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ライゼン通りのお針子さん3 ~誉れ高き職人達~
四章 お坊ちゃまご来店
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今日も世界中からお客様が訪れて賑やかな仕立て屋アイリス。その扉を開けてまたまた新たなお客がやって来た。
「……噂を聞いて来てみたはいいけど、本当にこんな店にカワイ子ちゃんなんているのか?」
「いらっしゃいませ。仕立て屋アイリスへようこそ」
「!」
独り言を零していた客の前へとアイリスが近寄り声をかけると男性は驚いて目を見開く。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いや~。噂には聞いていたけど本当に可愛い子猫ちゃんだね。どう、これから一緒にお茶でも」
「へ?」
(なんか前にも同じような事があったような気が……)
お客が優しく微笑むと甘い声で誘う。それに驚きながら以前も同じような事を体験したような気がすると考える。
「仕事なんかほっといてさ、俺と一緒に遊びに行こうぜ」
「い、いえ。仕事がありますので」
男性の言葉に慌てて答えると彼がふっと微笑む。
「子猫ちゃんて仕事熱心なんだね。いいよね、そういうの。俺そういう子……好きだな」
「え、ええっと……」
「アイリスが困っているじゃありませんの。営業妨害ですから出て行ってくださらない」
困り果ててしまったところで誰かが声をかける。そちらを見やると少し怒ったような顔のマーガレットが立っていた。
「マーガレット様」
「おっと、子猫ちゃんもそんな怖い顔しないで。大丈夫君も十分可愛いよ。どうだい、君も一緒にお茶でも。三人でゆっくり楽しもうぜ」
「……貴方問題児で有名なルークさんですわよね。他のお客様の邪魔になりますから、用事がないのならば帰って下さらない」
アイリスが助かったとばかりにほっとする中彼女を見た男性が甘い声で誘う。それにマーガレットがきつい口調で言った。
「用事か、勿論あるよ。可愛い子猫ちゃんに会いに来たんだ。それが用事」
「……アイリスこんな人の相手をする必要はありません。今すぐに追い出してしまいなさいな」
「え、えっと……」
男性の言葉にマーガレットがアイリスへと声をかける。それに彼女は如何しようって顔で困った。
「ちょ、ちょっと待って! 分かった、分かった。今日の所は子猫ちゃん達をお茶に誘うのは諦めるから追い出さないで。……実はアイリス。君の噂を聞いて服を仕立ててもらおうと思ってね。子猫ちゃんに頼めば間違いなしって聞いてきたんだ」
「分かりました。それでは寸法を測らせて頂きますね」
慌てて止めると用件を伝える。それにアイリスは返事をして寸法を測りたいと伝えた。
「寸法を……ああ、そっか。……子猫ちゃん優しくしてくれよ」
「アイリス。さっさと寸法を測って店から出て行ってもらいなさいな」
笑顔で彼女へと詰め寄るお客の様子にマーガレットが呆れた顔で呟く。
「それじゃあ、どんな服が出来上がるのか楽しみにしているから。じぁあな」
「……なんだか、疲れてしまいましたわ。わたくしも今日は帰ります。アイリス。あんな人二度とお店にいれるんじゃありません事よ」
男性がそう言って出て行ってしまうと令嬢が溜息を吐き出しながら話す。
「で、でもお客様ですから」
「まったく。迷惑なお客ですわね」
それに慌てて答えたアイリスへとマーガレットが迷惑だと言ってまた溜息を一つついた。
それから仕事へと戻った彼女は作業部屋へと籠り今日中に仕上げてしまわないといけない依頼の品を作り終えると時間があったので今日受けた男性の服を作り始める。
「あの人……とても軽い感じの人で遊び歩いているみたいな感じに見えたけれど、でもどこか人の事をしっかり見ていて冷静に観察しているって感じにも思えたのよね。派手だけだと違うし、かといって落ち着きすぎても違う。う~ん……こう、かな」
デッサン画を描き上げるとそれを基に布や糸やアクセサリー類を選んでいく。そうして服が完成したのは翌日の閉店間際だった。
「よし、できた」
「お疲れ様」
作業を終えた時に机の上にクッキーと紅茶の入ったカップが置かれる。そちらを見ると優しく微笑むイクトの姿があった。
「あ、イクトさんもお疲れ様です」
「これは、昨日来ていた賑やかなお客さんの依頼の品だね」
「そうです。どう、でしょうか?」
イクトの視線の先を見て不安そうに尋ねる。
「うん、これはまた見た事ない感じの作りだね。でも、俺はこういうのも好きだな」
「よかった。イクトさんに評価してもらえて安心しました」
二人の視線の先トルソーにかけられているのは、真っ赤なレジャージャケットの胸にボタンはなく金色のチェーンで服を留めるようになっていて、黒いU字の服にズボン。腰にはジャラジャラとしたシルバーアクセサリーがポイントとなっていて、中は落ち着いているけれど外は派手といった感じの作りになっていた。
「喜んで頂けたらいいのですが」
「大丈夫。心配いらないよ。自信をもって」
不安そうな顔のアイリスへと彼が優しく声をかけ微笑む。その笑顔にいつも救われているなと思いながら彼女の表情も明るくなった。
そして翌日あのお客がお店へと訪れる。
「やあ、子猫ちゃん。今日も相変わらず可愛いね」
「いらっしゃいませ」
笑顔で入店してきた男性へとアイリスは声をかけた。
「今日はこの前頼んだものを取りに来たんだけれど……」
「はい。少々お待ちください」
不安そうな顔の男性に待つように告げ棚から服を持ってくる。
「こちらになります」
「お、赤色か。いいね。こういう派手な色は好きだから。ちょっと試着室借りるな」
お客が言うと試着室へと入っていった。
「いかがでしょうか?」
「お、まるで最初から用意されていたかのように体にぴったりだ。それにこの服なら俺のカッコよさを引き立たせてくれる。子猫ちゃん気に入ったぜ」
「気に入って頂けて良かったです」
不安そうに尋ねると中から男性の声が聞こえてくる。喜んでもらえて良かったと安堵した。
「この服早速今日から着させてもらうぜ。俺はルークって言うんだ。覚えていてもらえたら嬉しい。また子猫ちゃんに会いにくるからさ」
「はい。またのご来店お待ちいたしております」
ルークと名乗ったお客へと笑顔で答える。こうしてまた一人新しいお客が増えた仕立て屋アイリスであった。
「……噂を聞いて来てみたはいいけど、本当にこんな店にカワイ子ちゃんなんているのか?」
「いらっしゃいませ。仕立て屋アイリスへようこそ」
「!」
独り言を零していた客の前へとアイリスが近寄り声をかけると男性は驚いて目を見開く。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いや~。噂には聞いていたけど本当に可愛い子猫ちゃんだね。どう、これから一緒にお茶でも」
「へ?」
(なんか前にも同じような事があったような気が……)
お客が優しく微笑むと甘い声で誘う。それに驚きながら以前も同じような事を体験したような気がすると考える。
「仕事なんかほっといてさ、俺と一緒に遊びに行こうぜ」
「い、いえ。仕事がありますので」
男性の言葉に慌てて答えると彼がふっと微笑む。
「子猫ちゃんて仕事熱心なんだね。いいよね、そういうの。俺そういう子……好きだな」
「え、ええっと……」
「アイリスが困っているじゃありませんの。営業妨害ですから出て行ってくださらない」
困り果ててしまったところで誰かが声をかける。そちらを見やると少し怒ったような顔のマーガレットが立っていた。
「マーガレット様」
「おっと、子猫ちゃんもそんな怖い顔しないで。大丈夫君も十分可愛いよ。どうだい、君も一緒にお茶でも。三人でゆっくり楽しもうぜ」
「……貴方問題児で有名なルークさんですわよね。他のお客様の邪魔になりますから、用事がないのならば帰って下さらない」
アイリスが助かったとばかりにほっとする中彼女を見た男性が甘い声で誘う。それにマーガレットがきつい口調で言った。
「用事か、勿論あるよ。可愛い子猫ちゃんに会いに来たんだ。それが用事」
「……アイリスこんな人の相手をする必要はありません。今すぐに追い出してしまいなさいな」
「え、えっと……」
男性の言葉にマーガレットがアイリスへと声をかける。それに彼女は如何しようって顔で困った。
「ちょ、ちょっと待って! 分かった、分かった。今日の所は子猫ちゃん達をお茶に誘うのは諦めるから追い出さないで。……実はアイリス。君の噂を聞いて服を仕立ててもらおうと思ってね。子猫ちゃんに頼めば間違いなしって聞いてきたんだ」
「分かりました。それでは寸法を測らせて頂きますね」
慌てて止めると用件を伝える。それにアイリスは返事をして寸法を測りたいと伝えた。
「寸法を……ああ、そっか。……子猫ちゃん優しくしてくれよ」
「アイリス。さっさと寸法を測って店から出て行ってもらいなさいな」
笑顔で彼女へと詰め寄るお客の様子にマーガレットが呆れた顔で呟く。
「それじゃあ、どんな服が出来上がるのか楽しみにしているから。じぁあな」
「……なんだか、疲れてしまいましたわ。わたくしも今日は帰ります。アイリス。あんな人二度とお店にいれるんじゃありません事よ」
男性がそう言って出て行ってしまうと令嬢が溜息を吐き出しながら話す。
「で、でもお客様ですから」
「まったく。迷惑なお客ですわね」
それに慌てて答えたアイリスへとマーガレットが迷惑だと言ってまた溜息を一つついた。
それから仕事へと戻った彼女は作業部屋へと籠り今日中に仕上げてしまわないといけない依頼の品を作り終えると時間があったので今日受けた男性の服を作り始める。
「あの人……とても軽い感じの人で遊び歩いているみたいな感じに見えたけれど、でもどこか人の事をしっかり見ていて冷静に観察しているって感じにも思えたのよね。派手だけだと違うし、かといって落ち着きすぎても違う。う~ん……こう、かな」
デッサン画を描き上げるとそれを基に布や糸やアクセサリー類を選んでいく。そうして服が完成したのは翌日の閉店間際だった。
「よし、できた」
「お疲れ様」
作業を終えた時に机の上にクッキーと紅茶の入ったカップが置かれる。そちらを見ると優しく微笑むイクトの姿があった。
「あ、イクトさんもお疲れ様です」
「これは、昨日来ていた賑やかなお客さんの依頼の品だね」
「そうです。どう、でしょうか?」
イクトの視線の先を見て不安そうに尋ねる。
「うん、これはまた見た事ない感じの作りだね。でも、俺はこういうのも好きだな」
「よかった。イクトさんに評価してもらえて安心しました」
二人の視線の先トルソーにかけられているのは、真っ赤なレジャージャケットの胸にボタンはなく金色のチェーンで服を留めるようになっていて、黒いU字の服にズボン。腰にはジャラジャラとしたシルバーアクセサリーがポイントとなっていて、中は落ち着いているけれど外は派手といった感じの作りになっていた。
「喜んで頂けたらいいのですが」
「大丈夫。心配いらないよ。自信をもって」
不安そうな顔のアイリスへと彼が優しく声をかけ微笑む。その笑顔にいつも救われているなと思いながら彼女の表情も明るくなった。
そして翌日あのお客がお店へと訪れる。
「やあ、子猫ちゃん。今日も相変わらず可愛いね」
「いらっしゃいませ」
笑顔で入店してきた男性へとアイリスは声をかけた。
「今日はこの前頼んだものを取りに来たんだけれど……」
「はい。少々お待ちください」
不安そうな顔の男性に待つように告げ棚から服を持ってくる。
「こちらになります」
「お、赤色か。いいね。こういう派手な色は好きだから。ちょっと試着室借りるな」
お客が言うと試着室へと入っていった。
「いかがでしょうか?」
「お、まるで最初から用意されていたかのように体にぴったりだ。それにこの服なら俺のカッコよさを引き立たせてくれる。子猫ちゃん気に入ったぜ」
「気に入って頂けて良かったです」
不安そうに尋ねると中から男性の声が聞こえてくる。喜んでもらえて良かったと安堵した。
「この服早速今日から着させてもらうぜ。俺はルークって言うんだ。覚えていてもらえたら嬉しい。また子猫ちゃんに会いにくるからさ」
「はい。またのご来店お待ちいたしております」
ルークと名乗ったお客へと笑顔で答える。こうしてまた一人新しいお客が増えた仕立て屋アイリスであった。
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