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ライゼン通りのお針子さん3 ~誉れ高き職人達~

エピローグ

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 年越しまであと少しとなった仕立て屋のある日の事。

「オ~アイリスさん。聞きましタよ。健国際で王様に褒められたトか。流石はアイリスさんです」

「アイリス。イクト様の足を引っぱていなくって」

「よう。アイリス、元気にやってるか」

開店と共に扉が開かれミュゥリアムが笑顔で入って来ると、続けてマーガレットとマルセンが入店してくる。

「失礼します。アイリスさんまた服を仕立ててもらいたいのですが」

「アイリスさん。今度パーティーが開かれるんです。その時に着るドレスをお願いできませんか」

「失礼する。アイリス殿変わりないか?」

ジョルジュとシュテリーナが来店してくるとレオもやってきてアイリスへと声をかけた。

「失礼する。ジョン様シュテナ様こちらにいらしているのは分かっています。王様も隊長が探しておりましたよ」

「やぁ、子猫ちゃん。今日も可愛いね。どう、俺と一緒にお茶でも」

「失礼する。アイリスさん。息子が迷惑をかけるようなことをしていたらいつでも叱るので言ってくれ」

慌てた様子でジャスティンが入り込んでくるや否やそう言ってジョルジュ達に声をかける。爽やかな笑顔で来店してきたルークの後を追いかけるようにして入ってきたグラウィスが話す。

「失礼します。アイリスさん司書の服を有難う御座います。それで、今回は私の服をお願いしたくて来ました。館長にふさわしい服を仕立ててもらえると有り難いです」

「アイリスさん、また会いに来ましたわ。今回はゆっくりできますので、滞在中はこのお店に遊びに来ますわね」

「失礼。この前仕立ててもらった仕事着大変役に立っている。それでね、お礼がしたくて。これ受け取ってもらえないかな」

ベリルが服を仕立てて欲しいと言って入って来ると、ジョルジュ王子の誕生日を祝うパーティーに出席するため訪れていたエレスが来店する。キリが大きな袋を抱えて入って来るとそう口を開いた。

そんなお客達を見てアイリスとイクトは微笑み向き合う。

「今日も一日忙しくなりそうだね」

「いらしゃいませ。仕立て屋アイリスへようこそ」

彼の言葉に答えるように押し寄せたお客達へ向けてアイリスは笑顔でそう言った。

コーディル王国の下町。ライゼン通りという職人通りにある小さな仕立て屋さん【アイリス】そこは国王様が認めた王国一のいいや世界一と称された誉れ高き職人のうちの一人である店主の女の子がお店を経営しており、それを側で支える優しい店員がいる。今日も世界各国からお客が押し寄せ賑わいを見せていた。

=====

あとがき
 ライゼン通りのお針子さん3お楽しみいただけたでしょうか? 今回物語の中心は次回執筆予定の錬金術師さんとスターディス家となりました。錬金術師さんの伏線ばかりで読者置いてけぼりになっていたのではないかと思うと申し訳ないです。イクトが過去のことを思い出すと自責の念に駆られる訳もソフィーが王国一の錬金術師と称えられているのをよく思っていない理由も、レオがイクトの過去の事をあえてアイリスに話さなかったこともマルセンが冒険者になった理由も、伯爵様がイクトのお店にこなくなった訳も先代が亡くなった真実も、記憶喪失の少女リリアの正体も全て錬金術師さんシリーズで明らかになります。作者としては早く皆様にお披露目できればと思っておりますが、まずは錬金術師さん1の執筆頑張ります。
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