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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~
十一章 突然の手紙
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落ち葉が彩るライゼン通りのある日の事。
「あら、おばさんから手紙だわ」
朝ポストを確認したアイリスはそこに入っていた白い封筒の宛名を見て笑顔になる。
「如何したんだろう。この前の手紙の返事かな?」
嬉しそうに呟きながら手紙を持って店へと入った。
『アイリスへ元気にしている? 実は少し困ったことになってしまったの。うちの旦那が仕事中に大怪我をしてしまってね。それで暫く療養しないといけなくなってお家が大変な状況なの。旦那の代わりに私が働かないといけなくなってしまったからそれで貴女に帰ってきてもらいたいのよ。家の事を手伝ってもらいたいの。お返事待ってます。 ライラ』
「えっ。おじさんが怪我を……戻って来てもらいたいって……でも」
「おはよう。アイリス如何したんだ?」
手紙を読み上げた彼女は呆然としてしまう。突然の出来事に頭がついて行かなくて混乱してしまったのだ。そこにやって来たイクトがアイリスの顔を見て驚く。
「イクトさん。おばさんから手紙が来て、おじさんが仕事中に大怪我を負ってしまったらしくおばさんが働かないと行けなくなったから。それで私に戻って来てもらいたいって……」
「え!?」
どこか虚ろな様子の彼女の言葉に彼も驚いて目を見開く。
「私、お店を辞めないといけないの? せっかく店長としての仕事も慣れてきて、この街で骨をうずめるつもりで頑張って来たのに……」
「アイリス。突然の事で混乱してしまうのも無理は無い。ライラさんには少し考えさせてもらえないかって伝えておいてゆっくり決断を決めると良いよ」
「イクトさん……そう、ですよね。こんな重大な事簡単に決めてしまえないですものね」
狼狽えるアイリスへとイクトが優しく落ち着かせるような声音で話す。その言葉に彼女も頷いた。
「それで、アイリスはこの店を辞めてしまうのか?」
「それはまだ分からないよ。兎に角暫くの間は様子を見てみようと思う」
昼過ぎ来店してきたマルセンが驚いて尋ねる言葉に彼が答える。
「なぁ。もし、もしもだ。アイリスがこの店を辞めて故郷に帰ってしまったらイクトお前はそれで平気なのか?」
「如何するのかを決めるのは俺ではなくアイリスだ。だから俺はアイリスが決めた事ならどんな結果であれ受け入れるつもりだよ」
彼の言葉にイクトが普段と変わらない様子で語った。マルセンには口ではそう言うがやはり寂しさがこみあげてきてそれを必死に隠そうとしているように見えて眉を寄せる。
「俺は心配だ。アイリスがいなくなった後お前がまた荒れてしまわないかと思うと……」
「昔の俺だったら荒れていたかもしれないね。でも本当に大丈夫なんだ。俺はアイリスと出会えて救われた。だからもうこれ以上の幸せを俺が貰ってはいけないんだよ」
「イクト……」
彼の言葉にイクトがとても穏やかな微笑みを浮かべて話す。その表情は穏やかなのに影が見えた気がしてマルセンが呟きを零した。
その頃アイリスはいつものように作業部屋で仕立てを行っていたのだが……。
「……」
「アイリス入るよ……アイリス!?」
ぼんやりとしながら作業をしているとイクトの驚いた声が聞こえて我に返る。
「あ、いけない。私ったらぼんやりしてしまってお客様の服なのに」
気が付いた時にはもう手遅れで切ってはいけない部分を切り落としてしまっていて呆然とした様子で呟く。
「アイリス。今日から暫くの間無期限休暇を取るんだ」
「でも仕事があります」
険しい顔でそう言った彼へと彼女は首を振って答える。
「仕事は俺がやるから今は自分の問題と向き合う時だよ。それに、考え込んでばかりいてこんなミスばかりされてはそれこそ仕事が遅れるからね」
「はい。すみません」
優しい口調で諭すように話すイクトへとアイリスは謝った。
「今はゆっくり休むんだ。いいね」
「はい」
彼に言われて作業部屋を出た彼女は二階へと上がり自室へと入る。
「はぁ……私ったらイクトさんに迷惑かけて。何やっているんだろう」
頭を抱えてうずくまるとそうぼやく。
「私、如何したらいいの。おばさん達は私を大切に育ててくれた恩人。でもこのお店で働くことが子どもの頃からの私の夢だった。夢を諦めるかおばさん達の恩を仇で返すか。そんなの決められないよ……」
独り言を零してベッドの縁に座ったまま涙を流す。
「それでイクト君の様子がおかしかったのね」
「いやぁ、また君に迷惑をかけてしまったね。すまない」
その頃一階ではソフィアが来店してきておりイクトと話をしていた。
「迷惑だなんて思っていないわ。それよりも私はアイリスちゃんの事も心配だけれど貴方の事も心配よ。二人してぼんやりされては困るわ。少なくとも貴方はアイリスちゃんの前ではしっかりしてもらわないとね」
「ははっ。まったく返す言葉もないよ。ソフィーが来てくれて良かった。一人だと色々と考えこんでしまいそうだったから」
彼女の言葉に彼が空笑いして語る。
「ソフィーにお願いがあるんだ。アイリスの様子を見てきてくれないかな」
「私はアイリスちゃんに道筋を教えられるような大そうな人間じゃないわ。でも悩んでいる女の子の話を聞いてあげる事ならできるわよ」
イクトの言葉の意味に気付いているソフィアが言うと小さく笑う。
「ここからは女の子通しのお話だから貴方は終わるまで上がってこないでよ」
「お店があるからな。二階には上がらないよ」
彼女の言葉に彼が返事をする。それを確認したソフィアが二階へと上がって行く。
「……」
「アイリスちゃん入るわよ」
ノックの音を響かせるも返事がないので扉を開けて中へと入るとそこにはずっと変わらない姿勢で俯いていたアイリスの姿があった。
「……」
ソフィアは彼女の隣にそっと腰掛けその様子を見詰める。
「ねぇ、アイリスちゃん。イクト君から話は聞いたわ。故郷に戻るかこのお店を続けるかで悩んでいるのよね」
「……」
そっと話しかけるとアイリスは黙って頷く。
「イクト君は貴女の決めた事ならどんな結果でも受け入れるって言っていたわ」
「っ」
イクトの話が出た途端顔をあげてソフィアの方を見る彼女の両頬に手を添えて再び口を開く。
「こんなになるまで泣いていたなんて、可愛い顔が台無しよ。ねぇ、アイリスちゃん。貴女は如何したらいいのか今は悩んで途方に暮れているかもしれない。でも、いつかは答えを出さなきゃいけない。曖昧なままではいられないのよ。昔私もそうだった……前に進まないといけない時は誰にでもあるわ。だから今は大いに悩む事、ね」
「ソフィーさん……っぅ! 私、このお店を辞めたくなんかない。ずっとイクトさんと一緒にこのお店で働いていたい。この国で出会って仲良くなった人達と別れたくなんかない。でも、それでも私を育ててくれたおじさんとおばさんに恩返しもしたい。私如何したらいいのかもう分からないの! ぅう……うわぁぁぁん!!」
優しく語りかけられ堪えていた思いが溢れかえったアイリスは彼女の胸に顔を埋めて大声で泣いた。子どもの様に感情を抑える事無く只々泣き叫ぶ。そんな彼女をソフィアは優しく抱き締めて背中を叩きながらあやしてくれた。
「……っう。私ったらソフィーさんに迷惑かけて。ごめんなさい。お洋服涙で一杯濡らしてしまいましたね」
「いいのよ。少しは落ち着いたかしら」
「はい」
暫くそうして泣き続けていたアイリスは我に返り慌てて彼女から離れる。
「そう、なら私はそろそろ帰るわね。アイリスちゃん。貴女が決めた事ならどんな道であれ間違いはないわ。だからね、自分の決めたことに自信を持ちなさいな」
「ソフィーさん……有難う御座いました」
立ち上がり去り際に言われた言葉にアイリスは深々と頭を下げてお礼した。
「……ソフィーさんかっこいい女性だな。私もあんなふうな大人になれたらいいな」
一人きりになった空間で彼女は小さく呟き笑顔になる。まだ結論は出せないけれども悩んで不安だった心が少しだけ前向きになったような気がしたアイリスであった。
「あら、おばさんから手紙だわ」
朝ポストを確認したアイリスはそこに入っていた白い封筒の宛名を見て笑顔になる。
「如何したんだろう。この前の手紙の返事かな?」
嬉しそうに呟きながら手紙を持って店へと入った。
『アイリスへ元気にしている? 実は少し困ったことになってしまったの。うちの旦那が仕事中に大怪我をしてしまってね。それで暫く療養しないといけなくなってお家が大変な状況なの。旦那の代わりに私が働かないといけなくなってしまったからそれで貴女に帰ってきてもらいたいのよ。家の事を手伝ってもらいたいの。お返事待ってます。 ライラ』
「えっ。おじさんが怪我を……戻って来てもらいたいって……でも」
「おはよう。アイリス如何したんだ?」
手紙を読み上げた彼女は呆然としてしまう。突然の出来事に頭がついて行かなくて混乱してしまったのだ。そこにやって来たイクトがアイリスの顔を見て驚く。
「イクトさん。おばさんから手紙が来て、おじさんが仕事中に大怪我を負ってしまったらしくおばさんが働かないと行けなくなったから。それで私に戻って来てもらいたいって……」
「え!?」
どこか虚ろな様子の彼女の言葉に彼も驚いて目を見開く。
「私、お店を辞めないといけないの? せっかく店長としての仕事も慣れてきて、この街で骨をうずめるつもりで頑張って来たのに……」
「アイリス。突然の事で混乱してしまうのも無理は無い。ライラさんには少し考えさせてもらえないかって伝えておいてゆっくり決断を決めると良いよ」
「イクトさん……そう、ですよね。こんな重大な事簡単に決めてしまえないですものね」
狼狽えるアイリスへとイクトが優しく落ち着かせるような声音で話す。その言葉に彼女も頷いた。
「それで、アイリスはこの店を辞めてしまうのか?」
「それはまだ分からないよ。兎に角暫くの間は様子を見てみようと思う」
昼過ぎ来店してきたマルセンが驚いて尋ねる言葉に彼が答える。
「なぁ。もし、もしもだ。アイリスがこの店を辞めて故郷に帰ってしまったらイクトお前はそれで平気なのか?」
「如何するのかを決めるのは俺ではなくアイリスだ。だから俺はアイリスが決めた事ならどんな結果であれ受け入れるつもりだよ」
彼の言葉にイクトが普段と変わらない様子で語った。マルセンには口ではそう言うがやはり寂しさがこみあげてきてそれを必死に隠そうとしているように見えて眉を寄せる。
「俺は心配だ。アイリスがいなくなった後お前がまた荒れてしまわないかと思うと……」
「昔の俺だったら荒れていたかもしれないね。でも本当に大丈夫なんだ。俺はアイリスと出会えて救われた。だからもうこれ以上の幸せを俺が貰ってはいけないんだよ」
「イクト……」
彼の言葉にイクトがとても穏やかな微笑みを浮かべて話す。その表情は穏やかなのに影が見えた気がしてマルセンが呟きを零した。
その頃アイリスはいつものように作業部屋で仕立てを行っていたのだが……。
「……」
「アイリス入るよ……アイリス!?」
ぼんやりとしながら作業をしているとイクトの驚いた声が聞こえて我に返る。
「あ、いけない。私ったらぼんやりしてしまってお客様の服なのに」
気が付いた時にはもう手遅れで切ってはいけない部分を切り落としてしまっていて呆然とした様子で呟く。
「アイリス。今日から暫くの間無期限休暇を取るんだ」
「でも仕事があります」
険しい顔でそう言った彼へと彼女は首を振って答える。
「仕事は俺がやるから今は自分の問題と向き合う時だよ。それに、考え込んでばかりいてこんなミスばかりされてはそれこそ仕事が遅れるからね」
「はい。すみません」
優しい口調で諭すように話すイクトへとアイリスは謝った。
「今はゆっくり休むんだ。いいね」
「はい」
彼に言われて作業部屋を出た彼女は二階へと上がり自室へと入る。
「はぁ……私ったらイクトさんに迷惑かけて。何やっているんだろう」
頭を抱えてうずくまるとそうぼやく。
「私、如何したらいいの。おばさん達は私を大切に育ててくれた恩人。でもこのお店で働くことが子どもの頃からの私の夢だった。夢を諦めるかおばさん達の恩を仇で返すか。そんなの決められないよ……」
独り言を零してベッドの縁に座ったまま涙を流す。
「それでイクト君の様子がおかしかったのね」
「いやぁ、また君に迷惑をかけてしまったね。すまない」
その頃一階ではソフィアが来店してきておりイクトと話をしていた。
「迷惑だなんて思っていないわ。それよりも私はアイリスちゃんの事も心配だけれど貴方の事も心配よ。二人してぼんやりされては困るわ。少なくとも貴方はアイリスちゃんの前ではしっかりしてもらわないとね」
「ははっ。まったく返す言葉もないよ。ソフィーが来てくれて良かった。一人だと色々と考えこんでしまいそうだったから」
彼女の言葉に彼が空笑いして語る。
「ソフィーにお願いがあるんだ。アイリスの様子を見てきてくれないかな」
「私はアイリスちゃんに道筋を教えられるような大そうな人間じゃないわ。でも悩んでいる女の子の話を聞いてあげる事ならできるわよ」
イクトの言葉の意味に気付いているソフィアが言うと小さく笑う。
「ここからは女の子通しのお話だから貴方は終わるまで上がってこないでよ」
「お店があるからな。二階には上がらないよ」
彼女の言葉に彼が返事をする。それを確認したソフィアが二階へと上がって行く。
「……」
「アイリスちゃん入るわよ」
ノックの音を響かせるも返事がないので扉を開けて中へと入るとそこにはずっと変わらない姿勢で俯いていたアイリスの姿があった。
「……」
ソフィアは彼女の隣にそっと腰掛けその様子を見詰める。
「ねぇ、アイリスちゃん。イクト君から話は聞いたわ。故郷に戻るかこのお店を続けるかで悩んでいるのよね」
「……」
そっと話しかけるとアイリスは黙って頷く。
「イクト君は貴女の決めた事ならどんな結果でも受け入れるって言っていたわ」
「っ」
イクトの話が出た途端顔をあげてソフィアの方を見る彼女の両頬に手を添えて再び口を開く。
「こんなになるまで泣いていたなんて、可愛い顔が台無しよ。ねぇ、アイリスちゃん。貴女は如何したらいいのか今は悩んで途方に暮れているかもしれない。でも、いつかは答えを出さなきゃいけない。曖昧なままではいられないのよ。昔私もそうだった……前に進まないといけない時は誰にでもあるわ。だから今は大いに悩む事、ね」
「ソフィーさん……っぅ! 私、このお店を辞めたくなんかない。ずっとイクトさんと一緒にこのお店で働いていたい。この国で出会って仲良くなった人達と別れたくなんかない。でも、それでも私を育ててくれたおじさんとおばさんに恩返しもしたい。私如何したらいいのかもう分からないの! ぅう……うわぁぁぁん!!」
優しく語りかけられ堪えていた思いが溢れかえったアイリスは彼女の胸に顔を埋めて大声で泣いた。子どもの様に感情を抑える事無く只々泣き叫ぶ。そんな彼女をソフィアは優しく抱き締めて背中を叩きながらあやしてくれた。
「……っう。私ったらソフィーさんに迷惑かけて。ごめんなさい。お洋服涙で一杯濡らしてしまいましたね」
「いいのよ。少しは落ち着いたかしら」
「はい」
暫くそうして泣き続けていたアイリスは我に返り慌てて彼女から離れる。
「そう、なら私はそろそろ帰るわね。アイリスちゃん。貴女が決めた事ならどんな道であれ間違いはないわ。だからね、自分の決めたことに自信を持ちなさいな」
「ソフィーさん……有難う御座いました」
立ち上がり去り際に言われた言葉にアイリスは深々と頭を下げてお礼した。
「……ソフィーさんかっこいい女性だな。私もあんなふうな大人になれたらいいな」
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