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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~

プロローグ

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 色とりどりの花が咲き乱れる春のライゼン通り。今日も仕立て屋アイリスはお客で賑わっていた。

「アイリスさん、おはようございます。今日は服の仕立てをお願いしたくてね。仕事着なんだけれど後二三着必要なの。お願いできるかしら」

「よう、おはよう。イクトの顔を見に来てやったぜ。あ、アイリスちゃん。騎士団の制服ありがとな。で、またお願いしたい事があるんだが、修練性の服を百着程頼めないかな。毎年この時期になると入団したいって若者が多いからさ」

リゼットがお店にやって来るとレイヴィンも部屋に入って来る。

「アイリスちゃん、おはようございます。君の腕を見込んで頼みたい事があるんだけれど。オレの服作ってくれないかな? 昔買った服がダメになっちゃってね」

「おはようアイリス。相変わらず君の店は忙しそうだね。あ、僕は今日は仕立てを頼みに来たわけじゃないんだ。パトロールの途中でこの近くに来たからついでに顔を見て行こうかなって思って」

ディッドが言うとキースもお店の中へと入って来た。

「やあ、子猫ちゃん。今日も可愛いねぇ~。どう、仕事なんてさぼって俺と一緒にお茶でも」

「失礼する。息子がまたお邪魔をしていないか? 何かあったらいつでも仰って下さいね」

ルークがやってくるなりアイリスに言い寄る。そこにグラウィス侯爵が現れ話す。

「アイリス、イクト様の足を引っ張っていませんこと」

「お~。アイリスさん。今日もお客さん一杯連れて来ましたよ」

マーガレットがいつもの口調でアイリスの様子を見に来るとミュゥリアムがお客を引き連れ来店する。

「アイリスさん、今日はお出かけ用の服の仕立てをお願いしたいの」

「僕は外交で他国に行きますのでその時に着る服をお願いしに」

「ワシはお忍びで着ていく服を頼みたい」

シュテナとジョルジュとレオが揃ってやってくるなり依頼した。

「失礼する。シュテナ様、ジョン様、レオ様まで……ここだと思いましたよ。大臣が探しておりますすぐにお城にお戻りください」

「よう。相変わらず姉ちゃんの店忙しそうだな。あ、オレは遊びに来たぜ」

「遊びに来たぜじゃないだろう。あんたもフラフラしてないで城に戻って仕事しろ」

慌てた様子でジャスティンが入って来ると陽気な声でマクモが言う。

後を追いかけて来たのかマルセンがやって来るなり注意した。

「アイリス。今日も忙しくなりそうだね」

「そうですね。頑張りましょう。いらっしゃいませ、仕立て屋アイリスへようこそ」

イクトの言葉に小さく頷くとお客を見やり微笑む。こうして今年もいつも通りの一年が始まろうとしていた。
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