」
「よっ。邪魔するぞ」
「こんにちは」
「や、やあ。アイリス」
お店の中にはレイヴィンとディッドとキースがいて。その珍しい組み合わせにアイリスは驚く。
「レイヴィンさんにディッドさんそれにキースも。如何したのですか?」
「あ、いや~。オレ達は特に用事はないんだけどさ」
「キースが君に話したい事があるって言うから連れてきたんだ」
不思議がる彼女へとディッドとレイヴィンがにやにやと笑いながら答える。
「キースが私に話し?」
「そうそう。ほら、キース」
「は、はい。アイリス仕事が終わったらでいいから朝日ヶ丘テラスに来てくれないかな」
さらに目を丸めるアイリスへと隊長が促しキースを押し出す。よろけながら一歩前へと進み出た彼が緊張した様子で話した。
「? 分かったわ。それじゃあ夕方――」
「お店の事は俺が見ているから今から行っておいで」
不思議に思いながら返事をしようとすると様子を見ていたイクトがそう声を挟む。
「「!?」」
「お~」
「いや~」
驚くアイリスとキースの後ろでレイヴィンとディッドが何かを察して呟く。
「で、でも」
「一人で大丈夫だよ。それにキース君の話もそんなに長くなる話ではないだろう」
「は、はい」
躊躇う彼女へとイクトが笑顔で話す。その言葉にキースがつい頷いてしまう。
「なら問題はないよ。行っておいで」
「分かりました。キース行きましょう」
「う、うん」
彼の言葉にアイリスは返事をすると彼の方へと向きやる。キースも覚悟を決めた様子で頷く。
「「頑張れよ~」」
「頑張るって何を?」
「な、何でもないから行こう」
笑顔で見送るレイヴィンとディッドの言葉に彼女は首をかしげる。それに彼が慌てて答えながら朝日ヶ丘テラスへと向かって行った。
「それで、私に話したい事って何?」
「あ、あのさ。その花火を一緒に見ていた時に僕、アイリスに伝えたい事があったんだ」
テラスまでやって来た時にアイリスは尋ねる。それに彼女の方へと向き直ったキースが口を開く。
「は、花火の時って」
その言葉にアイリスはあの時の言葉を思い出しどぎまぎしながら尋ねるように言う。
「ぼ、僕はアイリスの事が昔から好きだったんだ。だから僕とお付き合いして下さい!」
「!?」
頬を赤らめ頭を下げてお願いするように言い切った彼の言葉に思考が停止してしまったかのように息を呑み驚くアイリス。
「……」
「キース……」
数秒の静寂に包まれキースが不安に思い始めた時アイリスはようやく口を開く。
「ほ、本当に私の事昔から好きだったの?」
「そ、そうだよ」
彼女の言葉に頬を赤らめたまま答える。
「だって、そんな。そんな素振り一度もしていなかったじゃないの。だから私もそんな感情持った事もなかったのに」
「そ、そうだね。一度もアイリスの事が好きだってアピールした事なかったよ。でも本当に好きだったんだ」
うわ言の様に話すアイリスの言葉にキースも不安に思いながらも返事をした。
「……」
「……」
再びの静寂。お互いが緊張したまま地面へと視線を向ける。
「ア、 アイリス。その、困らせてしまったんならごめん。今の話は忘れてくれていいから」
「違う。違うの。そうじゃなくて私まさかキースが本気で私の事を好きだったなんて思わなくて。私恋愛なんてした事ないからこんな時どう返事したらいいのか分からないけれど……い、いいよ。付き合おう。私達」
「え?」
失恋したなと思い始めながら彼が言うと彼女は首を振って答えた。その言葉に驚いてアイリスの顔を見る。
「わ、私。好きとかそういう感情今は分からないけれど。でもキースなら良いかなって思えるからだからいいよ。付き合おう」
「っ」
耳まで真っ赤になった彼女の言葉に意味を理解したキースが沸騰するくらいに赤面して思考を停止した。
「ほ、本当に良いんだね?」
「もう、何度も言わせないでよ!」
「わ、分った。うん。有難う」
二人して真っ赤になった顔でぎこちないやりとりをする。そうして今度はお互い恥ずかしすぎて黙り込んでしまう。
「そ、それじゃあ。今から僕達恋人って事で良いよね」
「う、うん」
静寂を破るようにキースが言うとアイリスも頷く。こうしてすれ違いながらも思いが通じた二人は恋人として付き合うこととなった。
「か、帰ろうか」
「そ、そうね。あ、イクトさんにこの事話さないと。何て言われるかな」
「だ、大丈夫じゃないかな。むしろ何か言われるのは僕の方だと」
「イクトさんは優しい人だからキースに何か言うようには思えないよ」
「そ、そうだと良いけど」
お互いぎこちない会話を交わしながら仕立て屋へと帰る。
今は現実に追いついていないようでお互いどうすれば良いのか分からないようでぎくしゃくしたままライゼン通りまで歩いていた。
「「た、ただいま戻りました」」
「お帰り」
「お、その様子は」
「上手くいったんだな」
仕立て屋の扉を開けてぎこちないままの声を揃ってあげるとイクトは変わらない微笑みを浮かべて出迎え、レイヴィンとディッドはニマニマと笑いながら二人を見る。
「イ、 イクトさん。あの、私達」
「うん。二人の様子を見ればどうなったのか分かるよ。アイリス初めての彼氏が出来て良かったね」
先ほどの告白の事を伝えようと口を開くアイリスへと彼が柔らかく微笑み穏やかな口調で言う。
「キースおめでとう」
「ようやく思いが通じたようだな」
「あ、有難う御座います」
隊長が言うとディッドもはやしたてる。その言葉にまた頬を赤く染め直しながらキースが答えた。
こうして三人に祝福されながら二人の新しい物語は紡がれ始める事になる。
「いらっしゃいませ」
「よっ。邪魔するぞ」
「こんにちは」
「や、やあ。アイリス」
お店の中にはレイヴィンとディッドとキースがいて。その珍しい組み合わせにアイリスは驚く。
「レイヴィンさんにディッドさんそれにキースも。如何したのですか?」
「あ、いや~。オレ達は特に用事はないんだけどさ」
「キースが君に話したい事があるって言うから連れてきたんだ」
不思議がる彼女へとディッドとレイヴィンがにやにやと笑いながら答える。
「キースが私に話し?」
「そうそう。ほら、キース」
「は、はい。アイリス仕事が終わったらでいいから朝日ヶ丘テラスに来てくれないかな」
さらに目を丸めるアイリスへと隊長が促しキースを押し出す。よろけながら一歩前へと進み出た彼が緊張した様子で話した。
「? 分かったわ。それじゃあ夕方――」
「お店の事は俺が見ているから今から行っておいで」
不思議に思いながら返事をしようとすると様子を見ていたイクトがそう声を挟む。
「「!?」」
「お~」
「いや~」
驚くアイリスとキースの後ろでレイヴィンとディッドが何かを察して呟く。
「で、でも」
「一人で大丈夫だよ。それにキース君の話もそんなに長くなる話ではないだろう」
「は、はい」
躊躇う彼女へとイクトが笑顔で話す。その言葉にキースがつい頷いてしまう。
「なら問題はないよ。行っておいで」
「分かりました。キース行きましょう」
「う、うん」
彼の言葉にアイリスは返事をすると彼の方へと向きやる。キースも覚悟を決めた様子で頷く。
「「頑張れよ~」」
「頑張るって何を?」
「な、何でもないから行こう」
笑顔で見送るレイヴィンとディッドの言葉に彼女は首をかしげる。それに彼が慌てて答えながら朝日ヶ丘テラスへと向かって行った。
「それで、私に話したい事って何?」
「あ、あのさ。その花火を一緒に見ていた時に僕、アイリスに伝えたい事があったんだ」
テラスまでやって来た時にアイリスは尋ねる。それに彼女の方へと向き直ったキースが口を開く。
「は、花火の時って」
その言葉にアイリスはあの時の言葉を思い出しどぎまぎしながら尋ねるように言う。
「ぼ、僕はアイリスの事が昔から好きだったんだ。だから僕とお付き合いして下さい!」
「!?」
頬を赤らめ頭を下げてお願いするように言い切った彼の言葉に思考が停止してしまったかのように息を呑み驚くアイリス。
「……」
「キース……」
数秒の静寂に包まれキースが不安に思い始めた時アイリスはようやく口を開く。
「ほ、本当に私の事昔から好きだったの?」
「そ、そうだよ」
彼女の言葉に頬を赤らめたまま答える。
「だって、そんな。そんな素振り一度もしていなかったじゃないの。だから私もそんな感情持った事もなかったのに」
「そ、そうだね。一度もアイリスの事が好きだってアピールした事なかったよ。でも本当に好きだったんだ」
うわ言の様に話すアイリスの言葉にキースも不安に思いながらも返事をした。
「……」
「……」
再びの静寂。お互いが緊張したまま地面へと視線を向ける。
「ア、 アイリス。その、困らせてしまったんならごめん。今の話は忘れてくれていいから」
「違う。違うの。そうじゃなくて私まさかキースが本気で私の事を好きだったなんて思わなくて。私恋愛なんてした事ないからこんな時どう返事したらいいのか分からないけれど……い、いいよ。付き合おう。私達」
「え?」
失恋したなと思い始めながら彼が言うと彼女は首を振って答えた。その言葉に驚いてアイリスの顔を見る。
「わ、私。好きとかそういう感情今は分からないけれど。でもキースなら良いかなって思えるからだからいいよ。付き合おう」
「っ」
耳まで真っ赤になった彼女の言葉に意味を理解したキースが沸騰するくらいに赤面して思考を停止した。
「ほ、本当に良いんだね?」
「もう、何度も言わせないでよ!」
「わ、分った。うん。有難う」
二人して真っ赤になった顔でぎこちないやりとりをする。そうして今度はお互い恥ずかしすぎて黙り込んでしまう。
「そ、それじゃあ。今から僕達恋人って事で良いよね」
「う、うん」
静寂を破るようにキースが言うとアイリスも頷く。こうしてすれ違いながらも思いが通じた二人は恋人として付き合うこととなった。
「か、帰ろうか」
「そ、そうね。あ、イクトさんにこの事話さないと。何て言われるかな」
「だ、大丈夫じゃないかな。むしろ何か言われるのは僕の方だと」
「イクトさんは優しい人だからキースに何か言うようには思えないよ」
「そ、そうだと良いけど」
お互いぎこちない会話を交わしながら仕立て屋へと帰る。
今は現実に追いついていないようでお互いどうすれば良いのか分からないようでぎくしゃくしたままライゼン通りまで歩いていた。
「「た、ただいま戻りました」」
「お帰り」
「お、その様子は」
「上手くいったんだな」
仕立て屋の扉を開けてぎこちないままの声を揃ってあげるとイクトは変わらない微笑みを浮かべて出迎え、レイヴィンとディッドはニマニマと笑いながら二人を見る。
「イ、 イクトさん。あの、私達」
「うん。二人の様子を見ればどうなったのか分かるよ。アイリス初めての彼氏が出来て良かったね」
先ほどの告白の事を伝えようと口を開くアイリスへと彼が柔らかく微笑み穏やかな口調で言う。
「キースおめでとう」
「ようやく思いが通じたようだな」
「あ、有難う御座います」
隊長が言うとディッドもはやしたてる。その言葉にまた頬を赤く染め直しながらキースが答えた。
こうして三人に祝福されながら二人の新しい物語は紡がれ始める事になる。
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