ライゼン通りのお針子さん~新米店長奮闘記~ 番外編

水竜寺葵

文字の大きさ
上 下
6 / 7
ライゼン通りのお針子さん6  ~春色の青春物語~

番外編 悩める青年

しおりを挟む
 これはアイリスから夏祭りの日にミュゥリアムの舞を一緒に見に行こうと誘われた日の出来事である。

「はぁ~」

「よう悩める青年。溜息なんてついて如何した?」

軍事演習中だというのに身が入らない様子のキースへとレイヴィンが尋ねる。

「あ、これはレイヴィン隊長。ジャスティン隊長にディッドさんも。演習中に失礼しました。それから僕はもう青年と呼べる歳ではないですよ」

「俺からしてみたらお前なんて赤子同然だぜ?」

彼が申し訳なさそうにしながら話すと隊長がへらへら笑って答えた。

「またまた。レイヴィン隊長の方が若いじゃないですか」

「あ~。っとそれは置いておいて。で、如何したんだ?」

からかわれていると思っているキースの言葉にディッドが慌てて声をかける。

「いえ、別に……」

「ちょっと休憩に入る。って事で溜息の理由は何だ」

あきらかに様子がおかしい彼の事を心配してレイヴィンが休憩の指示を出すと再度尋ねた。

「実はアイリスから夏祭りの日に踊り子のミュゥリアムさんの舞台を一緒に見に行こうと誘われたんです」

「へ~。良かったじゃないか。それってデートのお誘いだろう」

キースの言葉にディッドが笑顔で話す。

「デ、デートだなんてそんな。僕達はそんな関係ではないですよ」

「い~じゃないの。夏祭りの夜に二人で舞台を見るなんて。だけどその後の雰囲気が大事だぞ。そうだな花火が綺麗に見れる東の塔にでも誘ってだな。で、いいムードになったところでドンと告白」

「こ、告白!?」

慌てて答える彼へとレイヴィンもニヤニヤ笑いながら伝授する。

「こういうのは勢いが大事だからな。頑張れよ」

「応援してるぞ」

隊長が言うとディッドもニヤニヤ笑いながら続く。

「ほら、ジャスティンも何か言葉かけてやれよ」

「そ、そうだな。恋愛などした事がないからきちんとアドバイスできるか分からないが……まず相手に失礼のないように言動に気を付けて――」

「はい、ジャスティンの言葉は気にせずに勢いだいいな」

レイヴィンの言葉にジャスティンが生真面目なアドバイスを話し始めた途端それを遮るように隊長が言った。

「で、でも東の塔は立ち入り禁止の区間では」

「俺が許す。レオ様には俺から伝えておくからさ。だから大丈夫だ」

「オレもそっちに人が行かないようにしておいてあげるからさ」

キースの言葉にレイヴィンが言うとディッドも笑顔のまま言う。

「私も応援している。まぁ、頑張れ」

「う、う~。隊長達にそう言われると失敗できないじゃないですか」

ジャスティンの言葉に彼が緊張のあまり変な汗を流しながら呟いた。

そうして夏祭りの夜レイヴィンのアドバイス通りにアイリスに告白したのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...