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プロローグ
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コーディル王国の下町。ライゼン通りという職人通りにある小さな仕立て屋さん【アイリス】そのお店にはイケメンの店主がいて仕立ての腕と確かな信頼関係でお客が絶えない。そんな小さな仕立て屋さんに今日もお客さんがやってきた。
「……ついに、この日が来た」
亜麻色の長い髪を風になびかせながら少女は生唾を飲み込み仕立て屋の店の前へと立つ。
「仕立て屋アイリス。私と同じ名前のお店。きっとこれは運命に違いない。私はここのお針子になるために王国の試験に合格してライセンスを貰ったんだから。頑張るぞ。絶対にここで雇ってもらうんだ。いくよ、アイリス」
自分を激励しながら緊張でこわばる右手でアンティーク調の可愛い扉のドアノブに手をかけた。
チリンチリンと可愛らしい鈴の音が響きお客が来たことを店主に伝える。
「いらっしゃいませ。仕立て屋アイリスへようこそ。お嬢さん、今日はどのような御用でしょうか?」
「……あ、あの……」
店の奥から店主である男性が出てくると柔和な笑みを浮かべてアイリスに声をかけた。彼女は緊張のあまり言葉が上手く出ず口をつぐむ。
「うん?」
「あ、あの……わ、私を……私をここのお針子として働かせてください!」
不思議そうに首を傾げる店主にアイリスは緊張で頭が真っ白になりながらもなんとか言葉をまとめて伝える。
「どうしてここで働きたいと思ったんだい」
「私、私の名前はアイリスっていいます。このお店と同じ名前で、それで運命を感じてこのお店で働きたいと思いました。動機が不純かもしれませんが、でも、このお店でお針子になることが夢で王国のライセンス取得の試験を受けて今日合格通知が来て無事にお針子になれたんです。ですから、どうか私をここで雇ってください」
穏やかな口調で問いかけられ彼女は必死に理由を答えた。
「……ん~。そうだね、とりあえず奥に。座ってゆっくり話をしよう」
「は、はい」
いきなりここで雇ってくれと言い出したアイリスを煙たがる事無く受け入れると奥の部屋へと向かう。
アイリスは門前払いされるとばかり思っていたが、一応話を聞いてくれると分かり少しだけ安堵すると、今度こそちゃんと受け答えができるように頑張ろうと気を持ち直す。
「……」
「どうぞ」
奥の部屋に入るとそこはこじんまりとした場所に小さな机と椅子、そして簡易台所があるだけのとてもシンプルな空間が広がっていた。
店主がお湯を沸かすと紅茶を注ぎ机に置き座るよう促す。
「あ、お気遣いなく」
「うちの店に面接にいらして下さる方がいらっしゃるなんて思っていなかったから、そんな子をもてなさないわけにはいかないからね。お茶でも飲みながらゆっくりお話ししよう」
「は、はい」
遠慮するアイリスへとにこりと微笑み彼が言う。その言葉に素直に返事をするしかなくなり彼女はぺこりと頭を下げると椅子へと座る。
「それで、先ほどの話だけど。この店でお針子として雇ってもらいたいんだね」
「はい。私この国の出身ではありませんが、この国の制度を調べました。雇ってもらいたいお店に直接行って話をしてもしそのお店が人員を募集している場合ならそのまま雇ってもらえると……このお店は、小さいので店長一人だけでやっていけるから店員の募集はしていないのでしょうか?」
店長が紅茶を一口飲み尋ねると彼女は頭で考えた言葉を伝えた。
「このお店は見ての通り小さいから俺一人で今までやってきたのは事実だ。だけど決して人員を募集していないわけではない。君がこのお店で働きたいというのならばそれは俺はかまわないと思うよ」
「じゃあ……」
不安そうな眼差しを向けるアイリスへと彼が優しい口調でそう答える。それに彼女は嬉しそうに瞳を輝かせ呟く。
「雇うことはかまわないが、一つだけ条件がある」
「条件?」
店主の言葉に彼女は一瞬で不安そうな顔へと戻ると次の言葉を待つ。
「君が本当にこの【仕立て屋アイリス】の人員としてふさわしい人材かどうか見極めたい。俺は先代の店長に経験とは実戦からなるものだと教えられた。だから君には一年間このお店の店長としてこのお店を経営してもらいたい。そして一年後の君の成果を見て今後も雇うかどうか決めたいと思う」
「つまりそれは……どういうことですか?」
「つまり仮契約としてここで一年間雇うということだよ」
彼の言葉に理解できなかったアイリスが首を傾げる。それに店主が説明するように話すと引き出しから仮契約書とペンを取り出し机の上に置く。
「この紙に君の名前を書けば仮契約は完了する。そうしたら君は明日からここで店長として働いてもらうこととなるんだ。それで問題なければここにサインをしてもらいたい」
(つまりこの紙に名前を書けば私は一年間店長として働くことになるってことだよね。そんなの……)
店主の言葉にアイリスは考え込むように黙ると俯く。
「不安そうだね。大丈夫、最初のうちは俺もいろいろと手伝うから。でも経営のやり方が分かったらそこからは君一人でやることとなる。それでもうちで働きたいかな」
「……はい。私ここで働きたいです。だから……」
相変わらず穏やかな口調で言う彼に彼女は力強く頷くと仮契約書に名前を記入する。
「これからよろしくお願いします!」
「ははっ。すごい意気込みだね。分かった。アイリス明日からよろしく頼むよ」
勢いよくペンを置くとぺこりと頭を下げるアイリスに店主は笑って答えた。
「はい、店長さん。私一生懸命頑張ります」
「俺は明日から店長じゃない。だから店長とは呼ばないように」
嬉しそうにはにかむ彼女へと彼がにこりと笑いやんわり忠告する。
「は、はい……それではなんとお呼びすればよろしいですか?」
「俺の名前はイクト。そう呼んでくれればいい」
アイリスの言葉に店主がそう言うとにこりと笑う。
「分かりました、イクトさん」
「うん」
彼女が了承したことにイクトが笑顔のまま小さく頷く。こうしてアイリスは仕立て屋で働くこととなった。
「……ついに、この日が来た」
亜麻色の長い髪を風になびかせながら少女は生唾を飲み込み仕立て屋の店の前へと立つ。
「仕立て屋アイリス。私と同じ名前のお店。きっとこれは運命に違いない。私はここのお針子になるために王国の試験に合格してライセンスを貰ったんだから。頑張るぞ。絶対にここで雇ってもらうんだ。いくよ、アイリス」
自分を激励しながら緊張でこわばる右手でアンティーク調の可愛い扉のドアノブに手をかけた。
チリンチリンと可愛らしい鈴の音が響きお客が来たことを店主に伝える。
「いらっしゃいませ。仕立て屋アイリスへようこそ。お嬢さん、今日はどのような御用でしょうか?」
「……あ、あの……」
店の奥から店主である男性が出てくると柔和な笑みを浮かべてアイリスに声をかけた。彼女は緊張のあまり言葉が上手く出ず口をつぐむ。
「うん?」
「あ、あの……わ、私を……私をここのお針子として働かせてください!」
不思議そうに首を傾げる店主にアイリスは緊張で頭が真っ白になりながらもなんとか言葉をまとめて伝える。
「どうしてここで働きたいと思ったんだい」
「私、私の名前はアイリスっていいます。このお店と同じ名前で、それで運命を感じてこのお店で働きたいと思いました。動機が不純かもしれませんが、でも、このお店でお針子になることが夢で王国のライセンス取得の試験を受けて今日合格通知が来て無事にお針子になれたんです。ですから、どうか私をここで雇ってください」
穏やかな口調で問いかけられ彼女は必死に理由を答えた。
「……ん~。そうだね、とりあえず奥に。座ってゆっくり話をしよう」
「は、はい」
いきなりここで雇ってくれと言い出したアイリスを煙たがる事無く受け入れると奥の部屋へと向かう。
アイリスは門前払いされるとばかり思っていたが、一応話を聞いてくれると分かり少しだけ安堵すると、今度こそちゃんと受け答えができるように頑張ろうと気を持ち直す。
「……」
「どうぞ」
奥の部屋に入るとそこはこじんまりとした場所に小さな机と椅子、そして簡易台所があるだけのとてもシンプルな空間が広がっていた。
店主がお湯を沸かすと紅茶を注ぎ机に置き座るよう促す。
「あ、お気遣いなく」
「うちの店に面接にいらして下さる方がいらっしゃるなんて思っていなかったから、そんな子をもてなさないわけにはいかないからね。お茶でも飲みながらゆっくりお話ししよう」
「は、はい」
遠慮するアイリスへとにこりと微笑み彼が言う。その言葉に素直に返事をするしかなくなり彼女はぺこりと頭を下げると椅子へと座る。
「それで、先ほどの話だけど。この店でお針子として雇ってもらいたいんだね」
「はい。私この国の出身ではありませんが、この国の制度を調べました。雇ってもらいたいお店に直接行って話をしてもしそのお店が人員を募集している場合ならそのまま雇ってもらえると……このお店は、小さいので店長一人だけでやっていけるから店員の募集はしていないのでしょうか?」
店長が紅茶を一口飲み尋ねると彼女は頭で考えた言葉を伝えた。
「このお店は見ての通り小さいから俺一人で今までやってきたのは事実だ。だけど決して人員を募集していないわけではない。君がこのお店で働きたいというのならばそれは俺はかまわないと思うよ」
「じゃあ……」
不安そうな眼差しを向けるアイリスへと彼が優しい口調でそう答える。それに彼女は嬉しそうに瞳を輝かせ呟く。
「雇うことはかまわないが、一つだけ条件がある」
「条件?」
店主の言葉に彼女は一瞬で不安そうな顔へと戻ると次の言葉を待つ。
「君が本当にこの【仕立て屋アイリス】の人員としてふさわしい人材かどうか見極めたい。俺は先代の店長に経験とは実戦からなるものだと教えられた。だから君には一年間このお店の店長としてこのお店を経営してもらいたい。そして一年後の君の成果を見て今後も雇うかどうか決めたいと思う」
「つまりそれは……どういうことですか?」
「つまり仮契約としてここで一年間雇うということだよ」
彼の言葉に理解できなかったアイリスが首を傾げる。それに店主が説明するように話すと引き出しから仮契約書とペンを取り出し机の上に置く。
「この紙に君の名前を書けば仮契約は完了する。そうしたら君は明日からここで店長として働いてもらうこととなるんだ。それで問題なければここにサインをしてもらいたい」
(つまりこの紙に名前を書けば私は一年間店長として働くことになるってことだよね。そんなの……)
店主の言葉にアイリスは考え込むように黙ると俯く。
「不安そうだね。大丈夫、最初のうちは俺もいろいろと手伝うから。でも経営のやり方が分かったらそこからは君一人でやることとなる。それでもうちで働きたいかな」
「……はい。私ここで働きたいです。だから……」
相変わらず穏やかな口調で言う彼に彼女は力強く頷くと仮契約書に名前を記入する。
「これからよろしくお願いします!」
「ははっ。すごい意気込みだね。分かった。アイリス明日からよろしく頼むよ」
勢いよくペンを置くとぺこりと頭を下げるアイリスに店主は笑って答えた。
「はい、店長さん。私一生懸命頑張ります」
「俺は明日から店長じゃない。だから店長とは呼ばないように」
嬉しそうにはにかむ彼女へと彼がにこりと笑いやんわり忠告する。
「は、はい……それではなんとお呼びすればよろしいですか?」
「俺の名前はイクト。そう呼んでくれればいい」
アイリスの言葉に店主がそう言うとにこりと笑う。
「分かりました、イクトさん」
「うん」
彼女が了承したことにイクトが笑顔のまま小さく頷く。こうしてアイリスは仕立て屋で働くこととなった。
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