ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記~

水竜寺葵

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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~

十四章 アイリスとお客達

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 数日後アスベルとぺスがまたお店にやって来た。

「アイリス最近調子はどうだ?」

「アイリス、イクト様の足を引っ張っていなくって」

二人が来たタイミングを見計らいマルセンとマーガレットがやって来る。

「お~。アイリスさん私の踊りで元気出してください」

「失礼する。アイリス随分と痩せたようだがちゃんと食べているのか」

ミュゥリアムもやってくるなり踊り出す。そこにジャスティンが入ってくるなり心配そうに見詰めた。

「こんにちは、アイリスさんお元気でしたか?」

「またお話したいと思いこうして訪ねました」

シュテリーナとジョルジュも来店してくるなりアイリスへと声をかける。

「よう、姉ちゃん元気出たか?」

「アイリスさんお久しぶりです~。貴女が元気ないと私も元気ないです。ですから様子を見に来ました」

「失礼する。アイリス悩み事なら相談に乗るぞ。と言っても話を聞くだけだがな」

マクモがレイヤとクラウスを連れてくると二人がそう言って微笑む。

「あぁ、アイリスさん。何と酷いお顔をなさっておりますの。女性は肌が大切なのですわよ。そんなボロボロになるまで泣き腫らしていたなんて……わたくしも心が痛みますわ」

イリスが来店してくるなりアイリスの顔を見て立ち眩みを起こす。

「子猫ちゃん。俺の胸でいくらでも泣いてくれ受け止めてやるからさ」

「馬鹿の言葉は気になさらずに。アイリスさん顔色が悪そうだが無理はしていないかね」

ルークの言葉に続けてグラウィス侯爵も話した。

「失礼する。アイリス殿最近会えなくて寂しかったぞ。どうだね悩みは解決しそうか」

レオがアイリスの顔を見て微笑み語りかける。

「失礼します。アイリスさん、調子はどうですか? 最近お顔が見れていないので今日は会えて嬉しいです」

「アイリス、悩み事は話さなきゃだめよ。あたしで良かったらいつでも聞くから」

ベリルが来店してくるとキリも心配そうに口を開く。

「アイリス、元気ないって聞いて心配していたんだ。幼馴染なんだから相談くらいしてくれてもいいだろう。それとも僕じゃ頼りにならない?」

「そうそう、俺達に相談してくれればいいものを」

「何一人で悩んでるんですか。こんなに沢山の人がアイリスちゃんの事心配しているんですよ」

キースが困った顔で問いかけるとレイヴィンとディッドも話す。

「アイリスさん、それで悩みは解決しそうなのかしら? 皆貴女にまた服を仕立ててもらいたいと思っているのだけれど」

リゼットが言うとアイリスを見詰めた。

「皆……」

「アイリス、いつも通りにご挨拶を」

アイリスが休んでからというもの開店休業状況が続いている店内。そこに沢山の常連がやって来る。皆彼女を慕って来てくれたのだ。その事に嬉しさと戸惑いを抱いているとイクトに優しく声をかけられた。

「はい。……いらっしゃませ、仕立て屋アイリスへようこそ」

「そうそう、その声が聞きたかったんだ」

「やっぱりアイリスのこの声を聞くと元気が出ますわね」

にこりと笑いいつもの声で挨拶をするとマルセンとマーガレットが笑顔で話す。

「私この国着てからずっと聞いてきた声です。この声聞こえなくなると寂しいです」

「アイリスの声を聞くとまた頑張ろうと思えるな」

ミュゥリアムが言うとジャスティンも呟く。

「ふふっ。アイリスさんの声を聞くと安心しますね」

「やっぱりライゼン通りにはこの声がなくてはね」

シュテリーナが微笑むとジョルジュも笑顔で頷く。

「姉ちゃんの声聞くと心が躍るんだよな」

「私もアイリスさんの声大好きです~」

「うむ。活気ある店にはこの声がふさわしい」

マクモが言うとレイヤとクラウスも微笑み話す。

「あぁ、アイリスさんのお声いつ聞いてもいいですわ」

「子猫ちゃんの鳴き声痺れるねぇ~」

「馬鹿の言う事は気にしなくていいです。アイリスさんの声を聞いていると昔を思い出すな」

うっとりとした顔でイリスが言うとルークも呟く。グラウィス侯爵が懐かしいと言って瞳を揺らす。

「いやぁ、アイリス殿の声を聞かないと仕事が身に入らんな」

「アイリスさんの声が聞けて久しぶりに元気をもらいました」

「本当ね。この声が聞けなくなるなんて考えたくないわ」

レオがにこりと笑い言うとベリルとキリが頷き合う。

「アイリスの頑張っている声を聞くと僕も頑張ろうって思えるんだよね」

「この声がないと仕事しててもつまらないんだよな」

「元気を貰える声ですからね」

キースが微笑み言うとレイヴィンとディッドも話す。

「アイリスさんの声を聞くとあ~、明日も頑張ろうって思えるのよね」

リゼットも笑顔で語る。

「「……」」

そんなお客達とのやり取りを見ていたアスベルとぺスが何事か考えるようにアイリスの顔を見詰めた。

「今日は帰る」

「あ、お兄さん待って」

突然踵を返し歩き出す兄を追いかけて妹も店を出て行った。

「如何したんだろう? 話をしないまま帰るなんて」

「何か思う事があったんだろう。きっと次に来た時にはちゃんと話し合いができると思うよ」

アイリスが不思議そうに首をかしげる横でイクトがそう答える。

アスベルとぺスが何を思ったのか、それを知ることが出来るのはもう少し後になってからであった。
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