84 / 120
ライゼン通りの錬金術師さん5 ~黒の集団の襲来~
十一章 影を追って
しおりを挟む
夏祭りも終わりいよいよ秋に向けて季節が移り替わろうとしていたある日。
「あれから黒の集団はどうなったのかしら」
「隊長達が何とかしてくれていると思うよ。だからそんなに悩まないで」
ポルトと一緒に採取地から帰って来たソフィアは呟く。それに彼が答えた。
「そうね。それよりも早く帰って依頼の品を作らないとね」
「そうだよ。……あれ、あれってアルじゃない?」
彼女の言葉に返事をしたポルトだったが視線の先にアルフォンスを見つける。
「本当だ。あ、そうだ。この前のお礼を言いたいからちょっと追いかけましょう」
「うん」
ソフィアは言うと駆け出す。その後を追いかけて彼も走り出した。
「アル!」
「アル~。待って」
必死に呼びかけるがアルフォンスの姿はどんどん遠くなり気が付いたら見失ってしまっていて二人は立ち止まる。
「はぁ、はぁ……アルって歩くの早いね」
「そうね。もう見失ってしまったわ」
ポルトの言葉にソフィアは返事をしたが視線の先にある人物を見つけて凍り付く。
「お姉さん如何したの?」
「今角を曲がっていったのって……っう」
「あ。ソフィー!?」
不思議がる彼の言葉が聞こえていなかったようでソフィアは駆け出してしまう。ポルトも後を追いかけて行った。
「はぁ、はぁ……っ! ポルト隠れて」
「むぐぅ!?」
走っていたと思ったら今度はいきなり立ち止まり建物の陰へと隠れる。その様子にポルトが如何したのかと言いたげに見上げた。
「お姉さんさっきから如何したのさ」
「黒いローブの人物を見かけたのよ。今この先にいるわ」
「え?」
彼の言葉にようやく説明してくれたソフィア。その発言に驚いて建物の陰から様子を窺う。
「本当だ。一人でこんなところで何しているんだろう」
「し~。誰か来るわ」
ポルトもようやく理解したらしく怪しむ。その時足音を聞き拾い彼女は黙るように言う。
「ウィッチ。この前の失態をどう責任取る」
「私のせいにしないで。私だって予想外だったのだから」
男がやってくるなり少女を責める。それに対してウィッチが抗議した。
「君の調べが甘かったのは言うまでもない。おかげで計画が台無しだ」
「……」
男の言葉に彼女は黙って様子を見る。
「こうなたら仕方ない。例の計画を実行する」
「まだ早いのでは」
「騎士団や冒険者の邪魔が入った今や少しの誤算も手遅れになる。さっさと資金を稼いでこの国から立ち去らねば」
「……」
男の話にウィッチが次の言葉を待つ。
「ウィッチ。皆を集めろ。場所は噴水広場だ」
「御意」
男の指示に彼女が返事すると話は終わったようで二人は立ち去る。
「今の話し聞いた。噴水広場であいつら何かやらかす気なんだ」
「ポルトこの事をすぐにレイヴィンさん達に話してこないと」
「そうだね。行こう」
ソフィア達も急いでこの場から離れレイヴィン達の下へと向けて駆けて行った。
「成る程、話は分かった。噴水広場の警備を強化しておく」
「協力感謝します」
王宮にいき話をするとレイヴィンとディッドが真剣な顔をして話す。
「ソフィーが作ってくれたアイテムがいよいよ役に立つ時が来たな」
「そうですね。奴等を一網打尽にできるいい機会です」
「どんな事が起るのか分からないので気を付けて下さいね」
二人へと向けてソフィアは心配そうに言葉をかけた。
「あぁ、大丈夫だ」
「隊長二人を送ってきたらどうですか。黒の集団に目をつけられているかもしれませんから」
笑顔で答えるレイヴィンへとディッドがそう話す。
「そうだな。それじゃあ家まで俺が送って行こう」
「はい。お願いするわね」
隊長の言葉に彼女は安心して微笑む。
「ディッド分ってるね~」
「オレは隊長を応援してるんでね」
「ポルト、何を話してるの? 行くわよ」
こそっり耳打ちするポルトへとディッドが小声で答える。二人の話が聞こえていなかったソフィアは不思議そうに言った。
「今行くよ。それじゃあディッドまたね~」
「気を付けて帰ってくださいよ」
彼が答えると手を振って帰って行く。彼女達を見送りながらディッドが言った。
「ここまでで大丈夫です」
「家の中に入るまで見守らせてもらうぞ」
「もう。隊長心配性なんだから。おいらがいるから大丈夫だよ」
ソフィアの言葉にレイヴィンが答える。それにポルトが心配するなと言う。
「何もないかもしれないが一応家に入るまで見守るのが護衛の仕事だからな」
「分かったよ。さ、お姉さん入ろう」
「えぇ。レイヴィンさん有難う御座いました」
「あぁ」
三人は短くやり取りをするとソフィア達は家へと入りそれをきちんと見守ったレイヴィンは城へと戻っていった。
「……」
そんな様子を物陰から見届けていた黒いローブ姿の少女。
「放ってはおけないわね」
独り言を零すと暗闇の中へと溶け込むように消えていった。
「あれから黒の集団はどうなったのかしら」
「隊長達が何とかしてくれていると思うよ。だからそんなに悩まないで」
ポルトと一緒に採取地から帰って来たソフィアは呟く。それに彼が答えた。
「そうね。それよりも早く帰って依頼の品を作らないとね」
「そうだよ。……あれ、あれってアルじゃない?」
彼女の言葉に返事をしたポルトだったが視線の先にアルフォンスを見つける。
「本当だ。あ、そうだ。この前のお礼を言いたいからちょっと追いかけましょう」
「うん」
ソフィアは言うと駆け出す。その後を追いかけて彼も走り出した。
「アル!」
「アル~。待って」
必死に呼びかけるがアルフォンスの姿はどんどん遠くなり気が付いたら見失ってしまっていて二人は立ち止まる。
「はぁ、はぁ……アルって歩くの早いね」
「そうね。もう見失ってしまったわ」
ポルトの言葉にソフィアは返事をしたが視線の先にある人物を見つけて凍り付く。
「お姉さん如何したの?」
「今角を曲がっていったのって……っう」
「あ。ソフィー!?」
不思議がる彼の言葉が聞こえていなかったようでソフィアは駆け出してしまう。ポルトも後を追いかけて行った。
「はぁ、はぁ……っ! ポルト隠れて」
「むぐぅ!?」
走っていたと思ったら今度はいきなり立ち止まり建物の陰へと隠れる。その様子にポルトが如何したのかと言いたげに見上げた。
「お姉さんさっきから如何したのさ」
「黒いローブの人物を見かけたのよ。今この先にいるわ」
「え?」
彼の言葉にようやく説明してくれたソフィア。その発言に驚いて建物の陰から様子を窺う。
「本当だ。一人でこんなところで何しているんだろう」
「し~。誰か来るわ」
ポルトもようやく理解したらしく怪しむ。その時足音を聞き拾い彼女は黙るように言う。
「ウィッチ。この前の失態をどう責任取る」
「私のせいにしないで。私だって予想外だったのだから」
男がやってくるなり少女を責める。それに対してウィッチが抗議した。
「君の調べが甘かったのは言うまでもない。おかげで計画が台無しだ」
「……」
男の言葉に彼女は黙って様子を見る。
「こうなたら仕方ない。例の計画を実行する」
「まだ早いのでは」
「騎士団や冒険者の邪魔が入った今や少しの誤算も手遅れになる。さっさと資金を稼いでこの国から立ち去らねば」
「……」
男の話にウィッチが次の言葉を待つ。
「ウィッチ。皆を集めろ。場所は噴水広場だ」
「御意」
男の指示に彼女が返事すると話は終わったようで二人は立ち去る。
「今の話し聞いた。噴水広場であいつら何かやらかす気なんだ」
「ポルトこの事をすぐにレイヴィンさん達に話してこないと」
「そうだね。行こう」
ソフィア達も急いでこの場から離れレイヴィン達の下へと向けて駆けて行った。
「成る程、話は分かった。噴水広場の警備を強化しておく」
「協力感謝します」
王宮にいき話をするとレイヴィンとディッドが真剣な顔をして話す。
「ソフィーが作ってくれたアイテムがいよいよ役に立つ時が来たな」
「そうですね。奴等を一網打尽にできるいい機会です」
「どんな事が起るのか分からないので気を付けて下さいね」
二人へと向けてソフィアは心配そうに言葉をかけた。
「あぁ、大丈夫だ」
「隊長二人を送ってきたらどうですか。黒の集団に目をつけられているかもしれませんから」
笑顔で答えるレイヴィンへとディッドがそう話す。
「そうだな。それじゃあ家まで俺が送って行こう」
「はい。お願いするわね」
隊長の言葉に彼女は安心して微笑む。
「ディッド分ってるね~」
「オレは隊長を応援してるんでね」
「ポルト、何を話してるの? 行くわよ」
こそっり耳打ちするポルトへとディッドが小声で答える。二人の話が聞こえていなかったソフィアは不思議そうに言った。
「今行くよ。それじゃあディッドまたね~」
「気を付けて帰ってくださいよ」
彼が答えると手を振って帰って行く。彼女達を見送りながらディッドが言った。
「ここまでで大丈夫です」
「家の中に入るまで見守らせてもらうぞ」
「もう。隊長心配性なんだから。おいらがいるから大丈夫だよ」
ソフィアの言葉にレイヴィンが答える。それにポルトが心配するなと言う。
「何もないかもしれないが一応家に入るまで見守るのが護衛の仕事だからな」
「分かったよ。さ、お姉さん入ろう」
「えぇ。レイヴィンさん有難う御座いました」
「あぁ」
三人は短くやり取りをするとソフィア達は家へと入りそれをきちんと見守ったレイヴィンは城へと戻っていった。
「……」
そんな様子を物陰から見届けていた黒いローブ姿の少女。
「放ってはおけないわね」
独り言を零すと暗闇の中へと溶け込むように消えていった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
大賢者の弟子ステファニー
楠ノ木雫
ファンタジー
この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。
その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。
そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。
※他の投稿サイトにも掲載しています。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
追放された武闘派令嬢の異世界生活
新川キナ
ファンタジー
異世界の記憶を有し、転生者であるがゆえに幼少の頃より文武に秀でた令嬢が居た。
名をエレスティーナという。そんな彼女には婚約者が居た。
気乗りのしない十五歳のデビュタントで初めて婚約者に会ったエレスティーナだったが、そこで素行の悪い婚約者をぶん殴る。
追放された彼女だったが、逆に清々したと言わんばかりに自由を謳歌。冒険者家業に邁進する。
ダンジョンに潜ったり護衛をしたり恋をしたり。仲間と酒を飲み歌って踊る毎日。気が向くままに生きていたが冒険者は若い間だけの仕事だ。そこで将来を考えて錬金術師の道へ進むことに。
一流の錬金術師になるべく頑張るのだった
ヒビキとクロードの365日
あてきち
ファンタジー
小説『最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?』の主人公『ヒビキ』とその従者『クロード』が地球の365日の記念日についてゆるりと語り合うだけのお話。毎日更新(時間不定)。
本編を知っていることを前提に二人は会話をするので、本編を未読の方はぜひ一度本編へお立ち寄りください。
本編URL(https://www.alphapolis.co.jp/novel/706173588/625075049)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる