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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~
十五章 アスベルとぺスの決断
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アスベルとぺスが三度来たのは一週間が経った頃であった。
「アイリス、今日はちゃんと話し合いをしたい」
「わたし達もよく考えてきたの。だから今日はその話をしたいの」
「どうぞ中に入って。お茶でも飲みながら話そう」
兄妹の言葉にアイリスは簡易台所へと案内する。
「……お父さんが怪我をしてお母さんも働かないといけなくなって家庭が大変な状況なのはアイリスもよく理解していると思う」
「それは、勿論よ」
席に着きお茶を一口飲むと話を始めるアスベルに彼女は答えた。
「だけどお姉さんにはこのお店がある。だからすぐには答えられなかった」
「うん」
ぺスの言葉にアイリスは小さく頷く。
「俺達もいきなり来ていろいろと言ってしまった事済まないと思っている。アイリスの今を知らなかった。だから昔のアイリスのままだと思っていた。だけど違った」
「お姉さんはこの五年の間この仕立て屋で店長として働いてきて、この国の人達から信頼されている。そこまで至るのにはきっと色々と苦労もあったと思うの」
兄妹の言葉にアイリスは二人の顔を見詰めた。
(二人ともどうしたんだろう。何が言いたいの?)
不思議そうに見詰めているとアスベルが再び口を開くのが見えて意識を戻す。
「アイリスにはこのお店がある。そしてこの国の人達に必要とされている。それを見て俺達も色々と考えたんだ」
「お姉さんがどうすれば良いのかと悩むほどこの国での生活が大切なんだって。だからわたし達ももう自分達の都合を押し付けたりしない」
アスベルとぺスが言うと彼女の顔を見て微笑む。
「?」
一体何の事だといいたげに目を瞬くアイリスへと二人が暫く彼女の姿を見詰めていたが話を再開する。
「アイリスは今まで通りこの国で仕立て屋を続けて行って欲しい。家の事は俺達で何とかするから」
「だからお姉さんはこの国で皆の為に服を仕立てて行って」
「ち、ちょっと待って。私も色々と考えた。ずっと答えが出せなくて苦しくて。でも私なりに答えを導き出したの。あのね、私この国が大好き。仕立て屋の仕事が大好き。お客様達が大好き。だからこれからもこの国で仕立て屋の店主として働いて行きたい。だけどおばさんとおじさんの事も大好きで大切。だから仕事が休みの日に家に手伝いに行こうと思うの」
兄妹の言葉にアイリスは慌てて止めると自分の出した答えを伝える。
「うん。それはいい考えだ」
「お姉さんらしいわね」
アスベルとぺスもにこりと笑うと小さく頷く。
「お母さんには俺達から伝えておくよ。アイリスはコーディル王国で頑張っているから家には帰れないってね」
「お兄さんとわたしで出来るだけの事はやるからだからお姉さんを呼び戻すのは諦めてってね」
「アスベル兄さん、ぺス……」
穏やかな表情で微笑み言われた言葉にアイリスは二人の優しさに胸が一杯になる。
「有難う。でも休みの日にはちゃんとお手伝いに行くって伝えてよね」
「あぁ、分ってるって」
「ちゃんと伝えておくわ」
彼女もにこりと笑うとそう話す。それに兄妹が同意して頷いた。
「アイリス、良かったね」
「イクトさん」
ずっと黙って話し合いを聞いていたイクトが言うとアイリスは彼に微笑む。
「イクトおじさんも何時もアイリスの面倒を見てくれて有難う御座います」
「そうそう。お母さん達からもよろしく伝えておいてくださいって頼まれていたんです」
アスベルとぺスの言葉にアイリスは驚く。
「あれ、私二人にイクトさんが私の叔父さんだってこと話したことあったっけ?」
「アイリス、その。知らなかったのお前だけだぞ……」
「実は五年前にお姉さんから届いた手紙にイクトおじさんの事を書いて知らせてくれていたけれど、お母さん達も話していなかったっけ? って不思議そうにしていたわよ」
「ええっ!?」
二人の言葉に心底驚いて呆気にとられる。
「アイリス大丈夫?」
まさかの事実に硬直してしまったアイリスへとイクトが心配して声をかけた。
「そ、それじゃあ皆は昔から知っていたって事?」
「まぁ、親戚だからな」
「お姉さんにも昔話して伝えたって聞いているけれど覚えていないの?」
我に返った彼女は問いかけるとアスベルとぺスがそれぞれ答える。
「う……」
「大丈夫、子供の頃に聞かされたのならば忘れていることもあるよ」
恥ずかしくなって俯くアイリスへとイクトが優しく声をかけた。
「兎に角、これからもアイリスの事よろしくお願い致します」
「お母さん達もイクトおじさんからの手紙楽しみにしているので、また送ってください」
「うん。アイリスの事は俺に任せて。手紙もまた出すよ」
場の空気が微妙になったのでアスベルが仕切り直すとぺスもそう言って微笑む。
イクトが返事をすると和やかな空気が流れ始めた。
「お姉さんも手紙出してくださいね。毎回来るの楽しみにしているから」
「うん。また手紙を書くわ」
妹の言葉にアイリスも笑顔に戻り頷く。
こうしてアスベルとぺスの突然の訪問騒動は幕を閉じ、二人はザールブルグへと帰って行った。
「と、言う感じで話し合いは無事に終わりました。皆さんにご迷惑とご心配をおかけいたし誠に申し訳ございませんでした」
「いや~。アイリスがこの国を出て行かなくてすんで本当に良かった」
「わたくし心配で食事も喉を通りませんでしたのよ。でも、無事に解決してよかったですわ」
後日悩みが解決して仕事に戻ったアイリスがお客達に説明するとマルセンとマーガレットが安堵した表情で話す。
「アイリスさん元気回復してよかったです。またアイリスさんに服仕立ててもらえますね」
「アイリスがまたこうして仕事ができるようになって良かった」
ミュゥリアムがにこりと笑い言うとジャスティンも笑顔で話した。
「これからもライゼン通りでお仕事続けて行かれるんですね。わたし嬉しいです」
「僕も嬉しいです。アイリスさんとお別れすることになるかと少し覚悟もしていたんですよ」
シュテリーナが両掌を叩き嬉しそうに話すとジョルジュも笑顔で言う。
「これからも皆さんの為に服を仕立てて行きますのでよろしくお願い致します」
アイリスの言葉に常連客達は皆微笑む。
彼女がお針子となって以来初めて仕事が出来なくなってしまうほど悩んだ波乱を呼ぶ手紙の騒動は過ぎ去り仕立て屋アイリスに再び笑顔と活気が戻った。
「アイリス、今日はちゃんと話し合いをしたい」
「わたし達もよく考えてきたの。だから今日はその話をしたいの」
「どうぞ中に入って。お茶でも飲みながら話そう」
兄妹の言葉にアイリスは簡易台所へと案内する。
「……お父さんが怪我をしてお母さんも働かないといけなくなって家庭が大変な状況なのはアイリスもよく理解していると思う」
「それは、勿論よ」
席に着きお茶を一口飲むと話を始めるアスベルに彼女は答えた。
「だけどお姉さんにはこのお店がある。だからすぐには答えられなかった」
「うん」
ぺスの言葉にアイリスは小さく頷く。
「俺達もいきなり来ていろいろと言ってしまった事済まないと思っている。アイリスの今を知らなかった。だから昔のアイリスのままだと思っていた。だけど違った」
「お姉さんはこの五年の間この仕立て屋で店長として働いてきて、この国の人達から信頼されている。そこまで至るのにはきっと色々と苦労もあったと思うの」
兄妹の言葉にアイリスは二人の顔を見詰めた。
(二人ともどうしたんだろう。何が言いたいの?)
不思議そうに見詰めているとアスベルが再び口を開くのが見えて意識を戻す。
「アイリスにはこのお店がある。そしてこの国の人達に必要とされている。それを見て俺達も色々と考えたんだ」
「お姉さんがどうすれば良いのかと悩むほどこの国での生活が大切なんだって。だからわたし達ももう自分達の都合を押し付けたりしない」
アスベルとぺスが言うと彼女の顔を見て微笑む。
「?」
一体何の事だといいたげに目を瞬くアイリスへと二人が暫く彼女の姿を見詰めていたが話を再開する。
「アイリスは今まで通りこの国で仕立て屋を続けて行って欲しい。家の事は俺達で何とかするから」
「だからお姉さんはこの国で皆の為に服を仕立てて行って」
「ち、ちょっと待って。私も色々と考えた。ずっと答えが出せなくて苦しくて。でも私なりに答えを導き出したの。あのね、私この国が大好き。仕立て屋の仕事が大好き。お客様達が大好き。だからこれからもこの国で仕立て屋の店主として働いて行きたい。だけどおばさんとおじさんの事も大好きで大切。だから仕事が休みの日に家に手伝いに行こうと思うの」
兄妹の言葉にアイリスは慌てて止めると自分の出した答えを伝える。
「うん。それはいい考えだ」
「お姉さんらしいわね」
アスベルとぺスもにこりと笑うと小さく頷く。
「お母さんには俺達から伝えておくよ。アイリスはコーディル王国で頑張っているから家には帰れないってね」
「お兄さんとわたしで出来るだけの事はやるからだからお姉さんを呼び戻すのは諦めてってね」
「アスベル兄さん、ぺス……」
穏やかな表情で微笑み言われた言葉にアイリスは二人の優しさに胸が一杯になる。
「有難う。でも休みの日にはちゃんとお手伝いに行くって伝えてよね」
「あぁ、分ってるって」
「ちゃんと伝えておくわ」
彼女もにこりと笑うとそう話す。それに兄妹が同意して頷いた。
「アイリス、良かったね」
「イクトさん」
ずっと黙って話し合いを聞いていたイクトが言うとアイリスは彼に微笑む。
「イクトおじさんも何時もアイリスの面倒を見てくれて有難う御座います」
「そうそう。お母さん達からもよろしく伝えておいてくださいって頼まれていたんです」
アスベルとぺスの言葉にアイリスは驚く。
「あれ、私二人にイクトさんが私の叔父さんだってこと話したことあったっけ?」
「アイリス、その。知らなかったのお前だけだぞ……」
「実は五年前にお姉さんから届いた手紙にイクトおじさんの事を書いて知らせてくれていたけれど、お母さん達も話していなかったっけ? って不思議そうにしていたわよ」
「ええっ!?」
二人の言葉に心底驚いて呆気にとられる。
「アイリス大丈夫?」
まさかの事実に硬直してしまったアイリスへとイクトが心配して声をかけた。
「そ、それじゃあ皆は昔から知っていたって事?」
「まぁ、親戚だからな」
「お姉さんにも昔話して伝えたって聞いているけれど覚えていないの?」
我に返った彼女は問いかけるとアスベルとぺスがそれぞれ答える。
「う……」
「大丈夫、子供の頃に聞かされたのならば忘れていることもあるよ」
恥ずかしくなって俯くアイリスへとイクトが優しく声をかけた。
「兎に角、これからもアイリスの事よろしくお願い致します」
「お母さん達もイクトおじさんからの手紙楽しみにしているので、また送ってください」
「うん。アイリスの事は俺に任せて。手紙もまた出すよ」
場の空気が微妙になったのでアスベルが仕切り直すとぺスもそう言って微笑む。
イクトが返事をすると和やかな空気が流れ始めた。
「お姉さんも手紙出してくださいね。毎回来るの楽しみにしているから」
「うん。また手紙を書くわ」
妹の言葉にアイリスも笑顔に戻り頷く。
こうしてアスベルとぺスの突然の訪問騒動は幕を閉じ、二人はザールブルグへと帰って行った。
「と、言う感じで話し合いは無事に終わりました。皆さんにご迷惑とご心配をおかけいたし誠に申し訳ございませんでした」
「いや~。アイリスがこの国を出て行かなくてすんで本当に良かった」
「わたくし心配で食事も喉を通りませんでしたのよ。でも、無事に解決してよかったですわ」
後日悩みが解決して仕事に戻ったアイリスがお客達に説明するとマルセンとマーガレットが安堵した表情で話す。
「アイリスさん元気回復してよかったです。またアイリスさんに服仕立ててもらえますね」
「アイリスがまたこうして仕事ができるようになって良かった」
ミュゥリアムがにこりと笑い言うとジャスティンも笑顔で話した。
「これからもライゼン通りでお仕事続けて行かれるんですね。わたし嬉しいです」
「僕も嬉しいです。アイリスさんとお別れすることになるかと少し覚悟もしていたんですよ」
シュテリーナが両掌を叩き嬉しそうに話すとジョルジュも笑顔で言う。
「これからも皆さんの為に服を仕立てて行きますのでよろしくお願い致します」
アイリスの言葉に常連客達は皆微笑む。
彼女がお針子となって以来初めて仕事が出来なくなってしまうほど悩んだ波乱を呼ぶ手紙の騒動は過ぎ去り仕立て屋アイリスに再び笑顔と活気が戻った。
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