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ライゼン通りのお針子さん6 ~春色の青春物語~
十六章 雪まつり
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冬本番と言わんばかりに寒い日が続くある日の事。
「こんにちは、アイリスいるかな?」
「あら、キース如何したの」
店内へと入って来たキースへとアイリスは近寄り尋ねる。
「ここコーディル王国には毎年冬になると雪まつりって言うのが開催される。その事はアイリスも知っているだろう」
「えぇ、知っているわ。噴水広場に雪の彫刻がたくさん並ぶお祭りよね」
彼の言葉に彼女は小さく頷いて答えた。
「あ、あのさ。アイリス今年は良かったら一緒にそのお祭りを見に行かないかな」
「え?」
キースのお誘いに驚いて目を瞬く。
「実は僕今年は雪まつりの日非番なんだよね。だからお祭りを見てみたくて。アイリス一緒に来てくれないかな」
「そう言う事なら分かったわ」
少し恥ずかしそうに照れながら話した言葉に彼女は笑顔で了承する。
「それじゃあ雪まつりの日噴水広場の入り口で待ってるから」
「うん」
承諾してもらえたことに安堵しながらキースが言うと店を出て行った。
「そういえばイクトさん雪まつりも運営のお手伝いするって言っていたな。役員会のお仕事だとか……キース気を使ってくれたのかも」
一人でお祭りに参加する予定だったのだが彼と一緒に行くことになったアイリスは呟く。
こうして時間は流れて雪まつり当日の朝を迎えた。
「キース」
「やぁ。アイリス、来てくれたんだね」
手を振って駆け寄るとキースが安堵して微笑む。
「それで、何処から見るの?」
「とりあえずそこにある雪像から……あ、露店も出てるんだね」
アイリスの言葉に彼が近くにある雪像を見ながら話すと露店に気付く。
「何か食べたい物とかあったら買ってこようか?」
視線がそちらに向いていることに気付いた彼女は尋ねる。
「今は大丈夫。それより雪像を見に行こう」
「うん」
二人は広場中に点在する雪の彫刻を一つずつ見て回ることにした。
「この雪像可愛いね」
「コーディル王国に生息している三本縞リスの彫刻だね」
リスの姿をした雪像にアイリスは微笑む。その彫刻を見ていたキースがそう呟いた。
「三本縞リスっていうと尻尾に三本の線が入っているあのリスよね」
「うん。僕はまだ会った事ないけどアイリスは遭遇したことある?」
彼女の言葉に彼が尋ねる。
「私もこの国に来てから未だに見た事ないの。緑地公園に良く出没するって聞いているんだけれどお仕事が忙しくて公園自体にも行った事ないから」
「そっか。お店忙しそうだもんね。僕も仕事ばかりだから行った事なかったな。今度の休みの日に散歩がてら探してみるかな」
アイリスもまだ見た事ないと言って溜息を吐き出す。キースが再び雪像を見ながら呟いた。
「それじゃあ私も一緒に探してあげる」
「アイリスが一緒なら直ぐに見つけられるかも。昔から目が良いから探し物得意だったろう」
彼女の言葉にそちらへと顔を戻した彼が笑顔で言うとアイリスも思い出したのか小さく笑って口を開く。
「そうだったわね。キースは苦手だったっけ」
「そうなんだよね。はははっ」
彼女の言葉に彼が乾いた笑で汗を流す。
「さ、そろそろ次の彫刻を見に行こうか」
十分に見た後二人は次の雪像を見るため移動した。
「お、この彫刻かっこいいね」
「国の守護精霊様の雪像……ってそれって」
男の人の姿をかたどった雪像を見てキースが言うと彫刻の説明札を見たアイリスは冷や汗を流す。
「だけどこの精霊様の顔どこかで見たことがあるような気がするんだけれど。う~ん。どこだったかな」
「き、気にしなくていいんじゃない。それより、キースは王宮に仕えていて精霊様に会ったことあるの?」
彼の言葉に彼女は話をそらそうとする。
「精霊様の存在は聞いて知っているけれど会った事は無いよ。だけどこの顔はどこかで見たことがある気がするんだよね」
「に、似たような顔の人ならいくらでもいるわよ。ほら、この彫刻を作った人の知り合いの顔を模しているのかもしれないじゃない」
誰かに似ている気がすると悩むキースへとアイリスはマクモの事秘密にして欲しいと言われているため答えられず言葉を濁す。
「そうだね。それよりアイリスさっきから挙動不審で如何したの?」
「なんでもないのよ。さ、次に行きましょう」
「う、うん?」
これ以上追究される前に次の雪像へと向かう。
「これはうさぎさんね。可愛い~」
「コーディル王国中に生息している野うさぎだね。あれ、だけど隣のうさぎには額に角みたいなのが生えている?」
うさぎの彫刻を見て微笑むアイリスにキースが野うさぎの隣にある少し大きめのうさぎの雪像を見ながら疑問符を浮かべる。
「本当だ。どうしてなのかしら」
「角が生えたうさぎなんていないよね。空想上の生き物とか?」
彼女も不思議だと言うと彼が仮説を唱えた。
「まさか怪物とかじゃないわよね」
「「……」」
アイリスの言葉に二人は黙り込む。
「「いやいやいやいや」」
お互い変な汗を流しながらそれはないよねといいたげに首を振る。
「う、うさぎ可愛いね」
「えぇ、そうね」
話題を反らすかのようにキースが言うと彼女もそれに乗るように頷く。
「さ、さあ。次に行こうか」
「う、うん、そうしましょう」
その場から逃げるように立ち去り次の雪像を見に行った。
そうこうしている間に時間はあっという間に過ぎていき夕方になる。
「露店でご飯食べるのもたまにはいいわね」
「今日はアイリスのおかげで楽しかったよ。有難う」
「如何いたしまして」
凍るような空気の中湯気の立つスープを飲みながら呟いたアイリスへと彼がお礼を述べる。その言葉に彼女は小さく笑って答えた。
こうして雪まつりの夜は更けていったのである。
「こんにちは、アイリスいるかな?」
「あら、キース如何したの」
店内へと入って来たキースへとアイリスは近寄り尋ねる。
「ここコーディル王国には毎年冬になると雪まつりって言うのが開催される。その事はアイリスも知っているだろう」
「えぇ、知っているわ。噴水広場に雪の彫刻がたくさん並ぶお祭りよね」
彼の言葉に彼女は小さく頷いて答えた。
「あ、あのさ。アイリス今年は良かったら一緒にそのお祭りを見に行かないかな」
「え?」
キースのお誘いに驚いて目を瞬く。
「実は僕今年は雪まつりの日非番なんだよね。だからお祭りを見てみたくて。アイリス一緒に来てくれないかな」
「そう言う事なら分かったわ」
少し恥ずかしそうに照れながら話した言葉に彼女は笑顔で了承する。
「それじゃあ雪まつりの日噴水広場の入り口で待ってるから」
「うん」
承諾してもらえたことに安堵しながらキースが言うと店を出て行った。
「そういえばイクトさん雪まつりも運営のお手伝いするって言っていたな。役員会のお仕事だとか……キース気を使ってくれたのかも」
一人でお祭りに参加する予定だったのだが彼と一緒に行くことになったアイリスは呟く。
こうして時間は流れて雪まつり当日の朝を迎えた。
「キース」
「やぁ。アイリス、来てくれたんだね」
手を振って駆け寄るとキースが安堵して微笑む。
「それで、何処から見るの?」
「とりあえずそこにある雪像から……あ、露店も出てるんだね」
アイリスの言葉に彼が近くにある雪像を見ながら話すと露店に気付く。
「何か食べたい物とかあったら買ってこようか?」
視線がそちらに向いていることに気付いた彼女は尋ねる。
「今は大丈夫。それより雪像を見に行こう」
「うん」
二人は広場中に点在する雪の彫刻を一つずつ見て回ることにした。
「この雪像可愛いね」
「コーディル王国に生息している三本縞リスの彫刻だね」
リスの姿をした雪像にアイリスは微笑む。その彫刻を見ていたキースがそう呟いた。
「三本縞リスっていうと尻尾に三本の線が入っているあのリスよね」
「うん。僕はまだ会った事ないけどアイリスは遭遇したことある?」
彼女の言葉に彼が尋ねる。
「私もこの国に来てから未だに見た事ないの。緑地公園に良く出没するって聞いているんだけれどお仕事が忙しくて公園自体にも行った事ないから」
「そっか。お店忙しそうだもんね。僕も仕事ばかりだから行った事なかったな。今度の休みの日に散歩がてら探してみるかな」
アイリスもまだ見た事ないと言って溜息を吐き出す。キースが再び雪像を見ながら呟いた。
「それじゃあ私も一緒に探してあげる」
「アイリスが一緒なら直ぐに見つけられるかも。昔から目が良いから探し物得意だったろう」
彼女の言葉にそちらへと顔を戻した彼が笑顔で言うとアイリスも思い出したのか小さく笑って口を開く。
「そうだったわね。キースは苦手だったっけ」
「そうなんだよね。はははっ」
彼女の言葉に彼が乾いた笑で汗を流す。
「さ、そろそろ次の彫刻を見に行こうか」
十分に見た後二人は次の雪像を見るため移動した。
「お、この彫刻かっこいいね」
「国の守護精霊様の雪像……ってそれって」
男の人の姿をかたどった雪像を見てキースが言うと彫刻の説明札を見たアイリスは冷や汗を流す。
「だけどこの精霊様の顔どこかで見たことがあるような気がするんだけれど。う~ん。どこだったかな」
「き、気にしなくていいんじゃない。それより、キースは王宮に仕えていて精霊様に会ったことあるの?」
彼の言葉に彼女は話をそらそうとする。
「精霊様の存在は聞いて知っているけれど会った事は無いよ。だけどこの顔はどこかで見たことがある気がするんだよね」
「に、似たような顔の人ならいくらでもいるわよ。ほら、この彫刻を作った人の知り合いの顔を模しているのかもしれないじゃない」
誰かに似ている気がすると悩むキースへとアイリスはマクモの事秘密にして欲しいと言われているため答えられず言葉を濁す。
「そうだね。それよりアイリスさっきから挙動不審で如何したの?」
「なんでもないのよ。さ、次に行きましょう」
「う、うん?」
これ以上追究される前に次の雪像へと向かう。
「これはうさぎさんね。可愛い~」
「コーディル王国中に生息している野うさぎだね。あれ、だけど隣のうさぎには額に角みたいなのが生えている?」
うさぎの彫刻を見て微笑むアイリスにキースが野うさぎの隣にある少し大きめのうさぎの雪像を見ながら疑問符を浮かべる。
「本当だ。どうしてなのかしら」
「角が生えたうさぎなんていないよね。空想上の生き物とか?」
彼女も不思議だと言うと彼が仮説を唱えた。
「まさか怪物とかじゃないわよね」
「「……」」
アイリスの言葉に二人は黙り込む。
「「いやいやいやいや」」
お互い変な汗を流しながらそれはないよねといいたげに首を振る。
「う、うさぎ可愛いね」
「えぇ、そうね」
話題を反らすかのようにキースが言うと彼女もそれに乗るように頷く。
「さ、さあ。次に行こうか」
「う、うん、そうしましょう」
その場から逃げるように立ち去り次の雪像を見に行った。
そうこうしている間に時間はあっという間に過ぎていき夕方になる。
「露店でご飯食べるのもたまにはいいわね」
「今日はアイリスのおかげで楽しかったよ。有難う」
「如何いたしまして」
凍るような空気の中湯気の立つスープを飲みながら呟いたアイリスへと彼がお礼を述べる。その言葉に彼女は小さく笑って答えた。
こうして雪まつりの夜は更けていったのである。
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