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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~
五章 ジョンの頼み
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シュテリーナが来た翌日。ジョルジュが来店する。
「こんにちは、アイリスさんお久しぶりです」
「いらっしゃいませ。ジョン様お久しぶりです」
来店してきた彼に気付いたアイリスはそちらへと近寄って微笑む。
「本日はどのような御用ですか?」
「もう直シュテナの誕生日なのはご存知ですか。それでプレゼントに服をあげようと思いましてアイリスさんに頼みに来たんです」
彼女の言葉にジョルジュが笑顔で答えた。
「どのような感じでお作り致しましょう」
「そうですね。春らしい色で外出用の服をお願いします」
「畏まりました」
やり取りを終えると彼が外を気にし始める。
「ジャスティンに見つかる前に城に戻らないとなりませんので、僕はこれで失礼します。アイリスさん、よろしくお願いしますね」
「はい」
ジョルジュが言うと急いで店を出ていく。その後ろ姿を見送った後アイリスはイクトの方へと顔を向けた。
「ジョン様、シュテナ様の為にプレゼントを用意するなんて優しいお兄さんですね」
「そうだね。兄妹仲が良すぎるほどに良い関係だね」
アイリスの言葉に彼がにこりと笑い答える。
「それでは、さっそく依頼の品を作りに行ってきます」
「うん。お店の方は任せて」
「はい」
軽く会話を交わすとアイリスは作業部屋へイクトは店番へと戻る。
「さて、今受けていて出来ていないのは三件。まずは前に受けた注文の品を作ってからジョン様の依頼の品を作ろう」
独り言を零すと作業へと入った。そうして手慣れた様子で素早く服を仕立てていくとジョルジュからの依頼の品へと移る。
「春らしくて外出着として着ていく服か。それならティー・レングス・ドレスで色は春らしく淡いピンク色の生地で腕と裾に白い糸で花柄の刺繍を施してっと腰には白いベルトを、ハート柄の穴にすると可愛らしさがアップするかしら。ピンクのククルスがあればお顔を隠すことも出来るわね。よしこれで完成」
デッサン画を見やり微笑むと早速型紙を取り出し布を当てて服を仕立てていく。
「出来た!」
トルソーにかけられた服を見やり満足そうに微笑む。
「アイリス、お疲れ様。少し出かけてくるからお店の方をお願いするよ」
「イクトさん丁度今注文を受けていた服が全て仕上がったんです」
扉をノックする音と共にイクトの声が聞こえてきてアイリスはそちらへとふり返り答える。
「そうか、お疲れ様」
「また国王様からのお呼び出しですか?」
扉を開けて中へと顔をのぞかせた彼へと彼女は尋ねた。
「うん、ちょっと話があるとかでね」
「分かりました。お店の事は任せて下さい」
小さく笑いながら答えるイクトへとアイリスは頷きお店の方へと向かう。
こうしてこの日は店番をしながらイクトの帰りを待った。
「ただいま」
「イクトさんお帰りなさい。王様のお話って何だったんですか?」
彼が帰って来るとアイリスは尋ねる。
「うん、アイリスの仕立てた服を国に登録して国産品として輸出してみないかというお話だったよ」
「ええっ!?」
意外な発言に彼女は心底驚いて目を丸くした。
「わ、私の仕立てた服をこ、国産品として登録!?」
「驚くのも無理は無いけれど、本当の話なんだ」
体を震わせてパニックになりながら呟くアイリスへとイクトが苦笑しながら話す。
「勿論断りましたよね」
「勿論よろしくお願いしますと言って来たよ」
彼女の言葉に彼が微笑み言い切った。その発言にアイリスは固まる。
「アイリスの服を沢山の人に知ってもらう良い機会だと思ってね。今までも国の外からわざわざ仕立てを頼みに来るお客さんもいたから。それならいっその事国産品として登録してもらった方のが良いだろうと判断したんだ」
「イクトさんの考えは何時も間違いはありません。ですからそうした方がいいと思ったのならば私も構いません」
イクトの説明を聞いて彼女は小さく頷いた。
「勿論普段の仕事以外でも国に納める服を沢山作らないといけなくなる。負担になるとは思ったけれど俺も手伝うからだから二人で頑張ろうね」
「はい」
彼がにこりと笑い言うとアイリスも笑顔で答える。こうして国産品として仕立て屋アイリスの服が登録されることとなった。
それから二日後。ジョルジュが店へとやって来る。
「失礼します。アイリスさん。この前頼んだ服を取りに来ました」
「はい。こちらになります」
来店してきた彼の姿を見たアイリスは棚から籠を取り出し持って行く。
「如何でしょうか?」
「これなら喜んでもらえそうです。アイリスさん有難う御座います。早速会計を」
「はい。今伝票をお持ちしますね」
彼女の言葉にジョルジュが笑顔で答えると会計を頼む、。アイリスはすぐに動きカウンターから伝票を持ってきた。
「それでは、また遊びに来ることもあると思います。まぁ、ジャスティンの目を盗むのが大変ですがね」
「またのご来店お待ちいたしております」
品物を受け取った彼が言うと苦笑する。彼女は笑顔で答えた。
「シュテナ様に気にいって貰えると良いですが」
「ジョン様も喜んでもらえるだろうと言っていたし大丈夫だよ」
ジョルジュが出て行ってから不安そうな顔でアイリスは呟く。その言葉にイクトが優しく声をかけて来た。
「さあ、今日もお仕事頑張らないとですね」
「うん。切り替えが早くなったね。良い事だよ」
何時までも悩んでいても答えが出てくる訳ではない。切り替える彼女の様子に彼がアイリスの成長した姿に眩しそうに目を細めながら言う。
こうして今日も仕立て屋での一日が始まるのであった。
「こんにちは、アイリスさんお久しぶりです」
「いらっしゃいませ。ジョン様お久しぶりです」
来店してきた彼に気付いたアイリスはそちらへと近寄って微笑む。
「本日はどのような御用ですか?」
「もう直シュテナの誕生日なのはご存知ですか。それでプレゼントに服をあげようと思いましてアイリスさんに頼みに来たんです」
彼女の言葉にジョルジュが笑顔で答えた。
「どのような感じでお作り致しましょう」
「そうですね。春らしい色で外出用の服をお願いします」
「畏まりました」
やり取りを終えると彼が外を気にし始める。
「ジャスティンに見つかる前に城に戻らないとなりませんので、僕はこれで失礼します。アイリスさん、よろしくお願いしますね」
「はい」
ジョルジュが言うと急いで店を出ていく。その後ろ姿を見送った後アイリスはイクトの方へと顔を向けた。
「ジョン様、シュテナ様の為にプレゼントを用意するなんて優しいお兄さんですね」
「そうだね。兄妹仲が良すぎるほどに良い関係だね」
アイリスの言葉に彼がにこりと笑い答える。
「それでは、さっそく依頼の品を作りに行ってきます」
「うん。お店の方は任せて」
「はい」
軽く会話を交わすとアイリスは作業部屋へイクトは店番へと戻る。
「さて、今受けていて出来ていないのは三件。まずは前に受けた注文の品を作ってからジョン様の依頼の品を作ろう」
独り言を零すと作業へと入った。そうして手慣れた様子で素早く服を仕立てていくとジョルジュからの依頼の品へと移る。
「春らしくて外出着として着ていく服か。それならティー・レングス・ドレスで色は春らしく淡いピンク色の生地で腕と裾に白い糸で花柄の刺繍を施してっと腰には白いベルトを、ハート柄の穴にすると可愛らしさがアップするかしら。ピンクのククルスがあればお顔を隠すことも出来るわね。よしこれで完成」
デッサン画を見やり微笑むと早速型紙を取り出し布を当てて服を仕立てていく。
「出来た!」
トルソーにかけられた服を見やり満足そうに微笑む。
「アイリス、お疲れ様。少し出かけてくるからお店の方をお願いするよ」
「イクトさん丁度今注文を受けていた服が全て仕上がったんです」
扉をノックする音と共にイクトの声が聞こえてきてアイリスはそちらへとふり返り答える。
「そうか、お疲れ様」
「また国王様からのお呼び出しですか?」
扉を開けて中へと顔をのぞかせた彼へと彼女は尋ねた。
「うん、ちょっと話があるとかでね」
「分かりました。お店の事は任せて下さい」
小さく笑いながら答えるイクトへとアイリスは頷きお店の方へと向かう。
こうしてこの日は店番をしながらイクトの帰りを待った。
「ただいま」
「イクトさんお帰りなさい。王様のお話って何だったんですか?」
彼が帰って来るとアイリスは尋ねる。
「うん、アイリスの仕立てた服を国に登録して国産品として輸出してみないかというお話だったよ」
「ええっ!?」
意外な発言に彼女は心底驚いて目を丸くした。
「わ、私の仕立てた服をこ、国産品として登録!?」
「驚くのも無理は無いけれど、本当の話なんだ」
体を震わせてパニックになりながら呟くアイリスへとイクトが苦笑しながら話す。
「勿論断りましたよね」
「勿論よろしくお願いしますと言って来たよ」
彼女の言葉に彼が微笑み言い切った。その発言にアイリスは固まる。
「アイリスの服を沢山の人に知ってもらう良い機会だと思ってね。今までも国の外からわざわざ仕立てを頼みに来るお客さんもいたから。それならいっその事国産品として登録してもらった方のが良いだろうと判断したんだ」
「イクトさんの考えは何時も間違いはありません。ですからそうした方がいいと思ったのならば私も構いません」
イクトの説明を聞いて彼女は小さく頷いた。
「勿論普段の仕事以外でも国に納める服を沢山作らないといけなくなる。負担になるとは思ったけれど俺も手伝うからだから二人で頑張ろうね」
「はい」
彼がにこりと笑い言うとアイリスも笑顔で答える。こうして国産品として仕立て屋アイリスの服が登録されることとなった。
それから二日後。ジョルジュが店へとやって来る。
「失礼します。アイリスさん。この前頼んだ服を取りに来ました」
「はい。こちらになります」
来店してきた彼の姿を見たアイリスは棚から籠を取り出し持って行く。
「如何でしょうか?」
「これなら喜んでもらえそうです。アイリスさん有難う御座います。早速会計を」
「はい。今伝票をお持ちしますね」
彼女の言葉にジョルジュが笑顔で答えると会計を頼む、。アイリスはすぐに動きカウンターから伝票を持ってきた。
「それでは、また遊びに来ることもあると思います。まぁ、ジャスティンの目を盗むのが大変ですがね」
「またのご来店お待ちいたしております」
品物を受け取った彼が言うと苦笑する。彼女は笑顔で答えた。
「シュテナ様に気にいって貰えると良いですが」
「ジョン様も喜んでもらえるだろうと言っていたし大丈夫だよ」
ジョルジュが出て行ってから不安そうな顔でアイリスは呟く。その言葉にイクトが優しく声をかけて来た。
「さあ、今日もお仕事頑張らないとですね」
「うん。切り替えが早くなったね。良い事だよ」
何時までも悩んでいても答えが出てくる訳ではない。切り替える彼女の様子に彼がアイリスの成長した姿に眩しそうに目を細めながら言う。
こうして今日も仕立て屋での一日が始まるのであった。
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