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一章 集い合う者達
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雪奈について職員室へと行く途中。前方から歩いてくる男女のグループと出会う。
「あれ、忍じゃん。なに、可愛い女の子引き連れてどこ行くんだ」
「サザ先輩……」
前からやってきたチャライ男子生徒に呼び止められた忍は立ち止まると一礼する。
「相変わらず堅苦し~な。気楽でいいって」
「貴方が気楽すぎるのよ……それより。もうすぐ中間テストがあるから下級生はもう下校の時間でしょう。こんな時間までどうしたの?」
「胡蝶先輩実は……雪奈に誘われて私達今から榊󠄀の森の伝説が本当なのかを確かめに行こうかって思っているんです」
サザの言葉に溜息を吐き出した少女がそう言って尋ねた。千代がそれに答える。
「お~。榊󠄀の森の伝説ね、そう言えばそんな話聞いたことあるな。うん、よし決めた! 面白そうだし俺も一緒に行くよ。な、ライトお前も一緒に行くだろう」
「ハイ、このような美しい女の子が行くのですから、オレも行きま~す」
「はぁ……だからサザに日本語を教わるのは止めときなさいって言ったのに……」
彼の言葉に隣にいた男子学生がにこりと笑い片言の日本語で返事をした。その発言に千代達が驚いていると溜息を吐いた胡蝶が可哀想な者を見る目でライトを見やる。
「あれ、そこにいるのは……千代先輩達ではありませんか」
「え、布津彦?」
「何だお前、まだ学校に残っていたのか」
背後からかけられた声に振り向くと一人の少年が立っていて千代と柳が声をかけた。
「おれは日誌を届けに職員室へ行くところだったんです。千代先輩達も職員室へ御用ですか?」
「私達はこれから榊󠄀の森の伝説が本当なのかを調べに行こうって話していて、それで風魔先生に頼みに行くところだったんです」
布津彦が尋ねると麗がそう言って答える。
「榊󠄀の森というとあの立ち入り禁止の森の事ですよね……そこへ行かれるのですか」
「お前も一緒に来いよ。人数が増えた方のが楽しいからさ」
「は、はい。分かりました」
彼の言葉に良いことを思いついたと言わんばかりにサザが誘う。それに布津彦が戸惑いながらも返事をした。
「布津彦。そんな易々と返事をしてはならない。この人のいう事は信頼ならないからな」
「はい?」
忍の言葉に首をかしげる少年へと胡蝶と柳が溜息を吐き出す。
「はぁ~。お守りが増えたか……」
「さ、暗くなる前に先生に話に行こう」
小さくぼやく柳の言葉を無視して話がまとまるまで待っていた雪奈はそう言って促す。
それから皆で職員室へと行くと風魔の下へと近寄っていった。
「あれ、皆如何したんだ?」
「あの、風魔先生にお願いがあって……私達榊󠄀の森の伝説を調べに行こうと思うんですが、大人の人が一緒じゃないと不安で。それでお願いできないかと思いまして」
近付いてきた皆に気付いた彼が優しい微笑みを浮かべて出迎える。千代が説明すると風魔の瞳が輝いたように見えた。
「榊󠄀の森の伝説ね……うん、いいよ。実は俺も子どもの時から一度はその伝説を調べてみたいと思っていたんだ。俺が行けば皆の親御さんも心配しないだろうし、引き受けるよ」
「有難う御座います」
優しく笑い同意してくれたことに千代がお礼を述べる。そうして風魔の仕事が終わるのを待っている間、皆はスマホをいじり親に帰りが遅くなると伝えた。榊󠄀の森へ行くというと何故か親達は皆「気を付けて行ってらしゃいね」と快く送り出してくれる。
「風魔先生が一緒だからかな?」
「そんな事気にしなくていいから。さあ、風魔先生も来たし行くよ」
校門の前で千代が言うとそれに雪奈は適当な言葉で返し皆がそろったことを見届けると榊󠄀の森へと向かう。
すっかり辺りは薄暗くなっているが大人と一緒という事もあり千代達に不安はなかった。
「ここが榊󠄀の森……」
「それじゃあ、行こうか」
榊󠄀の森の入り口の前に佇み小さく喉を鳴らす千代へと雪奈は気にも留めずに皆を促す。
暫く薄暗い森の中を進んでいると急に茂みが揺れた。
「ひっ。な、何かいる?」
「千代、麗。下がって」
急に大きく揺れた茂みに何かが潜んでいると怖くなった麗が呟く。柳が彼女達の前に出て庇う様に立ちふさがった。
「獣なら俺が仕留める」
「お嬢さん達を護るのがナイトの役目でーす。オレもやります」
忍も前に出ると身構える。ライトも言うと進み出た。
『……』
未だに揺れ続ける茂みに緊張しながら見つめているとついにうごめく影が現れる。
『っ!?』
「……」
茂みから現れたものに驚くもそこに立っていたのは獣ではなくおっとりとした顔の少年だった。
「千代?」
「え、冬夜? どうしてここにいるの」
少年が千代に気付き声をかけると、彼女もここに如何しているのかと問いかける。
「これ……この森にしか生えない花。調べていたんだ」
「はぁ……脅かすなよな」
手に持っている小さな花を見せてくる冬夜に柳が盛大に溜息を吐き出しぼやく。
「千代達はどうしてここに?」
「私達は榊󠄀の森の伝説を確かめに来たの」
彼の言葉に千代が答えると冬夜が首をかしげる。
「この森の伝説?」
「冬夜は聞いた事ない? この森で神隠しに会うって話」
「……う~ん。そう言えば友達が昔そんな話をしていたような」
不思議そうに呟く彼へと彼女が問いかけた。それに冬夜が思考回路を巡らせているのか考え込むと思い出した様子で語る。
「オレも一緒に行ってもいい?」
「彼だけ帰すわけにも行かないし。良いんじゃないの」
彼の言葉に如何しようって顔をする千代へと雪奈は淡泊に答えた。
こうして新たに冬夜を引き連れて森の奥へと進んでいく。
しばらく進むと少し開けたところに出るが、そこで行き止まりとなっていた。
「行き止まりみたいだけど……」
「う~ん。確かに何も無さそうだね」
千代の言葉に風魔も周囲を見回し呟く。
「ほらな。あんなのただの都市伝説だったんだよ」
「これで気は済んだだろう。帰るぞ」
柳の言葉に忍も話す。
「ちぇ、つまんねぇの」
「何もなくてよかったじゃないの。本当に神隠しに会ったら大変だわ」
小さく悪態をつくサザへと胡蝶が注意するように言う。
「何もないですか?」
「はい。何もないです」
理解できていない様子のライトへと布津彦が答える。
「……森がざわめいてる」
「え?」
冬夜の言葉に意味が分からず麗が首をかしげた。
「な、何?」
すると先ほどまで何もなかった空間に白い渦が現れる。
「おい、こっちに来るぞ」
「きゃあ~」
白い渦は次第に広がり周りを吸い込み始めた。その様子に柳が言うと千代が悲鳴をあげる。
「さあ、行こうか……君達が本来いるべき場所へと」
誰もが騒然となり悲鳴をあげて混乱している中。一人だけ不敵に微笑んだ雪奈は小さく呟いた。
■後書き
初回限定につき連続投稿でした。次回から一話ずつの投稿となります。
それにしても先祖返りとはいえ千代達アオイ達に性格似すぎてないか? ライトだけはサザのせいで残念な性格に仕上がってしまいましたがねw
ちなみち冬夜は千代のことしか見ていませんが恋愛感情はもってません。ただ千代と友達なだけです。
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「あれ、そこにいるのは……千代先輩達ではありませんか」
「え、布津彦?」
「何だお前、まだ学校に残っていたのか」
背後からかけられた声に振り向くと一人の少年が立っていて千代と柳が声をかけた。
「おれは日誌を届けに職員室へ行くところだったんです。千代先輩達も職員室へ御用ですか?」
「私達はこれから榊󠄀の森の伝説が本当なのかを調べに行こうって話していて、それで風魔先生に頼みに行くところだったんです」
布津彦が尋ねると麗がそう言って答える。
「榊󠄀の森というとあの立ち入り禁止の森の事ですよね……そこへ行かれるのですか」
「お前も一緒に来いよ。人数が増えた方のが楽しいからさ」
「は、はい。分かりました」
彼の言葉に良いことを思いついたと言わんばかりにサザが誘う。それに布津彦が戸惑いながらも返事をした。
「布津彦。そんな易々と返事をしてはならない。この人のいう事は信頼ならないからな」
「はい?」
忍の言葉に首をかしげる少年へと胡蝶と柳が溜息を吐き出す。
「はぁ~。お守りが増えたか……」
「さ、暗くなる前に先生に話に行こう」
小さくぼやく柳の言葉を無視して話がまとまるまで待っていた雪奈はそう言って促す。
それから皆で職員室へと行くと風魔の下へと近寄っていった。
「あれ、皆如何したんだ?」
「あの、風魔先生にお願いがあって……私達榊󠄀の森の伝説を調べに行こうと思うんですが、大人の人が一緒じゃないと不安で。それでお願いできないかと思いまして」
近付いてきた皆に気付いた彼が優しい微笑みを浮かべて出迎える。千代が説明すると風魔の瞳が輝いたように見えた。
「榊󠄀の森の伝説ね……うん、いいよ。実は俺も子どもの時から一度はその伝説を調べてみたいと思っていたんだ。俺が行けば皆の親御さんも心配しないだろうし、引き受けるよ」
「有難う御座います」
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「風魔先生が一緒だからかな?」
「そんな事気にしなくていいから。さあ、風魔先生も来たし行くよ」
校門の前で千代が言うとそれに雪奈は適当な言葉で返し皆がそろったことを見届けると榊󠄀の森へと向かう。
すっかり辺りは薄暗くなっているが大人と一緒という事もあり千代達に不安はなかった。
「ここが榊󠄀の森……」
「それじゃあ、行こうか」
榊󠄀の森の入り口の前に佇み小さく喉を鳴らす千代へと雪奈は気にも留めずに皆を促す。
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「ひっ。な、何かいる?」
「千代、麗。下がって」
急に大きく揺れた茂みに何かが潜んでいると怖くなった麗が呟く。柳が彼女達の前に出て庇う様に立ちふさがった。
「獣なら俺が仕留める」
「お嬢さん達を護るのがナイトの役目でーす。オレもやります」
忍も前に出ると身構える。ライトも言うと進み出た。
『……』
未だに揺れ続ける茂みに緊張しながら見つめているとついにうごめく影が現れる。
『っ!?』
「……」
茂みから現れたものに驚くもそこに立っていたのは獣ではなくおっとりとした顔の少年だった。
「千代?」
「え、冬夜? どうしてここにいるの」
少年が千代に気付き声をかけると、彼女もここに如何しているのかと問いかける。
「これ……この森にしか生えない花。調べていたんだ」
「はぁ……脅かすなよな」
手に持っている小さな花を見せてくる冬夜に柳が盛大に溜息を吐き出しぼやく。
「千代達はどうしてここに?」
「私達は榊󠄀の森の伝説を確かめに来たの」
彼の言葉に千代が答えると冬夜が首をかしげる。
「この森の伝説?」
「冬夜は聞いた事ない? この森で神隠しに会うって話」
「……う~ん。そう言えば友達が昔そんな話をしていたような」
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こうして新たに冬夜を引き連れて森の奥へと進んでいく。
しばらく進むと少し開けたところに出るが、そこで行き止まりとなっていた。
「行き止まりみたいだけど……」
「う~ん。確かに何も無さそうだね」
千代の言葉に風魔も周囲を見回し呟く。
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「これで気は済んだだろう。帰るぞ」
柳の言葉に忍も話す。
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「何もないですか?」
「はい。何もないです」
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「え?」
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「な、何?」
すると先ほどまで何もなかった空間に白い渦が現れる。
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