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番外編
本編第十章 主と護衛兵その二 譲れない想いに
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それぞれが思い思いに時を過ごすこととなり弥三郎は宿として借りている部屋の机に向かい、この前買ったかんざしをどうやって神子に渡そうかと考えていた。
「失礼します。弥三郎様少々よろしいでしょうか」
「あ、亜人。丁度良かった。このかんざしを神子様に渡そうと思うんだけど、どうやって渡したらいいと思う」
控え目に戸が叩かれ亜人が入室してきたため笑顔で彼に相談する。
「……」
「?」
神妙な面持ちで無言で見詰めてくる亜人の様子に弥三郎は不思議そうに目を瞬く。
「弥三郎様。貴方が神子様の事を好きだと話された時応援してほしいと頼まれました。その時オレはすぐに返事を返すことができず、言葉が出てきませんでした」
「うん」
数秒黙っていた彼が決意を固めたような口調で口を開いた。その言葉に不思議そうに頷く。
「それがなぜなのかずっと不思議に思い考えておりまして、ようやくそのことに対しての答えだと思うものに行き付きました」
「……」
亜人の言葉に弥三郎は真っすぐな瞳で次の言葉を待つ。
「弥三郎様。オレも神子様の事を一人の女性として好意を寄せております。おそらく恋愛感情です。ですから申し訳ありませんが貴方の恋を応援することができません」
「……ふふっ。そっか。亜人が女の人を好きになってくれてぼくとっても嬉しい。よかった。ようやく亜人が自分の気持ちに気付いてくれて、ぼく安心したよ」
「弥三郎様?」
申し訳なさそうな顔でそう答えてきた彼の様子にふわりと笑い良かったと言う。その意外な反応に亜人が不思議そうな顔で尋ねた。
「ぼくねずっと亜人も神子様のこと好きなんじゃないかなって思ってたんだ。だけどぼくに遠慮して自分の気持ちに嘘をつくんじゃないかって、だから応援してほしいっていえばそれに答えられないって言ってくれるんじゃないかなって思ってね」
「……」
笑顔で語る弥三郎の言葉に彼は驚いて目を見開いた。
「だから亜人の本音を聞けて嬉しい。これからはお互い神子様を取り合う仲ってことでよろしくね」
「はい。例え相手が弥三郎様であったとしても神子様へ対する想いをあきらめる気は御座いませんから、貴方もオレに負けないように努力して下さいませ」
「うん。ぼくだって相手が亜人だろうともこの気持ちを捨てる気はないから、亜人もぼくに負けないように頑張ってね」
にこりと笑い宣言した彼へと亜人も受けて立つと言いたげに微笑み答える。弥三郎が本当に嬉しそうな顔でそう言い返す。
一人の女性を巡っての戦いの火ぶたが切って落とされた瞬間だと言うのに、この二人はただ穏やかに微笑み合うのであった。
「失礼します。弥三郎様少々よろしいでしょうか」
「あ、亜人。丁度良かった。このかんざしを神子様に渡そうと思うんだけど、どうやって渡したらいいと思う」
控え目に戸が叩かれ亜人が入室してきたため笑顔で彼に相談する。
「……」
「?」
神妙な面持ちで無言で見詰めてくる亜人の様子に弥三郎は不思議そうに目を瞬く。
「弥三郎様。貴方が神子様の事を好きだと話された時応援してほしいと頼まれました。その時オレはすぐに返事を返すことができず、言葉が出てきませんでした」
「うん」
数秒黙っていた彼が決意を固めたような口調で口を開いた。その言葉に不思議そうに頷く。
「それがなぜなのかずっと不思議に思い考えておりまして、ようやくそのことに対しての答えだと思うものに行き付きました」
「……」
亜人の言葉に弥三郎は真っすぐな瞳で次の言葉を待つ。
「弥三郎様。オレも神子様の事を一人の女性として好意を寄せております。おそらく恋愛感情です。ですから申し訳ありませんが貴方の恋を応援することができません」
「……ふふっ。そっか。亜人が女の人を好きになってくれてぼくとっても嬉しい。よかった。ようやく亜人が自分の気持ちに気付いてくれて、ぼく安心したよ」
「弥三郎様?」
申し訳なさそうな顔でそう答えてきた彼の様子にふわりと笑い良かったと言う。その意外な反応に亜人が不思議そうな顔で尋ねた。
「ぼくねずっと亜人も神子様のこと好きなんじゃないかなって思ってたんだ。だけどぼくに遠慮して自分の気持ちに嘘をつくんじゃないかって、だから応援してほしいっていえばそれに答えられないって言ってくれるんじゃないかなって思ってね」
「……」
笑顔で語る弥三郎の言葉に彼は驚いて目を見開いた。
「だから亜人の本音を聞けて嬉しい。これからはお互い神子様を取り合う仲ってことでよろしくね」
「はい。例え相手が弥三郎様であったとしても神子様へ対する想いをあきらめる気は御座いませんから、貴方もオレに負けないように努力して下さいませ」
「うん。ぼくだって相手が亜人だろうともこの気持ちを捨てる気はないから、亜人もぼくに負けないように頑張ってね」
にこりと笑い宣言した彼へと亜人も受けて立つと言いたげに微笑み答える。弥三郎が本当に嬉しそうな顔でそう言い返す。
一人の女性を巡っての戦いの火ぶたが切って落とされた瞬間だと言うのに、この二人はただ穏やかに微笑み合うのであった。
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