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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~
十二章 それぞれの思い 前編
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アイリスが仕事が手につかなくなるほど悩み苦しんでいるとイクトから話を聞いたマルセンが尋ね来た。
「なぁ、アイリスが無期限休暇中って本当なのか?」
「あぁ、今のアイリスに仕事はさせられない。ゆっくり考える時間が必要なんだ」
カウンター越しに話して来た彼へとイクトは答える。
「もし、本当にこのままアイリスがこの店を辞めてしまったらイクトお前どうするつもりなんだ」
「何ですって!?」
二人で話をしていた時に少女の甲高い声が聞こえて振り返ると深刻な顔をしたマーガレットが立っていた。
「イクト様先ほどのお話は本当なのですの。アイリスがこのお店を辞めてしまうとは……」
「アイリスを育ててくれたおばさんから手紙が来てね。旦那さんが怪我をして大変だから家に戻って来て欲しいそうなんだよ」
令嬢の言葉にイクトが説明するように話す。
「そんなことわたくしは認めませんわ。アイリスはこのライゼン通りにいいえ、この国になくてはならないお針子なのですわ。アイリスがいなくなるなんてそんな事わたくしは認めませんわ。そんなこと……っぅ」
「お嬢様!」
震える声で話していたかと思うと涙を隠すように店を飛び出してしまうマーガレットへとマルセンが声をかけたが止まることなく走って行ってしまう。
「俺がお嬢様を追いかけて慰めてくる」
彼が言うと店を飛び出して令嬢の後を追いかけた。
「お~。アイリスさんのお話聞きました。私心配で様子見に来ましたよ」
「ミュゥさん。もう噂が広まっているのか」
マルセンが出て行った後すぐに来店してきたミュゥリアムが心配そうな顔で話しかけてきた言葉にイクトは苦笑する。
「アイリスさんとお別れするのとても寂しいです。私この国着て出来た友達です。ですからとても悲しいです。でもアイリスさんが決める事私の気持ちで止められないです。ですから私アイリスさんの事見守ります」
「ミュゥさん有難う。アイリスに伝えておくよ」
「また様子見に来ます」
彼女の言葉に彼がにこりと笑い答えると少しだけ笑顔を取り戻したミュゥリアムもそう言って店を出て行った。
「失礼する。話は聞いた。……その事で王様もシュテナ様もジョン様も気になっているようで一日中考え事ばかりしている。それで様子を見に来た」
ジャスティンがやってくるなり用向きを伝える。その言葉にイクトは現状を説明した。
「では、アイリスの事を知る友人の一人として今は見守ろう。私はアイリスが決めた事なら例え本当にこの店を辞めて故郷に帰ってしまったとしても受け入れようと思っている。友人として言わせてもらえるのであれば別れは寂しいがな。では、仕事があるのでこれで失礼する」
話を聞いたジャスティンが小さく頷き語ると店を出て行く。
「失礼します。イクトさんアイリスさんのお話聞きました。本当にこのお店を辞めてしまうのですか?」
「僕も気になって仕事が手につきません。ですのでこうして確かめに来ました」
駆け込んできたシュテリーナとジョルジュへと向けてイクトが前と同じ説明をする。
「それでは本当なのですね。……アイリスさん。この国でずっと仕立て屋のお針子として働くって言っていたのに」
「シュテナ。これはアイリスさんの家庭の問題だ。僕達の我が儘を通してはいけないよ。どのような決断を下すのかはアイリスさん次第なんだ」
涙を浮かべる王女へと王子が諫めるように話す。
「分かっております。でも、友人としてはとても悲しいです」
「まだ答えが出たわけでもないのに今から悲しんでどうするんだ。アイリスさんがどの様な結論を出したとしても僕達は友人として受け入れよう」
零れ落ちる涙を拭いながら答えたシュテリーナへとジョルジュが優しく諭すように語る。
「はい。イクトさん、アイリスさんにお伝えください。私達はアイリスさんの決めた事なら間違いはないと知っていますと」
王女が涙をぬぐい笑顔で話しをすると二人は店を出ていく。
「よう、兄ちゃん邪魔するぞ」
「マクモさんまで、今日は常連さんが沢山お見えになるな」
昼過ぎ頃明るい声が聞こえて来て突然現れたマクモの様子に彼が呟く。
「レイヤもクラウスも心配していたからな。話を聞きに来た。アイリスが店を辞めてしまうかもしれないって精霊達の間でも話題になってるんだよ」
精霊の言葉にイクトがもう何度目か分からない程伝えて来た説明をする。
「そうか。まぁ、アイリスにとっては人生が変わってしまう大事な局面だからな。よし、分った。レイヤ達にも伝えておくよ」
話を聞いたマクモが小さく頷くと続けて口を開く。
「後、悩むことはとても大切だ。今は苦しくて辛い時かもしれないけれどまぁ、過ぎてしまえばあの時の経験も悪くなかったと思えるって時が必ず来るから。未来は明るいと信じて今は悩めとアイリスに伝えてくれ」
「分かった。伝えておくよ。マクモさん……有難う」
「じゃあな」
精霊の言葉に彼がお礼を述べる。それを見届けるとマクモは来た時と同じように突然消え失せた。
「ん、雨? さっきまで天気が良かったのに――まさか」
「あのぅ……あのね、アイリスさん大変だって聞いて心配になったの。だから……」
突然降り出した雨に過去の記憶が蘇りまさかと思い玄関を見ると、そこにはびしょ濡れの少女が立っていておずおずといった感じで話しかけられる。
その姿にイクトは優しく微笑み安心させるような口調で説明した。
「うん。アイリスさん。わたしも、アイリスさんの事見守っているから。だからね、どうしても不安な時は水を見て語りかけて。そうしたらわたしもお話するからって」
「うん、分かった。ウラちゃん有難う」
話を聞いたウラティミスが一生懸命話す。それにイクトは笑顔で答えた。
「失礼します。話は聞きましたえ。アイリスさんが困っているとか。わらわもお世話になった故に何か協力したいと思い訪れましたわ」
ウラティミスが帰って天気雨となったっ時にお店に一人の女性が訪れる。
「わらわには見えてますえ。アイリスさんが笑っている未来が。ですから大丈夫どすえ」
「そう言って頂けて有り難いです」
にこりと笑い言い切るカヨコの様子にイクトも笑顔になった。
「アイリスさんとイクトさんに幸があらんことを」
彼女が帰ると外はすっかり雨が上がり清々しいまでの晴天となった。その空を眺めながらイクトは胸にこみあげてくる熱い思いに頬を緩ませる。
「アイリスの為にこんなにも沢山の人がそれぞれの思いを伝えてくれる。愛されているようで俺は嬉しいよ」
小さく笑うと仕事へと戻っていった。
「なぁ、アイリスが無期限休暇中って本当なのか?」
「あぁ、今のアイリスに仕事はさせられない。ゆっくり考える時間が必要なんだ」
カウンター越しに話して来た彼へとイクトは答える。
「もし、本当にこのままアイリスがこの店を辞めてしまったらイクトお前どうするつもりなんだ」
「何ですって!?」
二人で話をしていた時に少女の甲高い声が聞こえて振り返ると深刻な顔をしたマーガレットが立っていた。
「イクト様先ほどのお話は本当なのですの。アイリスがこのお店を辞めてしまうとは……」
「アイリスを育ててくれたおばさんから手紙が来てね。旦那さんが怪我をして大変だから家に戻って来て欲しいそうなんだよ」
令嬢の言葉にイクトが説明するように話す。
「そんなことわたくしは認めませんわ。アイリスはこのライゼン通りにいいえ、この国になくてはならないお針子なのですわ。アイリスがいなくなるなんてそんな事わたくしは認めませんわ。そんなこと……っぅ」
「お嬢様!」
震える声で話していたかと思うと涙を隠すように店を飛び出してしまうマーガレットへとマルセンが声をかけたが止まることなく走って行ってしまう。
「俺がお嬢様を追いかけて慰めてくる」
彼が言うと店を飛び出して令嬢の後を追いかけた。
「お~。アイリスさんのお話聞きました。私心配で様子見に来ましたよ」
「ミュゥさん。もう噂が広まっているのか」
マルセンが出て行った後すぐに来店してきたミュゥリアムが心配そうな顔で話しかけてきた言葉にイクトは苦笑する。
「アイリスさんとお別れするのとても寂しいです。私この国着て出来た友達です。ですからとても悲しいです。でもアイリスさんが決める事私の気持ちで止められないです。ですから私アイリスさんの事見守ります」
「ミュゥさん有難う。アイリスに伝えておくよ」
「また様子見に来ます」
彼女の言葉に彼がにこりと笑い答えると少しだけ笑顔を取り戻したミュゥリアムもそう言って店を出て行った。
「失礼する。話は聞いた。……その事で王様もシュテナ様もジョン様も気になっているようで一日中考え事ばかりしている。それで様子を見に来た」
ジャスティンがやってくるなり用向きを伝える。その言葉にイクトは現状を説明した。
「では、アイリスの事を知る友人の一人として今は見守ろう。私はアイリスが決めた事なら例え本当にこの店を辞めて故郷に帰ってしまったとしても受け入れようと思っている。友人として言わせてもらえるのであれば別れは寂しいがな。では、仕事があるのでこれで失礼する」
話を聞いたジャスティンが小さく頷き語ると店を出て行く。
「失礼します。イクトさんアイリスさんのお話聞きました。本当にこのお店を辞めてしまうのですか?」
「僕も気になって仕事が手につきません。ですのでこうして確かめに来ました」
駆け込んできたシュテリーナとジョルジュへと向けてイクトが前と同じ説明をする。
「それでは本当なのですね。……アイリスさん。この国でずっと仕立て屋のお針子として働くって言っていたのに」
「シュテナ。これはアイリスさんの家庭の問題だ。僕達の我が儘を通してはいけないよ。どのような決断を下すのかはアイリスさん次第なんだ」
涙を浮かべる王女へと王子が諫めるように話す。
「分かっております。でも、友人としてはとても悲しいです」
「まだ答えが出たわけでもないのに今から悲しんでどうするんだ。アイリスさんがどの様な結論を出したとしても僕達は友人として受け入れよう」
零れ落ちる涙を拭いながら答えたシュテリーナへとジョルジュが優しく諭すように語る。
「はい。イクトさん、アイリスさんにお伝えください。私達はアイリスさんの決めた事なら間違いはないと知っていますと」
王女が涙をぬぐい笑顔で話しをすると二人は店を出ていく。
「よう、兄ちゃん邪魔するぞ」
「マクモさんまで、今日は常連さんが沢山お見えになるな」
昼過ぎ頃明るい声が聞こえて来て突然現れたマクモの様子に彼が呟く。
「レイヤもクラウスも心配していたからな。話を聞きに来た。アイリスが店を辞めてしまうかもしれないって精霊達の間でも話題になってるんだよ」
精霊の言葉にイクトがもう何度目か分からない程伝えて来た説明をする。
「そうか。まぁ、アイリスにとっては人生が変わってしまう大事な局面だからな。よし、分った。レイヤ達にも伝えておくよ」
話を聞いたマクモが小さく頷くと続けて口を開く。
「後、悩むことはとても大切だ。今は苦しくて辛い時かもしれないけれどまぁ、過ぎてしまえばあの時の経験も悪くなかったと思えるって時が必ず来るから。未来は明るいと信じて今は悩めとアイリスに伝えてくれ」
「分かった。伝えておくよ。マクモさん……有難う」
「じゃあな」
精霊の言葉に彼がお礼を述べる。それを見届けるとマクモは来た時と同じように突然消え失せた。
「ん、雨? さっきまで天気が良かったのに――まさか」
「あのぅ……あのね、アイリスさん大変だって聞いて心配になったの。だから……」
突然降り出した雨に過去の記憶が蘇りまさかと思い玄関を見ると、そこにはびしょ濡れの少女が立っていておずおずといった感じで話しかけられる。
その姿にイクトは優しく微笑み安心させるような口調で説明した。
「うん。アイリスさん。わたしも、アイリスさんの事見守っているから。だからね、どうしても不安な時は水を見て語りかけて。そうしたらわたしもお話するからって」
「うん、分かった。ウラちゃん有難う」
話を聞いたウラティミスが一生懸命話す。それにイクトは笑顔で答えた。
「失礼します。話は聞きましたえ。アイリスさんが困っているとか。わらわもお世話になった故に何か協力したいと思い訪れましたわ」
ウラティミスが帰って天気雨となったっ時にお店に一人の女性が訪れる。
「わらわには見えてますえ。アイリスさんが笑っている未来が。ですから大丈夫どすえ」
「そう言って頂けて有り難いです」
にこりと笑い言い切るカヨコの様子にイクトも笑顔になった。
「アイリスさんとイクトさんに幸があらんことを」
彼女が帰ると外はすっかり雨が上がり清々しいまでの晴天となった。その空を眺めながらイクトは胸にこみあげてくる熱い思いに頬を緩ませる。
「アイリスの為にこんなにも沢山の人がそれぞれの思いを伝えてくれる。愛されているようで俺は嬉しいよ」
小さく笑うと仕事へと戻っていった。
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