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ライゼン通りの錬金術師さん5 ~黒の集団の襲来~

十一章 影を追って

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 夏祭りも終わりいよいよ秋に向けて季節が移り替わろうとしていたある日。

「あれから黒の集団はどうなったのかしら」

「隊長達が何とかしてくれていると思うよ。だからそんなに悩まないで」

ポルトと一緒に採取地から帰って来たソフィアは呟く。それに彼が答えた。

「そうね。それよりも早く帰って依頼の品を作らないとね」

「そうだよ。……あれ、あれってアルじゃない?」

彼女の言葉に返事をしたポルトだったが視線の先にアルフォンスを見つける。

「本当だ。あ、そうだ。この前のお礼を言いたいからちょっと追いかけましょう」

「うん」

ソフィアは言うと駆け出す。その後を追いかけて彼も走り出した。

「アル!」

「アル~。待って」

必死に呼びかけるがアルフォンスの姿はどんどん遠くなり気が付いたら見失ってしまっていて二人は立ち止まる。

「はぁ、はぁ……アルって歩くの早いね」

「そうね。もう見失ってしまったわ」

ポルトの言葉にソフィアは返事をしたが視線の先にある人物を見つけて凍り付く。

「お姉さん如何したの?」

「今角を曲がっていったのって……っう」

「あ。ソフィー!?」

不思議がる彼の言葉が聞こえていなかったようでソフィアは駆け出してしまう。ポルトも後を追いかけて行った。

「はぁ、はぁ……っ! ポルト隠れて」

「むぐぅ!?」

走っていたと思ったら今度はいきなり立ち止まり建物の陰へと隠れる。その様子にポルトが如何したのかと言いたげに見上げた。

「お姉さんさっきから如何したのさ」

「黒いローブの人物を見かけたのよ。今この先にいるわ」

「え?」

彼の言葉にようやく説明してくれたソフィア。その発言に驚いて建物の陰から様子を窺う。

「本当だ。一人でこんなところで何しているんだろう」

「し~。誰か来るわ」

ポルトもようやく理解したらしく怪しむ。その時足音を聞き拾い彼女は黙るように言う。

「ウィッチ。この前の失態をどう責任取る」

「私のせいにしないで。私だって予想外だったのだから」

男がやってくるなり少女を責める。それに対してウィッチが抗議した。

「君の調べが甘かったのは言うまでもない。おかげで計画が台無しだ」

「……」

男の言葉に彼女は黙って様子を見る。

「こうなたら仕方ない。例の計画を実行する」

「まだ早いのでは」

「騎士団や冒険者の邪魔が入った今や少しの誤算も手遅れになる。さっさと資金を稼いでこの国から立ち去らねば」

「……」

男の話にウィッチが次の言葉を待つ。

「ウィッチ。皆を集めろ。場所は噴水広場だ」

「御意」

男の指示に彼女が返事すると話は終わったようで二人は立ち去る。

「今の話し聞いた。噴水広場であいつら何かやらかす気なんだ」

「ポルトこの事をすぐにレイヴィンさん達に話してこないと」

「そうだね。行こう」

ソフィア達も急いでこの場から離れレイヴィン達の下へと向けて駆けて行った。

「成る程、話は分かった。噴水広場の警備を強化しておく」

「協力感謝します」

王宮にいき話をするとレイヴィンとディッドが真剣な顔をして話す。

「ソフィーが作ってくれたアイテムがいよいよ役に立つ時が来たな」

「そうですね。奴等を一網打尽にできるいい機会です」

「どんな事が起るのか分からないので気を付けて下さいね」

二人へと向けてソフィアは心配そうに言葉をかけた。

「あぁ、大丈夫だ」

「隊長二人を送ってきたらどうですか。黒の集団に目をつけられているかもしれませんから」

笑顔で答えるレイヴィンへとディッドがそう話す。

「そうだな。それじゃあ家まで俺が送って行こう」

「はい。お願いするわね」

隊長の言葉に彼女は安心して微笑む。

「ディッド分ってるね~」

「オレは隊長を応援してるんでね」

「ポルト、何を話してるの? 行くわよ」

こそっり耳打ちするポルトへとディッドが小声で答える。二人の話が聞こえていなかったソフィアは不思議そうに言った。

「今行くよ。それじゃあディッドまたね~」

「気を付けて帰ってくださいよ」

彼が答えると手を振って帰って行く。彼女達を見送りながらディッドが言った。

「ここまでで大丈夫です」

「家の中に入るまで見守らせてもらうぞ」

「もう。隊長心配性なんだから。おいらがいるから大丈夫だよ」

ソフィアの言葉にレイヴィンが答える。それにポルトが心配するなと言う。

「何もないかもしれないが一応家に入るまで見守るのが護衛の仕事だからな」

「分かったよ。さ、お姉さん入ろう」

「えぇ。レイヴィンさん有難う御座いました」

「あぁ」

三人は短くやり取りをするとソフィア達は家へと入りそれをきちんと見守ったレイヴィンは城へと戻っていった。

「……」

そんな様子を物陰から見届けていた黒いローブ姿の少女。

「放ってはおけないわね」

独り言を零すと暗闇の中へと溶け込むように消えていった。
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