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ライゼン通りのお針子さん2 ~職人の誇り見せてみます~
プロローグ
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色とりどりの花が咲き乱れる柔らかくて温かな春のある日。仕立て屋アイリスではお祭りの準備に追われていた。
「イクトさん。この花飾りはここでいいでしょうか?」
「うん。大丈夫。高いところは俺がやっておくから、アイリスは店の前の飾りをお願いできるかな」
店内で壁や天井へと花飾りをつけているイクトへとアイリスが声をかける。それに返事をすると外の飾りを頼んだ。
「でも花祭りなんてとても素敵な文化ですね」
「ここコーディル王国では毎年春になると花祭りが開催されるんだ。なんでもその昔、春の訪れを告げる女神がやって来てこの国にいろんな花々が咲き乱れたんだとか。そんな花の女神をお迎えし今年も春が来るようにとお祭りを始めたことがこの国で花祭りが開催される切っ掛けになったそうだよ」
アイリスの言葉にイクトが説明する。
「そうだったんですね。それで国中でこんなに大々的にお祭りが開催されるんですね」
「春祭り当日には春の女神になった人が精霊達を連れて町中を練り歩くというパレードもあるんだ」
手元で花飾りをつける作業の手を休めずに彼女が言うと、彼も天井へと花くす玉を飾り付けながら話を続けた。
「そうなんですね。その衣装は如何してるんですか?」
「いつもは王国御用達の職人さんが作ってるそうだけど、今年はどうなるか分からない」
アイリスの質問にイクトが困った顔で答える。
「まだ、病気が治っていないんですか?」
「どうやらそうらしいね。隊長やジョン様やシュテナ様もこのまま王国御用達の職人が長い間仕事ができないようなら、新しい職人に頼んだ方が良いかもしれないと考えていると話していたよ」
彼女の言葉に彼が肯定し皆から聞いた話を伝えた。
「早く病気がよくなると良いですよね。でもそれだと今年の花祭りのパレード用の衣装は一体どこで作ることになるのでしょうか?」
「もしかしたら家で作ることになるかもしれないね」
「へ?」
思いがけないイクトの言葉にアイリスは驚いて作業の手を止めて彼の顔を見やる。
「何しろ昨年の大会で優勝をしたからね。もしかしたら家に依頼を頼んでくる可能性がある。そう思ったんだ」
「そ、そんな。たった一回大会で優勝したくらいで国が依頼を頼んでくるとは思えないですが……」
彼の言葉に彼女は困った顔をして答えた。
「ははっ。謙遜するのは良い事だけどね、アイリスの腕は国も世界も認めたんだ。それはとてもすごいことなんだよ。だからもしかしたらその噂を聞いて春の女神様が依頼を頼みに来るかもしれないね」
「もう。イクトさんたら……」
微笑み語られたイクトの言葉にアイリスは困った顔のまま呟く。
「だがもし、本当に家に依頼してきたらアイリスはどうする?」
「そうなったら、私は私の仕事をするだけです。お客様に満足して頂けるそんな素敵な服を仕立ててみます」
「うん」
彼の問いかけに彼女はにこりと笑うと胸を張って答える。その様子にイクトが微笑む。
「それじゃあ、私外の飾りつけしてきますね」
アイリスは言うと大きな花飾りを持って店先へと出て行った。
仕立て屋アイリスで働くようになって二年目を迎える彼女のお店には、今年も新たなお客がやってきそうである。
「イクトさん。この花飾りはここでいいでしょうか?」
「うん。大丈夫。高いところは俺がやっておくから、アイリスは店の前の飾りをお願いできるかな」
店内で壁や天井へと花飾りをつけているイクトへとアイリスが声をかける。それに返事をすると外の飾りを頼んだ。
「でも花祭りなんてとても素敵な文化ですね」
「ここコーディル王国では毎年春になると花祭りが開催されるんだ。なんでもその昔、春の訪れを告げる女神がやって来てこの国にいろんな花々が咲き乱れたんだとか。そんな花の女神をお迎えし今年も春が来るようにとお祭りを始めたことがこの国で花祭りが開催される切っ掛けになったそうだよ」
アイリスの言葉にイクトが説明する。
「そうだったんですね。それで国中でこんなに大々的にお祭りが開催されるんですね」
「春祭り当日には春の女神になった人が精霊達を連れて町中を練り歩くというパレードもあるんだ」
手元で花飾りをつける作業の手を休めずに彼女が言うと、彼も天井へと花くす玉を飾り付けながら話を続けた。
「そうなんですね。その衣装は如何してるんですか?」
「いつもは王国御用達の職人さんが作ってるそうだけど、今年はどうなるか分からない」
アイリスの質問にイクトが困った顔で答える。
「まだ、病気が治っていないんですか?」
「どうやらそうらしいね。隊長やジョン様やシュテナ様もこのまま王国御用達の職人が長い間仕事ができないようなら、新しい職人に頼んだ方が良いかもしれないと考えていると話していたよ」
彼女の言葉に彼が肯定し皆から聞いた話を伝えた。
「早く病気がよくなると良いですよね。でもそれだと今年の花祭りのパレード用の衣装は一体どこで作ることになるのでしょうか?」
「もしかしたら家で作ることになるかもしれないね」
「へ?」
思いがけないイクトの言葉にアイリスは驚いて作業の手を止めて彼の顔を見やる。
「何しろ昨年の大会で優勝をしたからね。もしかしたら家に依頼を頼んでくる可能性がある。そう思ったんだ」
「そ、そんな。たった一回大会で優勝したくらいで国が依頼を頼んでくるとは思えないですが……」
彼の言葉に彼女は困った顔をして答えた。
「ははっ。謙遜するのは良い事だけどね、アイリスの腕は国も世界も認めたんだ。それはとてもすごいことなんだよ。だからもしかしたらその噂を聞いて春の女神様が依頼を頼みに来るかもしれないね」
「もう。イクトさんたら……」
微笑み語られたイクトの言葉にアイリスは困った顔のまま呟く。
「だがもし、本当に家に依頼してきたらアイリスはどうする?」
「そうなったら、私は私の仕事をするだけです。お客様に満足して頂けるそんな素敵な服を仕立ててみます」
「うん」
彼の問いかけに彼女はにこりと笑うと胸を張って答える。その様子にイクトが微笑む。
「それじゃあ、私外の飾りつけしてきますね」
アイリスは言うと大きな花飾りを持って店先へと出て行った。
仕立て屋アイリスで働くようになって二年目を迎える彼女のお店には、今年も新たなお客がやってきそうである。
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