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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~
七章 マルセンからの注文
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ジャスティンが依頼をしに来た日の翌日の事である。
「よう。邪魔するぜ」
「あぁ、マルセンいらっしゃい」
お客を知らせる鈴の音と共にマルセンが入って来るとイクトが出迎えた。
「お、イクトが店頭にいるってことは今アイリスは仕立ての仕事中だな」
「そう言う事だね。それで、今日は如何したんだ」
彼の言葉にイクトが用向きを尋ねる。
「あぁ。ジャスティンから話を聞いていると思うけれど遺跡の調査があるだろう。それに冒険者も何人か一緒に行くことになったんだ。ってことでアイリスに服を仕立ててもらいにここに来たと言う訳だ」
「そうか、分かった。アイリスに伝えておくよ」
マルセンの言葉に彼が頷き了承した。
「この紙に全員のデータを書いておいたからこれを参考にして作ってくれ」
「分かった」
やり取りを終えるとマルセンは帰りイクトはアイリスの下へと向かう。
「アイリス入るよ」
「あ、イクトさん。何かありましたか?」
入室してきた彼にアイリスは作業を中断して尋ねる。
「さっきマルセンが来てね。騎士団と一緒に遺跡の調査に冒険者も同行するらしい。それで君に服を作ってもらいたいと注文を受けたんだ。この紙に今回のメンバーのデータが書かれているそうだからこれを参考にして作ってくれとのことだ」
「分かりました。冒険者の方も十五名なんですね。それじゃあ騎士団の服を作りながら一緒に作ってしまいましょう」
「俺も手伝うよ」
「はい。えっと上はファティーグ・ジャケット風にして下はコンバット・パンツ風にして動きやすさ重視にしようと思います。如何でしょうか?」
「うん。冒険者は何かあった時にすぐに動かないといけないし良いと思うよ」
「ではこれで布の色は上着はカーキ色でズボンは黒を選んでっと……」
「それじゃあ俺が裁断するからアイリスは縫い上げをお願いするね」
「はい」
二人は相談し合いながら仕立てを始める。イクトが裁断した服をアイリスは一つずつ丁寧に縫い上げていく。
そうして二人で作業をし全ての依頼を一週間後に仕上げたのである。
二週間後の事マルセンがお店へとやって来た。
「やぁ、邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ。あ、マルセンさん」
「お、アイリスが店頭にいるってことは依頼の品は出来上がっているな」
「はい。こちらになります」
彼の言葉に返事をして袋を持って行く。
「如何でしょうか?」
「それじゃあそれ貰っていくな」
不安そうな顔で尋ねるアイリスへと彼が会計して袋を貰う。
「中を確認しなくて大丈夫ですか?」
「あぁ。アイリスが作ってくれた服なら問題ないだろう」
「でも確認した方が……」
「問題ない。君が作ってくれた服で今まで何かあった事は無かったからな」
不安そうな顔で心配する彼女へとマルセンがにこりと笑い言い切る。
「そうですか、では」
「あぁ、また何かあったらよろしく頼む。じゃあな」
そこまで自信を持って言い切られるとアイリスもこれ以上確認することはできず頷く。
マルセンが出て行った後彼女は何時までも気にしている訳にはいかないと気持ちを切り替える。
「こんにちは。アイリスいるかな」
「あら、キースじゃない」
そこにお客がやって来ると顔を見たアイリスは笑顔を輝かせながら近寄った。
「今日は如何したの? 仕事は?」
「今見回りの途中でこの辺りに来たからアイリスの顔を見に来たんだ。お仕事の方は如何?」
キースの姿に質問攻めをする彼女へと彼が答える。
「皆様のおかげで繁盛しているわ。でも見回り中ならお仕事の途中でしょう。それなのにここで油を売っていて良いの」
「問題ないよ。何しろジャスティン隊長やレイヴィン隊長それにディッドさんもここに入り浸っているから僕がここに出入りしても誰も咎めやしないから」
幼馴染と会えて嬉しいが仕事は大丈夫なのかと問いかけるとキースがそう答えた。
「そうね、王様や王女様や王子様もここに来るくらいだもの、誰も咎められないわよね」
「え、王様や王子様や王女様もここにいらしているの?」
「あれ知らなかったの? てっきり城でも有名な話かと思っていたけれど」
アイリスの言葉に彼が驚いて目を丸めるので不思議に思い尋ねる。
「王様方が時折街に視察に行っていることは聞いていたけれど、そうかここに来ていたんだね」
「もしかして言ってはいけな話だったかしら」
「うん、僕だから良かったけれど他の人にはあんまり話さない方がいいかも」
不安になった彼女の問いかけにキースが小さく頷き答えた。
「ここに来る常連は皆知っているからつい口を滑らせてしまったけれど、そうか言わない方が良いのか。気を付けるね」
「そうした方がいいかも。あ、そろそろ仕事に戻らないと。また様子を見に来るね」
「えぇ。また話しましょうね」
話に区切りがついたところで彼が言うと店を出ていくその背を見送りアイリスは小さく微笑む。
「キース。なかなか頑張っているみたいね。私も頑張らないと」
独り言を呟きやる気に満ち溢れながら店番へと戻った。
「よう。邪魔するぜ」
「あぁ、マルセンいらっしゃい」
お客を知らせる鈴の音と共にマルセンが入って来るとイクトが出迎えた。
「お、イクトが店頭にいるってことは今アイリスは仕立ての仕事中だな」
「そう言う事だね。それで、今日は如何したんだ」
彼の言葉にイクトが用向きを尋ねる。
「あぁ。ジャスティンから話を聞いていると思うけれど遺跡の調査があるだろう。それに冒険者も何人か一緒に行くことになったんだ。ってことでアイリスに服を仕立ててもらいにここに来たと言う訳だ」
「そうか、分かった。アイリスに伝えておくよ」
マルセンの言葉に彼が頷き了承した。
「この紙に全員のデータを書いておいたからこれを参考にして作ってくれ」
「分かった」
やり取りを終えるとマルセンは帰りイクトはアイリスの下へと向かう。
「アイリス入るよ」
「あ、イクトさん。何かありましたか?」
入室してきた彼にアイリスは作業を中断して尋ねる。
「さっきマルセンが来てね。騎士団と一緒に遺跡の調査に冒険者も同行するらしい。それで君に服を作ってもらいたいと注文を受けたんだ。この紙に今回のメンバーのデータが書かれているそうだからこれを参考にして作ってくれとのことだ」
「分かりました。冒険者の方も十五名なんですね。それじゃあ騎士団の服を作りながら一緒に作ってしまいましょう」
「俺も手伝うよ」
「はい。えっと上はファティーグ・ジャケット風にして下はコンバット・パンツ風にして動きやすさ重視にしようと思います。如何でしょうか?」
「うん。冒険者は何かあった時にすぐに動かないといけないし良いと思うよ」
「ではこれで布の色は上着はカーキ色でズボンは黒を選んでっと……」
「それじゃあ俺が裁断するからアイリスは縫い上げをお願いするね」
「はい」
二人は相談し合いながら仕立てを始める。イクトが裁断した服をアイリスは一つずつ丁寧に縫い上げていく。
そうして二人で作業をし全ての依頼を一週間後に仕上げたのである。
二週間後の事マルセンがお店へとやって来た。
「やぁ、邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ。あ、マルセンさん」
「お、アイリスが店頭にいるってことは依頼の品は出来上がっているな」
「はい。こちらになります」
彼の言葉に返事をして袋を持って行く。
「如何でしょうか?」
「それじゃあそれ貰っていくな」
不安そうな顔で尋ねるアイリスへと彼が会計して袋を貰う。
「中を確認しなくて大丈夫ですか?」
「あぁ。アイリスが作ってくれた服なら問題ないだろう」
「でも確認した方が……」
「問題ない。君が作ってくれた服で今まで何かあった事は無かったからな」
不安そうな顔で心配する彼女へとマルセンがにこりと笑い言い切る。
「そうですか、では」
「あぁ、また何かあったらよろしく頼む。じゃあな」
そこまで自信を持って言い切られるとアイリスもこれ以上確認することはできず頷く。
マルセンが出て行った後彼女は何時までも気にしている訳にはいかないと気持ちを切り替える。
「こんにちは。アイリスいるかな」
「あら、キースじゃない」
そこにお客がやって来ると顔を見たアイリスは笑顔を輝かせながら近寄った。
「今日は如何したの? 仕事は?」
「今見回りの途中でこの辺りに来たからアイリスの顔を見に来たんだ。お仕事の方は如何?」
キースの姿に質問攻めをする彼女へと彼が答える。
「皆様のおかげで繁盛しているわ。でも見回り中ならお仕事の途中でしょう。それなのにここで油を売っていて良いの」
「問題ないよ。何しろジャスティン隊長やレイヴィン隊長それにディッドさんもここに入り浸っているから僕がここに出入りしても誰も咎めやしないから」
幼馴染と会えて嬉しいが仕事は大丈夫なのかと問いかけるとキースがそう答えた。
「そうね、王様や王女様や王子様もここに来るくらいだもの、誰も咎められないわよね」
「え、王様や王子様や王女様もここにいらしているの?」
「あれ知らなかったの? てっきり城でも有名な話かと思っていたけれど」
アイリスの言葉に彼が驚いて目を丸めるので不思議に思い尋ねる。
「王様方が時折街に視察に行っていることは聞いていたけれど、そうかここに来ていたんだね」
「もしかして言ってはいけな話だったかしら」
「うん、僕だから良かったけれど他の人にはあんまり話さない方がいいかも」
不安になった彼女の問いかけにキースが小さく頷き答えた。
「ここに来る常連は皆知っているからつい口を滑らせてしまったけれど、そうか言わない方が良いのか。気を付けるね」
「そうした方がいいかも。あ、そろそろ仕事に戻らないと。また様子を見に来るね」
「えぇ。また話しましょうね」
話に区切りがついたところで彼が言うと店を出ていくその背を見送りアイリスは小さく微笑む。
「キース。なかなか頑張っているみたいね。私も頑張らないと」
独り言を呟きやる気に満ち溢れながら店番へと戻った。
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