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番外編 本編前 死守
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目覚めた邪神はある悪夢にうなされていた。それは遠い未来に破魔の弓矢を持ちし者と金の腕輪を付けし者により自分が倒されるという夢だ。
そしてその悪夢は毎晩続きついに彼はそれを阻止するために腕輪を持ちし者さえいなくなれば未来を変えられるのではないかと思うようになる。
【忌々しい未来を変える為に腕輪を持ちし者を探さねば……しかしこの世界の何処にもいない。どこだ……どこにいる?】
邪神は身体から黒い霧を放ち世界中へとその触手を伸ばす。しかしどこを探してもこの世にその存在は確認できなかった。
【まさか別の世界にいるのか? 異界の扉……それを探さねば】
なんとしても腕輪を持ちし者の命を奪いたい邪神は別の世界へと通じているといわれる異界の扉を探す。
そしてついにその扉を見つけた。その日は残酷にもルナの死体が森の前で発見された日と重なっていたが、そんなこと邪神にとってはどうでもよい事で、異界の扉を通り別世界へと黒い炎を放つ。
そのころ邪神の触手が忍び寄ってきているなんて知らない一つの家族はいつものように平和そのものの日常を過ごしていた。
「もうそろそろ麗奈が帰って来るわね」
「そうだな。壱与は早く帰って来てくれないかと毎日煩いから、麗奈が帰って来てくれればその声を聞かなくて済む」
「お兄ちゃんだっていつもそわそわしてるじゃないの」
ソファーの上でクマのぬいぐるみを抱きしめた少女壱与が言うと兄である那留が小さく笑い話す。
それを聞いた彼女は唇をとがらせて抗議した。
「麗奈が帰ってきたら皆でどこかに旅行にでも行きましょうか」
「良いですね。運転は俺にお任せくださいませ」
顔立ちの整った美しい女性……彩が微笑み語ると執事服を着た青年仁が笑顔で名乗りを上げる。
「美味しい料理ならオレにお任せを」
「俺も旦那様方が楽しめる様に全力で旅行をサポートいたします」
コック服を着た聡久がにこりと笑い言うと弟の雪彦も力強い口調で言った。
「ははっ。雪彦は真面目だな。勿論三人の事は頼りにしているよ」
この家の主である魁が女の子のお人形のメンテナンスをしながら話す。
「……ワタシも連れてって……連れてって」
「ねえ、佳が何か言ってるわよ」
「今喋れるように改造してみたんだ。たくさん話せるようになるにはもう少しデータを入れないとだめだがな」
人形の女の子の言葉に驚きながら壱与が言う。それに魁が微笑み説明した。
その時だ黒々とした炎が彼等がいる部屋へと辺りを焼き焦がしながら入ってきたのは。
「!? 火事なの?」
「まさか放火?」
「旦那様方お下がりください。この炎ただの炎ではありません」
その様子に壱与がパニックになりクマのぬいぐるみを抱きしめる。彩も驚き椅子から立ち上がると青ざめた顔で呟く。
どんな時でも冷静な仁が黒い炎が何かを探す様に燃え広がっている様子に気付きそう言った。
「急いで逃げるんだ」
「壱与立てるか?」
「う、うん……きゃあ」
「っ、お嬢様危ない」
魁の言葉に那留が妹の手を取り立ち上がらせる。その手を取り立ち上がった彼女へと炎が襲う。
その様子に雪彦がとっさに彼女を抱きかかえ背後へと退く。
「この炎まさか動くものを狙っているのか?」
「一体これはなんなの? こんな事ありえないわ」
鋭い眼差しになった聡久が言うと彩が青ざめた顔で呟いた。
『~♪』
その時電話の音が鳴り響いた。仁は炎を警戒しながらそっと電話台に近寄り電話に出る。
「はい。仁です」
『あ、仁さん。麗奈です。今臨海学校が終わりバスに乗り込みました。明日の朝には帰ります』
「!?」
電話越しに聞こえてきたのは麗奈の声で、臨海学校を終えた事を伝えてきた。すると黒い炎がその声に反応するように大きく揺らいだ。
(狙いは麗奈お嬢様か?)
その炎の動きを見逃さなかった仁は内心で呟くと決意を固める。
「畏まりました。……お嬢様、どうぞごゆっくりお帰りになってくださいませ。……どうぞご無事に」
『はい。気を付けて帰りますね』
いつもと変わらない声でそう伝えると電話越しに麗奈の明るい声が聞こえてきて彼は悲しげな眼差しで瞬きした。
「では、失礼します」
彼は言うと受話器をそっと戻す。そして炎に揺らめく部屋の中にいる魁達へと顔を向けた。
「この炎の狙いは麗奈なのね……」
「でもどうして麗奈の事を狙っているんだ?」
「それは分からないけど。だが、このおかしな炎の狙いが麗奈なのであれば……」
彩が神妙な顔で呟くと那留が訝しげに尋ねる。魁がそれに答えるように話すと炎を見詰めた。
「まずはこの炎の出所を探すんですね」
「だけど、こんな得体のしれない炎にどうやって立ち向かえばいいの?」
「このままでは麗奈お嬢様の身も危なくなるんだ。それだけは阻止しなくてはならない」
雪彦の言葉に壱与が不安そうに尋ねる。それに聡久が答えた。
「それは、わたしも同じ気持ちよ。例え死んだとしても麗奈の事は守りたい」
「麗奈を失うわけにはいかない。俺はこの命を引き換えにしたとしてもこの炎の出所を見つけてそしてこの炎を操るものの狙いを阻止して見せる」
「麗奈……お前を失うわけにはいかない。たとえこの命を落とすことになったとしても僕はこの炎を止める」
「愛する人と娘と息子が逝くというのだもの、妻であり母である私だけが逃げるわけにはいかないわ。私も一緒に例え地獄の底にだってついて行くわ」
娘達の言葉に彩も決意を固めた様子で強い意思を瞳に宿して語る。
「では、旦那様。俺達全員でこの炎の狙いを阻止してみせましょう」
「ああ」
仁の言葉に魁が力強く頷く。そして彼等は黒い炎に身を焼かれようとも気にせずにその出所を探す。
「……麗奈を、守らなきゃ」
誰もいなくなった部屋に残された佳がそっと呟く。しかし歩く事ができない人形の自分では魁達とともに炎の出所を探すことは叶わない。苦しみ呻く彼等の遠い声を聞きながら彼女もまた炎に飲み込まれていった。
それから火災警報器が発動して消防隊が動くも炎が消えることはなく、それか消し止められたということになった時には魁達は命を落としていてた。
そして彼等は黒い炎に包まれながらもそれを操るものの思念を知り、異界の扉を命と引き換えに閉ざすことに成功し、それにより炎は消え去ったのである。
そして死んだあと最愛の娘ルナを失くし失意に呑まれ悲しみに暮れている家族の夢の中へと現れて麗奈の事と未来を託したのであった。
そして死んでまでも守りたいと願った麗奈が戻ってきた時には館の一部は焼け落ちていて魁達の遺体も残らなかったと消防隊から聞かされ彼女はショックのあまりにその場に泣き崩れる。
まさか自分が電話をした時に聞いた仁の声が最期の言葉になろうとは思わなくて、帰ってきたらいつものようにみんなで出迎えてくれると思っていたのに、それが火事により一瞬で全てを奪われてしまおうとは幼い麗奈にとってはとても立ち直ることのできない出来事であった。
しかし悲しみに暮れる彼女に近づくのは遺産をすべて受け付いだ麗奈の財産だけが目的の親戚や会社の人達ばかりで、両親譲りで人の真意を見抜く目を持っていた彼女はその誰もの言葉を信じずに一人でこの屋敷に残り生きることを決める。
そしてそんな彼女が中学に上がるまで支えてくれたのが父親が遺産相続で相談をしていた信頼できる弁護士の男だった。
死してまでも守り抜いた麗奈がやがて高校生になった時に時空を超えてマサヒロが彼女の前へと現れたのである。
そして邪神は悪夢と同じ末路を辿ることとなるのであった。これによりようやく魁達やカイト達の願いが実を結ぶこととなったのである。
そしてその悪夢は毎晩続きついに彼はそれを阻止するために腕輪を持ちし者さえいなくなれば未来を変えられるのではないかと思うようになる。
【忌々しい未来を変える為に腕輪を持ちし者を探さねば……しかしこの世界の何処にもいない。どこだ……どこにいる?】
邪神は身体から黒い霧を放ち世界中へとその触手を伸ばす。しかしどこを探してもこの世にその存在は確認できなかった。
【まさか別の世界にいるのか? 異界の扉……それを探さねば】
なんとしても腕輪を持ちし者の命を奪いたい邪神は別の世界へと通じているといわれる異界の扉を探す。
そしてついにその扉を見つけた。その日は残酷にもルナの死体が森の前で発見された日と重なっていたが、そんなこと邪神にとってはどうでもよい事で、異界の扉を通り別世界へと黒い炎を放つ。
そのころ邪神の触手が忍び寄ってきているなんて知らない一つの家族はいつものように平和そのものの日常を過ごしていた。
「もうそろそろ麗奈が帰って来るわね」
「そうだな。壱与は早く帰って来てくれないかと毎日煩いから、麗奈が帰って来てくれればその声を聞かなくて済む」
「お兄ちゃんだっていつもそわそわしてるじゃないの」
ソファーの上でクマのぬいぐるみを抱きしめた少女壱与が言うと兄である那留が小さく笑い話す。
それを聞いた彼女は唇をとがらせて抗議した。
「麗奈が帰ってきたら皆でどこかに旅行にでも行きましょうか」
「良いですね。運転は俺にお任せくださいませ」
顔立ちの整った美しい女性……彩が微笑み語ると執事服を着た青年仁が笑顔で名乗りを上げる。
「美味しい料理ならオレにお任せを」
「俺も旦那様方が楽しめる様に全力で旅行をサポートいたします」
コック服を着た聡久がにこりと笑い言うと弟の雪彦も力強い口調で言った。
「ははっ。雪彦は真面目だな。勿論三人の事は頼りにしているよ」
この家の主である魁が女の子のお人形のメンテナンスをしながら話す。
「……ワタシも連れてって……連れてって」
「ねえ、佳が何か言ってるわよ」
「今喋れるように改造してみたんだ。たくさん話せるようになるにはもう少しデータを入れないとだめだがな」
人形の女の子の言葉に驚きながら壱与が言う。それに魁が微笑み説明した。
その時だ黒々とした炎が彼等がいる部屋へと辺りを焼き焦がしながら入ってきたのは。
「!? 火事なの?」
「まさか放火?」
「旦那様方お下がりください。この炎ただの炎ではありません」
その様子に壱与がパニックになりクマのぬいぐるみを抱きしめる。彩も驚き椅子から立ち上がると青ざめた顔で呟く。
どんな時でも冷静な仁が黒い炎が何かを探す様に燃え広がっている様子に気付きそう言った。
「急いで逃げるんだ」
「壱与立てるか?」
「う、うん……きゃあ」
「っ、お嬢様危ない」
魁の言葉に那留が妹の手を取り立ち上がらせる。その手を取り立ち上がった彼女へと炎が襲う。
その様子に雪彦がとっさに彼女を抱きかかえ背後へと退く。
「この炎まさか動くものを狙っているのか?」
「一体これはなんなの? こんな事ありえないわ」
鋭い眼差しになった聡久が言うと彩が青ざめた顔で呟いた。
『~♪』
その時電話の音が鳴り響いた。仁は炎を警戒しながらそっと電話台に近寄り電話に出る。
「はい。仁です」
『あ、仁さん。麗奈です。今臨海学校が終わりバスに乗り込みました。明日の朝には帰ります』
「!?」
電話越しに聞こえてきたのは麗奈の声で、臨海学校を終えた事を伝えてきた。すると黒い炎がその声に反応するように大きく揺らいだ。
(狙いは麗奈お嬢様か?)
その炎の動きを見逃さなかった仁は内心で呟くと決意を固める。
「畏まりました。……お嬢様、どうぞごゆっくりお帰りになってくださいませ。……どうぞご無事に」
『はい。気を付けて帰りますね』
いつもと変わらない声でそう伝えると電話越しに麗奈の明るい声が聞こえてきて彼は悲しげな眼差しで瞬きした。
「では、失礼します」
彼は言うと受話器をそっと戻す。そして炎に揺らめく部屋の中にいる魁達へと顔を向けた。
「この炎の狙いは麗奈なのね……」
「でもどうして麗奈の事を狙っているんだ?」
「それは分からないけど。だが、このおかしな炎の狙いが麗奈なのであれば……」
彩が神妙な顔で呟くと那留が訝しげに尋ねる。魁がそれに答えるように話すと炎を見詰めた。
「まずはこの炎の出所を探すんですね」
「だけど、こんな得体のしれない炎にどうやって立ち向かえばいいの?」
「このままでは麗奈お嬢様の身も危なくなるんだ。それだけは阻止しなくてはならない」
雪彦の言葉に壱与が不安そうに尋ねる。それに聡久が答えた。
「それは、わたしも同じ気持ちよ。例え死んだとしても麗奈の事は守りたい」
「麗奈を失うわけにはいかない。俺はこの命を引き換えにしたとしてもこの炎の出所を見つけてそしてこの炎を操るものの狙いを阻止して見せる」
「麗奈……お前を失うわけにはいかない。たとえこの命を落とすことになったとしても僕はこの炎を止める」
「愛する人と娘と息子が逝くというのだもの、妻であり母である私だけが逃げるわけにはいかないわ。私も一緒に例え地獄の底にだってついて行くわ」
娘達の言葉に彩も決意を固めた様子で強い意思を瞳に宿して語る。
「では、旦那様。俺達全員でこの炎の狙いを阻止してみせましょう」
「ああ」
仁の言葉に魁が力強く頷く。そして彼等は黒い炎に身を焼かれようとも気にせずにその出所を探す。
「……麗奈を、守らなきゃ」
誰もいなくなった部屋に残された佳がそっと呟く。しかし歩く事ができない人形の自分では魁達とともに炎の出所を探すことは叶わない。苦しみ呻く彼等の遠い声を聞きながら彼女もまた炎に飲み込まれていった。
それから火災警報器が発動して消防隊が動くも炎が消えることはなく、それか消し止められたということになった時には魁達は命を落としていてた。
そして彼等は黒い炎に包まれながらもそれを操るものの思念を知り、異界の扉を命と引き換えに閉ざすことに成功し、それにより炎は消え去ったのである。
そして死んだあと最愛の娘ルナを失くし失意に呑まれ悲しみに暮れている家族の夢の中へと現れて麗奈の事と未来を託したのであった。
そして死んでまでも守りたいと願った麗奈が戻ってきた時には館の一部は焼け落ちていて魁達の遺体も残らなかったと消防隊から聞かされ彼女はショックのあまりにその場に泣き崩れる。
まさか自分が電話をした時に聞いた仁の声が最期の言葉になろうとは思わなくて、帰ってきたらいつものようにみんなで出迎えてくれると思っていたのに、それが火事により一瞬で全てを奪われてしまおうとは幼い麗奈にとってはとても立ち直ることのできない出来事であった。
しかし悲しみに暮れる彼女に近づくのは遺産をすべて受け付いだ麗奈の財産だけが目的の親戚や会社の人達ばかりで、両親譲りで人の真意を見抜く目を持っていた彼女はその誰もの言葉を信じずに一人でこの屋敷に残り生きることを決める。
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